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【マリみてSS(加東景)】加東景の酒池肉林

更新日:

~ 加東景の酒池肉林 ~

 

 なんとも心地の良い感触に包まれていた。これは天国か極楽か、はたまたシャングリラか桃源郷か。こんなにも気持ちの良いものは、今まで感じたことも無かった。温かくて柔らかくて、すべすべで吸い付くようで。
 無意識に、景はもっとその感触を味わいたくて手を伸ばし、肌を密着させ、追い求める。
「んっ……あ……はぁっ……」
 悩ましげな声が耳をくすぐる。
 それすらも、気持ちよさを倍増させるかのようで、ついつい聞きほれてしまう。脳髄がとろけるような、そんな気持ち良さ……
「ん……」
 と、そこで目が覚めた。
 少し、頭痛がした。意識がはっきりとせず、目を開けようとするがなかなか上手くいかない。ゆっくりと、薄目を開く。室内は薄暗いが、レースのカーテンから日差しが漏れていて何も見えないというほどではない。ただ、眼鏡がないため視界が少々、ぼやけている。
 ようやく意識が少ししっかりしてきたところで体を起こそうとして、景は自分の上に何かが覆いかぶさっているような格好になっていることに気が付いた。
 どかそうとして、手をかける。
「んふっ……」
 何か、変な声が聞こえた。
 あと、布団にしてはやけに柔らかな感触が伝わってきた。なんだこれ、と思ってさらに手を動かしてみると。
「ふあっ……ああっ……」
「ふぇ?…………な、ななななっ、何っ?!」
 景の顔のすぐ目の前に、誰かの顔があった。そう、景の上に覆いかぶさる格好になっていたのは、人間だった。そして手に伝わってくる柔らかさというのは、その人の肌の感触だったのだ。
「だだ、誰っ?!」
 少女だった。そして裸だった。いや、下に目をうつすと、なぜかハイソックスだけ履いている。マニアックだ。
 景自身はといえば、かろうじて裸ではない。だが、上は男物のシャツを羽織っているだけで胸ははだけている。下はタンガを身につけていたが、ちょっとばかりずれていていい感じにエロチック。
 一体、ナニがあったというのでしょうか。
 そして、ここはどこなのでしょうか。
 混乱する頭で必死に考えていると。
「んんっ……」
 少女が、可愛らしい声で目を覚ました。
「……あ、おはようございます、景さま」
「お、おはようございます」
 どうやらこの少女は、景のことを知っているようだった。景はといえば、この女の子に見覚えなどない……いや、どこかであった記憶がある。つい最近、そう、確か……
「あ!えと、志摩子、ちゃん?」
「はい」
 そうだった。サトーさんの妹で、藤堂志摩子ちゃん。この前、サトーさんに紹介してもらった。だが、なぜに志摩子ちゃんがこんなあられもない格好で景と一緒にいたのか。というか、昨夜は何があったのか。
「えーと、志摩子ちゃん?なんで、私たち一緒にいるのかな~?」
 と、聞いてみると。
「覚えていないんですか?昨日、景さまは体調が優れないのにお出かけになられて。帰る途中で悪化してバス停で座り込んでいたんです。そこへ偶然、私が通りかかって。景さまのご自宅へ帰るよりも、ここの方が近かったのでお連れしたんです」
「そ、そう……そういえば、そうだった気も……で、でも、こんな状況になっていることの説明にはなっていないわ!」
 景は、慌ててシーツを体に引き寄せる。
 志摩子ちゃんは、特に体を隠そうとしない。華奢な体なのに、ボリュームのある胸が目に眩しい。ああ、そうか、あの柔らかくて温かくて気持ちの良かったのは、志摩子ちゃんの体だったのねと改めて思う。あんなにも気持ち良いのであれば、女の子の体を抱きたくなる気持ちも分かる……って、何か違う方向に考えが?!
 と、意味なく妖しい思考に頭を抱えていると。
「景さま、ひどい熱でしたから……その、温めたのです……私の肌で」
「ぐはあああああああぁっ?!」
 志摩子ちゃんの一言にかなりのダメージを受けた。
 しかし、志摩子ちゃんは容赦なく追撃する。
「最初は、静かに抱き合って温めていただけなのですが、そのうち景さまは、汗をたくさん流せば熱も下がると仰られまして……」
「ぐふううううううううぅっ?!!」
 志摩子ちゃんの連続コンボはまだ終わらない。
「あんなに激しく……景さまが汗を出さなければいけなかったのに、私の方ばかり……いえ、汗だけでなく色々な汁が」
「や、やめて志摩子ちゃん!あなたみたいな美少女が、そんな言葉を口にしてはダメ!」
 泣きながら、景は志摩子ちゃんに縋り付いた。
「そう言われましても……私が嫌だと言ったのに、景さまはどうしても見たいって許してくださらなくて、私の恥ずかしい瞬間を」
「やめてーーーーー!!!!お願い、許して!」
 嘘だと言いたいが、景には全く記憶がなかった。しかも、シーツを見ると……その、事実といえなくも無いような痕跡が見えるような見えないような。
「と、とにかく、とりあえず何か着てちょうだい」
「そうですね」
 ハイソックスだけ履いている美少女の姿というものは、なんとも言いがたいものがあるわけで。
「でも、どうしましょう。昨日の服は、すっかり着られる状態ではなくなっているので」
 なぜ、そんな状態になってしまっているのかは敢えて問わず。景は、手近にあった服っぽいものを手渡した。
「こ、これでもとりあえず着て」
「はい。えと、これでも、どうやって身につけるんでしょう」
「ああもう、ほら着せてあげるから万歳して」
「はーい」
 素直に万歳をする志摩子ちゃんに、景は服をすっぽりと頭からかぶせてあげる。
「ちょ、ちょっと待ってください。髪の毛がひっかかって」
「あ、ああ、ごめんなさい」
 長くて綺麗な髪の毛だったけれど、こういうときにはちょっと邪魔だ。景は、丁寧に髪の毛を整えながら、服を着させてあげる。
「そういえば、ここってどこなのかしら。志摩子ちゃんのお家?」
 いや、だが確か志摩子ちゃんの実家はお寺だといっていた。ここは明らかに、ただのアパートだった。
「あ、はい、お姉さまの部屋です」
「そう……って?」
「景さまの家よりも、私の実家よりも近かったし、このまえ合鍵をこっそり作成していたので、お邪魔しました」
「さ、サトーさんの部屋?」
 言われてみると、どこか見覚えがあるような気がした。前に何回か、上がったことがある。
 だが、そうなるとこの部屋の主は一体どこにいったのか。
 嫌な予感がしたが、恐る恐る聞いてみた。
「あの、志摩子ちゃん?」
「はい」
「で、その肝心のサトーさんはどうしちゃったのかな~、なんて」
 すると志摩子ちゃんは顔だけ振り向いて、天使のような笑顔を浮かべて、
「はい、私と景さまの記念すべき初夜には邪魔でしたので、縛ってしまいました」
「…………はい?」
 聞き間違えたのだろうか。おおよそ、この美少女の口から出るにはふさわしくない言葉が耳に届いたような気がした。
 しかし、志摩子ちゃんは相変わらず笑顔で。
「縛って、そちらに転がして」
「―――――え」
 見たくはなかったが、ゆっくりと首を向けると。
 アパートの奥、さして広くないキッチンに、暗闇に溶けるようにして人影が浮かんで見えた。
「さ、サトーさんっ?!」
「――――――――!!!!!」
 まさしく、佐藤聖さんがいた。
 Tシャツにショーツという格好の上から、全身の動きを封じるようにロープで縛られ、口には何やら押し込められている。
 どんな体勢で縛られているかは……本人の名誉のために言わないでおこう。
「し、志摩子ちゃん、あなた一体?!」
「きゃっ?!け、景さま、痛い……」
 つい、本能的に恐怖を感じて志摩子ちゃんの動きを封じるように、腕を掴んで後ろに持ってきてしまった。
「あ、ご、ゴメン」
 と、そこで。
「おはよう、聖。今日は新鮮なお野菜を持ってきた――」
「あ、蓉子さま」
 アパートのドアを開けた蓉子さんの動きが止まり、手に持っていた紙袋が床に落ちて中から野菜や果物が転がり出る。
 景は心の中で泣いた。
 いや、なんとなく、そんなことになるんじゃないかとは薄々、感じていたのだけれど。
「けっ、けけけけ、景さん?!」
 部屋の中に展開されている光景はといえば。
 上半身は生肌の上から中途半端にセーラー服を着て、下半身はハイソックスだけという志摩子ちゃん。その志摩子ちゃんの動きを封じるように抱きかかえている景がいて。景もほとんど裸に近い格好で。
 玄関からも見えるキッチンには、ロープで縛られたサトーさんが転がって唸っていて。
 シーツは乱れ、変な痕はあったりして。
 そりゃもう、一体どんなことがあったのか想像するだに恐ろしい情景が、この狭い1Kのアパートに広がっているわけで。
「あ、あのね、蓉子さん。違うの、これは」
 そして、何故か浮気現場を見つかったかのように弁明しようとする景自身がいて。いや、浮気というには凄すぎる状態ですけれど。見た目は。
「な、なっ……くっ」
 身をぶるぶると激しく震わせる蓉子さん。
 そして。
「わっ、私だけ、仲間外れっ?!」
 顔を真っ赤にして、涙目になって激昂する。
 ――いや、怒るところ違うでしょう?!
「わ、私もっ。私も、景さんになら縛られても!」
「なっ、何が『縛られても』じゃーーーーーーーーーーっ?!!!!」
「あンッ、い、痛い景さま……もっと……」
 わざとらしい声を出す志摩子ちゃん。
「ず、ずるいわ、志摩子も聖もっ」
 サトーさんは、キッチンの床で涙を流している。
 蓉子さんは、景と志摩子ちゃんの方に向かってこようとして、でもブーツがうまく脱げずに足が引っかかり、バランスを崩してダイブする。
「ぎゃーーーーーっ?!!!」
 もつれるようにして倒れる三人。
「よ、蓉子さま。今は私と景さまが楽しんでいたのです。邪魔しないでください」
「な、何よ。どうしてなの景さんっ?わ、若さかしら。それとも、セーラー服?だったら、私だってセーラー服くらい」
「だったら、じゃあない!いい加減に頭冷やせ馬鹿薔薇様が!それにそもそも、セーラー服は私の趣味じゃない、サトーさんのだしっ!!!」
「じゃ、じゃあ、ブレザー?」
「ちっがーーーーう、この安本丹がーーーーーーっ!!!」

 景の絶叫が、聖の安アパート内に響き渡る。

 

 加東景は、今日も絶好調であった。

 

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