書評と主にマリア様がみてるの二次創作(旧:よしのXブレード)

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ノーマルCP マリア様がみてる 冴香

【マリみてSS(山村先生×祐麒)】武士道トゥエンティーX (4)

更新日:

~ 武士道トゥエンティーX (4)~

 

 あたしの名前は山村理玖、現在大学四年生で就職活動中、というか教職に就くべく活動中である。
 姉の冴香はリリアンに教師としてつとめている。別に姉に憧れているとかいう訳ではないけれど、同じ道を歩もうとしている。考えてみれば剣道をやっているのも姉の影響なわけで、なんだかんだとお姉ちゃんっ子なのかもしれない。
 剣道と就職、それは確かに姉と同じ道かもしれないけれど、それ以外のことに関してあたし達は全く異なっている。
 姉は生真面目だけどあたしはどちらかというとテキトーだし、音楽、本、映画、その手の好みは重ならない。性格は真面目な姉だけれど不器用で、料理、洗濯、掃除といった家事全般は苦手で、テキトーなあたしは実は家事が得意。また、家の中だとジャージでだらしない姉に対し、あたしは部屋着でも可愛くしていたいと思う。
 あと決定的に違うのは恋愛のスタンスだろうか。
 真面目な姉はそう簡単に彼氏を作らないのに対し、あたしは今まで何人もの男と付き合ってきている。自分で言うのもなんだけど、あたしはモテる。容姿だけを見れば姉の方が美人だと思うしスタイルも良いけれど、おそらくあたしは男受けする顔をしているのだと思う。よくあるじゃない、女の目から見ると「この娘のどこが可愛いの?」と思えるアイドルがやたら男から人気があるとか、そういうの。
 そんなわけで昔から男に困ったことはない、かわりに一人の相手と長く続いたこともない。飽きっぽいというか、中学の時に初めて付き合ったおじさまがあまりにセックスが上手だったので、どうしてもそれと比べてしまうというか。
 顔、性格、経済力、それらも勿論重要だけれど、やっぱり体の相性だって大切なわけで、その点で最初の彼氏を上回る相手がいないのが大きい。
 一方で姉は男っ気が全く感じられない。前に彼氏がいたことは知っているけれど、別れてから随分と経つのではないだろうか。時々、誘われて合コンにも参加していたりすることもあるようだけど、誰かと付き合ったり、お持ち帰りされたりしたこともないはずで、こんな何年も男日照りで暮らすなんてあたしには考えられないことである。
 そんな姉とあたしは同居している。大学生になって一人暮らしを始めたいけれど資金の問題と親の心配という二つの問題に対し、姉と一緒に暮らすというのは双方の問題を同時に解決してくれる手段であった。
 社会人である姉の方が多めに家賃を払い、あたしは家事を引き受ける、互いにWIN-WINな関係を築けていると思う。不満があるとすれば、彼氏を連れてこられないことだが、これはまあラブホに行くなり彼氏の部屋に行けば解決するからまあ良いとして、その辺のあたしの男関係に対して姉が口うるさい事だ。
 やれ節操がないだの、何も考えていないからすぐ別れることになるダの、お説教が多い。別にあたしだって成人しているし、二股や不倫といったことはしていないのだから、そこまで言われることではないはずなのだが、姉の倫理観的には問題があるのだろう。
 そんなわけで、さっさと姉にも恋人を作って欲しいと思っている。あたしに説教するのは自分に恋人がいないことで苛ついているからというのもあるだろうし、男が出来れば姉だってあたしに文句を言わないだろう。
 とはいえ、その男を作らせることが問題なわけで、お堅くて恋愛スキルも低い(と勝手に予想する)あの姉にどんな男をあてがえばよいやら。医者、弁護士、ITベンチャー社長、といった何人か知り合いの男が頭に浮かびはするものの、あたしが合コンやデートをセッティングしたところで姉が素直に従うわけもない。
 どうしようか困っているところ、これはもしかしたら、と思ったのが福沢祐麒くん。剣道を強くなりたいという理由なら姉さんと会わせることも、強引ではあるけれど不可能ではない。祐麒くんは小動物っぽい可愛らしい男の子で、でも意外と体つきとかしっかりしていて、性格も素直だし将来性を考えると悪い先物買いではない。
 姉さんが今まで突き合った相手は皆年上で、でも甘えてくる年下の男の子の方が、意外と生真面目な姉さんには合っている気がする。そして何より、あの生真面目な姉が男子高校生と、それも自分が教えている生徒を相手に恋をして付き合うなんてなったら、あたしに対して文句なんて言えなくなるはず。
 これは面白いと、あたしは焚き付けようと試みることにしたのだ……まあ、あたしも一緒にいる時間が増えて、つい「ぱっくん」したくなっちゃったのはご愛敬。
「――姉さん、祐麒くんのこと、どう思う?」
 ある日曜日のこと、稽古の合間にストレートにそう尋ねてみた。ちなみに祐麒くんは休憩で水を飲みに行っている。
「福沢くん? そうねえ、筋は悪くないし上達も速いとは思うわ」
「いや、そうじゃなく……」
 半ば想定通りの回答ではあるが、力が抜ける。
「勉強は……まあ、普通かしら。真面目ではあると思うけれど」
「いや、そうなんだけど……むむむ」
 どう尋ねれば良いだろうか。真正面から「男としてどう思うか」などと聞いたところで、現時点ではそもそもそのような思い自体を持っていない可能性が高い。
「ただ、そうねえ――」
「ん?」
「確かに頑張っているのだろうし、稽古の相手をしてくれることは有難いと思うけれど、本当にもっと『強くなりたい』と思ってここまで通っているのかしら?」
 軽く首を傾げる姉のことを見上げる。
「どういう意味?」
「なんというのかしらね……とにかく理玖、相手をしてくれるかしら?」
「はぁ? なんでそうなるの、ってかだから相手は祐麒くんにしてもらえば」
「いいから構えなさい、ほら」
「ああもうっ、なによー」
 意味が分からずも立ちあがって姉に相対する。
 性格が違うから姉妹でも考えることが良くわからない。そんな姉につきあってしまうあたしは、なんだかんだで優しい妹だと自分自身を慰める。

 私は山村冴香、リリアンの若手教師であり剣道部の顧問も務めている。
 周囲からはよく生真面目な性格といわれるが、自分自身ではそこまでの自覚はない。むしろ軽度の「おっちょこちょい」なところがあって、生徒達からは親しまれている方だと思っている。
 ただ、教師という職業には誇りを持っているし、幼いころから精進してきた剣道に関しても真摯に取り組み、決しておろそかにすることはないと思っているし、事実、今までそうしてきている。
 私には一人の妹がいて名前は理玖、今は大学四年生である。何の因果か、私と同じように剣道を始め、そして同じ教職の道に歩もうとしている。私自身は理玖に無理矢理剣道をやらせたことはないし、教師に進むよう進言したこともないから、本当に理玖が自分で選んだ道なのだろう。もちろん、姉である私がやっていたことが影響していないというつもりはないけれど。  現在、理玖とはルームシェアをしていて、家事全般を受け持ってくれるので非常に助かっているのだが、不在の時も多いので微妙である。しかも不在というのが、大抵は男の家に行っていて、それも短期間でその相手が変わっていくというのがどうにもこうにも私の価値観と相いれずにストレスとなる。
 理玖も二十歳を過ぎて大人なわけで、あまり細かいことを言いたくはないのだが、やはり姉として一言口を出さずにはいられなくなるのだ。よくもまあ、あれだけ男をとっかえひっかえできるものである。
 私がその手の説教をすると理玖は、「恋愛はあたしの自由だし、それにろくに恋愛経験もない、彼氏だっていない姉さんに言われてもなー」なんて憎まれ口を叩いてくる。
 確かに私は現時点でお付き合いしている恋人はいないけれど、恋愛経験がないわけでもないし、今までに彼氏がいなかったわけでもない。ただ理玖とは違い、付き合うならきちんと段階を踏んで、互いのことを知り合ってから交際をしたいと思っているだけ。恋人が今現在いないのは、仕事が忙しいのも大きいし。
 そんなのは言い訳に過ぎない、互いのことは付き合ってから知れば良いし、仕事が忙しくても恋人を作って交際している人はごまんといると、理玖には言い返されてしまうけれども。
 でも現実のところ、教師は忙しい。授業の準備、試験問題作成に採点、成績付けにコメント、部活動の指導に学校行事の準備、夏休みといった長期休暇の間は待ってましたとばかりに研修の嵐、おまけに私は下っ端だから色々なことをやらなければならない。
 だから、大学時代に交際していた相手と別れてしまうのも時間の問題だったし、どこにでもある、よく聞くような話でしかない。
 それ以来、どれくらいの間だろうか、恋人と呼べる相手はいないけれど、仕事が充実しているから不満はない。
「えーっ、信じらんない。そんなこと言っているとすぐに三十過ぎちゃうよ。欲求不満にならない? そんな、ずっとセックスしてないんでしょう?」
 理玖はそのようなことを言ってくるが、この辺は価値観の相違だから言い争ったところでどちらも譲らないし不毛になるだけだと分かっているので受け流す。
 それに私にとって今はもっと大事なことがあるのだ。だから、土日を使い、響先生に無理を承知で稽古指導をお願いして受けているのだ。
「――祐麒くんについて、どう思う?」
 稽古の合間に、そんなことを訊かれた。
 福沢くん、私が担任をしているクラスの男子生徒であり、剣道部の部員でもある彼が、響先生のところにやってきたのには驚いた。強くなりたくて色々と調べたということであれば、この近辺で剣道の達人を調べたら響先生の名前が出てくるのは分からなくもないが。
 高校になってから剣道を本格的に始めたという福沢くんだが、筋は悪くないし上達も早く、以前から他のスポーツをやっていたのだということは想像に難くなかった。私の稽古にも付き合ってくれて、力では理玖より当然ながら上だし、有難くはあるけれど。
 だけどなんだろう、うまく言えないがどこか物足りない。
 確かに上達はしているのだけれど――
「……とにかく理玖、相手をしてくれるかしら」
「はぁ? なんでそうなるの、ってかだから相手は祐麒くんにしてもらえば」
 文句を言う理玖を立たせて稽古を続ける。
 私の我が儘だと、自分勝手な思いだと分かっているから、本人にはもちろん理玖にも言うことはできない。
 福沢くんがここに来て稽古をしているのは、別に私が依頼しているわけでもないし誰に強制されているわけでもない、彼自身の意思で来ているのだから勝手なことを言うわけにはいかない。むしろ、部活動でもないのに土日休日を使って稽古をしているなんて大したものであると思うのに。
 それでも。
 ――これ以上、考えてはいけない。
 私は余計な考えを打ち払うべく、竹刀を振ることに集中した。

「理玖、あなた福沢くんをどこに連れて行ったの?」
 二次試験の合格を祐麒くんと二人で祝って帰宅すると、さっそく姉が尋ねてきた。
「その辺の安い居酒屋だよ、こちらは貧乏学生なものですから。あ、心配しなくても祐麒くんにアルコールは飲ませていないから」
「問題はその後よ。電話には出ないし、私が福沢くんに電話した時、どこにいたの?」
「お店から出て帰る途中の道だよ、電話はほら言ったじゃない、バイブにしていたから気が付かなかっただけだって」
「本当に?」
「本当だって、祐麒くんも別に変なところになんて行っていないって言っていたでしょう」
「そうだけど……」
 小さく息を吐き出す姉を見て、悪戯心が湧き上がってくる。
「でもまあ確かに祐麒くん可愛いしね、食べたくなっちゃったのも確かなのよね。次回は誘っちゃおうかな?」
 半分は冗談だけど、半分はそれもいいかな、なんて思う自分がいる。あたしも今まで十代の男と付き合ったことはないけれど、どうだろうか。
「ちょっと理玖、何を考えているの」
 途端に眉を吊り上げる姉を見て、これはもしや脈ありか、なんて思っていると。
「相手は高校生なのよ、未成年男子に手を出すと淫行で法に違反すること分かっているの。それにあなた、来年はリリアンの教師になるかもしれないのよ」
 真正面から正論を叩きつけられて、おもわず顔を背けてしまう。
「いやー、分かっているけれどほら、恋したら止められるものじゃないじゃない」
「何が「恋したら」よ、理玖の場合、「発情したら」じゃないの」
「うは、これは手痛いことを。でも、本気だって言ったら、どうする?」
「ありえないことを言われても、どうしようもないわ」
 呆れた様子で肩をすくめる姉を見てこの辺で潮時かと思いつつ、もう一つだけジャブを放つ。
「随分と言うよね姉さん……もしかして、嫉妬?」
「はぁ? 誰が、誰に? 貴女の好きなアニメやゲームじゃあるまいし、おかしなこと言っていないでシャワーでも浴びてきなさい、お酒臭いわよ。服も乱れているし」
 明らかに本気で呆れていると分かり、さすがにここで打ちきることにした。残念ながら現時点で姉は祐麒くんのことを1ミリも異性として見ていないことが分かった。とはいえ、まだこの先どうなるかは分からない。
「はーい、はい。でも姉さんに服のことは言われたくないなぁ、そんな高校時代のジャージ姿の人に。そんなんだから長いこと彼氏も出来ないんじゃないの」
「動きやすいし家の中なんだからいいでしょ。それに、お付き合いしている人の前でだらしない姿を見せるつもりはないから」
「普段からだらしない格好の人が変われるとは思えないんだけど……」
 確か、恋人がいた時も家の中の姿は変わらなかった記憶がある。服装だけではない、転がっているビールの空き缶におつまみ類の入っていた袋が散乱し、衣類もその辺に置きっぱなしだったりする。基本的に女子力が低いのだ。
 まあ、祐麒くんのことはなるようになるしかない。お膳立てはしたし、あとは本人たちがどう思い、どう行動するかだろう。幸いというか、祐麒くんはあたしに言われたとはいえ真面目に稽古に通っているから、嫌だということはないのだろう。あたしに気があるという可能性もあったが、今日の態度を見る限りはそうとも思えなかったし。
「――それはそれで、悔しいけど」
 次回は本気で誘惑してあげようかしら。別に本気で付き合わなくても、祐麒くんだって本命の女の子の前に経験しておくのも悪くないだろうし、って童貞前提で考えているけど。
「理玖、あんた何か悪いこと考えている顔しているわよ」
「え、失礼だなぁ」
 立ち上がり、浴室へと向かう。
 どうするかは決めていないけれど、次の機会の時、あたしが付き合っている相手がいなかったならば食べちゃおうかなと思った。

「――まったく、理玖にも困ったものね」
 浴室に姿を消した妹の背中を見送り、私は吐息と共にそう呟いた。
 今まで理玖は私が把握しているのも、あるいは知らないのも含めて、付き合ってきた相手はみんな理玖より年上であり社会人であったはずだ。年下になど興味はなかったはずで、ましてや子供でしかない高校生の男の子を相手に本気になるとは思えないが。
「……本気でなければありえる、とか?」
 付き合ってもいないけれど、一晩限りの相手として寝たなんて相手が何人かいることも話していた。その相手として、まさか。
「さすがにそれはない……とは言い切れないのが困ったところね」
 頭が痛くなってくる。
 もちろん私だって、偉そうに淫行だ何だと人の恋愛事情を非難したいわけではない。歳の差があっても本当に愛し合っている人はいるだろうし、私の知らないところで知らない人がしていることまでどうこう出来るほど偉いつもりはない。でも、それが実の妹であり相手が自分の学校の教え子となれば話は別である。
「余計な心配事ばかり作らないで欲しいわよね」
 はぁ、と息を吐き出しつつ。
 テーブルに置いてあった飲みかけの缶ビールを飲みほした。

 

おしまい

 

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