書評と主にマリア様がみてるの二次創作(旧:よしのXブレード)

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【マリみてSS(山村先生×祐麒)】武士道トゥエンティーX (9)

更新日:

 

~ 武士道トゥエンティーX (9)~

 

 

「ちょっと祐麒くん」
 呼び止められて振り返る。
 理玖が、近くに他の生徒がいないことを確認して身を寄せてくる。
「姉さんが凄い不機嫌で滅茶苦茶怖いんだけど、祐麒くん、何したの?」
 耳元でぼそりと告げられる。
「え、俺、何もしていませんよ」
 意味不明の言いがかりに慌てて首を横に振る。
「本当にぃ?」
 眼鏡の奥からジト目で見られ、図らずも動揺してしまう。
 言われてみれば今日の授業の時もやたらと厳しかった気がするし、その中で祐麒のことを睨んできているようにも思えたが、そういうこともあるのだろうと、さほど気にしていなかった。
「絶対に祐麒くん絡みだと思うんだけど?」
 更に理玖は迫ってくる。
「え、と」
「あ、その顔、やっぱり何かあるんだ?」
「何かあるっていいますか、なんか先生の様子がおかしくなったのはあの時からではあるので」
「ふんふん、で、あの時とはどの時で、何があったのか教えてみなさい」
 理玖に言われて結局祐麒は居酒屋であった冴香との一幕を伝えることになった。
「……なるほどぉ、そういうことかぁ、へぇぇ」
 話を聞き終えた理玖は、何やら楽しそうな笑みを浮かべていた。
「なるほどね姉さん、あたしが相手だと本気にしないけれど、別の具体的な人が相手に見えると反応しちゃうんだぁ」
 ほっそりとした指を顎にあてにやにやとしている理玖に、祐麒は首を傾げるしかない。
「これは面白くなってきたけどぉ」
 言いながら理玖は祐麒に目を向け、密着するほどに近づいてくる。
「いつの間に、梓美さんとそんな親しくなったの?」
 眼鏡の下の眼光も鋭く睨みつけられる。
「だから話しましたように、夜に補導されそうになったときに剣道大会の時に会ったことを思い出して、なんか、たまたま同じ作者の本が好きだと分かって、意見交換とかするようになったんですよ」
「なんて人の、どんな本」
 問われ、とりあえず当たり障りのない答えをする。約束だから、漫画やアニメのオタ趣味は口に出来ない。理玖もこう見えて意外とオタ趣味があるので、知ればお互いに仲良くなれるとは思うのだが。
「へぇ、意外、梓美さんてそういうの好きだったんだ……で、なに、梓美さんと付き合ってんの? もうエッチしたの?」
「どうしていきなりそうなるんですか。趣味があって感想の言いあいとかしているだけで、付き合っているとかないですって」
 梓美もよほど趣味を語れる相手に飢えていたのか、休日前は夜を徹して作品やキャラトークなどLINEを介してさせられることがあったりして、親密度が上がっていることは否定できないが、付き合っているものではない。
「ほんとにぃ?」
「本当ですよ、って、なんで理玖さんが怒っているんですか?」
「え? なんであたしが怒らなくちゃいけないのよ」
「怒ってますよね?」
「怒ってないわよ……」
 はっとしたように身を離す理玖。
「とーにーかーく、ちゃんと姉さんの機嫌を直してよ、同じ家で息が詰まるんだから!」
「そう言われても、どうすれば」
「そういうときは、姉さんの好きなゲームとかでご機嫌をとればいいでしょ」
「ああ、確かに」
 オンラインゲームであれば顔をあわせずチャットで話せるから、面と向かって言い辛いことも話しやすい。
 仲直りするというのも変な話だが、祐麒としても今の奇妙な空気を綺麗にしたい思いはある。
「分かりました、ちょうど週末に新バージョンがリリースもされるんで、声かけてみます」
「よし、よろしくね!」
 祐麒の肩を軽く叩いて理玖は去っていった。

 

 週末、冴香や祐麒がハマっているオンラインゲームの新バージョンがリリースされた。バグの危険性も高いが、手を出さないという選択肢はないわけで、話しのネタにして時間を決めて落ち合おうとは比較的言い出しやすい。
 実際、冴香も頷いてくれたのだが。
「あ、コレすごい、ニューアイテム?」
「じゃないっすかね? でも怪しいですから、鑑定した方がよくないですか?」
「ポイントが勿体ないから、とりあえず拾ってみるわ」
「って、ちょ、待って」
「きゃあああっ、何これ、やだモンスター!?」
「しかも、呼び寄せてるじゃないですかっ。だから言ったのに!」
 ぎゃーぎゃーと騒ぎながら首を傾げざるをえない。
 オンラインゲームなのに、祐麒は冴香の家にやってきて二人並んで同じ画面を見てプレイしているのだから。

「別にオンラインじゃなくても二人同時でプレイできるし、どうせだったら同じ場で新しい興奮をリアルタイムで共有したいじゃない」

 冴香に真顔で言われてしまうと拒絶できる理由もなく、今こうして冴香と肩を並べてプレイしている。
 幸い、冴香はバージョンアップの内容に満足しているようで、今のところさほど雰囲気は悪くないが、微妙な距離感もある。
 どこか冴香はよそよそしく、祐麒も冴香の様子が気になって落ち着かないからだ。
 理玖がいればまだ違うのだが、土曜の宮野木家での稽古を終えた後、友人と予定があるからと二人を残して行ってしまった。
 そうして二人で延々プレイすること数時間、食事は宅配ピザで済ませプレイを続けるが、夜になるとさすがに時間が気になってくる。自宅でのオンラインプレイであれば夜通し貫徹もあるだろうが、冴香と一緒に朝までいるなんてことはないだろう。幾ら盛り上がっているとはいえ、教師としては真面目な冴香なのだから。
「――理玖さん、帰りは遅くなるんですかね?」
 そう口にしたのに特に大きな意味はない。会話のつなぎくらいで、意識的なものではなかった。
「……何、理玖に帰ってきてほしいの?」
 だが、なぜか冴香は思っていたのと違う反応をした。
「え、いや、別に誰もそんなことは」
「それとも、梓美の方が良いのかしら?」
「なんで梓美さんが? あのちょっと、山村先生?」
「……そもそも、私だけ"山村"って……」
「え、なんですか?」
 ぶつぶつと何か小さな声で文句らしきことを言われているようで気になるが、聞き返すと冴香は口を閉ざし、コントローラを置いて立ち上がった。そしてそのまま何も言わず自分の部屋に入っていってしまった。
 怒らせてしまったことは間違いないようだが、なんで怒ったのかさっぱりわからない。追っていくことも出来ず、さりとてこのまま帰るというわけにもいかず、祐麒は頭を抱える。
 どれくらい待っただろうか。
 いつの間にかすぐ側に気配があった。
「や、山村せんせ……?」
 言いかけた言葉が止まり、ぽかんとなって見つめる先には冴香がいたのだが、なぜか冴香はブラウスにリボン、チェックのスカートという女子高校生の制服姿になっていたのだ。この前のときのは演劇部に返したはずで、少しデザインは違うが、女子高校生スタイルであることに間違いない。確か、秀尽学園の制服だったか。
 少し頬を赤くし、むっつりと怒ったような表情をしている冴香。
 殆ど化粧はしていないとはいえ、女子高校生と10は年齢が違うのだから違和感があるのは当たり前だが、似合っていないわけではない。
 白いブラウスの胸は大きく盛り上がり、裾はスカートの外に出している。
 チェックのスカートは膝上丈で、剣道で鍛えられた引き締まった太腿が目にも眩しい。
 スーツでタイトスカート姿の時もあるが、こうしてひらひらしたスカートで短い姿は、前回の女子高校生姿以来である。
 冴香は何も言わずに立っている。
「あの、先生……?」
「…………」
 冴香は答えない。
「せ、先生?」
 困った祐麒だが、無視もできず呼びかけることしかできない。
「…………」
「えと」
 なぜ、呼びかけても応じてくれないのか。
 だが、女子高校生の姿になったことには何か意味があるはず。だとすると、前回に何があったかを思い出せばヒントになるかもしれない。
 懸命に脳みそをフル回転させて記憶を遡っていくと。
 もしかして、と思うことがあった。
 いやまさか、と思いつつも、このままでいてもどうにもならないととりあえず口を開いてみた。
「…………えぇと、あの……冴ちゃん……?」
 おそるおそるそう言うと、冴香がピクリと反応し、冷たい目で見下ろしてきた。
 ヤバい怒らせた、やっぱり間違えたと思う祐麒だったが。
「……なに、ユウくん?」
 と、冴香は応じた。
「え、え」
 戸惑っている祐麒をよそに、冴香は隣に腰を下ろしてきた。
 そして顔を祐麒の方に向ける。
「私のこと、呼んだでしょ。なに?」
 口を尖らせて怒ったように言う冴香。
 用事があって呼んだわけではないのだが、とりあえず呼びかけ自体は成功だったようである。
 となるとあとはこれからどうするか、だが。
「えーと、そ、そうだ、今、俺のこと、なんかユウくんとか呼びませんでした?」
「……呼んだけど」
「な、なんで」
「だって、私だけ名前で呼ばれるの、ずるいし」
「ず、ずるいって……」
 そもそもこの状況はなんなんだと問いかけたいのだが。
「……練習しておかないと、いけないでしょう」
「練習?」
「二人で出かける時は、"先生"って呼ばないようにって言ったでしょう。だから、練習」
「は、はあ、なるほど」
 と頷いたものの、ということはこの先も女子高校生スタイルになって祐麒と二人で出かけるつもりがある、ということなのだろうか。
「えーと、それじゃあセンセ……」
「…………」
「さ、冴ちゃん」
「なに?」
「ゲームの続き、します?」
「ゲームは休憩するわ。観たい映画があるの」
 冴香は立ち上がり、ブルーレイをセットする。
 そして戻ってきてまた祐麒の隣に座るかと思いきや、なぜか祐麒の正面に立つ。どうしたのかと思っていると、くるりと回転して背を向けると、そのまま祐麒の脚の間に腰を下ろしてきた。

「ちょ、ちょっ、何してるんですかっ?」
「ホームシアターセットで、サラウンドスピーカーからの音が最適なのがこの位置なのよ」
「じゃ、じゃあ、俺が横にずれますよ」
「せっかく観るんだから最高の効果音で観たいでしょ。大丈夫、このソファ奥行きが結構あるから、こうしても私は落ちないから」
 問題はそこではない。
 密着する体、鼻先に触れるさらりとした髪の毛、漂ってくるどこか甘い匂い、この状況で映画に集中するなど無理だと思うが、祐麒がどうこう言う前に冴香は映画を再生する。
 本当に今日の冴香はどうしてしまったのか。確かに学校とは異なって家の中ではだらしない残念な姿を見せるが、このような奇行におよぶようなキャラクターではなかったはず。
 映画が始まると冴香は徐々に祐麒に体重をかけてきて完全に背もたれ扱いになってくる。密着度が強まるのを、映画に集中してなんとか気にしないようとする祐麒。
 冴香がチョイスした作品はサスペンスとミステリーがあわさったもので、鑑賞している方にも緊張感をもたらしてくる。
 静かな場面、胃が痛くなるような静けさの中、主人公の緊張までも伝わってくるような緊迫感。
 祐麒もようやく映画に入り込めるようになっていた。
 ドキドキしながら画面に集中していると。
「――っ!」
 主人公を狙うサイコパス的なキャラクターのいきなりの登場、そしてサラウンドスピーカーからの効果的な音で、祐麒はおもわずビクッと反応してしまった。
 驚かせやがってと内心で思いながら、舌で唇を舐める。
「…………」
 そこで気が付いた。
 ビクッと反応した瞬間、反射的に冴香に抱き着いてしまっていて、しかもその手は冴香の胸を掴んでいた。
 ブラウスの上からでも分かる豊かな胸の膨らみが手の平に伝わってくる。
 とんでもないことをしてしまったと怯える祐麒だったが、冴香は特に何の反応も示さない。
 もしかして、映画に集中して気が付いていないのだろうか。
 理由は分からないが怒られないうちにどうにかしようと、ゆっくりと胸から手を離して下ろしていく。
 ようやく手を下ろしきり、安堵して冴香の様子を斜め後ろから窺うも、画面に集中していて気にしている様子はない。やはり物凄い集中力で気が付いていないのか、あるいは気が付かないふりをして不問に付してくれているのか、いずれにしてもこれ以上余計なことはするまいと画面に目を向ける。
「うわぁっ!?」
 効果音とともに衝撃のシーンが画面で展開され、すっかり油断していた祐麒は、今度は声を上げる程派手に驚き、またしても冴香に抱き着いてしまった。
「…………っ!?」
 しかも今回は、ちょうど腰のあたりまで手が下がっており、ブラウスの下に指が入っていた。その状態で抱き着いた結果どうなったかというと、ブラウスの中に手が入り込んでしまい、更にそのままの勢いでブラジャーの中にまで滑り込んだ。
 ブラウスの上から触れたのとは全く違った、沈み込んだ指が押し返されるような信じられない弾力が伝わってくる。さすがにこれで冴香が気付かないはずはない。すぐに手を離さなければと思うが、硬直して手が動かせない。
「す、すっ、すみません! こ、これは不可抗力で!」
 なんとか手を離そうとする祐麒だったが、そんな祐麒の手を、冴香の手がブラウスの上から抑えてきた。
「せ、先生っ?」
 軽く首を捻って下から睨みつけてくる冴香。
「……さ、冴ちゃん?」
「……ユウくんは、私とこういうこと、したいの?」
「え、こ、こういうことって?」
「だから、エッチなこと」
 冴香の手の力が少し強くなり、祐麒の手が冴香の胸を押す。
「それは」
「……私達、彼氏彼女だものね、高校生なら、彼女とエッチなことしたいって思うの、普通よね」
「え、か、彼女?」
「そう言ったのはユウくんじゃない……学校で、鹿取先生に」
 あれは、場を凌ぐための嘘であり方便であることくらい冴香にもわかっているはず。
 それでも冴香は続ける。
「私も、彼女ってことは、ユウくんの告白にOKしたってことで。ということは、嫌ってことはないはずよね。付き合っていて、家に上げて二人きりなんて、そういう方向になるのは自然な流れよね」
 それってどういう意味なのか。
 考えようとするが、手の平からの感触が強烈すぎてすまく頭が回らない。
 ただ自然と手は冴香の胸を揉み、もう片方の手も動いて太腿を撫でながらスカートの中に入り込もうとしていた。
 駄目だこんなの、止めないとと心のどこかで思っているが、動きを止められない。
「……ま、待って」
 冴香の手が、スカートの中に入ろうとした手を押しとどめた。
 さすがにぶっとばされるかと思う祐麒だったが。
「ちゃんと、順番を踏んで欲しいかな」
「じゅ、順番?」
 すると冴香はゆっくりと首を捻って祐麒の方に顔を向け、何かを訴えるような目で見つめてきた。
 え、まさかと思っている祐麒の目の前で、冴香は目を閉じた。
 心臓が早鐘を打つように脈動する。
 視線は冴香のピンク色の艶やかな唇に吸い込まれる。
 顔を近づける。
 あと何センチかで、冴香の唇に触れる――

 

「――たっだいまー! あれ、祐麒くん、姉さんいないの?」
「お帰りなさい、理玖さん。先生なら、電話がかかってきて部屋に」
「ふぅん。あ、この映画、あたしも観たかったやつ!」
 テレビ画面に映っている映像を見て理玖が声を上げる。
 その理玖の姿を見ながら、内心の動揺が悟られていないか祐麒は不安になる。
 冴香と唇が触れる直前、部屋の扉の鍵を回す音が響くのが耳に届くと、冴香は弾かれたように祐麒から身を離し、素早く自室に駆け込んで行った。直後、理玖が姿を見せて中に入ってきた。
「一緒に映画ってことは、仲直りできたの?」
「え、ええ、多分」
「そう、それなら良かった……て、あ、もしかしてあたし、お邪魔虫だった? 映画観ながら良い雰囲気になって、このあとシャワー浴びてベッドインって感じだった?」
「何言ってんですか、そんなことないですよっ」
「しまったー、もし二人の雰囲気が険悪になっていたらと思って早めに切り上げてきたんだけど、その前に状況を聞いておけばよかったね」
「いえ、別に、だから」
「……ホントにそうだよね。なんであたし、急いで帰らないとって思ったんだろ……」
 理玖が不思議そうに首をかしげている。
「お帰りなさい、理玖」
 すると冴香が部屋から出てきた。ジャージ姿で。
「姉さん、またそんな格好で」
「いいでしょ、自分の家なんだから。それより福沢くん、もう夜も遅い時間だから帰りなさい」
「あ、はい」
 言われて祐麒も立ち上がる。
 冴香に目を向けると、いつもの冴香に戻っているようで、先ほどのはなんだったのだろうかと思ってしまう。
「えー、帰っちゃうの? 泊まっていけばいいのに」
「そんなわけにいかないでしょ」
「はい、失礼します」
「そこまで見送るわ」
 冴香が一緒に玄関先まで出てくる。
 そして、理玖が近くにいないことを確認して冴香は言った。
「……さっきのは、ちょっと福沢くんをからかっただけ、ですからね」
「え?」
「ただの冗談、悪ふざけです。本気でするわけないですから」
「そ、そうですよね、本当にびっくりしましたから」
「…………」
「…………」
 微妙な空気を残したまま。
 祐麒は逃げるようにして家に帰ったのであった。

 

 

おしまい

 

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