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ノーマルCP マリア様がみてる 冴香

【マリみてSS(山村先生×祐麒)】武士道トゥエンティーX (7)

更新日:

 

~ 武士道トゥエンティーX (7)~

 

 

「な、なんでこんなことに……」
 そう愚痴をこぼしているのは冴香である。
 祐麒の半歩後ろで、祐麒の制服の袖を指でつまみ、身を隠すようにしてこそこそと歩いている。
 放課後の学園校舎内、生徒の数は随分と少なくなったが、誰もいないというわけではない。
 祐麒はちらと後ろに目を向ける。
「……何か?」
 気が付いた冴香が上目遣いに睨んでくるが、今ばかりはあまり恐くない。
「いえ、とにかく急ぎましょうか」
「ま、待って、そんなに速く歩かないで」
 歩を早めようとするが、後ろの冴香の足取りは鈍い。
「先生、今なら誰もいませんから」
「そんなこと言われても」
 腕で出来るだけ隠すようにして歩く冴香はいつものスーツ姿ではなく、白のブラウスに紺のブレザーとチェックのスカート。
「この年齢で女子高校生のコスプレなんて、誰かに見られたら」
 ぶつぶつ呟きながら歩く冴香。

 なぜこんなことになっているかというとたいした理由はなく、掃除の時にバケツの水をぶちまけてスーツをびしょ濡れにしてしまったのだ。
「理玖ったら、こんな時に捕まらないし」
 妹の理玖を呼ぼうとするも連絡がつかず、代わりに呼び出しを受けたのが祐麒であった。びしょ濡れになった服はどうにもならず、校内を駆け回って探してきたのが、演劇部に置かれていた衣装であった。
 ドレスやファンタジックな衣装の中、マシだと思えたのが制服だったのだ。
 膝上丈のスカートが気になるらしく、冴香はスカートの裾を手でおさえている。
「本当に、他に服はなかったの?」
「なかったですよ、信じてくれないんですか?」
「……ごめんなさい、福沢くんは一生懸命探してくれたのに」
 素直に謝る冴香。
 万が一、誰かに見られたことのことを考え、一度化粧を落としてナチュラルメイク程度にし、髪飾りをつけている。
 二十代後半になろうという冴香が女子高校生の格好をするのはさすがに無理があるのだが、祐麒としては珍しいものが見られて得した気分である。冴香はしきりに「これはない」と口にしているが、祐麒的には「アリ」かな、なんて内心で思っていたりもする。女子高校生には見えないかもしれないが、少し離れていればバレないのではないかと。
 下駄箱で靴に履き替えて外に出る。陽が長くなっており、まだそこまで暗くはなっていない敷地内を歩いて校門を目指す。他の生徒達の姿は、視界には見当たらなかったのだが。
「――まだ残っていたの。早く帰りなさい、もう時間よ」
 横から声をかけてきたのは、鹿取真紀先生だった。テニスコートの方からやってきたから、顧問であるテニス部を見ての帰りであろうか。
「は、はい、すぐに帰りますっ」
「あら……そちらの子は」
 と、真紀が祐麒の後ろに視線を向ける。
「あ、ああ、ええと、この子、日輪館学園の子で、見学に来ていて帰る所です。送っていくところなんです」
「日輪館の?」
「はい」
 真紀の目が向けられ、内心で祐麒は焦る。
「へえ、もしかして……福沢くんの彼女、なのかしら?」
「えっと、まあ、はい、そういうことです」
「そうなんだ。それじゃあ、他の女の子には見られないよう気を付けてね。福沢くんのファンの女の子、結構多いんだから」
「まさか、はは、それじゃ、失礼します」
「はい、気を付けて帰るのよ」
 真紀の声を背に受け、早足にならないよう気を付けて歩を進める。
 校門の守衛の前を通り過ぎ、大丈夫だろうというところでようやく一つ息をついて口を開く。
「うわ、焦った……」
「わ、私の台詞よ。鹿取先生、気が付かなかったかしら」
「みたい、ですね」
 これ以上他の誰かに見られてはたまらないと、なるべく急いで歩き、守衛の目から隠すようにして学園を出る。

 二人でバスに乗って駅まで出ると、そのまま駅に入ろうとする祐麒の袖を冴香が掴んで引き止めた。
「どうしました、早く帰った方が」
 そう言うと、顔を赤くした冴香はちょっと口を尖らせる。
「そ、そうだけど……その、し、下着、買いたいから」
「あ」
 そうだ。
 今の冴香は下着を穿いていないのだった。
 手で抑えているスカートの下は、何もつけていない。
 さらに、冴香はスカートの方ばかりを気にしているが、ブラウスの下もノーブラのはずである。
 サイズがやや合わなかったのか、また冴香のバストが豊かなのか、おそらくその両方であろうが、ブラウスのボタンは全て留められておらず、見下ろすと胸の膨らみが目に入ってくる。
 さらによく見ると、そのブラウスを押し上げる膨らみの先端は少し形が変わっているようにも見える。
「じゃあ俺、待っていますから」
「ちょ、一人にしないでよ、ついてきて」
「いや、だって女性の下着売り場ですよね?」
「…………」
 祐麒の袖をつまみ、下からじっと見上げてくる冴香。怒っているようで、少し困っているような表情で、頬を少し赤らめて。おまけに胸の谷間とか見えて、思わず目をそらす。
「ちょっと福沢くん、ちゃんとこっちを見なさい」
「いや、でも」
「何よ」
 ぐい、と冴香がさらに身を近づけてきて、腕に胸があたる。
「わ、わ、分かりました、一緒に行きますから。ちょ、先生離れてっ」
「こ、こら、大きな声で先生とか言わないでっ」
 離そうとしたが、逆に冴香は祐麒の口を手で抑えようと体を密着させてきた。
 やばい、めちゃくちゃ柔らかい、あたたかい、でかい。
 様々なものが頭の中を渦巻く。
「ちょ、せ、先生……」
「だーかーら、先生はダメ、こんな格好で、誰かにきかれたらまずいでしょ」
「じゃ、じゃあ、なんて呼べば」
「そんなの自分で考えなさいよ」
 なんて無責任なと思うが、今はそれ以上に他のことがヤバい。
「じゃあ、冴ちゃんっ」
「なっ……」
 呼ばれた冴香がびっくりしたように目を丸くして動きを止める。
「ちょ、いくらなんでも、そんな……」
「じゃなかったら先生か、どっちかです」
 とにかく早く体を離して欲しくて、そう言って判断を急がせる。
「……わ、分かったわよ」
 口を尖らせながらも、冴香はしぶしぶといった感じで頷いた。
「それじゃあ、早く行くわよ」
「え、どこにです?」
「だから、し、下着を買いに……」
 と、ようやく肝心のことを思い出し、冴香に押されるようにして下着売り場に足を運んだ。
「えと、こ、これとこれでいいから、買ってきて」
「え、なんで俺が? せん……冴ちゃんが自分で買ってくれば」
「無理、むり! レジで顔見られたら、高校生じゃないのバレちゃうから!」
 祐麒の腕をつかんで必死に訴えながら、ショーツとブラとお金を押し付け、冴香は店の外に出て行ってしまった。
 結局、女性店員に「彼女へのプレゼントですか」とお約束のことをにこやかに言われ、赤面しながら女性用の下着を購入した。
 購入した下着をトイレで穿いてきて、冴香もようやく少し落ち着いたようだった。

 今度こそ、あとは帰るだけだとデパートから駅に向かおうとする祐麒達であったが。
「あ……まずい」
「え、どうかしましたか?」
 駅に到着する前に冴香の足が止まる。
「今日、巡回パトロールの日だったわ。あそこ、教頭先生が見張っている」
「どれどれ……あ、ホントだ。えーと、でも、今は変装しているし、バレないかも」
「バレるかもしれないじゃない、そんなリスクおえないわよ。大体、福沢くんがいるから目を付けられるでしょうし、それでじっくり見られたら確実にバレるわ」
「でも、どうすれば」
「あ、こっちに来た! 福沢くん、こっちに」
 手を引かれ、元来た道に引き返し、近くにあったゲームセンターに避難する。
「ゲーセンとかも、巡回対象の場所に入りやすくないですか?」
「あ、そうだったわ、確かに。早く出て……って、来た!?」
 一歩遅かったようで、教師がゲームセンター内に入ってきたのが見え、二人は逃げるように店内の奥へと進む。
「こっちよ」
 避難したのはプリクラをとるスペース内だった。
 ここでしばらく時間を潰してやり過ごそうと思ったが、それもすんなりとはいかない。
「あれー、ここ使われているよ」
「あたし、これで撮りたかったんだけど」
 外から女の子達複数人の声が聞こえてきた。
 どうやら、祐麒達が潜伏しているプリクラがお目当てだったらしい。
「でも、やってないみたいじゃない、マシンが動いている様子もないし。終わったんなら、さっさと出てもらおうよ」
 このタイミングで出ると鉢合わせしそうな気がする。
「――すみません、まだこれからやりますので」
 外に向けて声をかけると、冴香は財布を取り出してお金を投入する。
「撮影するんですか?」
「仕方ないでしょ?」
 別に撮影しなくても問題ないのだが、あえてそれは言わず二人でプリクラを撮り、思いがけず冴香の女子高校生姿の写真を入手する。
 少し時間を潰してゲームセンターを出た二人だったが。
「あ、まだいる!?」
 前方から教頭が歩いてくるのが見えて、慌てて近くにあったカラオケボックスの中へと逃げ込んだ。
 そんなこんなで、結局のところ教師がいないだろうと、家に帰ろうとする頃にはかなり夜遅くなっていた。

「ああ、まさかこの格好でこんなに街を歩き回る羽目になるなんて」
「いやー、でも結構似合ってますよ、冴ちゃん」
「…………」
「す、すみません、調子にのりました」
 睨まれて、顔を背ける。
「もう、早く帰りましょう」
「そうですね……」
「ちょっとそこの君達、高校生よね」
 しかし駅に向かおうとしたところで、後ろから声をかけられた。
「もう夜10時過ぎているわよ。高校生がこんな時間に遊び歩くのは感心しないわね」
 ゆっくり首を回して後ろを見てみると、そこに立っていたのは婦人警官だった。
 しかも。
「……げ、あ、梓美っ!?」
「え、それって」
 冴香が慌てて俯く。
 祐麒はもう一度婦人警官に目を向ける。
 長身でやや浅黒い肌、ツリ目で鋭い視線、格好こそ異なるが確かに剣道大会で冴香と戦ったライバル、連城梓美だった。
「こ、こんな姿、梓美に知られたら……っ」
 額に汗を光らせ、震えながら小声で呟く冴香。
 確かに、学生時代からのライバルに、女子高校生姿で夜の繁華街を遊んでいる(風に見える)姿を見られたくはないだろう。
 では、どうするか。
「……冴ちゃん、ここは俺がどうにかするから、逃げて」
「え?」
 冴香と目があうと、祐麒は頷いて見せた。
 一瞬、躊躇うような表情を見せた冴香だったが、その後には意を決したのか、一気に走り出した。
「あ、こら、待ちなさい!」
 慌てて追いかけようとする梓美。
「待ってください、連城さん」
「わぁっ!? ちょ、何をするの、離しなさいっ」
「お願いします、俺はともかく、彼女は」
 必死にしがみついて梓美を防ごうとする。
 体格がよくて力もある梓美に対抗するため、祐麒は懸命に力を込める。
「わ、分かったから、君……あの……手、放してくれる?」
「え……」
 後ろから抱き着いていた祐麒の手は、梓美の胸をしっかりと掴んでいた。手の平に、柔らかな感触が伝わる。
「す、すみませんっ」
「いいから、とりあえず放してくれる?」
 ぱっと両手を広げて放すと、梓美は乱れた服を直して祐麒を見る。
「全く、別に逮捕するわけじゃないし、そんなに逃げなくてもいいのに」
「あー、えと、彼女、結構良いところの家なんで、気にするんですよ」
「良いところのお嬢さんがこんな時間に何をしていたのかしら?」
「色々とストレスが溜まっていたみたいで、ストレス解消に。そういうときってあるじゃないですか?」
「ふーん……って、あれ、君たしか前に会ったよね、剣道大会で」
「え、覚えているんですか?」
 祐麒は冴香の対戦相手ということで覚えていたが、まさか梓美の方が祐麒を覚えているとは思いもしなかった。
「職業柄、人の顔を覚えるのは得意でね。で、さっきの子は君の彼女?」
「いやー、そういうのじゃなくて、ストレス解消を手伝わされただけです」
「ふぅん」
 首を傾げ、梓美は祐麒を頭からつま先まで眺めてくる。
「まあいいわ」
「俺、補導されるんですか?」
「しないわよ。ただ、名前と連絡先は教えてくれる?」
「え……と、親に言うってことですか?」
 さすがにそれは祐麒も避けたいところだった。
「言わないわよ。携帯の番号とアドレスでいいわよ」
 梓美と連絡先の交換をする。
「いつもこういうことしているんですか?」
「君は冴香の教え子でしょう? だから気になってね、友人の教え子が不良になったり、事件を起こしたりしたら嫌じゃない。それじゃあ、さっさと帰ること、いいわね」
 素直に頷き、祐麒はようやく長い一日を終えて家に帰る。
 風呂に入って疲れた体を癒し、部屋に戻ったところで思い出したように取り出したのはプリクラで撮影した写真。
 生真面目な冴香らしく、赤面しながらもきっちりカメラに目線を向けてきており、バッチリ冴香だと分かる。
 その時のことを思い出しながらスマホを手に取ると、いくつかメッセージが届いていることに気が付いた。

『今日のプリクラ、絶対に誰にも見せないように! 分かっているわね』

『ていうか、回収するから学校に持ってきなさい! あ、でも誤って誰かに見られたら困るから、やっぱり誰にも見せないよう封印しておいて』

『ねえねえ祐麒くん、姉さんが女子高校生のコスプレして帰って来たんだけど、もしかし祐麒くん絡み? どんなプレイしていたのか教えてー ニヤニヤ』

『今度あたしとも制服デートしてよ。あたしの高校時代の制服、あるよー?』

 そんなメッセージを幾つも見て、祐麒は苦笑いする。

 そして翌日、学園にて。

「福沢くん、わかっているでしょうね?」
 放課後、周囲に人がいないのを見計らって近づいてきた冴香が、睨むようにしてきたが、いつもほどの迫力は感じられなかった。
「えーと」
「絶対に、誰にも言わないでよ。ていうか、理玖に言わないでよ!」
 冴香は人差し指でぐりぐりと祐麒の胸を押しながら言う。
「何を、ですか?」
「全部よ。私が女子高生の格好をして福沢君とデートなんてしたなんて理玖に知られたら……」
「え」
「あ、違う、デートなんかじゃありません! あれは緊急避難ですからね」
 自分で言って、自分で赤面しつつ否定する冴香。
「とにかく、福沢君も忘れるように!」
 改めて念押しをして、冴香は足早に去っていった。
「……と、言われてもなぁ」
 普段、見ることのできない姿は、とても印象に残る。
 ましてや、見た目だけでなく腕や胸に押し付けられた感触のこともあって、むしろ思い出さない方が難しい気がする祐麒なのであった。

 

おしまい

 

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