書評と主にマリア様がみてるの二次創作(旧:よしのXブレード)

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【マリみてSS(色々・ネタ)】小ネタ集10 ノーマルCPショート1

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【1】

「福沢君、ちょっと」上司に呼ばれ席を立ち、少し速めの歩調で席の方に向かっていくと。
「この報告書、頭から書きなおして頂戴」
「え、ええっ! い、今からですかっ!?」
「いい、修正のポイントを今から説明するからよく聞くように」
 こちらの抗議の悲鳴など聞こえないかのように、淡々と説明を続けてゆく。ありがたく拝聴して席についてため息をつく。
「大丈夫か、福沢……あちゃー、こりゃ真っ赤っかだな。あいかわらず『氷の女王』は容赦ないなー」
 先輩が同情するかのように言ってくれたが、慰めにもならない。人に手伝ってもらえるようなものではないからだ。

 人のいなくなったオフィスで一人、黙々と端末に向かい書類を修正。定時退社日だから誰も残ってなどいない。
 と、不意に扉が開く気配。入ってきた人は、冷静な、それでいて少し温かみのある声で「どう、調子は?」と聞いてくる。
「……これ、絶対に今日中に終わらないですよ。なんでもう、定時間近に言いますかねー」と、少し文句を言うと。
「……おかげで、合コンに参加できなくなった、って?」冷たい口調に、背筋がゾクリとする。
「なな、なんでその情報を」驚くと、
「休憩のとき、平山さんから聞いたのよ。相手は、K社のOLですって?」
「し、仕方ないじゃないですか! 俺と主査が付き合っているなんて、秘密なんですから! 一人身で参加しないのは不自然だから」
「そうね、たまには仕方ないかも。でも、先週も、先々週も行っていたわよねー」眼鏡の奥の瞳が光り、恐怖に身がすくむ。
「よ、よくご存じで」端末を打つ。
「そりゃ、同じ社内ですもの。そういう話は必ず耳に入るわよ、『氷の女王』にだって」
 そう言って、上司であり恋人でもある内藤克美主査は、意味ありげに微笑する。
 しかし、祐麒が一年浪人して、大学で一年留学したにしても、克美の出世は早い。堅物と言われている上司との秘かな付き合い。
 社内恋愛がいけないわけではないが、やはり同じ職場では言いづらいし、言いたくもないのはわかる。
「あー、相変わらず仕事には容赦ないですよね克美さん。昨夜はウサギさんの耳としっぽつけてあんな可愛かったのに……」
 口にした途端、克美の頬が朱に染まる。「まあ、胸もかわいらしいからサイズがあわなくてブカブカだったのは……痛っ!」
「貴方がどうしても、って用意した衣装でしょう! 恥ずかしくて嫌だったけど、どうしてもって言うから……」
「その割には、俺の上でノリノリだったような……イタタ、ごめんなさい、やめてっ!」
 顔を赤くしながらぺちぺち叩いてくる。仕事でも私生活でも、年上ということを意識して必ず主導権を握りたがるのだ、克美は。
 それがまた可愛らしいのだが、職場では隙のない人と思われている克美のそんな一面を知ってるのは自分だけ。
 会社と、会社外でのギャップもまた堪らないということに、克美自身は気が付いていない。
「あー、殴られたからやる気が出ないかも。誰か元気づけてくれないかなぁ」わざとらしく言うと、克美は軽く咳ばらいをして見てくる。
「もう……本当に仕方のない子ね」鋭い目つきで頬を赤らめながらも、「まあ、どうしてもっていうなら少しくらい……」と言う克美。
「克美さんに元気づけてもらいたいです!」ここぞとばかりに言う。克美には正直に真正面から言うに限ると分かっている。
「わ、分かったわよ。でも、さすがにここじゃあ。資材室の方に行きましょう……ええと、手でいい?」
「えーと、出来ればその眼鏡とスーツ姿のまま、あ、でもブラウスの胸元はちょっとはだけて。あと、手だけじゃなくて……」
「……祐麒、私に隠れてエッチなビデオ見ている? 何よそのシチュエーション、馬鹿じゃない? それじゃ全部飲まないと汚れちゃ……」
文句を言いながらも、大体はリクエストに応えてくれる克美。小さな手にひかれながら、口元が緩みそうになるのを必死に抑えるのであった。

 

【2】

 来るんじゃなかった、と笙子は思った。
 ちょーっと背伸びして、派手な街にやってきた。憧れとか、楽しみとか、色々な物を持っていたけれど。
 どうにも、今の自分には馴染まないようだった。派手な女の人、軽そうな男の人、手当たり次第に女の人に声をかけてる人。
 もちろん、知ってはいたけれど、実際に自分の目で見るとやっぱり違うもので。これは無理だと思った。
 だけど、はぐれてしまった友達を置いて先に帰るわけにもいかず、こうしてとりあえず立ち尽くして待っているわけだけれど。
 その間、いったい何人の男の人から声をかけられただろうか。ナンパなのか、はたまた怪しい勧誘なのかわからないけど。
 怖いからとにかくすべて断ってきたけれど、今また、しつこい男の人が目の前に立っている。
「君、凄い可愛いね。さっきからずっとここに立っているけれど、どうしたの? 暇なら俺と遊ばない?」
「ごめんなさい、友達を待っているんで」
 何度も何度も言っているのに、諦めてくれない。大学生か社会人かわからないけれど、髭を生やして、ちょっとごつくて、恐い。
 目をあわせないようにして頭を下げ、断わるけれどやっぱり食い下がってくる。どうしようか本当に困る。
「とりあえずさ、ここじゃなんだし、場所変えようか」
 なぜ、いきなりそうなるのか全く理解できないけれど、とにかく分かったのは身に降りかかる危険。
 咄嗟に逃げようとしたけれど、それより先に男の方が笙子の腕を捕まえた。悲鳴をあげようとしたけれど、声も出ない。
 もう駄目だ、と思って目をつむったとき。
「あ、あの」横から、声がかかった。まさか男の連れが来たのかと思ったが、そうでもないようで。
「その子、嫌がっているんじゃないでしょうか」おそるおそる目を開けると、笙子と同じくらいの年の男の子が、目の前の男の腕を掴んでいた。
「あ、なんだお前? この子の知り合いか?」
「違いますけれど……その、無理矢理はよくないと思います、えと」
「別に無理矢理じゃねえよ、なあ?」
 男が、少し脅すように笙子に言ってきた。どうしようか、怖くて、そのまま頷いてしまいそうだった。だけど。
 男の子、その男の人の腕を捕まえていな方ほうの腕がわずかに震えていることに気がついた。見れば、脚も少し震えている。
 この男の子も怖いのだ。だけど、助けに入ってくれた。笙子は、精一杯の勇気を振り絞る。
「……む、無理矢理、連れて行かれそうになっているんですっ。た、助けてくださいっ」

「あ、ありがとうございました」どうにか男の人が去ったところで、笙子は慌ててお礼を言って頭を下げた。
「いや、俺は別に。えっと、君、リリアンの子だよね。こういう場所にその制服だと、結構目立つし、早めに戻った方がいいと思うよ」
 制服を着ているとはいえ、なぜ分かったのかと思ったが、よく見れば男の子の制服は花寺のものだった。
「なんだったら、駅まで送っていこうか? あ、俺、花寺学院の生徒会長。一応、あやしいものじゃないよ」
 照れたような笑みを浮かべながら、信用させるように生徒手帳を差し出してきた。
 これが、始まりだった----

 

【3】

 大学に入学してから早いもので二年がたち、新年度になれば三年生になる。就職活動も本格的に始まる。
 いまだに将来なんて明確に見えてこないのは、遅すぎるのだろうか。広くもない部屋で横になりながら、考える。
 大学に入ってしばらくしてから一人暮らしを始めた1Kの部屋だが、正直、さほど愛着はない。
 家賃の安さにひかれたから入ったが、木造のアパートで築20年は経っているし、壁も天井も汚れている。
 日当たりがよいのくらいが良いところだが、壁が薄くて隣の部屋のテレビの音とかよく聞こえてくるのは辟易もの。
 アパートの住人同士の交流があるのは、古いアパートならではという感じだが、試験時にはそれだって困りもの。
 何せ学生は祐麒一人だけなのだが、学生の試験のことなどお構いなく酒宴に誘ってきたりする。金がないときはありがたいけれど。
 そろそろ入居から二年近くなり、更新の時期に入っているが、就職活動を考えるともう少し環境の良い所に越そうと思っている。
 金は、バイトしたからどうにかなるし、最悪、実家から借金する手もある。とにかく、もう少し静かな場所に行くべきだろう。
 そう考えているうちにも、アパートの前から騒がしい音と声が聞こえてくる。
 何事かと思っていると、やがて階段を上り、廊下を歩く騒がしい足音と声。引っ越しか何かだろうか。
 そういえば、ちょうど、右隣りの部屋は空き部屋になっていたはず。そっちだけは静かだったのに、それもおしまいかとため息が出る。
 どかどかと大きい足音、扉が開けられ、部屋の中からも色々と音が響いてくる。
 落ち着いて部屋にいることができず、不機嫌さ丸出しで部屋の扉を開けて表に出る。
「あのー、もうちょっと静かにやっていただけるとありがたいんですけれど」
「おお、福沢くんか。ちょうどいい、今日から206号室に入る方だよ」
 アパートの管理人のおっさんが、笑っている。その後ろに、黒い長袖のシャツにジーンズの後ろ姿。新しい入居人か。
「あ、どうも……」と、挨拶をしかけて、声を失う。
「あ、初めまして。今日からこちらでお世話になります」ぺこりと、感じの良い笑みとともに頭をさげてきたその人は。
 引っ越し作業のためであろう、漆黒の髪を軽くゴムで束ねている。切れ長の瞳が眼鏡の下で太陽に輝く。形の良い鼻に薄い唇。
 白い頬は、力仕事のためか心なしかピンク色がまじってみえる。スラリとした痩身で、胸は小ぶりだが好みの大きさ。
「あー……でもそうか、福沢君は確かもう今回は更新はしな」
「なっ、何言っているんですか管理人さんっ! 更新しますよ、ええ、この部屋で引き続きお願いします!」
 慌てておっさんの言葉を遮る。祐麒はサンダルをつっかけ、管理人を押しのけるようにして飛び出す。
「ああ、あの、よろしければ手伝いますけれど。力仕事でもなんでも、ええと」
「ありがとうございます。それじゃあお言葉に甘えちゃおうかしら」と、下に駐車してあるトラックの方を見る。
「就職を機に色々片付けたつもりなんですけれど、なんだかんだで結構、荷物が残っちゃっていて」
 どうやら、春から社会人ということで引っ越してきたらしい。こんなアパートになんたる僥倖か。
「あ、もうし遅れました。私、加東です。よろしくお願いします……ええと、福沢さん?」
 春の日差しを浴びた彼女の柔らかな表情から、すべては始まったのであった……

 

【4】

「先輩」
 声が聞こえて顔をあげてみると、そこには菜々ちゃんの姿が。
「……なぜに、先輩?」
「だって、先輩じゃないですか」
「そうだけど、俺と菜々ちゃんじゃ学校違うし」
「それでも、先輩と後輩であることに変わりあるわけじゃありませんし」
 あくまでクールに言う菜々ちゃん。
 ここは街中のファーストフード。まあ、俗に言う寄り道というやつである。本来、リリアンでは寄り道禁止のはずだが。
「それを破るからこそドキドキするんですよ」
 なんて、菜々ちゃんは言うわけだ。小さい体だけど、度胸はでかい。それが菜々ちゃんだ。
「先輩、じゃ不服ですか」
「いや、不服というかね、なんでいきなり先輩なんて呼びだしたのかと」
「……それとも、『お兄ちゃん』とかのほうがいいですか?」
「ぶっ!?」
 急に、幼く甘えたような口調で『お兄ちゃん』なんて菜々ちゃんが言うものだから、思わずむせてしまった。
 口元をぬぐいながらまじまじと菜々ちゃんを見つめる。
「知ってますよ、先輩のやっているあのゲーム、下級生の女の子からそんな風に呼ばれているじゃないですか」
「な、なぜそれを菜々ちゃんが知っている」
「あ、私もクリアしましたから。男性は、女の子からあんな風に言われると嬉しいのかな、と思いまして」
 ひょんなことから菜々ちゃんと知り合って、少し変わった女の子だとは思っているけれど、それでもいつも意表をつかれる。
 菜々ちゃんは足をぷらぷらさせながら、ミルクティーをすすっている。
 俺は、ここはひとつ反撃をするべきだと思い、一考してから口を開く。
「それならむしろ、『ご主人さま』とか」
「分かりました、ご主人さま。それではこれからご主人さまのことをご主人さまとお呼びしますね。それでですねご主人さま……」
「ごめんなさい、俺が悪かったです」菜々ちゃんに『ご主人さま』と連呼され、周囲の人たちが何事かと目を向けてくる。
 共通しているのは、誰もが祐麒を変な目つきでみてくるということ。完全に、勘違いされている。
 降参して、頭を下げる。そんな俺を見て、菜々ちゃんは満足そうに笑う。
 いつもはクールな感じだけど、時折見せるそんな年相応の笑い顔に、俺はいつもドキッとさせられるのであった。

 

 

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