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ノーマルCP マリア様がみてる 三奈子

【マリみてSS(三奈子×祐麒)】抱きしめてマイ・ダーリン

更新日:

 

~ 抱きしめてマイ・ダーリン ~

 

 

「んで。そろそろ三奈子とはエッチしたの?」
「ぶっ!?」
 大学構内のカフェの一角、上級生女子三人に囲まれていた祐麒は、いきなりの質問に飲みかけのカフェオレを危うく噴き出しそうになった。
「――その反応じゃ、やっぱり、まだみたいね」
 頬杖をつき、呆れたようにため息をついているのは、正面から見つめてきている金髪派手系の安奈。夏になって気温がぐんぐんと上昇している中、期待に応えるように露出度の高い服を身に付けており、今も、肩から腕はむき出しであるが、下品になっていないのは本人の知性の高さがあるからだろう。
 見た目に反して、安奈はグループの中で最も成績が良いし、講義は真面目に受けている。身なりだけで判断してくるようなやつはお断り、好きなことをするためにも大学生活でやるべきことはやるというのが、本人の考えらしい。
 ただし、見た目通りに言動はエロいというか、ストレートである。
「……ということで、『お前らいい加減にせん会議』、略称、"おまんかいぎ"をここに開始することを宣言します」
 無表情のままハスキーな声で告げるのは雅。祐麒よりも高い長身、漆黒のロングヘア、安奈とは反対に夏でも肌という肌を隠そうかという長袖、ロングスカート、それにもかかわらず汗も見せず、暑い素振りも見せないのは、もはやキャラクターを作っているとしか思えないのだが、本当のところはいまだに祐麒も分からない。
 ミステリアスな美女を連想させるが、何気に安奈と違った意味で際どい台詞を連発してくる。
「はい、蘭子、復唱」
「え、えっ? えと、お、おまん……」
「ちょっ、蘭子さん、言わなくていいですからっ!!」
 人が良いというか純粋というか、グループの良心である蘭子はわずかに茶色の入った髪をショートボブにした、普通の女子大生。周りの二人がそれぞれ別方向に尖っているだけに、まるきり目立たないが、本人も目立つことを望んでいない。それならなぜ、この二人とつるんでいるのだと思わなくもないが、仲が良いのだから不思議である。
 ただし、田舎から出てきた純朴な女子大生、そのイメージはまさにイメージ通りで、大学二年生となった今でも毒されることなく純情で、それゆえに安奈と雅にからかわれては赤面するというのを続けている。
 本来ならここに三奈子が加わっての四人グループなのだが、三奈子は用事があってこの場にはいない。
「まあねえ、三奈子もいまだ話さないし、そうだとは思っていたけど……祐麒くん、何ぐずぐずしてんの。したくないの?」
「そ、そうゆうわけじゃないですけどっ! ただ、その、きっかけというか」
 付き合うまでの期間が長く、しかもその間に仲良くなりすぎて、付き合い始めてからも二人の関係はあまり変わりがなく、だからこそ次のステップに進むのが難しいというか。
 せめてどちらかが一人暮らしをしているならば、部屋に遊びに行ってその流れでというのに持っていきやすいが、二人とも実家暮らしである。そして、デートの途中で「ラブホテルに行こう」とも言いだすことが出来ず、肉体関係はいまだに持てないままきてしまっているわけである。

「要は、祐麒がヘタレという一言で済むわけ」
「ちょ、ちょっとみや、言葉選びなさいよ、いくら正しいことでも」
「いや、蘭子の言葉の方が実際は留めだよ?」
 正直かつ天然の蘭子の言葉は、時に鋭く祐麒の胸を抉ってくる。安奈や雅と違って真面目なキャラだけに、威力も大きいのだ。
「えっ!? ご、ごめんね祐麒くん、よくわかんないけど」
「いえ……大丈夫です、その通りですから」
 まあ、皆に言われている通りに祐麒が三奈子を臆することなく誘えれば問題ないわけで、ヘタレと言われても仕方がない。
「今さら祐麒くんのヘタレはそう簡単に治せないでしょうから、ここであたし達が二人のためにひと肌脱いであげようと思うのよ」
「――――と、いいますと?」
 あまり良い予感がしないが、それでも期待はしてしまう。
「この中で、一人暮らしの人」
「…………は、はい?」
 おどおどしつつ、小さく手をあげる蘭子。
「そう、蘭子が一人暮らしをしている。そこで、私達"おまん会"メンバーに三奈子を加えて家飲みを敢行する」
「ああ、それで適当な時間になったらあたし達三人は買い物に行くとでも行って外に出て、そしたらナンパされたとか理由をつけて帰らず、二人きりの場を提供してあげると」
「ちょ、ちょっと待って。それって、私の部屋でその……ゆ、祐麒くんと三奈が……ってこと?」
「それはさすがに、俺だって」
 他人の部屋でその手の行為に及ぶとか、ハードルが高すぎる。
「いや、違う。さすがにそれはない」
 雅が即座に否定し、ほっと胸を撫で下ろすが。
「家飲みで酔っ払ったフリをして、私達が率先して祐麒を襲い、なし崩しに5Pに突入してしまうというプラン」
 雅の口から飛び出したのは、余計にトンデモな作戦だった。
「え、え、何、"ごぴー"って何、祐麒くん?」
「いえ、あの、それは」
 純粋に尋ねてくる蘭子に、どう答えたらよいものか迷っているうちに、雅の独自理論は続けられていく。
「このプランには多くの利点がある。
 その1、三奈子と祐麒が目出度くセクロスできる。
 その2、蘭子も好きな相手に処女開通してもらえる。
 その3、現在、特定の彼氏がいないアンナビッチとみやびーが性欲解消できる。
 その4、祐麒は色んなプレイを楽しめる。なぜならアンナビッチとみやびーは多少アブノーマルなプレイも大丈夫である。
 その5、今まで噂でしかなかった"祐麒ハーレム"が現実のものとなる。
 その6、姉妹となることで四人の友情、結束はより強固なものとなる。
 その7、アンナビッチ、みやびー、蘭子の三人は祐麒の愛人、セフレの地位を確立できるかもしれず、将来的に三奈子からNTRの可能性も膨らむ。
 …………どうだ」
「ど、どうだ、って言われましても」
 表情一つ崩さず、赤面するでもなく淡々とハチャメチャなことを述べる雅に、頭を抱えるしかない祐麒。
「ちょっと、雅!」
 すると、珍しく安奈が強い口調、鋭い目つきで雅に詰め寄る。さすがの安奈も怒ったのかと思いきや。
「あたし、そんな誰にでも股を開くビッチじゃないから。ちゃんと相手は選ぶし……ま、そういった意味で、祐麒だったら相性を試してみたいとは思うけど」
 駄目だった。
 蘭子は目を丸くしていたが、雅が言った内容はある程度理解できたようで、顔を真っ赤にして何もない空中に手をさまよわせている。
「な、な、何を言っているのよみやっ!? そ、そんなこと、できるわけないでしょう」
「どうして。現実的に可能な計画であり、流されやすそうな祐麒の性格を考えれば、実現性も高いと私は考える」
「そうゆうことじゃなくてっ」
「何よー、蘭子のことだってちゃんと考えてあるじゃん。蘭子だって、好きな人相手に初体験したいでしょう?」
「それはそうだけど」
「――――え」

「えっ…………て、きゃああああああああっ!!!!? ちち、違うの、違わないんだけどそうじゃなくてっ、あのっ、そのっ」
「大体、私たちの中では蘭子が一番、エロいくせに」
「な、なんで!?」
「ほら、名前の最後に"う"を付け足したり、"ら"を"ま"に変えたら?」
「え? えと、らんこぅ……まん…………っっっ!!!?」
 自分で口にしかけてから気が付き、目を白黒させ、祐麒の視線に気が付いて悶絶する蘭子。申し訳ないと思うが、蘭子からそのような言葉が聞けて少しだけ嬉しくなった。
「さあ、あとは祐麒しだい」
「いや、いつの間にそこまで進んだんですか」
「それとも何よ、祐麒くんは、あたし達にはそんな魅力、ないとでも?」
「それは捨て置けない。ならば、まずはみやびーの"潜望鏡"テクを知ってもらおうか」
「んじゃ、あたしはこの自慢のバストで――あ、なんなら雅と二人でWでやる?」
「私の胸の大きさでは……でも、安奈がカバーしてくれそうだから、頑張る」
「いやいやいやいやっ、ちょっと待ってください! 皆さんはとても綺麗でそれぞれ凄く魅力的な女性だと思いますけど、でも、俺が付き合っている彼女は三奈子さんなんです! だから、俺がエッチなコトしたいのは三奈子さんなんです!」
 とめどなく続いていきそうな卑猥なトークを止めるため、、そしてまた自分の貞操を守るために、ようやく祐麒は二人に割り込んで言ってのけた。そりゃ確かに、男であるから安奈や雅が言うようなハーレム的状況に憧れないとは言わないし、三人とも個性的であり且つ魅力的であるのは間違いないのだが。
 さすがに雅が言ったようなことを実際に行うとは思えないが、いまだに安奈や雅の実態というか真の姿が分からず、万が一がないとも言い切れないし、蘭子に迷惑をかけるわけにもいかない。
「――ふむ。なるほど」
 首を斜めに傾けて意味深に頷く雅。
「ふんふん」
 腕を組み、ボリュームのあるバストをさらに目立たせている安奈。
「…………あ」
 そして、蘭子の口から洩れた何気ない一音に、なんとも嫌な予感を覚えた祐麒がふと振り向いて後ろを見てみると。
 頬を僅かに赤く染め、変な笑顔を顔に張り付かせた三奈子が硬直したように立ち尽くしていた。
「み、三奈子さんっ。え、い、いつから」
「え――あ、うん、今来たばっかだよ? そ、そだ、飲み物買ってくるね」
 ロボットのようなギクシャクとした動きで回れ右をすると、カフェの出口へと歩き出す三奈子。お約束のように、右手と右足が同時に動いている。
「い、今の、明らかに聞かれていましたよねっ!?」
「いや、どうかしら。実際、ちょうど近くまで来たタイミングで祐麒くんがさっきの台詞を口にしたから。まあ、あれだけ大きな声で言っていたから、少なくとも最後の祐麒くんの台詞は聞こえていただろうけど」
 安奈に言われ、マジかと頭を抱えたくなる祐麒だったが。
「せっかく、自分の気持ちを言えたんだから、むしろ良かったととらえるべき」
「そうだよ、ここで躊躇ってちゃ、ヘタレ卒業できないよー?」
 雅と安奈に続けて言われて顔を上げる。
 そうだ、二人の言う通りだ。事故に近いとはいえ、三奈子に自分の欲求、欲望を晒すことが出来た。これは、今後も付き合っていくうえでは避けて通れない道なのだ。
 立ち上がり、三奈子が消えていったカフェの入口に目を向ける。
「すみません、俺、行きます」
「頑張れー」
「後で報告よろ」
「……頑張ってね、祐麒くん」
 三人の声を背に頷き、祐麒は駆け足気味でカフェを出て行く。
「――――行っちゃったね。いや、タイミングバッチリだったとはいえ、蘭子は残念だったわねぇ」
「ま、また、そういうことを。私は、三奈と祐麒くんのカップルが好きだし、応援しているんだから」
「とはいえこの日、蘭子の心には確実にNTRの種が芽を吹き、地面に顔を出したのであった……」
「もー、みやったら、変なこと勝手にナレーションしないでよっ」
 三人の視界に、既に祐麒の姿はなかった。

 

「――――三奈子さんっ」
 カフェを出て、キャンパス内に三奈子の姿を見つけると、慌てて追いかけてようやく揺れるポニーテールに追いついた。相当な早足で歩いていたようで、三奈子の腕を掴んだときには祐麒も軽く息が上がっていた。
「えーと、何かしら、祐麒くん」
 平静を装おうとしているが、表情も声もぎこちなく、そもそも祐麒とまともに目をあわせようとしていない。先ほどの祐麒の発言を耳にしたことは疑いないようだった。
 人前でも平気で抱き着いてくるし、キスまでしてくる三奈子なのだが、それより先を想像させるあからさまに性的なことには弱いのか、自ら求めてくることもなかったし、匂わせるようなこともなかったと思う。天然なので、無意識に誘いをかけているのではないかと思うことはそれこそ何度でもあったが、それらがもしも意識して誘惑してきているのだとしたら逆に凄いし、全て避けてきている祐麒はとんでもない大馬鹿野郎になる。
「さっきの話、聞いていたんですよね? あれは……ええと」
 嘘だというと角が立つ気がするし、だからといって本心ですと開き直ってしまうのは気恥ずかしいし三奈子が引きそうで、追いかけて捕まえたのは良いものの、どう答えるべきか改めて考えると迷う。
「あ、あの、ごめん祐麒くん」
 すると、迷っていた祐麒の手を振り払って三奈子は。
「今日は、これで。じゃねっ」
 祐麒が追う暇を与えないほどのスタートダッシュで、一気に駆け去ってしまった。
 茫然と見送るしかない祐麒。
「え…………え?」
 もしかして、振られたのだろうか。
 あまりにあまりな三奈子の反応に、祐麒はただ困惑するしかなかった。

 とまあ、不安に陥る祐麒ではあったのだが、その日の夕方には三奈子からメールが飛んできて、明日遊ぼうというお誘いだったのでどうやら嫌われたわけではなさそうだと安堵する。メールの内容もいつも通りの感じで、特に何か意図が隠されているようにも見えず、やはり今日の三奈子は単に祐麒の真正直な発言を耳にして恥ずかしくなったのだろうと結論付けることにした。
 ただし、恥ずかしいのは祐麒も同じことで、明日はどんな顔をして会おうか、会ったら何を話そうか、今日の発言のことを説明した方が良いのかどうか迷うところだった。
 そして迷ったまま結論が出ずに日も変わり、三奈子と会う時間になってしまった。
「やっほー、祐麒くん、こっちこっちー」
 三奈子の様子は、やはりいつもと変わりなかった。昨日の不自然な笑顔や挙動は消え失せ、普段通りの笑顔で祐麒に接してくる。
 デート、というほどのものではないかもしれないが、適当に街を歩いて店を見て回って、それだけでも三奈子は騒がしいし変なものを見つけるのが得意だから飽きることなく、楽しい時間が過ぎてゆく。
 昨日の祐麒の発言についてどうこう詮索してくることも無く、これは無かったことにしたのだなと察し、祐麒も流れに乗ることにしていった。お蔭で、祐麒も変に気負うことなく楽しめた。
 少し早目に夕食をとり、店を出ると時刻は夜の八時過ぎ。まだ遊ぶ時間はあるけれど、あまり遅くなりすぎるのも明日に響くし、さてどうしようかと考えていると、手を繋いでいた三奈子の方が先導するように歩いていく。
「どこか行きたい場所でもあるの?」
「うん、こっちこっち」
 引っ張られるまま歩くが、駅とは反対方向だし、店が並んでいる通りというわけでもない方に向かってゆくことに首を傾げる。
「どこ、向かってるんですか」
「ん? あー、えっと……ホテル」
「あぁ、そうですか。ホテル…………って、ええ!?」
 聞き流しそうなところをあやうく聞き留め、握られていた手を強く握り返してその場に立ち止まる。
 振り返る三奈子のポニーテールが揺れる。
「な、なんでいきなりホテルに、って、やっぱり昨日のこと」
 考えられる要因はそれしかない。
「うん……あの、ごめんね。私、祐麒くんに謝らないと」
「え、なんで三奈子さんが謝るんですか?」
「祐麒くん、デートのときでもいつでも、エッチなこと言わないし求めても来ないから、あんまりそうゆうことに興味ないのかなって思っていたんだ。あとは、私のこと大事にしてくれていもいるのかなって」
 興味がないわけがない、むしろ三奈子と会った時から頭の中では色々なことを考えていて、とても三奈子に言うことなどできないくらいだ。
「でも、そうじゃなかったんだって昨日、分かって」
「う……あ、あれは」
「安奈達には言えて、私には言えないのって思ったんだけど」
「す、すみません」
「そうじゃなくて。分かったの。祐麒くん、恥ずかしくて今まで言えなかったんだね」
「それは……」
「そうだよね、私の方が年上で先輩でお姉さんなんだから、私がリードしてあげないとダメだったよね。ごめんね、祐麒くん」
「…………はい?」
「でも大丈夫、ちゃんと私が引っ張ってあげるから、恥ずかしがらなくていいから。本当はね、祐麒くんが私に対してちゃんと、そうゆう気持ちを持ってくれているって知れて、嬉しかったんだよ。だって、さすがに何もしたくないとか思われていたら、私だって女としてショックだし」
「そんなわけ……」
「だから、どーんと大船に乗ったつもりでついてきて。可愛いホテルを調べてきてあるから。アメニティも充実しているし、新しくて綺麗だし」
「いやいや待って三奈子さん。俺、三奈子さんこそ、その手のこと嫌なのかと思っていたよ。昨日だって、俺の言ったこと聞いて逃げたんでしょ? 俺が追いついた後だって」
「ああ、昨日は……だって、突然の事だったから、下着が可愛い奴じゃなくて……」
 と、前髪をいじりながら恥ずかしそうに口を尖らせる三奈子。
「って、恥ずかしいこと言わせないでよっ。でも今日は、ちゃんと可愛いのだから」
 再び祐麒の手を握って歩き出す三奈子に、逆らうことも出来ずについてゆく。暗くて人気の少ない道だと思ったら、その手のホテルが幾つか並んでいる通りだったのだ。そのうちの一つの建物の前で立ち止まる三奈子。目に入る、『ご休憩』の文字。
 ここでようやく、祐麒にも実感が湧き上がってきて急に心臓の動きが激しくなりだした。
 すると、祐麒を励ますかのようにギュっと握ってくるしなやかな手。
「大丈夫だよ、祐麒くん。私も初めてだけど、緊張しなくていいから」
 言われたところで、緊張するに決まっている。だって、もし――
「――もしも上手くできなかったら、なんて考えなくていいんだからね」
 心の内を読まれたようで、ドキリとする。
「二人とも初めてなんだもん、うまくいかなくたって、きっと当然なんだよ。それにもしそうなっても、私が祐麒くんのこと元気にしてあげるから」
 言われて、赤面しつつもまじまじと三奈子を見つめてしまう。
「……あ。え、えと、元気にしてって、元気づけてあげるってことで、そーゆー意味じゃ、あ、でもそーゆー意味も入れてくれて大丈夫、うん」
 三奈子も、祐麒が受け取った意味に気が付いて頬を赤く染めるも、笑顔をなくすことなく頷いて見せる。
「なんたって、私の方がお姉さんだから、祐麒くんは私に任せてくれればいいの」
 全くお姉さんらしくないのに、自信満々に三奈子は言ってから。
「うまくなんてなれなくてもいいの、ゆっくり、二人で楽しく、気持ちよくなれるようにしていこ?」
「――――うん」
 気負いすぎていたのかもしれないし、気を遣いすぎていたのかもしれない。
 三奈子に対しては、もっと素直になって良いのだ。なぜなら三奈子はその広い懐で、ちっぽけな祐麒など簡単に受け止め、包み込んでくれるから。
 やっぱり敵わないな、と思いながらも、嬉しくなる。こんな女の子が、自分の彼女なんだと改めて思ったから。
「それじゃ、入ろっか……って、やっぱちょっと恥ずかしいね」
 何事もうまくやろうと、格好つけようとするからいけないのだ。三奈子に対して、それはもちろん格好良いところを見せたいが、無理に背伸びをし過ぎることはない。二人で一緒に、色々と見て、聞いて、知って、触れ合って、歩いて行こう。戸惑うことがあっても、躓くことがあっても、三奈子が力強く手を引いてくれるから、祐麒は時に引っ張られ、時に引っ張り、そうして歩を進めてゆけばよいのだ。
「―――え、えぇっと、あ、あれっ、これ部屋どうやって入るの? フロントに受付の人とかいないの? ちょ、祐麒くん、どう思う~っ?」
 さっそく、そんな困ったような声が聞こえてきた。
「あれ、お姉さんに任せればいいんじゃないでしたっけ」
「もー、そんな意地悪言わないでよ。ほら、一緒に見てよー」
 部屋を選ぶパネルの前で手招きをする三奈子。
 これからもこうして、二人で色々と試行錯誤しながら、いつまででも一緒にいられる。
 そんな、気がした。

 

 

おしまい

 

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