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SF 書評

【ブックレビュー】天のろくろ(著:アーシュラ・K.ル=グイン)

更新日:

【作品情報】
 作品名:天のろくろ
 著者:アーシュラ・K.ル=グイン
 ページ数:314
 ジャンル:SF
 出版社:サンリオ

 おススメ度 : ★★★★★★★☆☆☆
 復刊して欲しい度 : ★★★★★★★★☆☆
 こういう人におススメ! : 世界改変SFとか興味ある人

 

■作品について

自分の見た夢が現実になってしまうという青年、オア。
オアは治療のために精神医のヘイバー博士を訪れる。
しかし、ヘイバー博士はオアのこの能力を使用して世界を改変しようとする。
何が「夢」で何が「現実」なのか?

■良かった点

作者のアーシュラ・K.ル=グインといえば「ゲド戦記」が有名ですが、SF作品の方が主でしょうか?
その中でもこの「天のろくろ」は傑作として評価が高い。
読んでみればそれも頷けるもの。
現実とは異なる夢を見ると、その通りに現実が改変されてしまう。しかも、人々の記憶も含めて改変される。
なぜ、そんなことになってしまうのか。
そのメカニズムが重要なのではない。それを活かして世界を改変してしまおう、というヘイバー博士の思想にこそ物語の根幹が含まれているのだろう。
ヘイバー博士は、世界を自分の思うがままに改変して独裁者になろうとか、そういうわけではない。
より良い世界に改変しようとするのだが、それがもたらす結果とは。

人口過剰となり食料も十分に存在しない世界。
それを改変しようとして、汚染癌によって60億の人々が死滅していた世界になるとか、なんともはや。
増幅器を作り出し、夢の威力を広げて世界改変を行ったヘイバー博士はマッドサイエンティストなんだろうが、その結末はまさにマッドなものであった。

夢と現実が混ざりあうのは、なんとなくディックらしいところ思わせる。
人の力で自然を超越することはできない。
ほんのちょっとした改変が全体に大きな変化をもたらすバタフライ・エフェクト。
さまざまな要素をもたせた世界改変SFものとして読みごたえは十分。

サンリオSF文庫版の表紙、崩れゆく塔の群れの絵がまた秀逸。

■ここが改善できるともっとよかったかも?

問題は、入手しづらいいというところでしょう。

 

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