「ちょっとお母さん、変な冗談はやめてよ」
可南子が目を吊り上げて言う。
「冗談じゃなくて本気なら良いのかしら?」
美月は余裕の笑みを見せている。
お祭りが終わった後の細川家で、母娘が言い争っている間に挟まれている祐麒。
「可南子、あんまり暴れると危ないわよ」
「別に暴れてなんか……きゃっ!?」
可南子が床に落ちていたタオルを踏んで足を滑らせ、そのまま倒れ込む。
運悪くその先にはテーブルがあり、手をついて踏ん張った可南子だったが、完全には踏ん張り切れず転がってしまった。しかも、テーブルの上に置いてあったジュースの入ったコップをひっくり返して。
「ほら、言わんこっちゃない」
「うぅ、最悪」
「シャー浴びてきなさい、汗もかいているんでしょう」
「……そうする」
ジュースでべとべとになった体を腕で抱え込むようにして、可南子は浴室の方へと消えていった。
「しっかりしているようでもおっちょこちょいよね」
「あ、手伝いましょうか」
「いいから、ユウキくんはお客様だから座っていて」
汚れてしまった床やテーブルを片付けようとする美月を手伝おうと申し出た祐麒だったが、押しとどめられて浮かせた腰を再びソファにおろす。
「ごめんなさいね、みっともないとこ見せて」
「いえ、そんなこと…………」
と、床に膝を付けて布巾でジュースを拭きとる美月に目を向ける。
前屈みになった美月の浴衣の胸元が緩んでいて、浴衣の下が見える。
目に入って来たのは白の和装ブラ。
バストを形よく見せるためではなく、浴衣のため凹凸を見せないようにする下着ではあるが、だからといって色気が無いわけではない。
「…………」
「っ」
祐麒の視線を感じたのか、軽く美月が顔をあげてきたので、あわてて顔を背ける。
見てはいけない、そう思いつつも男としての哀しい性、どうしても見たくなってしまい、そろりと再び視線を向けると。
先ほどと同じ姿勢の美月であったが、浴衣の下の和装ブラのフロントファスナーが下まで下ろされて胸の谷間、膨らみがくっきりと目に入ってきた。
「ぶっ!?」
「……ユウキくんの、えっち」
「いやいや、な、なんで」
「え、だって見ていたでしょう? 家の中なら他に誰もいないし、今日、お祭りデートに誘ってくれたお礼」
「そ、そんなお礼、しなくていいですから」
「そお?」
妖艶な笑みを浮かべて美月は立ち上がると、祐麒に迫ってくる。
「ちょ、み、美月さん……」
「なぁに?」
重力によって更に威力をましたボリュームのバストが徐々に近づいてくる。
「悪ふざけは、それくらいに。可南子ちゃんだって」
「ここで可南子の他の女の名前を出すなんて、いけずねぇ……って、あらっ」
さすが母娘というべきか、美月もまた足元がおろそかになっていて足元に置いた布巾を踏んづけて足を滑らせ、そのまま祐麒の方に倒れてきた。
慌てて支えようと手を出した祐麒だが。
むにゅん
「あん」
「わ、わ、すす、すみませっ」
美月の胸を掴んでしまっていた。しかも、ファスナーのおろされて大きく開いた和装ブラの中に手が入り込んでいた。
「待ってユウキくん、今、手を離されたら見えちゃう……」
「そ、そうですヨネ。え、えと、じゃあ」
「少し待って、ん……」
「って、な、なんで、ブラ外そうとしているんですかっ?」
「だって……邪魔、でしょう? ここまでしておいて、おあずけとか、ないわよね?」
美月の瞳が妖しくきらめく。
唇を舐める舌が光る。
「って、ななな何してんのよお母さんっ!?」
洗面所の扉を勢いよく開けて可南子が顔を見せた。
そのまま出てくる可南子だったが、急いで出てきたのかショートパンツは穿きかけでショーツが見え、Tシャツも首を通しただけでブラジャーが丸見えであった。
そのまま駆け寄って来ようとするが、穿きかけのショートパンツではまともに足を動かせるはずもなく。
「ちょっ、可南子ちゃんっ!?」
「や、やだユウキ、どこ触っているのよ!?」
「いや、可南子ちゃんが突撃して来たんじゃんっ」
「可南子、もしかして、この前言っていた、一緒にってやつ? 実の娘と3ぴ……」
「とにかく二人とも、服を着てくださいって!」
騒乱の夜はなかなか終わらなかった。