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SF ミステリー 書評

【ブックレビュー】教室が、ひとりになるまで(著:浅倉秋成)

更新日:

【作品情報】
 作品名:教室が、ひとりになるまで
 著者:浅倉 秋成
 ページ数:288
 ジャンル:SF、ミステリー
 出版社:KADOKAWA

 おススメ度 : ★★★★★★★★☆☆
 犯人は主人公の心情に共感できる度 : ★★★★★★★★☆☆
 こういう人におススメ! : 特殊な謎解きに興味あり

 

■作品について

私立北楓高校で起きた生徒の連続自殺。
遺書として残されたのは、

「私は教室で大きな声を出しすぎました。調律される必要があります」

という同じ文章。
自殺としか思えない状況であるが、自殺した生徒たちは殺されたのだという。

何故、自殺は起きたのか。
事件の裏に隠されていたものは。

■良かった点

学園を舞台に、特殊な能力を持った生徒によって起こされた事件の謎解きミステリー。

自殺した三人は、どこからどう見ても自殺したとしか考えられない状況であった。
主人公の垣内もそう考えていたが、幼馴染である白瀬美月から、

「三人とも自殺なんかじゃない。みんなあいつに殺されたの」

という。
当然、そんな根拠のない言葉を信じることなどできない垣内だったが、自分に特殊能力が引き継がれたことで、事件は殺人ではないかと疑い調べ始めることになる。

学園に代々伝わる四人の能力者とその能力。
どのような能力なのかは本人しか知らず、他人にその能力と発動条件を知られたら能力は消失する。
だから、殺人者を止めるにはその能力と条件を知れば良い、ということで能力当てミステリーである。

犯人はすぐに判明する。
その動機も、分かる人には分かる。
でも、殺人の方法が分からない。いかに自殺させるのか。
その能力と発動条件を考えさせられるというのがなかなか面白い。
通常のミステリーにおけるハウダニットではなく、特殊能力当て。それも、別に万能な能力ではない。
限定的な能力で、どうすれば自殺させられるのかを考えるのだ。

そして能力当てミステリーでありつつ、本作はほろ苦い青春ものでもある。
ぶっちゃけていうと、この殺人の動機というか気持ちって理解できます。
そういう人も結構多いと思う。

学園が舞台で殺人となれば思い浮かぶのはスクールカースト。
明確なスクールカーストではなくても、本人たちは良かれと思ってやっていることでも、他人からはどう感じ取られるか。
その辺は非常に分かりやすく描かれている。
同年代の子が読んだらどう感じるかなー。
やっぱり立場によって、どちらかの心情は理解できないだろうな。
どちらも正解であり、どちらも間違っているというか、正解なんてないのだろう、本人の心の中には。

「教室がひとりになるまで」

そのタイトルの意味も、分かる。
本当にもう、ねえ・・・・!?

■ここが改善できるともっとよかったかも?

いやー。
私もどちらかといえば犯人側に近い心情なので、このクラスにいたらちょっとキツイですね(笑)

 

 

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