6.
「あの……み、三奈子さん。恥しいわ」
「あら祥子さん、とても可愛いわよ」
三奈子さんにすすめられるまま身につけたのは、オフホワイトのタートルネックのレース使いカットソーに、
ブルーのカットソーワンピースをあわせるというスタイル。
普段、ミニスカートなど穿かない私には、膝上10センチのワンピースが物凄く恥しい。
三奈子さんはチュニックで、やっぱり裾が短くて太腿が眩しい。
「せっかくのデートなんだから、可愛い格好してもらいたいしー」
ポニーテールを揺らしながら、笑う三奈子さん。
「ほらほら、いつまでもモジモジしている方が変だって。行きましょうって」
「で、でも」
歩くたびに、ひらひらと揺れるスカートの裾。ちょっと強い風でも吹いたらとんでもないことになりそう。
私は、手で前を抑えてぎこちなく歩く。
「あーもうっ、じゃあ、これでどうかしら」
いきなり、三奈子さんは怪しげな構えを取ったかと思うと。
「秘技! 『神風の術』っっ!!」
「っ?!!」
大きく風が巻き起こり、私のスカートを翻らせる。前は抑えていたけれど、後ろは……
「やーん、水玉っ! 可愛いーっ」
「みみみ、三奈子さんっ!!」
彼女とのデートはいつもどこかしらスリリング。だけど、それが私を変えてくれた。
「もう……」
口を尖らせ、顔を赤くしながらも私は彼女の手を握り、歩くのであった。
7.
「ふにゃぁっ?!」
「うはは、相変わらず由乃ちゃんは猫みたいな声を出すね」
「せ、聖さまっ! もう、いきなり抱きつかないでくださいって、言っているじゃないですか!」
大きな瞳で、ぐっと睨みつけてくる。怒っているつもりなのだろうが、私からみたら可愛いだけだ。
だから、余計に抱きしめて、ほっぺをすりすりしてしまったりする。
すると由乃ちゃんは、私の腕の中でじたばた暴れだす。でも小さい体で力も弱いから、なんてことはない。
そんな反応が、余計に私を喜ばすだけだと分からないのだろうか。本当に、楽しいなぁ。
「もう、どうせ他の子にも、いっつもしているんでしょう。この、女ったらし! 浮気モノ!」
きーっ、と、私の腕を振りほどくと、噛み付くような表情をしてくる。
そんな表情、態度がたまらないんだけれどなぁ。どうしても口元が綻んでしまう。
「な、なんで笑っているんですか」
ぷくーっと頬を膨らませる。ああもう! なんでそんな可愛らしいことばかりするのだろう、本当に。
「あぁ、由乃ちゃん、たまらん!」
今度は正面から抱きしめる。
「ふぎゃあーっ!! せっ、聖さまっ! 胸がくるひぃっ……」
「わっはっは、本当は嬉しいくせにー」
「ふにゅぅぅ」
はじめこそまだ少し暴れたものの、私の背中に手をまわし抱きついてくる由乃ちゃん。
「むーっ」
頭を撫でてあげると、むずがる。でも嫌がっているわけじゃない。
ふふっ、大好きだよ、由乃ちゃん。
8.
「……私はちょっと怒っているのよ。なんでみんな、私のこと『ガチ』っていうのかしら」
「分かるわ、乃梨子さん」
「分かってくれる、可南子さん?」
「ええ。私も、男嫌いというだけで、そっちの気があるんじゃないかと言われてばかりで」
「ホント、失礼しちゃうわよね。なんでそうなるのかしら」
「私達二人とも、中学まで共学だったのにね。生粋のリリアン生と一緒にしないで欲しいわよね」
「そうそう。ただ、たまたま好きになったのが可南子さんだっただけなのに」
「好きになったのが乃梨子さんだったとういだけなのに」
「そりゃ確かに、可南子さんってばこんなに柔らかくて気持ちよいけれど」
「乃梨子さんだって、とてもすべすべした肌で気持ちいいです」
「可南子さんの胸、ふわふわ」
「ふふ、乃梨子さんの胸だって気持ちいいですよ。ぎゅうってしちゃいます」
「ふうぅっ、可南子さんの胸に私の胸、押し潰されちゃう」
今、二人は上半身は下着だけという姿になって、抱き合っていた。
「ガチだなんて失礼よねぇ……ちゅ」
「本当です、まったく……ん、ちゅぅっ、ちゅっ」
9.
「志摩子さまは、甘すぎますわっ」
瞳子ちゃんが怒っている。でも、私はなぜ瞳子ちゃんがそんなに怒っているのか分からない。
そんな私の様子が、さらに瞳子ちゃんをいらだたせてしまうのだろうか。
「みんなが幸せになれるなんて、夢物語です。そんな都合よく、世の中はできていません」
どうして、こんな喧嘩になってしまったのだろう。瞳子ちゃんはまだ、眉をつりあげている。
「志摩子さまが幸せに出来るのなんて、ほんの一握りなんですよ」
「そうなのだとしたら……」
私はそっと、瞳子ちゃんの手を握る。
「私は、瞳子ちゃんを幸せにしてあげたい」
引き寄せ、きゅっと抱きしめる。
「な、な、なっ……!!」
途端に、真っ赤になる瞳子ちゃん。
色々と言うけれど、彼女はとても優しくて繊細。だから私は、そっと包み込む。
「ふふ、だって、私は瞳子ちゃんを誰よりも愛しているもの」
「……!! よ、よくもまあ、恥ずかしげも無くそんな台詞、言えますね」
「あら、駄目だったかしら? 瞳子ちゃんは、嫌だったかしら」
「い、嫌とかそういうことではなく。そんなこと、わざわざ口にされなくても知っていますから」
「あらあら」
さり気なく、私自身のことを惚気られてしまった。
そんなとても可愛い、私の瞳子ちゃんは、今日もやっぱりツンツンしているのであった。
10.
「な、な、菜々ちゃん、どういうつもりかしら、これは?」
気がつくと私はベッドの上に寝ていて、ベッドの支柱に両手を縛られていた。
お腹の上には、馬乗りになった菜々ちゃん。
何を考えているのか分からない目で、じっと見つめてくる。
「アドベンチャーです」
「はい?」
「今日は、女体の神秘に迫るアドベンチャーです」
「にょ、にょたい?」
「はい、大人の女性の身体の謎に迫るのです」
「っ?!」
前触れも無く、いきなり菜々ちゃんは私のシャツをたくしあげた。
「蓉子さまの胸は、なぜ仰向けになってもこんなに形が崩れず美しいのでしょうか」
下着に包まれた私の胸をまじまじと見つめてくる。いや、見るだけでなく、手を伸ばしてきた。
「凄く柔らかくて気持ちいいです。蓉子さまはどうですか?」
「んっ……や、だめ、菜々ちゃ……ん」
「こちらは更なる神秘の予感が」
菜々ちゃんの手が、スカートの中に潜り込んできて、内腿を撫ぜる。ぞくぞくとする感触が背中を這い上がる。
「だだだだ、駄目よ菜々ちゃんっ! ちょっと、ホント、ダメだってば!」
菜々の冒険は、まだ続く……のか?