ノーマルCP マリア様がみてる

【マリみてSS(景×祐麒)】めしませ☆ティーチャー 第一話

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 なんでこんなことをしなければならないのかと、内心でため息をつく。ちらりと後ろを振り返ると、数人の男達が気合いのこもった目で、祐麒のことを見送ってくれている。
「諦めろよユキチ、とにかく当たって砕けろだ」
 隣を歩く小林が、半ば悟りの境地に達したような表情で、肩を叩いてきた。
 六月に入って最初の週末、天気は微妙に晴れ、街中は適度に人でにぎわっている。
 今日は、花寺と親交のある緑ヶ山学園高校の生徒会メンバーと、学園行事についての打ち合わせを行う日だった。しかしお互いに男子高校生、打ち合わせなど適当な感じで終わってしまい、なぜかいつの間にかボウリング対決が開催された。
 それ自体はまあ良かったのだが、敗北した花寺学園生徒会執行部に対し、勝者である緑ヶ山学園高校から、罰ゲームの指令が下された。もともと、負けた方が罰ゲームという決まりはあったのだから、ルールに従うのは仕方がない。しかし、その指令というものが。
「……ナンパなんて、俺、したことないよ」
 可愛い女の子をゲットしてきて合コンを開催せよ、という無謀なもの。何せ、相手も男子校であるからして、女の子には飢えているというわけだ。
 高校三年となり、大学受験を控えている身だというのに、何をやっているのだろうか。本当なら生徒会も引退しているはずなのだが、去年の日光・月光兄弟のように、祐麒も小林も生徒会の重鎮みたいな感じでいまだに居残っている。いや、後輩に要請されて居残らされている、といった方が正しいか。
 頼りにされるのは嬉しいが、罰ゲームでまで頼ってくるというのはいかがなものか。普通、こういうときは後輩の方が引き受けるべきだろうに、とてもじゃないがナンパなど出来ないと泣きごとを漏らしてきて、仕方なく祐麒が突撃する羽目になっている。
「まあまあ、ここで可愛い女の子を口説いて、「さすが先輩!」、というところを見せてやろうぜ」
「そんな「さすが」はいらん」
 小林と小声で言い合っている間にも、後ろからは、「さっさと声かけろ」と言わんばかりの圧力がひしひしと伝わってくる。
 そんなに女の子とお近づきになりたければ、自分達で声をかければ良いのにと思うが、相手も花寺と同様のお坊ちゃん学校、自分達で出来ないからこそ、こうして罰ゲームにかこつけて祐麒達にやらせているのだろう。
 プレッシャーをかけられても、簡単にナンパなど出来るものではない。街には沢山の人がいて、女の子も沢山いるわけだが、誰に声をかけて良いものか。男連れは当然、NG。女の子同士だとしても、見るからにギャル系だったりすると、躊躇してしまう。
「おいユキチ、あの辺なんか、どうだ?」
「いや、あれ見るからにOLだろ、絶対に無理」
「じゃあ、あの子たち。スカート短いな」
「ちょっと派手すぎないか、化粧もきついしなぁ」
「んじゃ、あっちのグループ。結構、かわいいと思わないか?」
「あれ、光中の制服だろ。あのリボンの色だと、一年じゃん! 中一って、ついこの前まで小学生じゃねえか!」
「う、最近の子は大人っぽいな……って、文句ばかり言って、だったらユキチはどうなんだよ」
「そ……そうだな。ええと、あの人たちなんか、どうだ」
 小林に横目で睨まれて、指さした先には、四人ほどの女性のグループが歩いていた。
「ほうほう、なかなかの美形グループ、女子大生ってところだな。さすが、ユキチって感じのセレクトだな」
「どういう意味だよ」
「シスコンでお姉さん系が好き」
「殺すぞ」
「いやでも、確かにいいカモ。あの茶髪のお姉さん、体つきエロいな。よし、じゃあ、あのお姉さん達にしようぜ」
「お、おう」
 緊張しながら、ゆっくりとその女性グループに歩み寄っていく。近づくほどに、心臓の動きが速くなり、鼓動の音が大きくなってゆく。
「な、なあ、ナンパってどう声をかければいいんだよ?」
「え、あれじゃね、『カノジョ、お茶しな~い?』って」
「今時、そんな風に声掛けるやつ、いるのか?」
「知らないよ、俺だって。そうだな、甘えてみたらどうだ? ユキチは童顔だし、母性本能をくすぐる作戦で」
「そんなこと、意識的に出来るわけがないだろ、ああ、やっぱり無理だってー!」
「とにかく、ユキチが目をつけたんだから、ユキチが声かけ担当な」
「な、勝手なこと言うな、なんでそんな」
「いいから、ほら行けっ」
「うわっ!」
 小林に強く背中を押され、つんのめるようにして前に飛び出す。こうなったら、もう心を決めるしかない。とにかく、声を出すのだ。
「あああ、あのっ」
「――ん?」
 頭の上から、声が聞こえた。
 当たり前だが女性の声で、耳にした途端にまた緊張がどっと高まってくる。祐麒は胸を手で抑え、大丈夫だ落ち着けと、内心で自分に言い聞かせる。学校の行事で、リリアンの学園祭で、緊張するようなことだって沢山経験してきたのだ、今だって落ち着けば大丈夫。唾を飲み込み、頭を上げ、意を決し口を開く。
「あの、良かったら僕達とイイコトしませんか?」
 言葉を発した瞬間、失敗を悟った。何を血迷って、変態的なことを口走ってしまったのか、自分でも分からない。
 おそるおそる視線をあげると、携帯電話のフリップを開いた女性が、祐麒のことを見つめていた。
「なになにーこの子、ナンパ?」
「やだ、まだ子供じゃない」
「ほら行こうよ、ナンパとか用ないし」
 女性達にとっては、祐麒など眼中にないようだ。まあ、当たり前といえばあたりまえかもしれないが。
 それでも、変なところで真面目な祐麒は、頑張ってもう少し粘ってみようとした。
 しかし。
「……ナンパとかそういうの、嫌いだから」
 何かを言う前に、あっさりと切り捨てられた。女性は携帯を閉じると、冷たい一瞥を残して去っていった。
「あー、いいとこなしだな」
「うるせーよ、何もしなかったくせに!」
 寄って来た小林が慰めるように背中を叩いてくるのを、体をゆすって拒絶。
「何で、俺ばっかこんな恥しい目に遭わなければいけないんだっての!?」
「ま、まあまあ、次からは俺も一緒にやるから、めげるなって」
 苦笑する小林を睨みつつ、無駄に体力を使っても仕方ないので、気持ちを切り替えて再度ナンパに挑むことにする。

 軽そうな高校生っぽい女の子三人組に声をかける。
「ねえ彼女たち、一緒に御飯でも食べに行かない?」
「は? ナンパ? お呼びじゃないし」
 鬱陶しそうに手で追い払われた。怖いので退散した。

 明らかに年上で大人な雰囲気の女性達。
「お姉さん、今何してるの? もしかして暇だったりしません?」
「君達なに、もしかして私達をナンパしているの? あはは、可愛いー」
 笑われて、相手にされなかった。

 中学生っぽい集団に狙いを変えてみた。
「ちょっとすみません、この辺でさ、楽しく遊べる場所とか知らない?」
「え、あの、ごめんなさいっ!」
 逃げられた。

 声をかけども、全く成功する気配も見えなかったのだが、それでも一生懸命に続ける祐麒達を天は見離さなかった。諦めムードになりかけ、これで最後だとほとんどヤケ気味に声をかけた女子高校生グループのノリがよく、なんと一緒に遊びに行く誘いに応じてきたのだ。
 カラオケに行き、それなりに盛り上がって解散した。緑ヶ山のメンバーも満足したようだが、祐麒は幾度にも重なる慣れないナンパ行為で精神的に疲労しており、あまり楽しむことはできずに帰宅した。
 そして、二度とナンパなどしないと思い、眠りについた。

 

 慣れないことをしたせいか、翌日は熱を出して学校を休んでしまい、その翌日に登校すると小林に遠慮なく笑われた。
「情けないな、ユキチは、あれしきのことで」
「うるさいな、別にあれのせいじゃないし」
「そういやさ、彼女達からメールとかきたか? 八十嶋さんとかお前のこと気に入っていたみたいだったけど」
「まあ……きたけど」
 八十嶋というのは、ナンパして遊びに行った女子高校生の中の一人だった。ショートカットの髪を少し赤めに染めた、八重歯が特徴的な今時の女子高校生、といった感じの女の子。確かに、カラオケの時は祐麒の隣にいて、よく話しかけてきていたし、アドレス交換もしていて、だからメールがきたのだが。
「なんだよそれ、マジかよ。向こうから送ってくるって、実は脈があるんじゃないか?」
「別に、社交辞令みたいなもんだろ、内容だって当たり障りないし。それに、少し遊び慣れている感じがするのも、怖いし」
「そんなこと言っていたら、いつまでも彼女なんか出来ないぞ。試しに遊びに誘ってみればいいじゃん」
 小林はプッシュしてくるが、そういう気は簡単には起きてこない。
 彼女達は秀星高校の一年生だった。秀星という名前はなかなかに立派だが、決して偏差値は高いとはいえず、地区内ではむしろ下から数えた方がはやい。そして、悪い噂も結構、耳にする。女子生徒に関して言えば、売春行為や援助交際、なんてキーワードも聞こえてくる。
 もちろん、通っている学校の偏差値だけでどんな人間かなんて決め付けたり、噂だけで判断したりする気はないし、秀星の全生徒がそんな生徒だということもないだろう。しかし、不安が高じるのも確かなこと。先日の女の子グループだって、少し派手なこと以外は普通の生徒のように見えたが、果たして実態はどんなものか。少なくとも、祐麒などよりはよほど、異性と遊び慣れているのは間違いがないところだが。
「そういやさ、女の子といえば、教育実習生」
「は?」
 今までの話と全く、脈絡もないこと口にする小林に、素で面食らう。
「ユキチは昨日、休んだから知らんだろうが、昨日から教育実習生が来ている」
「ああ、そういえば、もうそんな時期か」
 昨年も一昨年も今の時期に教育実習生がやってきて、授業も受けた。しかし、女の子と結び付くものなど何も思い浮かばない。
「なんと、今年は女の教育実習生が来ているんだ」
「嘘だろ?」
 花寺学院は男子校である。教育実習にやってくるのは、卒業生が基本となるので、必然的に全て男となる。卒業生でないとしても、男子校に女子の教育実習が来るというのはあまりないのではないか。実際、祐麒が今までに見てきた教育実習生も、全て男であった。
「いや本当に。朝礼で遠かったからよく見えなかったけれど、結構、綺麗系だった。実際、紹介されて壇上に立った時は、そりゃもう大騒ぎの大フィーバー状態だったし」
 男子校に若い女の教師(女子大生!)が現れれば、それは騒ぎにもなるだろう。お坊ちゃん学校の花寺だって、男子高校生であることに、何ら変わりはないのだから。
「だけどさ、俺らには関係ないじゃん」
 祐麒達は三年生、大学受験を控えている三年生の授業を教育実習生が持つとは思えない。一年か二年を教えるのは、分かり切っている。
 そもそも、小林は綺麗系と表現したが、実際にどんなもんかは怪しいものだ。周りを見ても男ばかりの学校で、若い女性が入ってくれば誰だってちやほやされるものだろう。何せ、花寺にいる女性といえば、教師では古典と英語を教えている二人でいずれもアラフィフで、あとは学食のおばちゃんくらいなのだから。
「そう思うだろ。ところがだな、なんとその実習生、実習期間中は生徒会活動に顔を出すらしい」
「え、なんで?」
「教育実習期間てさ、授業だけでなく部活動にも参加するだろ。だけどほら、そこで問題になってくるのが」
「源平問題、か」
 運動系の部活動と文科系の部活動、どちらに参加することになるのか。女性ということを考えると、男の運動系に参加するのは厳しいだろう。だからといって文科系に参加しては、運動系からの妬みと僻みをかう。どっちかに決めたとしても、その中のどの部活動になるかで、色々とやっかみが出ることは間違いない。どの部活動になるかなんて、生徒が決められるわけもないのだが、理屈で納得するほど男子高校生の猛る情熱は大人しくないのだ。
 教師達も、その辺のことを理解しているのだろう。だからといって、授業以外の活動に参加させないのでは、せっかくの教育実習で生徒と触れあう機会が減ってしまう。そこで苦肉の策として、中立の立場である生徒会活動に従事させようと決まったらしい。また、生徒会であれば、教師、運動部、文化部、それぞれからの目が光り、下手なことはしないのではないかとの判断もあるだろう。
「生徒会活動か……まあ、そりゃあ色々とやることはあるけどな」
 六月に予定されている行事を、頭の中で思い浮かべてみる。芸術観賞会、地域清掃、高校総体の壮行会、といったものがメインだ。七月の定期考査が終わればクラスマッチもあるので、その準備も始まる。行事は、当日の進行も重要だが、当日に至るまでの準備・調整がもっとも重要であり、手間がかかる。手間がかかる部分を担うのが、生徒会でもある。
「しかし、俺達は既に隠居の身で、メインは一・二年だろ」
「だからこそ、一・二年はきっと忙しくて手が回らないから、俺達が教育実習生の相手をすることになるわけじゃないか」
「……小林、お前は本当に前向きというか、凄いな」
「はっはっは、褒めるな、友よ」
 小林によれば、今日の放課後にひとまず挨拶に生徒会室まで来るということで、二人は生徒会室に向かっている。特に今日は用事がないにも関わらず。
「よーっす、元気にやってるか?」
 気さくに扉を開けて、まず小林が入り、祐麒も後に続く。
「あ、先輩、ちょうどよかった。先生が来られていますよ」
 現在の生徒会長が、入って来た祐麒と小林に向けて軽く会釈する。続いて、部屋の奥に視線をずらす。そっちに実習生がいるのだろうと、祐麒と小林もつられるようにして顔を動かす。
「…………あれ?」
 どこか、見たことのあるような、記憶に残っているような感じ。だが祐麒に、妙齢の女性の知り合いなどいない。
 だというのに、頭の中で警鐘が鳴らされている。
 なぜだ、なぜだと考えているうちに、辿り着いた答えは。

 

 

 さして長くもない人生の中、何が一番大変だったかと考える。母親と死別したのは大きいが、何せ幼かったので、実はあまり大変だったという記憶はない。それ以外だと、幼稚園の時にブランコから落ちて頭をぶつけたことがあった。小学生の時、給食費紛失の犯人と疑われたことがあった。中学生の時、高校受験の際に受験票を取り落として、試験直前まで必死に探したことがあった。高校生の時、友人とのスキー旅行であわや遭難しそうになった。そして大学一年の夏に父が突然倒れて入院する、なんて問題が起きて、このままどうなるのかと心配したのが最も大きな出来事だったかもしれない。もしかしたら父親まで失ってしまうかもしれないし、自分自身、大学を留年するか退学するか、そんな瀬戸際だったと思う。
 現実には、父親も回復し、それどころか新たな母親が出来て、自身も留年することなく無事に進級出来て大学三年生になった。「あの時は大変だったけれど今となっては――」なんて言えるようになったわけである。
 だから、今回のことなど大したことではない。
 母校に教育実習を申し込んだら定員オーバーで受け入れてもらえず、色々と探した挙句に見つかったのが、大学のつながりで辿り着いた学校。教職免許を取得するために、二つ返事で飛びついて、いざ教育実習にやってきたわけだ。
 自分で望み、納得してやって来たのだから、教育実習先の高校が『男子校』だとして、何ら問題などないのだ。
 聞けば、真面目なお坊ちゃん学校だというし、心配することはないと先輩からも言われた。リリアン女子大にはリリアンの高等部から上がってきた人も多く、そしてリリアンは花寺学院と親交があるため、その学内事情もある程度は分かるから。
 不良やヤンキーが沢山いて、飢えた狼のような学生が群れ、暴力と喧嘩と煙草と荒廃が支配するような学校では断じてない。むしろ、今の時代に珍しいくらい、優良な高校だとのこと。
 大丈夫だと自分自身に言い聞かせながら、いざ、教育実習は始まったわけだが。

「センセー、彼氏はいますかー!?」
「好きなタイプは?」
「好きな体位は?」
「馬鹿それ、セクハラだろ」
「スリーサイズ教えてください!」
「俺、彼氏候補に立候補してもいいですか!?」
「今度、合コンしてください!」

 坊ちゃん学校だろうと、男子高校生であることに変わりはなかった。初日から、ギラギラと遠慮のない視線が体中に浴びせかけられ、笑顔が引きつりそうになった。
 男子校に女子大生が教育実習にやってきたのだから、騒ぎになるというのも、まあ理解は出来なくもない。それでも、セクハラ質問攻勢とエロ視線ビームに、あっさりと我慢の限界を突破した。
「――みなさん」
 手の平で黒板を叩き、口を開くと、騒いでいた生徒の喧騒が徐々に静まる。女の教育実習生が何を言おうとしているのか、興味津津の表情で見つめてくる。
 数重の瞳を受けて、澄ました微笑みで宣言した。
「みなさん、私は教師となるために色々なことをみなさんから教わり、そしてみなさんに勉強を教えるためにこの学校にやってきました。せっかくの縁ですし、楽しい三週間を過ごして、みなさんの記憶にも良いものを残したいと思っています。ですが、それ以上のセクハラ発言やセクハラ行為を働くようでしたら、私も風紀を正すためにみなさんを矯正しなくてはなりません。みなさんも辛く苦しい思いをするのは嫌ですよね? お互いのためにも、節度ある態度で学校生活に臨んでくれることを、お願いします、ね?」
 最後の「ね?」と同時に、隣に立っている教師から見えないように、威圧のオーラと眼力で睨みつけた。
 途端に、教室の気温が下がり、一気に静まり返った。

 指導担任の教師には怒られるし、自身も家に帰ってから自己嫌悪に陥ったが、どうしようもなかったのだ。男子校での教育実習期間である三週間を乗り切るために。
 そして気持ちを入れ替えて二日目、生徒会室に案内されてやってきた。これからしばらく、生徒会活動を一緒に行うことで、授業以外の接点を持ち、教師として生徒と過ごしていくのだ。
 生徒会室でメンバーと挨拶を済ませたところで、扉が開いて新たな生徒が入ってきた。三年生も、顧問的な立場でサポートしてくれていると言っていたから、その三年生が入ってきたのだろう。三年生とは授業で接することがないので、貴重な機会である。ファーストインプレッションが大事と、あまり得意でないが笑顔を作り出迎え、そして、そのまま表情が固まる。
 だって、生徒会室に姿を現したのは。

 

 

 目の前で強張った作り笑顔を浮かべている、教育実習生。多少イメージが変わっているのは、髪型が異なっているからか。それでもようやく、理解した。そして間違いなく相手も理解している。
 笑っている唇の端がわずかに引き攣っているように見えるし、眼鏡のレンズの奥の瞳が冷たく光っている。視線は小林ではなく、明らかに祐麒をとらえている。
「あ……はは、あの、一昨日」
「ふふ、『はじめまして』、こんにちは」
「は、はじめまして」
 静かな威圧感に、思わず言いたいことを飲み込んだが、間違いなく、祐麒がナンパをしようと最初に声をかけた女性だった。

「教育実習で来た、加東景です。これから三週間、よろしくね」

 その挨拶こそ、疾風怒濤の三週間の始まりを告げる合図であった。

 

~ めしませ☆ティーチャー ~
<第一話>

 

第二話に続く

 

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