書評と主にマリア様がみてるの二次創作(旧:よしのXブレード)

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【マリみてSS(女性陣×祐麒)】3F! 5.高熱注意報!

更新日:

 

~ 3F! ~
The fashion of Fukuzawa family!
<福沢家の流儀!>

 

『5.高熱注意報!』

 

 

 福沢家に衝撃がはしったのは、とある日の朝だった。
 最初に気が付いたのは蓉子。規則正しい生活を送る蓉子は、朝起きるのも決まった時間であり、他の姉妹たちよりもその時間は早い。
 その蓉子が目を覚まし、洗面所で顔を洗ったりしてリビングに向かおうとしたところで異変に気が付いた。
 いつもならリビング、その奥のキッチンから朝食の準備をする令の鼻歌や、食欲をくすぐるような良い匂いがやってくるはずなのに、その気配がない。実際に足を運んでみても、令の姿は見当たらない。
 用事があって朝早くに出かけるときでも、必ず家族の食事を用意してくれている令が、今日に限って何も準備をしていない。これはただ事ではないと感じた蓉子は、ただちに令の部屋へと向かった。
 静と令、二人で使用している部屋に入る。令のベッドに歩み寄り、そこで蓉子が目にしたものといえば――

 

「――――えっ、令ちゃんが風邪引いた!?」
 祐麒の言葉に、重々しく頷く蓉子。
「え、ちょっ、ちょっと、それじゃあ今日のご飯はどうなるの? お掃除や洗濯だってあるのに」
 不安そうな表情を見せるのは笙子。
 蓉子は頭を振って否定の意を見せる。
「三十九度五分の熱があるのよ、無理に決まっているでしょう」
 朝、蓉子が令の部屋で見たのは、熱でうなされている令の姿だった。蓉子が声をかけるとうっすらと目を開けて起き上がろうとしたが、さすがに蓉子は押しとどめた。
「それじゃあ、朝ご飯はどうするの?」
「トーストがあるから、焼いて食べましょう」
「えー、それじゃあ一日、力が出ないよー」
 剣道部に所属している菜々が口を尖らすが仕方ない。その後も次々と起きてきた姉妹たちが口々に文句を言うが、令がダウンしているのだから仕方ない。むしろ、いかに令に依存してきたかというのが分かるものである。
「まあ、朝ご飯は仕方ないとして……夜ご飯はどうするの?」
 真剣な顔をして口を開いたのは江利子である。
「いや、これだけ姉妹がいるから大丈夫でしょ。ねえ……」
 そう言う祐麒であったが、不安は隠せない。何せ、令以外の姉妹が家事をしているところなんて、てんで目にしたことがないのだから。

 不安なまま皆、学校や仕事に向かう。今日のところは景が在宅なので看病を任せることにするが、果たして大丈夫なものだろうか。
 改めて考えてみて、福沢家の日々の生活がいかに令によって支えられていたかということを実感する。そして、今まで一日たりとも休まずに家事をこなしていた令の強さに尊敬の念も抱く。
 だから、熱を出した時くらいゆっくり休んでもらおうとも思う。まあ、熱を出して寝込んでいる時点で、あまり休めていないのかもしれないが、こういう時くらいは他の姉妹たちと協力し合い、家のことくらいどうにかしたい。
 そんな思いを抱きつつ学校での一日を終え、帰りがけに令のために何か買って行ってあげようと街に出て色々と物色していたら、帰るのが少し遅くなってしまった。まあ、朝の内に姉妹達と役割は分担していたので特に問題はないはずであるが。
「ただいま…………って、なんだ、これ?」
 玄関を開けるなり異臭が鼻をつき、嫌な予感に包まれつつもリビングに足を運ぶ。
「あ、お、お兄ちゃんっ。こ、これは違うんだよ!? これは乃梨ちゃんが」
「ちょっと笙子、人のせいにしないでよ。笙子がそもそも……」
 双子がリビングでモップと掃除機を手に騒いでいた。そしてリビングは散らかり放題に散らかっていた。二人を見るに掃除をしようとしていたのだろうが、その結果、余計に汚してしまい、それを片付けようとして更に失敗するという悪循環に陥っていたようだ。だが、これは異臭の原因にはならない。
「誰か、料理しているの?」
 恐る恐るキッチンを覗き込むと。
「……どうしてうまくいかないのかしら? これをこうして……」
「し、静姉さん……?」
 どうやら静が夕食の支度をしているようなのだが、何やら雲行きがあやしいというか、異臭の元はあきらかにこのキッチンである。
「ああ、祐麒さん。今、お夕飯の支度をしていますから、もう少し待ってくださいね」
「待つのはいいんだけど、だ、大丈夫?」
「大丈夫です、レシピ通りに作れば私にだって作れます」
 にっこりと笑う静だが、レシピ通りに作ってのこの異臭は何なのか。いつの間にか後ろにやってきていた乃梨子と笙子に目で問いかけるが、二人は申し訳なさそうに首を横に振るばかり。
「美味しいパエリアを作ってあげますからね」
 ご機嫌に言う静だったが、なぜ、普段料理をしないのにいきなりパエリアなど難しい料理に挑戦しようなどと考えたのかが知りたい。しかも見れば確かに、本格的にタイマイやらムール貝やら取り揃えており、やる気のほどはうかがえるのだが、どうも失敗作も周囲に放置されており不安しかない。
 どうにか止めたいところだが、どこかから悲鳴が発生してそれどころではなくなる。キッチンから踵を返してリビングを横切り、悲鳴がしたと思われる洗面所に飛び込んでいくと、そこにはまた惨憺たる光景が広がっていた。
 洗濯機から大量の泡が溢れ出し、洗面所を覆いつくそうかという感じになっていた。

「あっれ~、なんでこんなことになっているのかしら?」
「江利子姉さん、それはこっちの台詞だけど!?」
 洗面所にいた姉に向けて声をかけると、江利子はばつが悪そうな顔をして振り返る。
「あ、祐ちゃんお帰り」
 漫画でもあるまいに、どうしたらこんなことが出来るのか。そもそも、なんでこんな夕方になってから洗濯をし始めようと思ったのか。昼間の内にやっておけばよいことなのだが、普段からやり慣れていないだけに忘れていたのだろう。
「とにかく、洗濯機を止めて!」
 怪しげな唸りをあげながらいまだに泡を生成し続けている洗濯機を指さし、祐麒は江利子に指示する。
「え、でも、どうやって?」
 既に泡まみれになっている洗濯機は、その姿が見えなくなりつつある。
「仕方ない、俺が止めるから」
 江利子の横を抜けて泡に突っ込み、なんじゃこりゃと内心で突っ込みながら懸命に洗濯機の停止ボタンを探し当てて押す。
 と思ったら違うボタンだったようで、更に激しく洗濯機は鳴動して泡を撒き散らす。
「――うわ、何これっ、シャボン玉大会!? 私にもやらせてーーっ」
「って菜々、遊びじゃないからっ!?」
 帰宅した菜々が洗面所の惨劇を目の当たりにして目を輝かせ、中に突入して来ようとするのを江利子が襟首を掴んで引き止める。
 泡を目や口に入り酷い目にあいながらも、どうにかこうにか洗濯機を止めて脱出すると、今度はキッチンから悲鳴。
「大変大変お兄ちゃん! 台所で火柱が!!」
「うあぁ、案の定!?」
 これはもうお約束としかいいようがない事態。
 かくして、福沢家内は阿鼻叫喚の様相を呈し、蓉子が仕事から帰宅した時には惨憺たるありさまとなっていた。

「……何をどうすれば、こうなるのかしら」
 蓉子も茫然と、変わり果てたリビングを前に立ち尽くす。
「いやいや、蓉子お姉ちゃんだっておんなじようなものでしょ?」
 なぜか埃と煤にまみれた状態で笙子が蓉子に突っ込むが、おそらく笙子の言い分は正しいのだろう。
 昔から令に任せっきりで、今となっては一家のお母さん的存在の令。お手伝いくらいなら皆もしているが、それはそれで逆に邪魔になってしまうほど令の手際は良いというか、慣れてしまっている。そうなると余計に令に甘えてしまい、自分自身ではやらなくなるという流れ。
「ねぇ、おにぃ、お姉ちゃんたちって女子力低かったんだねー?」
「ああ、そうみたいだね」
 菜々の無邪気な発言に苦笑しながら頷くと、蓉子や笙子といった姉妹たちがその場で胸を押さえて膝をつく。痛いところを祐麒の前で突かれたものだから、ダメージを負ってしまったのだ。
「……とりあえず、皆で片付けしておいて。夜ご飯は仕方ないから出前にしよう。俺、令ちゃんの様子を見てくるから」
 蓉子たちに後片付けを指示しておいて、祐麒自身は令の部屋へと向かう。
 崩壊したリビングに炎上したキッチン、泡まみれの洗面所と、まだ一日も経っていないのにこの有様では、令が何日間も寝込んだらどうなるのか、想像するだけで恐ろしくなってくる。
「――令ちゃん、入ってもいい?」
 扉をノックして訊ねるも、返事はない。高熱で寝ているのだから仕方ない。祐麒はそっとドアを開けて室内に入る。
 薄暗い部屋の中、聞こえてくるのは令の苦しそうな寝息だけ。ベッドの傍に歩み寄ると、頬を紅潮させ、汗で髪の毛を額に張り付かせた令の寝姿が目に入る。
「令ちゃん……」
 額に手を乗せると、高熱が手のひらを通して伝わってくる。これでは、まだ当分の間は安静にしていなければならないだろう。
「……ん…………祐麒、くん……」
「あ、ごめん、起こしちゃった?」
 見れば、令がうっすらと目を開け、ぼんやりとした表情で祐麒の顔を見つめてきていた。額に触れたことで目覚めさせてしまったらしい。
「うん……ごめんね、こんな、風邪引いちゃって…………みんなの、ごはん……」
「大丈夫だって、それくらい。あれだけ女手があるんだから、なんとでもなるって」
「でも…………みんな……」
「いいから、ね」
 令の言いたいことも分かるが、だからといってこの状態で令に甘えることはありえないし、令のありがたみを身に沁みて分からせる良い機会かもしれない。
「大体さ、令ちゃんは頑張り過ぎだって。体調が悪い時もそれを隠して、皆のために家事をやってくれているけどさ、具合の悪い時くらいは皆を頼ってもいいんじゃないかな?」
 福沢家の家事を一身に背負っている令は責任感も強く、少しくらい熱が出たり、体調が悪かったりしたくらいでは休んだりしない。昔から剣道をやっていて体が強く体力もあり、だからこそ多少の無理もきくのだが、そんな令を見るたびにいつも祐麒は悩ましく思っていたものだ。もっと姉妹に甘えても良いのにと。
「え……ゆ、祐麒くん、気が付いて…………」
「そりゃそうだよ、令ちゃんは具合が悪いこと気付かれないように隠していたんだろうけど、俺が令ちゃんの異変に気が付かないわけないじゃん」
「そ、そうなんだ…………な、なんで……?」
「なんでって……そりゃ、えーと、俺の令ちゃんのことだし」
 問われて、思わずそんなことを口走ってしまうと。
「えっ…………!?」
 熱で赤い顔をさらに赤くさせる令。
「そ、そっか、私、祐麒くんのモノなんだ……」
「いや、ごめん、そ、そういう意味じゃなくてなんだ、ほら、小さいころから令ちゃんはいつも俺の面倒見てくれて、俺の我が儘をいつもきいてくれてたから、つい……ごめん」
 それは本当のこと。
 もちろん、他の姉妹もよく祐麒のことを構ってくれたが、外で遊んで泥だらけになって帰ってきた祐麒の服や体を洗ってくれたり、怪我した傷を手当てしてくれたり、お腹を空かせているとお菓子を作ってくれたり、無茶を言う祐麒をなだめたり、姉妹との喧嘩を仲裁したり、そういったことは大抵、令がやってくれた。誰よりも家庭的で優しい令は、面倒なことも厭わずになんでもしてくれた。
 そんな令に、祐麒はいつだって甘えてしまっていた。申し訳ないと思いつつ、体調が悪い時だって結局は令に家事を任せていたのは祐麒であり、そういった意味では気づいていた分他の姉妹より罪が深い。
「いいよ…………私、祐麒くんなら……」
「えっ、ちょ、令ちゃん熱がやっぱり高いから、ほら。えーと、何か欲しいものとかない? アイスとか果物とか、持ってこようか?」
 高熱のせいかとろんとした瞳、少し開いた口、額に浮かぶ汗、熱い呼吸、それら全てがやけに色っぽく感じてしまう。普段の令からは、色気というよりはさっぱりとした清潔さを強く感じるというのに。
「うん…………ぇと……」
「なんでもいいよ、令ちゃんはいつも皆の言うことを聞いてあげてばかりだから、こういうときくらいは我が儘言っていいんだから」
 声を出すのも辛そうな令のため、口元に耳を寄せる。
「あの……」
「うん?」
「…………ちゅーしてほしい……」
「…………え?」
「…………っ、あ、ち、ちがっ! 今の、ちが……」
 自分が口にした言葉の内容に気が付いたのか、令は布団を引っ張り上げて顔を隠してしまった。
 驚いた祐麒だったが、令の方が慌てふためいているので逆に落ち着きを取り戻す。先ほどから大胆な発言を繰り返す令だが、それも熱のせいだろう。普段の令なら、口にしないようなことばかりだ。
「ごごごごめんね、忘れて今の、なんか変だよねわたし、ね、熱のせいかな、かなっ」
 頭のてっぺんだけ毛布から出した状態で、布団の中からくぐもった声で釈明する令。きっと、その通りなのだろうけれど。
「――大丈夫だから令ちゃん、ほら顔出して、息苦しいでしょ」
 毛布を握った手に触れると、ぴくんと震えて反応する令。
 やがて、おそるおそるといった感じで顔を出してくる。その困ったような、照れたような表情が可愛らしい。
「それじゃあこれ、冷たい桃のゼリーを食べさせてあげるよ」
「そそそそんな、自分で食べられるよ」
「いいから、病人は言うことを聞きなさい」
「……は、はい」
 素直に頷く令に微笑むと、祐麒は持ってきていた桃のゼリーの蓋をあけ、スプーンで掬って令に食べさせてあげる。少しばかり恥ずかしいが、他に見ている人もいないしこれくらいは良いだろう。
「美味しい……」
 令も、最初こそ恥ずかしそうにしていたが、食べ始めるとあまり気にならなくなったようで、ゆっくりとだが美味しそうにゼリーを食べてくれた。
 食べ終えてしばらくすると、寝息をたてはじめた。相変わらず汗をかいていて苦しそうではあるが、さすがに祐麒が着替えさせてあげる、というわけにもいかない。そこは他の姉妹にお願いしようと、部屋を出ようかと立ち上がりかけたところで。
 寝ている令の唇が、先ほど食べた桃のゼリーのせいかつやつやと光っているのがふと目に入った。
 それは、本当に無意識の動きだった。
 気が付くと身を屈め、令の顔に覆いかぶさるようにしていた。
 熱い吐息、紅潮した頬、汗に濡れた額。
 指で軽く額の汗を拭い、張り付いた髪の毛を撫でると。
「令ちゃん…………」
 薄暗い部屋の中、二つの影が重なった。

 

「――ああもうっ、なんでまともな料理できないのよ!?」
「江利子姉さんがそんな偉そうなこと言う?」
「ねえ、あたしのパンツどこにあるか知らない?」
「菜々が転んで擦りむいたんだけど、絆創膏ってここに無かったっけ?」
 その後も、令のいない福沢家はてんてこまいの様相を見せ、姉妹みんなで大騒ぎであった。普段なら祐麒のことをからかってくる姉妹達も、さすがに今日は余裕がなかったのか、夜になると疲れた顔をして部屋に戻って寝てしまった。
「うぅん、おにぃ…………むにゃむにゃ……」
 相変わらず祐麒のベッドに入り込み抱き着いて寝てくる菜々だったが、この夜はそれを妨げようという蓉子や乃梨子が乱入してくることもなく、菜々と互いを抱き枕にゆっくりと眠ることが出来た。菜々の体は小さいが、ここのところ柔らかさが増してきて、温かくて、心地よいのだ。

 朝、目を覚ますと、しがみついている菜々を引きはがして立ち上がる。菜々を起こさないよう、カーテンは閉めたままで部屋をそっと出る。今日は土曜日、休日ではあるけれどゆっくりはしていられない。何せ令があの状態だから、また姉妹みんなで掃除、洗濯、炊事をどうにかしないといけないわけで。
 そんなことを考えながら階段を下りて一階に行く。土曜の朝早い時間であり、昨日のドタバタ騒ぎもあったせいか、まだ誰も起きてきている気配はない。今のうちに、朝食の準備か、昨日散らかしたままのリビングを片付けようかと思ってリビングのドアを開けると、室内が綺麗になっていることに目を見張る。
「え…………あれ、あ、まさか」
 さらに良い匂いの漂ってくるキッチン、慌てて駆け込んでみると。
「――令ちゃんっ!? ちょ、起きて大丈夫なの??」
「あ、祐麒くん、おはよう。心配かけてごめんね、もう、大丈夫だから」
 令が朝食の準備をしていた。美味しそうなお味噌汁に煮物の匂い。たった一日、離れていただけだというのに、匂いを嗅いだだけで一気に懐かしさを覚え、同時に腹の虫が鳴り始める。
 見れば、令はまだ少し顔が赤いし、やつれているようにも感じるが、体調自体は随分と良くなっているようには思える。だが、治りかけのところで無理してはいけないし、甘えてもいけない。
「――もう、昨日まで高熱で寝ていたんだから、後は俺がやるから令ちゃんは休んでいて。リビングの片付けまでやって、働き過ぎだって」
 令の手から菜箸を取る。料理も既にほとんどできているので、あとは火の加減を見ればよいくらいだ。
「私なら大丈夫だって。それより、祐麒クンの方こそ大丈夫? 私の風邪うつってない?」
「え、俺? 大丈夫だって、そんな心配しなくても」
「本当? 私の口からうったりしていない?」
「大丈夫だよ、心配性だなぁ令ちゃんは…………ん? て、え、き、気付いてたの!?」
「あ…………っ!?」
 慌てて、真っ赤になって口を手で抑える令だが遅い。祐麒もまた、昨日のことを思いだして顔が熱くなる。
「ごごごごめん令ちゃんっ! あの、寝ているところになんてずるかったけど、その、つい、なんというか」
 意識がないと思っていた令に対してしてしまったことが後ろめたく、情けなくも言い訳を口にする祐麒だったが。
「あ、いいの、してほしいってお願いしたのは私だったし……その、ほら、私は祐麒くんのモノだからね、もっと、なんでも好きなことしていいんだよ……?」
 と、逆に真っ赤になっている令にそんなことを言われてしまった。
「ううん、むしろ、本当に祐麒くんのものにしてほしい……私のこと……」
「え、そ、それって、どういう意味……」
 心臓の動きが早くなる。
 やはりまだ熱があるのか、いつもの令と違って見える。
 令が僅かに身を寄せてくる。
 そして――
「わーっ、いい匂いがすると思ったら、やっぱり令ちゃんの筑前煮だっ!!」
「うわぁっ!? な、菜々っ!?」
 にぎやかな声は、末っ子のものだった。いつの間に起き出したのか、パジャマ姿の菜々がキッチンに顔を覗かせていた。
「令ちゃん、体はもう大丈夫なの?」
「うん、心配かけてごめんね、菜々ちゃん。もう大丈夫だから」
「本当、良かった! だって、お姉たちの作るごはん、美味しくないんだもん。ね、ちょっとつまんでいい?」
「駄目駄目、ほらその前に顔洗ってきて」
「えー、いいじゃん、お腹空いたー」
「ほらほら、私も一緒に行ってあげるから、ね」
 菜々をなだめる令だったが、洗面所に行く前に火を止めようとガスコンロの前に舞い戻る。
「あ、俺が見ておくけれど」
「いいから、祐麒クンは休んでいて……あ」
 伸ばした手のタイミングがあい、二人の手が触れ合う。同時に、顔が間近に迫っていることに気が付く。
「え、えと……」
 令の、細いけれど剣道で鍛えられた指をキュッと握ると、令が目を閉じた。自然と顔を近づけ、唇に触れ――
「――――れぇちゃん、まだーっ??」
「っ、ご、ごめんね菜々ちゃん、今行くからっ」
 踵を返す令。
 その後ろ姿を見送りながら、祐麒は。
 コンロの火は消えたけれど、自分の体は逆に燃えているように熱く感じていた。

 

 そして。

「――あらあら、祐麒さんと令ったら、いつの間に」
 菜々と一緒に洗面所に行く令、キッチンで顔を赤くしている祐麒を見て、そんな風に呟く人影があるのであった。

 

 

つづく?

 

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