【作品情報】
作品名:イリヤの空、UFOの夏 その4
著者:秋山 瑞人
ページ数:344
ジャンル:SF、エンタメ
出版社:アスキー・メディアワークス
おススメ度 : ★★★★★★★★★☆
切ない夏の終わり度 : ★★★★★★★★★☆
こういう人におススメ! : 夏を終わらせたい人
伊里野を連れ出して逃げ出した浅羽。
世間知らずの二人の中学生。
待っているのは、少しの自由と少しの幸せ、そして幾多の困難、苦悩、挫折。
逃げる二人を追いかける影。
榎本によって告げられる真実。
浅羽が選ぶ道。
ひと夏のボーイ・ミーツ・ガールストーリーの終わり。
3巻で急転直下。
まさに起承転結の「転」で話が一気に変わった。
伊里野の手を引いて逃げ出した浅羽。
とはいっても何かあてがあるわけではない、ただそこから逃げ出したい、伊里野をそこに置いておけない。
衝動的な気持ちに突き動かされての行動であり、それはまさに逃避行。
しかも伊里野は世間知らずときている。
先が明るいものだとは思えるわけもない。
それでも、組織から解放されて伊里野と二人で過ごす人時には幸福感もある。
忍び込んだ、休校となっている学校での生活。
野良猫を飼って、廊下でボウリング遊びをして、無邪気に遊び楽しむ伊里野と浅羽。
ひと時のモラトリウムだとしても、そこには確かに幸福があったのかもしれない。
いつまでもそんな生活が続けられるわけもないことは頭の中で理解している。
でも、もしかしたら。
ひょっとしたらこのまま何もなく、いつまでも二人で楽しく過ごせるのではないか。
その考え自体も現実逃避であるけれど、そう考えてしまうのも分からなくない。
浅羽に限らず、今を生きる我々だって、何か厳しい現実に直面した時、困難と正面から向かい合うのではなく逃げてしまうのはよくあること。
何もしなくても、誰かが何かうまいことしてくれるかもしれない。
もしかしたら自分の思うような方向に進んでいくのではないか。
そうやって思考停止して何かに逃げる。
それはゲームであったり、アニメであったり、そういう自分の趣味や何かに逃げる。
事態は何一つ好転していないのに、平穏な日々が続くと全て解決したのではないか?
そう勘違いするのだ。
そして、変化は突然やってくる。
浅羽もただの中学生、精神的にも追い詰められていくし、限界だってやってくる。
そんな状況で榎本から告げられる真実。
大人の勝手な都合に振り回される子供。
スーパーマンなんてこの世にいないことを思い知らされるし、自分は凡人なのだと打ちのめされる。
そして、伊里野にかけられた呪い。
呪いは確実にあったし、浅羽もまた我知らずのうちに伊里野に呪いをかけていた。
そのことを浅羽は生涯忘れないだろう。
長かった少年の夏が終わり、日常が戻ってくる。
でも、戻って来ないものもある。
ひと夏のボーイミーツガールは切なさを残して去っていった。
夏の終わりに、読もう。
あぁ、マジかー。
切ないなー。
でも、こういう結末になるしかなかったんだろうなぁ。。。