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【マリみてSS(三奈子×祐麒)】もうひとつのイエスタデイ <エピローグ>

更新日:

 

~ もうひとつのイエスタデイ ~
<エピローグ>

 

 

 細く冷たい雨がカーテンをかたどっていた。梅雨に入るにはまだ早いが、昼過ぎから雨が降り続き、気温も下がっていて季節外れの肌寒さを感じさせる。
 祐麒は三奈子と一緒に街に出てきていて、二人にしては珍しく映画を見て、映画館を出ると雨が降っていて、三奈子は驚いていた。
「いや、天気予報ではかなりの確率で降るっていっていましたよ」
「今日、ちょっと寝坊しちゃって、急いでいてね」
「それにしても、空の暗さを見たら、予想くらいついたでしょうに」
 そういうわけで、祐麒が持ってきた傘に二人で入る、いわゆる相合傘をしていたわけだが、雨が降っている中、さすがにあまり外は歩きたくないということで、ショッピングなど屋内でのデートをしていた。
 遅めの昼食をとり、夏物の服を見てまわり、ゲームセンターで遊び、お茶して、特にこれといったことのない休日を過ごす。だけど、ただ三奈子と一緒にいるというだけで楽しいし、時間は瞬く間に流れてゆく。
 久しぶりに三奈子と過ごす一日ということで、夜ごはんも外食ですませ(とはいってもファミレスよりはちょっとマシ、という程度の店だが)、それでようやく帰途につく。
 ショッピングセンターから外に出ると、雨足は弱まっているものの、まだ雨は降り続いており、傘なしで歩けるほどではなかった。祐麒が傘を開くと、隣に三奈子がくっついてくる。傘を持っている腕を握られると、三奈子の胸が腕にあたり、ドキドキする。この辺は、いつまでたっても変わらない。
「今日も楽しかったねー」
 疲れも見せず、にこにこと笑いながら言う三奈子。
 フード付きカットソーの上からジャケット、ボトムスはレギンスパンツというスタイル。今日はポニーテールではなく、長い髪を左右の耳の下あたりで結んでいる髪型。
 確かに、三奈子の言う通り、楽しかったことに間違いはない。
 だけど。
「どうしたの、楽しくなかった?」
 祐麒の微妙な変化に気がついたのか、三奈子が問いかけてくる。祐麒は首を横に振って否定する。
「楽しかったですよ。ただ」
「ただ?」
「えっと……あの、その、俺と三奈子さんって、つ、付き合っているんですよね?」
 祐麒の言葉に、三奈子がきょとんとする。
「いや、なんかその割には別に今までと何も変わらないな、と思って」
 そう、変わらないのだ。
 悪いことだとは思わないが、告白したことで何かしらが変わるのではないか、と思っていたことも事実。
「うーん、そうだねー、『付き合う』っていう言葉に、あまり意味はないんじゃないかな。だって、ずーっと前から、そして今も、祐麒くんの気持ちは同じでしょう?」
「そ、そう、なんですかね?」
「そうだよー、なんで分からないの?」
 断言されて苦笑する。
 三奈子に言われると、そうなんだろうなと思ってしまう。いや、きっとそうだったのだ。
「だから、祐麒くんが改めて告白してきたところで、別に前と変わらないんだよ。ただ、『付き合う』という言葉が後からついてきただけで。まあ、形というのも大事だけどね」
「それは当然、三奈子さんも同じだから、ってことですよね」
 少し意地悪のつもりで言ったのだが。
「当たり前じゃん、二人がそうでないと、意味ないでしょー」
 これまた当然のように言い切られて、自分一人で恥ずかしくなる。
「まあ、これも祐麒くんの自業自得ということでしょう」
「はいはいそうです、俺が優柔不断でヘタレだったのが悪いんです、ええ」
 諦めたように、祐麒は言った。隣では三奈子が、可笑しそうに笑っている。
 変ったようで変わらない関係。
 それこそが、今の二人にふさわしいのかもしれないと思いながら、足を運ぶ。
 駅に向かう道は、雨が降っていたとして、休日であるので人の姿は多い。店のネオンの光に反射する水たまりや雨の滴が、歩くごとに揺らめき、輝く。
 不規則に傘を叩く雨粒の音が、どこか心地よい。
「……まあでも、祐麒くんの言いたいことも、分かるかな」
 駅が見えてきたところで、ふと、思い出したように言う三奈子。
 傘を持っている祐麒の手に、三奈子の手が重なる。
「え?」
 なんですか、と思って顔を僅かに横に向ける。
 すると。
 三奈子の手に力がこもると、持っていた傘が斜めに倒され、祐麒達の上半身が周囲から傘で隠された。
 次の瞬間。

「…………っ!?」

 三奈子の顔が滑るように寄って来たかと思うと、ふわりとした感触が唇を襲った。
 塞がれた唇の隙間から、ちょこんと、三奈子の舌が祐麒の上唇に触れて、そしてゆっくりと離れていく。
 ほんのりとした甘みを、唇の先に残しながら。
「へへー、これでどうかな? 少しは、変わったかな?」
 気持ち、頬を赤くしてはにかみながら、三奈子は小首を傾げて祐麒を見つめる。
 途端に、耳から首のあたりまで急速に熱くなっていく祐麒。
「ファースト・キスの味はチョコレートの味でした、えへへ。祐麒くんは?」
「苺……です」
 それは、お互いが食べたデザートの味。
 突然のことに混乱もしたが、それ以上に、胸の内に広がっていくのは、えもいわれぬ幸福感。
 三奈子を見る。
 ちょっとだけ恥しそうに、でも楽しそうな表情の三奈子。

 一本の傘を持つ二つの手は重なり合い、離れることはない。二人の気持ちが重なり合っているようにも感じられる。

 街の灯りを受けて輝く水滴を背景に、三奈子はとびっきりの笑顔で口を開く。

 

「次は、違う味にしようねっ!」

 

 

おしまい

 

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