【作品情報】
作品名:罪びとの手
著者:天祢 涼
ページ数:272ページ
ジャンル:ミステリー
出版社:KADOKAWA
おススメ度 : ★★★★★★☆☆☆☆
伏線収束度 : ★★★★★★★☆☆☆
こういう人におススメ! : 人の思いの交錯するミステリーが好き
とある廃ビルで見つかった死体。
その遺体を引き取りに来た葬儀屋が言うには「これは自分の父親だ」とのこと。
そのような偶然があるのか。
本当にその死体は葬儀屋の父親なのか。なぜ、死んでいたのか。誰が殺したのか。
警察と葬儀屋の思いが交錯するミステリー。
葬儀屋として何を重要だと考えるのか。
刑事として何を最重視するのか。
葬儀屋の御木本悠司は引き取りにいった遺体は父親だという。
しかし、実の兄である昇一はその遺体に違和感を抱く。
確かに見る限りは父親なのだが、どうしても父親だと思えない。
事故死だと処理されたその死体に納得が出来ず、一人殺人事件だと考えて捜査をする滝沢は、その昇一の証言に飛びつき、さらに捜査を進めていく。
捜査をするほどに違和感が積もっていくが、なぜ、そのような状況となったのかが説明つかない。
全ては悠司が握っているように思えるが、悠司が何を考えているのかが全く分からない。
読み手としても、どういうことなのだろうかと、滝沢と同じような思いを抱くことだろう。
複数の謎が提示され、捜査を続けていくことで新たな事実が明らかになり、謎が一つずつとけていく過程はまずまず。
だがそれ以上に、悠司が何を考えて様々な言動をしていたのか。
そこには、父親への思いとそれ以上に葬儀屋としての思いが詰まっていた。
それが明らかになるラストでは、滝沢の刑事としての思いも交錯していく。
二つの異なる立場からの思いが重なってのラストは、だからこそ心地よい終わり方になったのだろう。
それぞれが、それぞれで出来ることをやったから。
トリック云々というよりも、そういった人の心を解き明かすミステリーだった。
ミステリーのトリックとして、それを使っちゃダメだろう! というネタになってしまっている。
それまでそういった伏線とかもなかったし。
まあ、ミステリーは重要視していなかった作品だと思うけれど。
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価格:1,728円 |