書評と主にマリア様がみてるの二次創作(旧:よしのXブレード)

マリア様の愛読書

ノーマルCP マリア様がみてる 三奈子

【マリみてSS(三奈子×祐麒)】一緒がいいね

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~ 一緒がいいね ~

 

 

 ある日曜の午後、小林正念は駅の方に向かって歩いていたが、少し不機嫌であった。不機嫌な理由というのは単純なもので、昨日の合コンで成果が得られなかったからである。大学で入ったサークルの合コンで、近くの女子大の女の子達も参加している。参加者の中で一人、かなり自分好みの女の子がいて、小林としてもかなり張り切ったものの、二次会に向かう途中で別の先輩とその女の子の姿が消えてしまったのだ。小林は落ち込んだ。昨日の合コンはかなり当たりで、その女の子以外もなかなか粒ぞろいだったのだが、その女の子を先輩に(おそらく)お持ち帰りされたショックで、二次会ではすっかり覇気を無くし、いつもの如才なさを無くし、完全に敗北したのだ。
 頭を振って、嫌な記憶を振り払う。そうだ、自分は第一に勉学のために大学に入ったのだ、彼女を作って遊ぶのはまだ先でもいいと、自分自身を納得させる。
 しかし、こういう気分のときには、とある予感がする。そう、向かっている駅前と言えば待ち合わせのメッカ。そして、待ち合わせと言えば。
「あら、小林くんじゃない。お久しぶり……でもないかな?」
 小林に向けて手をひらひらと振ってきたのは、いつの間にか出来ていた小林の愛すべき彼女……なんかではもちろん、無い。
「こんにちは、三奈子さん。そうですね、俺たちの卒業式以来ですかね」
 友人である福沢祐麒のラブい彼女、築山三奈子であった。祐麒とは、お互いに別の大学となってもメールなどで情報交換などはしている。特に、祐麒の周囲や三奈子の友人で素敵な女性が居たら教えてくれと頼んである。幸せは、ちゃんと周囲の人間にもあってしかるべきだろう。
 三奈子は、レースの施されたホワイトとピンク、色違いのペチスカートを重ねあわせ、トップスはやはりホワイトのカットソー。上から淡いオレンジのカーディガンをあわせて白とのカラーアクセントをつけている。ボリュームのある髪の毛を今日はストレートにおろし、いつもどおりの笑顔。いつ見ても、可愛いと思い、そして羨ましいと思う。
「今日も、ユキチとデートですか?」
「うん、まあね。小林くんは?」
「ふっ、俺はさみしい一人身、駅ビルに暇つぶしにやってきただけですよ」
「ふーん、小林くん、モテそうなのにね……ふぁ」
 言いながら、手で口元を隠して欠伸をする三奈子。
「随分と眠そうですね、寝不足ですか?」
 まだ祐麒も来ていないようだし、小林も暇を持て余していたので、ここはお喋りをするべきだろうと三奈子の横に並んで話しかける。何しろ、三奈子との会話は刺激的で、小林ですら知らない祐麒の性癖や趣味などが分かるのだから。
 三奈子はもう一度、欠伸を噛み殺し、少しだるそうに頷いた。
「うん、実は昨日飲み会でね、盛り上がったのはいいんだけれど、終電逃しちゃって」
「あらら」
「それでね、タクシー使って帰るのもなんだしって、祐麒くんと二人でね、ちょっとしけこんじゃって……ふああ」
 そら来たと思うが、これくらいでは別に驚かない。祐麒と三奈子は恋人同士なのだし、ごく自然なことだろう。羨ましくはあるが。
「それでね、結局、朝までずっとぶっ通しでね」
「朝まで、ぶ、ぶっ通しで、してたんですか?」
「うん、だってお金払っているわけだし、寝ちゃうのも勿体ないって祐麒くんが。そういうところ、ちょっと貧乏根性っぽいよね、ふふ」
「あ、あいつ、三奈子さん相手だと性格変わるのか? ……あれ、でもそうすると、なんで今、待ち合わせなんてしているんですか?」
「ああ、一応、一度帰って着替えようってことになって。ほら、服も昨日のままじゃなんだし、よれて皺にもなっちゃってたし、祐麒くんのせいで少し汚れちゃったし」
「ま、まさか、着衣プレイですか」
 小林自身の経験がないだけに動揺はするが、これくらいなら持ちこたえる。そう、知識だけなら色々と小林だって持っている。本とかDVDとかで。
「でもさすがに、朝までってのは疲れちゃった。今もまだ、腰と、お尻が痛いわ……私、初めてだったのに」
「え、おし……っ」
 さすがにここで、小林は絶句した。
 いや、知識としては知っているが、まさか、祐麒がと。
「祐麒くんがさ、絶対にイイから、きっとハマるからって、強く言うから……まあ、私も少しくらいならって、ちょっとは興味もあったし」
「そそそそ、そうなんですか」
「確かに、実際にやってみると、意外とすんなり入ったけど。思っていたよりも良かったし、まあ、たまになら、またやってもいいかなとは思ったかな。逆にハマっちゃいそうで、怖いかも」
 あははと、明るく笑う三奈子だが、小林は顔を真っ赤にしてまともに返答することが出来ない。
 なんということか、とうとう祐麒は、そっちにまで進んだのか。そして、そんなことを平然と話してくる三奈子。今どきの女の子は、しかもリリアン育ちのお嬢様のはずなのに、ここまで開け広げでいいのか。いや、これはきっと祐麒の親友だと小林のことを信頼してくれてのことに違いない。
「だ、だ、だ、大丈夫ですか、その、お、お、おし、おし……」
「ああ、お尻? うん、ちょっとまだ、ね」
 と苦笑いしながら体をちょっと捻り、手でお尻をさするような仕種を見せる三奈子。爆発しそうになる小林だが、その顔を見て何を勘違いしたのか、三奈子は笑いながらまた口を開く。
「あ、でもね。初めは確かに、祐麒くんに色々と任せていたけれど、後半では私も慣れてきて、気分も良くなってきたから、私の方からガンガンいったりもしたんだから」
「ゆ、ユキチのやつは、どんな感じでしたから?」
「さすがに後半は疲れちゃったみたいだけど、私が励まして元気出してもらって、最後にもうひと盛り上がりして終わったかな」
「な、なんというか……いえ、何も言いますまい。俺は、そこまであけすけに言うことができる三奈子さんが、凄いと思います」
「は?」
 きょとん、と首を傾げる三奈子。きっと、三奈子にとってはごく自然なことなのだろう。器の大きさを感じさせられる。
「それじゃ俺、もう行きますので」
「あれ、祐麒くん、もうすぐ来ると思うよ。せっかくなんだから、会っていけば?」
「いえ、あいつと顔合わせたら、どんな顔していいのか今、よくわからなくて」
「ふーん? まあ、いいや。それじゃあまた皆で会おうよ、小林くん」
「は、はい。それじゃ、また……」
 そうして小林は、なんともいえない敗北感に包まれながら駅ビルの中に消えていったのであった。

 

 小林が駅ビルに消えてから三分ほどして、祐麒が姿を現した。
「お待たせ……ふあぁ」
「あはは、大きな口」
 思い切り大口を開けて欠伸しながら歩いてきた祐麒を見て、三奈子が笑う。
「あーあ、もうちょっと早く来ていれば、さっきまで小林君がいたのに」
「え、そうなの。なんだあいつ、待っていればよかったのに。用事でもあったのかな」
「さあ? でもなんか、祐麒くんと顔を合わせづらいみたいなこと言っていたよ。何か、喧嘩でもしたんじゃないの?」
「そんなことないんだけどな……三奈子さん、何か変なこと言ったんじゃないでしょうね」
「言ってないよー、変なことなんて。ちょっと昨日のことを話しただけだもん」
「ああ、昨日のことですか……さすがに疲れましたね」
 体のコリをほぐすように肩をまわし、腰に手をあて、さらに腕を上方にあげて背骨をのばす。ほぼ徹夜なので、まだ体にダルさが少し残っている。
「でも楽しかったね。終電逃してネットカフェなんて、うん、たまにはいいよね、そういうのも」
「ずっと座りっぱなしで、さすがに腰とケツが痛いですけどね」
「あはは、私も」
 笑いながら、並んで歩きだす。
「でも、ネットワークゲームって結構、面白いんだね。ハマっちゃう人が出るのも分かる気がする」
「結局、三奈子さんの方が最後は熱中しちゃって、最後にもう1クエストやろうってきかないからなぁ」
「えーっ、だってあのクエスト、面白そうだったじゃん! 実際、凄く盛り上がったし」
「そうだけどさ。さすがに疲れてたし、睡魔も最高潮だったから」
「だからってコーヒーを私の服にこぼすなんて、やめてよねー、もうだらしないぞ、若いのに。締切り前は2徹、3徹なんて当たり前なんだから」
「なんの話ですか」
 そんな風に他愛もないことを話しながら、歩いて行く。だけど、どうでもいいような話なのに、それだけで物凄く楽しくて、幸せな気分になることができるのも事実。大学生になって、三奈子と同じ大学に通うようになって、何かが変わるかと思ったけれども、今のところは特に大きな変化はない。
 同じ大学といっても、一年生と二年生で学年も違えば、学部、学科だって異なる。同じ講義を受けることも今のところ無いし、時間割だってなかなか合わない。アルバイトもしているから、講義が終わったからといって毎日顔をあわすわけでもない。昼休み時間は共通だが、昼は昼で同じ学科の友人たちと過ごすことが多い。キャンパスは同じだから、顔を合わす機会は増えたけれど、一緒にいる時間がいきなり大きく増えたという感じは全くしないのだ。
「うー、眠い。しかし、よりによって今日が最終日ですもんね、眠いからって来ないわけにはいかないですからね」
「そうそう、行けば眠気も吹っ飛ぶって」
 二人が向かっているのは、とある国宝の展覧会。通常は奈良や京都など、各地の寺に保管されている国宝が、初めて寺外に出て展覧会として一般向けに展示されるのだ。記者を目指す三奈子としては放っておけないし、祐麒としても興味があった。本当はもっと早い時期に行こうとしていたのだが、なんだかんだと日が過ぎて、とうとう最終日となってしまったので、こうして徹夜明けの体を引きずってきているというわけである。
「――うわ、こりゃ、予想以上の人ね」
「な、なんでこんなに」
「甘いわね、ネットとか新聞、見ていないの? 今ね、ブームなんだから。おまけに今日が最終日だし」
「徹夜明けの体にはキツいかも」
「ほら、ぐだぐだ言っていないで、行くわよーっ」
 俄然と元気を取り戻してきた三奈子に手を握られ、引っ張られるようにして博物館の中に足を踏み入れる。
 館内は人と熱気に包まれていた。展示されているものはどれも確かに凄く、素人の祐麒が見ていても楽しめるものであったが、あまりの人の多さで、体調が完全とは程遠い今の状態にはちょっときつかった。
 一方の三奈子はすっかり元気を取り戻し、目を輝かせて展示物を見ていた。そんな風に二人の間に差があったせいだろうか、ふと気がつくと、いつの間にか三奈子の姿が近くに見えなくなっていた。
「……あれ、三奈子さん?」
 周囲を軽く歩いてみても、それらしき姿が見えない。いつ頃まで一緒にいただろうか。携帯で呼び出そうとして、館内では携帯電話使用禁止であること、さらにメールしようにも、そもそも館内では圏外となっていた。
 仕方ないと思いつつ、展示を見ながら三奈子を探すことにする。最悪、入口のところで待っていれば出会える筈であるから、慌てる必要もない。
 そう、慌てる必要などまったくないのだが。
「…………」
 どこか祐麒は落ち着かなかった。
 三奈子と一緒に出かけているのに、三奈子が隣にいない。もちろん、今までだってトイレに行くとか、ちょっと見せの中を見て回るとかで離れることはあったけれど、それはあくまで行き先が分かったし、祐麒の見える範囲内だった。しかし、今は違う。どこにいるのか分からない。そのことが、妙に祐麒を落ち着かなくさせる。
「たく、子供じゃあるまいし……なんなんだ俺は」
 展示物を見ても全く集中できない。
「あー、もう三奈子さんはどこ行ったんだ」
 と、三奈子のせいにして、先に三奈子を探すことにした。

 

 簡単に見つかるだろうと思ったが、意外と館内が広いのと、人が多いのとで、三奈子の姿が見当たらない。どこかで動かずに待っていれば、館内をすべて見て回れば必ず見つかるはずだが、じっと静かにしているという性分でもない。
 そんなこんなで、人の群れを縫うようにして歩いていると。
「あれっ、福沢君じゃない?」
「え?」
 声のした方を見れば、同い年くらいの女の子が二人。一人は茶色いロングヘアーでおっとりした感じ、もう一人は黒髪のセミロングで目の大きな女の子。
「福沢君もこういうの興味あったの? へえ、少し意外」
「あの、えっと」
 随分と親しげに話しかけてくるところをみると、明らかに大学関係と思われるが、誰だか分からない。
 こう親しく話しかけられると、名前を聞くなんて雰囲気にもなりづらく、どうしようと考えているうちに話が続いて行く。
「ところで福沢君は一人で来ているの? だとしたらかなり好きなんだねー。ね、一人ならさ、良かったらあたし達と一緒に行かない、ね、まこもいいわよね」
「え、うん、私は構わないけれど」
「ね、どお?」
 と、上目づかいで見つめてくる。
「いや、友達と来ているから……えっとさ、それより申し訳ないんだけど、えー、ごめん、同じ学科?」
 これ以上は祐麒も辛くて、思いきって訊いてみた。
 すると、目の前の黒髪の女の子の笑顔が一瞬、引きつったような気がした。
「……え? あたしのこと、覚えていないの?」
「ご、ごめん」
「同じクラスの雪代沙紀、この娘が真中まこと。この前のクラスの飲み会でも一緒だったし、お酒も注いであげてたんだけど」
「あ、そ、そうだっけ、ごめん」
 少し気まずくなる。見れば黒髪の子は瞳が大きく、顔立ちもすっきりしていてなかなかの、いや、かなりとびきりの可愛らしさ。近くにいたなら覚えていそうなものだが、男子高育ちで同世代の女子との生活に慣れておらず、女子を覚えるのが苦手だった。また、女の子と接すること自体にも慣れておらず、あまりまじまじと顔を見つめることなどできなかったのだ。リリアンの女子であれば、それでもまだ交流があったが、リリアンのお嬢様と他の学校の女の子では随分と異なるというのもある。さらに加えて三奈子という存在もあって、他の女子のことはあまり意識野においていなかった。
「……えっと、じゃあ、改めてお近づきのしるしに、このあとあたし達と」
「あっ、と、俺もう行かないと。それじゃあまた学校で、ええと、月白さん?」
 これ以上話をしていてもきまずくなるばかりと判断し、祐麒は内心で申し訳ないと思いつつも、二人の女の子に背を向けて逃げ出したのであった。
 そして。
「沙紀ちゃん、えっと……」
「ふ、ふふ……」低い笑い声が、沙紀の口から洩れる。
「うあぁ……沙紀ちゃん、火がついちゃった……?」
 二対の瞳が背中に向けられたことなど、祐麒は知る由もないのであった。

 

 その後、どうにか三奈子を探し当てたものの、かなりの時間をロスしてしまったし、体力も使ってしまった。昨日は三奈子の友人達に誘われての飲み会で、さらにネットカフェで朝までオンラインゲームをプレイして、ほとんど寝ていない。また明日から大学の講義も始まるし、今日は早めに切り上げることに決めて、適当なファミレスに入る。
「あー、でも春休みは残念だったねー、旅行」
「仕方ないじゃないですか。それでも、楽しかったんでしょう?」
「ま、そうだけどね」
 食後のデザートで注文したパフェにスプーンを差し込みながら、三奈子が言う。
 この春休み、祐麒の卒業記念旅行にでも行こうと話を持ちかけられたのだが、運悪く、小林たちと計画していた卒業旅行と時期がかぶり、三奈子の誘いに乗ることはできなかったのだ。祐麒とて残念ではあるが、こればかりは仕方ない、男の友情は大切だから。
「でもさ、そしたら夏はどこか行こうね。ほら、私も祐麒くんも受験生じゃない夏って、初めてじゃない」
 パフェのアイスを美味しそうに頬張りながら、提案してくる三奈子を見て、今年はもう三度目の夏になるのかと改めて思ってしまう。
 しかも今年は二人とも大学生、受検というような縛りもなく、自由を謳歌できる夏休み。三奈子が言うように、旅行にだって行くことができる。まだ先のことなのに期待が膨らむ、と同時に、ふと思うこともある。
 これだけ長い付き合いだというのに、いまだにキスすらしたことがない。いや、正式に告白したり、されたりということもない。はっきりしなければ、といつも思うものの、三奈子を前にすると何もできないのが現実。祐麒だって健全な青少年、三奈子のような魅力的な女の子と一緒にいて、何かしたいと思うのは当然のことなのだが。
「祐麒くんのプリン・ア・ラ・モードも美味しそうだな」
 羨ましそうに、身を乗り出してくる三奈子は、当然のように口を開ける。祐麒は何もいわずにスプーンで掬い取り、三奈子の口に差し入れてあげる。満足そうに食べる三奈子を見て、続いて三奈子から差し出されるパフェを今度は祐麒が食べる。はっきりいって、未だに恥ずかしいことに変わりはないが、さっさと済ませてしまうのが一番だと、長い付き合いの中で悟ったのである。別に、三奈子に食べさせるために、三奈子が好きそうなデザートを注文しているわけではないぞと、誰に言うでもなく言い訳する。
 デザートも平らげ、店の外に出ると、伸びをして疲れた体をほぐす。
「うーんっ、しかし、祐麒くんには参ったね。はぐれちゃうなんて、もう」
「えーっ、あれは三奈子さんの方がはぐれたんでしょう」
 帰り道の言い合いも、コミュニケーションの一つ。
「んーと、じゃあ、さ」
 右手を頬に当て、ちょっと考える仕種。
 そして。
「私がはぐれないように、ちゃんと掴まえててくれないと」
 言いながら、手を握ってきて微笑む。
 かーっと頬が熱くなり、思わず横を向いてしまう。どうしてこう、自然にというか、平気な顔をして、そんなことを言えるのだろうかと思う。いつもそうだから、祐麒の方から伝えることが出来ない、というのはやはりただの言い訳か。
 ただ、言葉で伝えられない以上、態度で示すしかない。つないだ手を離さないように、握り返す。
「そういえば、ゲームの続き、今度やります? せっかく始めたんだし」
 恥ずかしさが抜けないので、少し強引に話題を変える。
「んー、そうねえ、まあ、暇な時にでも。確かに面白いことは面白いし、時間を忘れちゃうのも分かるね、あれは」
「なんだかんだで三奈子さんも楽しんでましたもんね。でも、気をつけてくださいよ。ハマりすぎて引きこもりとか、実際にいますからね」
 一日十時間以上とか、どういう生活をしているのかと思うようなプレイヤーが、世の中には沢山いるとも聞く。祐麒とてゲームは好きだが、そこまではやらない。
「大丈夫、だいじょーぶ」
 気さくに、三奈子。
「本当ですか?」
 昨日、というか今日のプレイを見ていると、三奈子は結構ハマるタイプではないかとも思ったのだが。
「だって、ゲームの世界よりも、こうして祐麒くんと一緒に遊んでいる現実の世界の方がずっと楽しいもん、だからだいじょーぶっ」
「――――っ」
 またも不意打ち。
 またも直球ど真ん中。
 どうして、そんな殺し文句というか、恥ずかしい台詞を平気で、本人を目の前にして、口にすることが出来るのだろうか。自分だったら、とても出来ない、なんて思っていると。
「……え、何、まさか祐麒くんはネットゲームの世界の方が、楽しいの?」
 驚いたように、というか、不安そうな顔をして見つめてくる。
 そんな表情をされてしまうと、祐麒としても困る。
「いや、俺は……」
 頬に、三奈子の視線。
「お、俺も、三奈子さんと一緒にいる方が、そりゃ楽しいですけど」
 言ってしまった。ほんの10秒ほど前に思ったことを自ら覆して、口にしてしまった。恥ずかしくて、視線をそらすけれど。
「あー、良かった。それじゃあ、二人とも問題ないね」
 安堵して笑う三奈子が視界に映ると、もういいかと思ってしまうのもいつものこと。一人だけ照れているのが、なんだか馬鹿らしくなってくるから。
「あー、でも俺も明日は朝一からだ。しかも遅刻出来ないんだよな、玄さんの講義。起きていられるかな」
「それなら私、モーニングコールしてあげようか?」
「三奈子さん、起きられるんですか?」
「失礼ね、締切り前は徹夜なんて当たり前だって言ったでしょう。これでも朝は得意なんだから」
 春の夜。

 心地よい夜気に包まれながら、二人で進んでいく新たな生活。

 はぐれないようにと、小さな手を少しだけ強く握りしめて歩いた。

 

おしまい

 

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