【作品情報】
作品名:最後の証人
著者:柚月裕子
ページ数:301
ジャンル:ミステリー
出版社:宝島社
おススメ度 : ★★★★★★★☆☆☆
物語展開に驚かされる度 : ★★★★★★☆☆☆☆
こういう人におススメ! : 2時間サスペンスドラマ好き
元検察官の佐方貞人は、刑事事件を専門に扱うやり手弁護士。
ただし、依頼を受けるかどうかは報酬額ではない。
その事件の裏に何かありそうな、そういった一筋縄ではいかないような、佐方の琴線に響くような事件だけ。
そんな佐方の許に、かつて在籍した地検の所在地で起きた殺人事件の弁護依頼が舞い込む。
高層ホテルの一室で起きた刺殺事件で、物的証拠、状況証拠ともに、依頼人が犯人であることを示していたが、佐方はそれだけではないと事件を追いかける。
法廷で暴かれる事件の真相とは。
佐方貞人シリーズの第一弾ということらしいですね。
事件についてはあらすじに記載の通り。
誰がどう見ても犯人は明らかではないか? そう思われる被告人の弁護を受け入れた佐方。
事件については、ミステリーをある程度読んでいる人であれば序盤のうちに、
きっとこういう事件で真相はこういうことなんじゃないのかな?
と、想像が出来てしまうと思う。
実際に読み進めていくとその通りに展開して終わったので、そういう意味で個人的な驚きはさほどなかった。
ただ、ラストに至るまで読み進めさせるだけのものがある。
本当に想像している通りなのだろうか。
実際のところの真実は何か。
事件の真相が想像通りだとして、更なる裏や、事件に至る心理などはどうか。
そういうことを考えさせ、先を読みたいと思わせる力が文章にある。
主人公である佐方は終盤までとにかく目立たない。
序盤からずっと検事のターンが続き、その幕間に事件の登場人物達が事件に至るまでの背景が描かれる。
検事の論理の前に追い詰められたと思われる佐方が、最後に鮮やかにひっくり返す。
分かっていても読ませられるし、予想が外れていれば当然ながら驚かされる真実。
悲しく痛ましい事件。
もしかしたら現実にもあるかもしれない。
被害者の、被害者の家族につけられた、永遠に消えない傷。
そういったものを感じさせられる。
ラスト、高瀬(夫)の
「まったく身に覚えがありません」
彼がどんな思いで口にしたのか。
切なくなるも、そうであってほしかったとも思える。
読みやすいので一気に読み切れる。
さて、シリーズということで次にいってみるか。
全体を通して上手く読ませてくれるけれど、上述したように、分かる人は多分序盤で想像がつきます。
ミステリーとしては珍しい手口ではないものと思われる。
というか、書き方からして、読者をこういう方向にリードしておいて、実は・・・とさせたいんだろうな、というのが明々白々に分かっちゃいます。
ミステリーとして楽しむというより、サスペンス、人の想いや家族の想いといったところを楽しむ作品だと思います。