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ギャグ・その他 マリア様がみてる

【マリみてSS(可南子・菜々・祐麒)】とらんす! 8.急転する!?

更新日:

~ とらんす! ~

『8.急転する!?』

 

「あー、今日で最終日なんて、残念!」
 可南子ちゃんが伸びをしながら、海に向かって大きな声を出す。
「本当ですね、あっという間でした」
 同調するように、菜々ちゃんも息を吐き出す。
 騒がしかった旅行も、今日で最終日であった。本当はもっと居たかったし、旅館の人たちも、良かったらもっと居てくれてもいいと言ってくれているのだが、さすがにそこまで甘えるわけにもいかないし、女の子三人(!?)、そろそろ実家に戻らないと家族が心配するというのもある。
 ということで、今日の午後には帰途につくことになるのだが、最後ということで朝から自由な時間をもらって、三人でこうして海に出てきたわけである。
 一週間ほどの期間ではあったが、本当に色んな事があったし、楽しい日々だった。
 初めて働いた旅館で色々な失敗もした。迷惑もかけたし、厳しく怒られたこともあったけれど、旅館の人は優しかった。
 酔っぱらった宴会客に何回もお尻を触られたり、男に振られたOLが「私、女の子でもいい」とか言いながら押し倒してきたり、元気な子供達に胸を揉まれたり、お風呂で覗きにあったり、海では何回もナンパされ、一度なんか三人組の男に岩陰に連れ込まれてあやうく貞操を失いそうになったり――
 数日のことを思い返して、なんだか女としての災難ばかりを身に受けたようで、落ち込みそうになった。
「ユウキちゃん、旅館でも海でも、モテモテだったもんねー。凄いよね、何人の人にナンパされたの?」
「私と可南子さんはそれほどでもなかったのに、本当に、凄いですよね。やっぱり、女の子としてのレベルが違うんですかね」
「あは、あははは」
 乾いた笑いしか出てこない。
「でも、本当に楽しかった。ユウキちゃんと菜々ちゃんと働いて、海で遊んで、スイカもかき氷も焼きそばも焼きトウモロコシも食べて。花火もしたし、夜の砂浜も散歩して綺麗な星空を見て、一緒の布団でおしゃべりして」
「うん」
 そうだ。
 セクハラを受けてばかりいたわけではない。可南子ちゃん、菜々ちゃんと、とても濃密な日を過ごしたのだ。
 男の体に戻りかけて焦ったり、女同士だと無防備な可南子ちゃんに狼狽したり、ハプニングもあったけれど、楽しいことに間違いはなかった。
「昨日にはとうとう、ユウキちゃんと一緒にお風呂も入れたしね」
「あ……」
 可南子ちゃんの言葉を聞いて、菜々ちゃんに目を向ければ、案の定、真っ赤になりながら俺のことを睨みつけている。
 そう、とうとう昨日の夜、一緒にお風呂に入ることになってしまったのだ。うまく一人で入ったつもりだったのだが、数日間で行動を読まれたのか、後から二人に入ってこられて逃げられなかったのだ。
 菜々ちゃんはおそらく、可南子ちゃん一人を入れるのを危険視してついてきたのだろうが、まさか、可南子ちゃんのスーパーボディを視界に入れないよう顔をそらしたところ、菜々ちゃんの裸身を見てしまうとは思わなかった。
 女性として未完成な身体ではあるけれど、女の子であることに間違いはなく、ささやかな膨らみや神秘的な下半身に目を奪われ――その直後、祐麒は鼻血を噴出して昏倒した。
「ユウキちゃんがのぼせて倒れた時には、びっくりしちゃったけど」
「あはは、め、迷惑かけちゃって、ごめんね」
「め、迷惑だなんてそんな。私的にはユウキちゃんの裸を……きゃっ」
 よくわからないことを言いながら、可愛らしい小さな悲鳴をあげて手で顔を覆う可南子ちゃん。
「お二人とも、最後なんですから、遊びましょう。時間がもったいないです」
 露骨に話題をそらす菜々ちゃんだが、意見には賛成である。
「うん、そうだったね、よーっし、思いっきり遊ぼう!」
 シャツを脱ぎ棄て、水着姿になる可南子ちゃんと菜々ちゃん。
 何度見ても、眼福である。二人ともこの数日ですっかり日に焼け、健康的な褐色の肌になっているが、水着との境目のあたりだけちらりと白い肌が見えたりして、とても色っぽい。まあ、そういう俺自身も同じなのだが。
 パーカを脱ぎ、二人の後を追いかけて走る。
 初めこそ恥しかったが、どうせ遊ぶなら楽しまなければ損だと、その後はあえて忘れることにしたし、遊んでいる間は実際にそんなこと忘れていた。
 夏の海は、今までの人生で一番、輝いて綺麗な海に見えた。

 

 午前中を遊び倒し、お昼ごはんを食べて、少しくつろいで、帰る時間がやってきた。
 なんと嬉しいことに、旅館の人たちが見送りにわざわざ外まで出て来てくれた。お客さんが旅館内にいない時間帯とはいえ、掃除や夕飯の仕込みなど、やることは色々とあるはずなのに。
「本当、残念だわ。もうすっかり、うちの旅館の娘、っていう気がしていたのに」
 おかみさんも、本当に残念そうな顔をしてそう言ってくれた。そして、いつでもまた遊びに来てくれとも。
 心から感謝の念を込めてお礼をして、俺達は駅へと向かった。ちなみに、駅までも旅館の車を使って送ってくれた。
「あー、本当にこれで帰るのか、やっぱり残念だね」
 のどかな駅で電車を待ちながら、つぶやく。
「そうね、でも、お別れのとき本当に凄かったねーユウキちゃんは」
「う……そ、それは勘弁してよ」
「いやいや、それは無理でしょう」
 左右から可南子ちゃんと菜々ちゃんに攻められて、赤面する。
 何が起きたかと言うと、なんと旅館の見送りを受けて、さあ帰ろうとした時に、旅館の板前さんから告白されてしまったのだ。まだ見習い中、23才で、男の俺でもなかなかイケメン且つ純情そうな好青年であった。
 いきなり名前を呼ばれたかと思うと、前に出てきた板前さんは、顔を真っ赤にしながらこっ恥しくなるような告白の台詞を、正面からぶん投げてきた。男だというのに、聞いていた俺も赤面してしまったくらいだ。
 しかも、それはまだ第一幕。
 思いがけない告白に、どう返事をするべきなのか困惑していると、新たな声があがった。おかみさんの長男で、俺達が旅館で働き始めて3日目に帰省してきたのだが。旅館を継ぐのは嫌で家を出て行った27才の青年だが、なんと、将来俺と一緒に旅館をやってほしいと、告白を跳びこしてプロポーズだ。俺と一緒なら旅館を継いでもいいなんて言い出して、おかみさんは喜びたいものの、その前の板前さんのこともあり困惑気味。
 板前さんも黙ってられず、さあどうなると思っていたら、実は俺も、なんて言いながら同じようにバイトで働いていた大学生の子が走り込んできた。
 俺としては、茫然として声も出ない。
 おいおい、お前らいい年して(大学生は別としても)、こんな高校生の小娘にどうしてそこまで執着するか、というかそもそも俺は女の子じゃなくて男だし。
 とにかく、三人で大騒ぎになり、それぞれがそれぞれの想いのたけを込めて告白してくるものだから、俺はもう脳みその許容量が追い付かずオーバーヒート。
 生まれて初めて愛の告白なんか受けたというのに、それが三人も同時で、しかも男からの告白なのだから!
 とにかく俺は、好意は嬉しいけれど、今は部活動一番で(咄嗟に演劇部などという嘘をついた)、恋愛する気はない、とかなんとか適当なことを言ってやんわりとお断りした。
 他に好きな男がいるのかと聞かれ、いるわけがないと強く否定したら、三人とも安心して胸をなでおろした。
 今の俺を振り向かせることは無理と悟ったのか、俺を困らせてはいけないと思ったのか、それ以上しつこくしてこなかったのが幸いである。
 ただ、来年もまた絶対に遊びに来てくれと言われ、他の旅館の人たちからも言われて、約束をしてしまったので頭が痛いのだが。
「もー、やめて。思い出すだけで、すごい恥しい。うー、なんで可南子ちゃん、菜々ちゃんって可愛い子がいるのに、お……私なんか」
 深々とため息をつくと。
「え、分かんないの? 本当に?」
「え、な、何が?」
 不思議そうな顔をしている可南子ちゃんに、これまた不思議そうに聞き返すと、代わりに菜々ちゃんが答えてくれた。
「ほら、可南子さんは男性嫌いですし、私も四人姉妹に女子校育ちと、あまり男性は得意ではありません。旅館の中で働いているときも、やっぱり男性とはあまり触れあわないように、意識的に避けていたんです」
「でもユウキちゃんはさ、凄く気さくに男の人と話していたじゃない。お手伝いしましょうか、大変そうですね、私に何かできることありませんか――って、甲斐甲斐しくお手伝いを買って出て、しかもそれでちょっとドジったり失敗したり、またそれをリカバリーしようと一生懸命になって、そりゃもう、男の人たちが骨抜きになっていくのが、傍から見ていても分かったよ」
「加えて、ユウキさんは微妙にエロスですからね。男の人にボディタッチもするし、自分の体に関しては無防備にさらけ出すし、その容姿と身体では、若い男の人はたまらないのではないでしょうか」
「え、え、ちょっと待って。じ、自分は全くそんなつもり、ないんだけど!?」
 元々男だから、男と接することには何ら違和感も嫌悪感もないし、むしろ女性従業員と話すより気が楽なのだ。話だって、男の方が合うし、弾む。男同士だから、腕や肩くらい触ること何ともないし、自分が無防備といわれても、なんのことやら。
「天然小悪魔系だよね……同じ女から見たら、いつも男に媚び売っているようで、嫌われてもおかしくないけど、不思議とユウキちゃんからはそういう感じは受けないのよね。媚びとか売っているんじゃなく、嫌らしさもなくて、本当に単なる友達と自然に接するようで、見てて嫌な気持ちにならないというか、むしろ相手の男性の気持ちが分かるというか」
「えーほんと、不思議ですねー」
 本当に不思議そうな可南子ちゃんと、全く不思議そうでない菜々ちゃん。
「でも、三人とも真面目で、格好いいし、性格も良さそうだし、本当は一人くらい好きだったんじゃないの?」
「まま、まさか、とんでもない!!」
 ぶんぶんと激しく首を横に振る。
「ふーん、そっか……本当にそうなんだ……えへへ、良かった」
「ん、な、何が?」
「あー、ううん、なんでもない、こっちのこと。あ、ほら、電車来たよ」
 ベンチから立ちあがる可南子ちゃんが指さす方向から、確かに電車が走ってくる姿が見えた。
「せっかくの機会ですから、どなたかとお付き合いしてみればよかったのに」
 隣に寄って来た菜々ちゃんが、小声で言ってくる。
「やめてよ、俺はね、女の子が好きなの」
「二人とも、荷物の用意してほら。乗るよ」
 俺の声は、電車の走る音に消される。
 電車は中途半端な時間のせいか、それともいつも通りなのか、人は少なく空いていた。横一列のシートに、三人横に並んで座る。
「あー、本当にお別れだね」
「また来年、三人で遊びに来たいね」
「その時はユウキさん、きっとまた告白されますよ。今度は5人くらいから」
「あ、ありえる」
「や、やめてよ、も~」
 三人で、海で遊び、旅館で働いた数日間のことを話し、地元に戻ってからのことを話し、それ以外のことを話し、帰途の旅は続く。
 窓の外からは、夏の太陽と、海の水面の煌きと、大きな入道雲の白さが差し込んでくる。やがて電車は海を離れ、のどかな田舎町を背に、のんびりゆったりと走っていく。
 単調な電車の走行音だけが響く、静かな列車内。
 やがてそこには、三つの可愛らしい呼吸音が重なりあう。
 俺の右肩には可南子ちゃんの頭がもたれかかり、左の肩には菜々ちゃんが寄り掛かってきて、安らかな寝息を立てている。
 そういう俺も、瞼は閉じかけ、もはや眠りに落ちる寸前。
 右と左、それぞれの手には、二人の手と繋がれた感触。

 二人の重さを心地よく感じながら、俺も、安らかな眠りに落ちた。

 

 旅行を終えてからは、バイトをすることにした。これまた、可南子ちゃんのお母さんの知り合いだかなんだかが経営している店だった。可南子ちゃんはアルバイト禁止なので、これまたお手伝いという名目で来るのだが、俺の場合は正式にアルバイトとして入店した。もちろん、可南子ちゃんに会える、ということがバイトの目的であることは言うまでもない。
 菜々ちゃんは受験生と言うこともあり、そうしょっちゅう顔を合わせることはないが、それでも時々店に遊びに来たり、一緒に遊びに行ったりはした。
 受験と言ってもリリアンの中等部から高等部への進学なので、余程のことがない限り問題はないらしい。
 そういうわけで、夏休みもあっという間に日が流れてゆき、お盆休みに突入していた。お盆休みはお店も休みで、可南子ちゃんもお母さんの実家に帰り、菜々ちゃんも家族で過ごしているらしく、久しぶりにのんびりとした、退屈な日を送ることとなった。
 考えてみれば、夏休みに入ってから可南子ちゃん、菜々ちゃんと遊んでばかりいたので、こうして時間が空くと困ってしまう。
 本来なら生徒会の活動もあり、小林達からは連絡もあるのだが、申し訳ないが全て断っていた。理由としては、「好きな子が出来て、その子を振り向かせるためにこの夏休みは捧げたいんだ」というもの。不満を言いつつも、俺の熱意をくみ取ってくれたのか、どうにか納得してもらった。納得してくれなくても、女の体で花寺に行くことはできないのだが。
 特にやることもなく、ダラダラと過ごしている俺だった。可南子ちゃん早く帰ってこないかな、バイトも早いところ再開しないかな、店の制服は少し恥しいが、可南子ちゃんに会えるならそれくらい問題ない。
 そんなことを考えていると、誰かがバタバタと洗面所に駆けこんできた。「うわー、汗びっしょりで気持ち悪い~」などと声が聞こえる。そして、内心で、ちょっと待てよと思っている俺のことなど無視するように、風呂の扉が開いた。
「ごめんね祐麒、一緒にシャワー使わせてー」
 と言いながら、当たり前だが素っ裸の祐巳が恥じらいもなく入ってくる。
「ば、ばっ、馬鹿、お前っ」
 髪の毛を洗っていた俺は、すぐに逃げ出すこともできない。とりあえず目をそらし、祐巳の裸体を視界から外す。姉とはいえ、もう何年も一緒に風呂なんて入っていないし、裸なんて見ていない。
「汗かいちゃってさ、おまけにジュースこぼしちゃったからダブルで気持ち悪くて」
 俺の気持ちなんかまるで知る由もなく、祐巳は呑気にそんなことを言いながら、平気で乳房とか、臀部とか、大事な個所をさらしてくる。
「なっ、何考えてんだお前ーーーーーっ!?」
 とりあえず俺は、悲鳴を上げて精一杯の抵抗をすることしかできなかった。

 

「あはは、ごめん、ごめん、ついうっかり」
 風呂から出た祐巳は、苦笑しながら口を開く。
「うっかりじゃないよ、何が、"いいじゃん、女同士なんだから"だよ、ったく」
「まあまあ、ほら、動かないでじっとして。んー、それにしても祐麒の髪、くせがなくてサラサラで羨ましいな、私と交換してほしいくらいだよ」
 俺の背後にまわった祐巳は、風呂上がりで濡れている俺の髪の毛を梳かしている。俺は別にいいといっているのに、いつも捕まってやられてしまう。
「まったく、恥じらいを持てよ……」
 今だって、後ろにいる祐巳はショーツの上にTシャツを着ているだけという格好で、ノーブラとか、パンツとか、太ももとか、そういうのが俺は気になって仕方ない。これは別に、実の姉に欲情しているとかそういうことではなく、年頃の男としての素直な反応である。まあ、俺も同じ格好なわけではあるが。
「だってさ、もう姉妹だっていう感覚でいたから」
「おいおい、惚けるのはまだ早いだろ」
「だってさ、夏休みになってから、祐麒、ずっと女の子でいたからさー。もう、女の子でいくのかなって思って」
「だからって平気で風呂に入ってくるなよ……って」
 そこで俺は、ようやく重大なことに気がついた。
 旅行から帰ってきて、バイトをするようになって、俺はほぼ女の姿で暮らしていた。バイトは週に4日以上はあり、バイトのない日も可南子ちゃんと会うことが多かった。
 例の薬の効果は大体、24時間前後なので、俺は毎朝薬を飲むようにしていた。だから、祐巳が言うようにずっと女でいたことは間違いない。
 だが、お盆休み入り、バイトもなく、可南子ちゃんとの約束もなく、ここしばらくは薬を飲んでいなかった。三日前のバイトの日の朝に飲んで以来だから、既に72時間を優に超えている。にもかかわらず、俺はずっと女の姿のままだった。
「え……ちょ、ちょっと待てよ……おい」
「あ、こら、動かないでってば」
 祐巳の声も耳に入らず、立ちあがる。
 胸はある。股間には、あるべきものがない。間違いなく、女のままだ。女の姿でいることが続いていたので違和感を覚えなかったが、明らかに異常な事態だ。
 事実が、急速にのしかかってくる。
「うそ……だろ?」
「あ、ちょっと、祐麒!?」
 祐巳を無視して、部屋に駆けこんだ。
 鏡を見る。
 映っているのは、女の子にしか見えない、俺自身の姿。
「なんで……なんで、男に戻らないんだよっ!?」
 力なく床に膝をつき、頭を抱える。
 言い知れぬ恐怖を覚え、でも何をすることもできず、俺はベッドの上で丸くなっていた。そしていつしか眠ってしまっていた。

 

 次に目が覚めた時、俺の体は男に戻っていた。
 起きた時は、夢じゃないかと思って色々と身体をまさぐり、あまつさえ、男特有の反応で確かめてみたりもした。
「間違いない、戻っている!」
 跳びあがらんばかりに喜びたかったが、時計を見ると既に夜だったので、抑えた。随分と時間がかかった理由は分からないが、とにかく戻ったのだから良しとする。
 俺は安心して眠りについた。

 そして。

 朝、目が覚めると。
「な、なんでーーーーーっ!?」
 膨らんで柔らかい胸を触り、股間に何もないことを確かめ、自分の出した高い声に驚き、まとわりつくような長い髪の毛を掻きむしり、俺は悲鳴を上げた。
 また、女の姿になっていた。
「ちょっと祐麒、朝から大きな声出して、何があったの?」
 祐巳が俺の悲鳴を聞いてであろう、部屋に飛び込んできた。
「ゆ、祐巳! お、俺、俺の体が女になってる!」
「はぁ? 何を今さら言っているのよ。もう、ずっと前から女の子の姿じゃない」
「そうじゃない、昨日の夜は、確かに男に戻ったんだ!」
「そうなの? 私が最後に見た時は女の子だったから、よくわからないけど。でも、いつものことでしょう、まったく人騒がせな」
 呆れたような顔をして、祐巳は部屋を出て行った。
 俺は一人、声もなくベッドの上で混乱する。
 昨日、男になったのは夢だったとでもいうのか。そんなはずはない、確かにあれは、男になったはずだ。
 証拠を求め、ゴミ箱をあさり、丸まったティッシュの屑を拾い、昨日のことが現実であったことを確認する。
 では、どういうことだ。
 今まで、女の姿になるには薬の力が必要だった。だが、昨日は男の姿になった後は、何も口にしていない。
 勝手に、寝ている間に女の姿になってしまったのか。
 なぜ、どうして。
 俺は混乱と恐怖に身を包まれ。

 ただ身を震わせ、頼りない細い腕で、柔らかな自分の体を抱きしめることしかできなかった。

 

つづくと思われます

 

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