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ギャグ・その他

【マリみてSS(由乃、祐麒他)】ぱられる! 4

更新日:

 「ぱられる4  煌めく時に捕われた?」 

 GWも終わり、一年で最初の中間テストの背中が見え始めた頃。だが生徒達は、先のテストのことよりも、目の前の小さな幸せを手に入れることを優先してしまいがちだ。
 祐麒ももちろん、自室のベッドの上で小さな幸せを満喫していた。即ち、朝寝坊である。まさに至福のときであり、何物にも変えることの出来ない心地よさが体を覆いつくしている。叶うことならば、このままずっと眠っていたいと思ってしまうのも、大げさなことではないだろう。
「……ねえ、起きて。起きてってば」
 由乃か。
 起こしにきてくれるのはよいのだが、それでも眠いものは眠いのだ。何よりも、こうして一度目が覚めた後にする二度寝のなんと心地よいことよ。
 祐麒はシーツにくるまるようにして丸くなる。
「もうっ……」
 呆れた声が聞こえてくる。
 しかし、諦めればよいものを、しつこく体を揺すって起こそうとしてくる。このまま起きないでいると、膝蹴りかエルボーが落ちてくるのだが、それすらどうでもいいくらいに眠い。
「祐麒くん、朝ごはんできているよ。もう……起きてよ」
「何やっているのよ、令ちゃん。そんな生易しい起こし方じゃダメよ」
 と、もう一人の声が聞こえてきた。どうやら先ほどまでのは令で、なかなかやってこなくて焦れた由乃が続いて入ってきたらしい。
「どいてて令ちゃん。祐麒にはね、ガツンといかないとダメだから」
「ちょ、ちょっと由乃、何するつもり? そんな前傾姿勢で……由乃っ?」
「ジャンピングニーよっ。ほらどいて、令ちゃんっ」
「だ、駄目だよ、危ないって……!!」
「わ、わ、どいてってば令ちゃんっ!」
「うわあああぁっ?!」
 うるさいなぁ、と思った次の瞬間。
「がふっ?!」
 突然の衝撃、のしかかってくる重さ、そして痛み。
「な、な、なんだ……ぐふぅっ」
「やだ、ゆ、祐麒くん、変なところ触らないで」
「そ、そんなこと言われても」
「きゃあっ?! 馬鹿、祐麒の変態っ、お尻触るなっ」
「ってゆうか、上からどけよっ」
「そんなこと言われても、令ちゃん、ちょっと先に離れて」
「で、でも足がからまって……」
 どういう体勢となっているのか細かい描写はしないが、朝っぱらから美少女二人とベッドの上で絡まりあっていて、他人から見たら羨ましい限りの状況も。
「ぐ、し、しぬ……」
 由乃の脛と令の腕に挟まれて首を絞められ、落ちかけている祐麒には関係のないことで。

 こんな感じで、いつもと変わらぬ日常は始まってゆく。

 昼休みとなると、購買部は戦場となる。
 元・お嬢様学校であったリリアンでも、それは同じことである。相手が女子であれば男の方が強いであろう、というのは当てはまらず、むしろ女子比率の方が多いリリアン。女子の群れに突っ込んでいくのは非常に困難である。特に昨今、セクハラ問題なども大きく取り上げられており、触るなというのが無理な状況の中でも、非常に気を遣わざるを得ないのである。
 かといって、手をこまねいていれば何も手に入れられなくなる。かくして祐麒は、覚悟を決めて戦場の中に足を踏み入れた。

 元はといえば、いつもなら必ずお弁当を作ってくる令が、家に適当なお弁当の材料が無かったのと、珍しく朝起きるのが遅れたことが重なって弁当無しということになり、こうして購買に足を運ぶこととなったのである。
 リリアンに入ってから、昼食の混雑時に購買部に来るのは数えるほどしかなかったが、やはり凄い熱気である。だがここで怯んでいては、みじめな昼休みと、ひもじい午後の授業という未来が待っているだけである。祐麒は、人を押し分け、且つ女子に対しては、なるべく気をつけながら人波を突き進んだ。
 しかし、祐麒が思っていた以上に凄まじい混雑である。どうにかこうにか最前列にたどりついた頃には、かなり疲労困憊であった。そんな状況の中、素早く残っている物品に目を光らせ、目に入ってきたものは。
 あんぱん、しじみパン、唐揚げサンド、かにパン等々。
(―――唐揚げサンド?!)
 中でも燦然と輝いているそれは、まさに最後の一つ。奇跡的に残っていた唐揚げサンドに手を伸ばして掴みとった瞬間。
 わずかに遅れて、祐麒の手をかすめるようにして伸ばされてきた手。
「――あ、ごめん―――」
 思わず、謝りながらその手の持ち主の方に目を向けると。
「……げっ」
 女の子らしくない声と表情をしてこちらを見ているのは、笙子の友人である二条さんだった。
「悪い、これ最後の一個――」
「分かっているわよ、それくらい」
 なんとなく申し訳ないと思ったので言ったのだが、二条さんは噛み付かんばかりの表情で祐麒のことを睨みつけると、鼻息も荒く他のパンを手に取った。
 抹茶パンとししゃもパンだ。両方ともハズレといわれているパンである。
「……何よ、文句あるの?」
「いや、別に。と、そうだ、飲み物も……おばちゃん、カフェオレください」
「あ、あたしもカフェオレっ」
 祐麒に続いて、二条さんも手をあげる。
 しかし。
「あー、ごめんねえ。カフェオレはお兄ちゃんので最後の一個なんだ」
 にこやかにカフェオレを祐麒に渡してくれる購買のおばちゃん。一方の二条さんはといえば、体をぷるぷると震わせて祐麒をガン見している。
「ふ……そう。どこまでもあたしの邪魔をする気ね」
「いや待て、俺のせいじゃないぞっ?!」
「お嬢ちゃん、これなら余っているけど?」
 二人の仲を仲裁しようとしたのかどうかは分からないが、購買のおばちゃんが何か飲み物を差し出してきた。思わず、受け取ってしまう二条さんの手に置かれたものは。
 昆布茶ジュース。
 なぜ、昆布茶にジュースをつけるのか。昆布茶なら昆布茶だけでよいではないか。そして、カフェオレの代わりに渡すものとしては差がありすぎるだろう。
 二条さんは、昆布茶ジュースの缶を握り締めて立ち尽くしている。
「あのさ、確か自販機にカフェオレあったと思うけど」
 なんとなく気の毒になって声をかけたが、どうも逆効果のようで。
 二条さんは祐麒のことを一睨みしてから、パンの代金と昆布茶ジュースを置いて、人の群れに逆らうようにして出て行った。祐麒も、唐揚げサンドとカフェオレ、さらに他のパンも手にしてから料金を払い、群衆から抜け出した。
 少し形が崩れてしまった戦利品のパンを手に歩き出すと、自販機の前に立っている二条さんの姿が目に入った。さりげなく近寄ってみると、二条さんは機械の前で小銭を手にしたまま固まっていた。
 どうしたのかと横から覗いてみると、カフェオレのところには見事に『売り切れ』のランプがついていた。
「ふ、ふ、ふ、そうですか。最初からコレを知っていて、自販機を勧めたと」
「最初から売り切れだって知っていたら、教えてなんかいないっての!」
「どうかしら? 性格の悪そうなあなたのことですから、わざとなんじゃない?」
「お前な、そもそも先輩に向かってその口の聞き方はなんだよ。俺はただ、親切心で教えてやっただけだろ」
「親切心の結果が、この嫌味ったらしいやり方ですか?!」
 握り締めた拳で罪の無い自販機を叩く。
 と、次の瞬間。

 ガコン

 という鈍い音と共に、何かが自販機の取り出し口に落ちてきた。見れば、叩きつけた二条さんの拳が、自販機のボタンを押していた。それはカフェオレの隣にあった飲み物で。
「……缶入り汁粉……」
「ふ、ふ、ふ」
 缶入り汁粉だって、甘いもの好きな人には好評なものだけれど、カフェオレを買おうと思っていた人からしてみれば、たまったものじゃあないだろう。
 二条さんは機械的に腰を曲げて缶入り汁粉を取り出すと、目の前に持ってきて凝視して、不敵に笑った。というかむしろ、その目は祐麒に向けられている。
「お昼に、こんな物を飲ませようってんですか?!」
「明らかに俺のせいじゃないだろうっ?!」
「ふん、覚えていなさいよっ。次はこうはいかないんだからっ」
「だから、俺のせいじゃないだろっ」
 祐麒の抗議など耳に入らない様子で、二条さんはビシッと人差し指で祐麒を指し、缶入り汁粉を手に去っていってしまった。
「なんなんだよ、まったく……っと、そんなことより昼飯だ。時間がなくなっちゃう」
 気分を変えて、戦利品を手にして歩きながら、さてどこで食べようかと考える。このまま教室に戻ってもよいのだが、せっかく久しぶりに購買に来たのだから、そのまま外に出て食べるとか、中庭に向かうとか、いつもと違う場所で昼食をとるのも良いのではないかと思い始める。
 どこか良い場所はないだろうかとふらふら歩いていると、目に入ったのは階段。そういえば、一年以上生活しながら、屋上には行ったことがないことに気がついた。
「行ってみるかな……」
 自然と足が向いて階段を上ってゆく。階段の踊り場を曲がり、更に上に行き扉の取っ手を回してゆっくりと開け放つ。

「おお……」
 思わず、声が漏れ出る。
 元々リリアンの建つ地は昔の面影をいまだ色濃く残しているため、周囲にさほど高い建物は無く、また緑も多い。屋上に出てみれば、遮るものもなく街並みが広がって見え、気分を爽快にさせる。春先の優しく柔らかな風が吹いて頬を撫でると、先ほどまでの嫌な気分もあっさりとどこかに吹き飛んでいくようだった。
 辺りを見回しながら、どこかに腰掛けて食べようかと場所を探していると、ふと気になったのは今まさに出てきたばかりの、屋上と校舎内をつなぐ扉の真上。給水塔になっているようだが、どこからか上ることが出来るのだろうかと思い、壁に沿って歩き角を曲がったところで頭上から人の気配を感じた。
 ごく自然に、顔を上に向けると。
「――――っ?!」
 思わず声をあげそうになるのを、あわててこらえた。
 目に入ってきたのは、すらりとした形の良い脚だった。学校指定のソックスとシューズにその身を包んだ、しなやかな脚。適度に肉のついていそうなふくらはぎ、妙な色気を感じる膝の裏、そして風にはためくスカートの裾。
 だが、肝心なところは見えない。
 スカートが翻り、太腿までは見えるのにそれ以上はなぜか決して見えない。祐麒は、テレビゲームや少年漫画でよくある、『そんな短いスカートでそんな格好をしたら間違いなく見えるはずなのになぜか見えない!』というシーンを思い出していた。
 その女性は、梯子を降りようと右足を外して下に伸ばすが、うまくとらえられなくて宙を蹴る。バレエシューズのような靴も相まって、見ていて非常に危なっかしかった。スカートの中も含めて。
 いつまでもこんな場所に立っていたら変態だと思いつつ、危なっかしくて立ち去りがたい。そんな風に考えていたら、当たり前だがその女生徒は下にいる祐麒のことに気がついてしまった。
「?!」
 驚いた彼女は、梯子を踏み外した。
「うわっ?!」
 慌てて、抱きとめる格好となった祐麒。さほど高い場所でないとはいえ、人一人が落ちてきたのだ。そのままバランスを崩し、尻から倒れこむ。
「痛っ!」
 思い切り尻を打ちつけ、悲鳴を上げる。
 だが幸いなことに、女生徒のほうは祐麒の上に乗っかっているので、どこを傷めた様子もないようだった。
「だ、大丈夫ですか?」
 女生徒は後ろ向きのため、顔は見えない。
 だが、腰まで届く長い髪の毛は漆黒で流れるように美しく、手を回している腰は力を入れれば折れてしまいそうなほどに細い。くすぐるような甘い芳香は、彼女の匂いか。今の状態を冷静に感じて、不意に緊張し、鼓動が速くなる。
「―――?」
 しかしそこで、ようやく祐麒は異変に気がついた。
 祐麒の上に乗っかっている格好の女生徒だが、身を強張らせて全く身じろぎ一つしようとしないのだ。
「あ、あの……どこか打った?」
 おそるおそる、問いかけてみると。
「……お…………」
「お?」
 次の瞬間。
「お、男――――っ!!」
「ぐべらはっ!!」
 突き抜ける衝撃。
 凄まじい力で頬を張り飛ばされたのだが、その勢いで錐もむように吹き飛び、顔面から床に激突。
「ぐ……はっ……」
 倒れ伏し、ぴくぴくと痙攣している祐麒の耳に聞こえてくるのは、駆けてゆく足音と扉の閉まる音。
「な、なぜ……?」
 そんな祐麒の頭に思い浮かんだのは。
 彼女はなぜ、あんなところに上っていたのだろうという疑問であった。

「痛たたた、酷い目にあった」
 しばらくして復活した祐麒は、時間も少なくなってきたこともあり、速攻で昼食を済ませ、屋上を後にした。
 校舎内に入り、頬と尻をさすりながら歩く。先ほどの謎の女生徒に引っ叩かれた頬と、強打したお尻がまだヒリヒリと痛む。
「あら、どうしたの福沢くん?」
 声をかけられて振り向いてみると、何やら教材を抱えた蓉子の姿があった。
 今日は、キャミソールにプルオーバーをあわせ、下はフレアラインのカットソーキュロット。大人らしさと可愛らしさの同居した姿に、昔から憧れていたとはいえ祐麒も思わず見とれてしまう。
「あれ、ほっぺ、どうしたの?」
「えっ? いや、なんでもないですっ」
 手で頬をおさえてはいたが、全てを隠しきれているわけではない。微妙に赤くなっていることを目ざとく見つけ、蓉子が心配そうに見つめてくる。
「なんでもないってことはないでしょう。やだ、真っ赤じゃない。どうしたの、誰かに殴られたの? 苛められたの?」
「や、ち、違うって。そんなんじゃないから」
 祐麒の手を取って頬を見るなり、蓉子は血相を変えて聞いてきた。心配性で世話焼きなのは昔からだが、今回のことはあまり深く突っ込んで聞いて欲しくない。
「本当に、なんでもないから……って、痛たたっ」
 今度は、尻に痺れるような痛みが走り、おもわず声を出してしまった。
 そんな祐麒の様子を見て、蓉子はさらに心配げに眉をひそめる。
「どうしたの、何かあったのなら遠慮なく私に言ってちょうだい。祐麒くんを苛めている子がいるのなら、私が許さないんだからっ」
 完全に昔のお姉ちゃんモードに入りかけている。微妙な危険を感じ、祐麒は言い訳を続ける。
「違う、違う。ちょっと転んでお尻を強打しただけだから。しばらくすれば治まるから」
「そんなの、分からないじゃない。ほら、ちょっと来て」
「えっ、わ、ちょっと引っ張らないで」
 祐麒の腕を掴み、強引に突き進んでいく蓉子。幸いにも特別教室等が並ぶ場所だったので、生徒の姿もなく目撃者がいないことに祐麒は内心、胸を撫で下ろす。何せ、蓉子のファンは多いのだ。
「ほら、こっち」
 そうこうしているうちに、どこかの部屋に押し込まれた。
 独特の空気、匂い。保健室であった。
「あ、そういえば保健の先生、具合が悪くて今日は休むって言ってたわね……」
 ガランとした保健室内で、蓉子は困ったように形の良い顎に指をあてた。
「だから、大丈夫だから」
「仕方ないわね……私が見てあげるから、祐麒くん、見せてちょうだい」
「え、何を、ですか?」
「だから、お尻。打ったんでしょう?」
 ごく真面目な表情をして言ってくる蓉子。生真面目な性格の彼女だから、本当に心配して言ってくれているのだろうが、祐麒としてみたら素直に頷くわけにはいかない。何が悲しくて、自分の尻を見せなければならないのか。
「ほら、早くして。痣にでもなっていたらどうするの」
「いや、どうするって言われても、その、まずいって蓉子さん」
 動転しているのだろう、祐麒も思わず素で蓉子の名前を呼んでしまった。
「まずいって、何が……あ」
 そこでようやく、蓉子も気がついたようだった。
 見る見るうちに、顔が紅潮してゆく。
 しかし。
「あ……わ、私は大丈夫、だから。その……ね?」
 耳まで真っ赤にしながらもじもじと顔をそらし、だけど訴えかけるような瞳で祐麒のことを見つめてくる。
「―――お、俺が大丈夫じゃないからっ!」
「こ、これは治療なんだからっ。恥しいなら、目隠ししてあげるから」
「いや、俺が目隠しするのは変でしょうっ」
「で、でも。ほら、逃げないのっ。ちゃんと診ないとダメよ」
「大丈夫だってのにっ」
 無人の保健室内で、ドタバタと騒ぐ二人だったが、騒ぎに夢中になっていたせいか扉の外に近づいてきた人の気配に気がつかない。
 不意に、開かれる扉。

「――ちわーっす。午後一の授業なくて暇だからちょっと昼寝させて」
 姿を見せたのは、日本人離れした顔を持つ一人の教師。
 そして、目の前には。
「もう時間がないんだから早くしましょう。ほら、脱いでちょうだい」
「ちょ、ちょっと、ダメだって……!」
 ベルトを外し、ズボンがずり落ちかけて微妙にトランクスの柄がちらちら見えている一人の男子学生と、まさに脱がそうとズボンを掴んでいる(ようにしか見えない)一人の女性教諭の姿。
「……わお。大胆だね、蓉子。真昼間から、保健室で」
「え、聖?!」
 床に座り込むようにして、祐麒のズボンに手をかけた格好のままで振り向く蓉子。
「あー、まあ、確かに時間ないから、服もそのままでいいからそっちの方がいいかもしんないけど、そのさ、鍵くらいかけた方がいいよ。誰がくるともわかんないし」
 どこか気まずそうにしながらも、聖はそんなことを口走った。
 聖の言葉にきょとんとしていた蓉子であったが、祐麒の前で跪き、後ろ向きとはいえズボンを脱がそうと手をかけている今の状況で、聖が何を意味して言ってきたのかをなんとなく理解して。
「え――――ちちちちちちちちちちちがっ! せせせせ聖っ、こ、こここ、これは違うのよ、そそそんなんじゃ、ないのっ!!」
 首から胸元まで赤くし、頭から蒸気を立ち昇らせるのではないかと思えるくらい茹だって、蓉子は親友のとんでもない誤解をとこうとする。
「これは、その、祐麒くんが痛いっていうから、保健室にきて、私がどうにかしてあげようと思って、こうしているわけで」
 扉に寄りかかるようにして、聖はにやにやと笑いながら、あたふたとうろたえまくっている蓉子に優しく話しかける。
「うん、だから祐麒が我慢できないから、蓉子が丁度人のいない保健室に連れ込んで、手早く処理してあげようとしたんでしょう?」
「そ、そう、そうなのよっ」
「あ……よ、蓉子さん、今のはちょっと」
 言いかけたところで、聖が口元に人差し指をあて、黙っていろというようなジェスチャーを送ってくる。ついでに反対側の手には、携帯電話が握られている。おそらく、映像を撮っていたに違いない。
 確信犯だ、と思いならも、何をされるか分からず逆らうことの出来ない祐麒は、口をつぐむしかなかった。
「そ・れ・じゃ、お邪魔しちゃ悪いから、あたしはこの辺で。そうそう、昼休みよりも、むしろ午後の授業サボってその間の方が、他に人が来ないからゆっくりとできるんじゃない? あ、鍵はかけて、カーテンも閉じた方がいいね。シーツや服はあまり汚さないように気をつけなよ。じゃあ、頑張ってね、祐麒」
 言いたい放題のことを言い残し、パチン、とウィンクを投げ、片手を挙げて部屋を出てゆく聖。からかわれていると分かっていながらも、聖の言葉についつい顔が熱くなってしまう祐麒。
「……てゆうか、いつの間にか呼び捨てだよ」
「ん、どうしたの?」
「いや、なんでもないです」
「そう……それじゃ、本当に時間もないし、早くすませちゃいましょう」
 蓉子の言葉に、心臓が一際大きく跳ねる。
(お、お、落ち着け俺! 蓉子さんは変な意味で言ったんじゃない、純粋に俺の怪我を心配してくれただけだ。佐藤先生の言葉に惑わされるなっ!)
 心の中で自分を叱咤したところで。
「祐麒くん?」
 声を聞いて目を開ければ。
 しゃがみこんだ格好で、下から頬を朱に染めながら瞳を潤ませ、上目遣いで見つめてくる蓉子の顔が目に入り。
「ぐはぁっ!!」
 そのあまりの威力に、祐麒は奇声をあげ、悶絶しながらベッドに倒れた。
「きゃあっ?! ちょ、ちょっと祐麒くん、どうしたのっ、大丈夫っ?!」
 慌てる蓉子の声を耳にしながら。
 祐麒の意識は遠のいてゆくのであった。

 ちなみにその後、蓉子が祐麒の尻の状態を診たかどうかは謎であるが、これより以後しばらく、蓉子は祐麒の姿を見かけるたびに、なぜか微妙に頬を紅潮させるようになったとかならないとか。

 

<発生イベント>
  由乃&令 『ツープラトン』
  乃梨子  『VS!』
  蓉子   『二人の保健室』

 

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