当サイトはアフィリエイト広告を利用しています

ノーマルCP マリア様がみてる 三奈子

【マリみてSS(三奈子×祐麒)】ホームでアウェイ

更新日:

 

~ ホームでアウェイ ~

 

 

 土曜日、午前中の講義を終えて午後はバイト、疲れた体で家に帰って来たのは夜の七時過ぎだった。
「ただいまー」
「あ、お帰り祐麒」
「お疲れさま、ちょうど晩御飯だよ」
「あー、腹ペコだわマジで」
「今日は祐麒の大好きな水餃子よ」
「お母さん、ビール出してくれ。祐麒も飲むか?」
「俺、まだ未成年だけど」
「今さらそんなこと言うな、家の中だし、明日は休みだろう」
「あ、あたしが用意します。グラスは幾ついります?」
「祐巳ちゃんも少し飲む?」
「うーん、ビールは苦くて好きじゃないんだけど」
「あ、じゃあ甘くてアルコールも低くて飲みやすいチューハイがあるよ」
「うん、それにする」
「いや、息子と娘と一緒に酒を飲むのは昔から夢見ていたが、楽しいものだな」
「だからって、あまり飲みすぎないでよ、お父さん?」
 とても和やかで心安らぐような週末の家族の団らん、疲れた体も癒されるし、家の空気や雰囲気というものは落ち着くし、文句をつけるところなどない。
「――――って三奈子さん馴染み過ぎだろっ!?」
「え、何が?」
 冷蔵庫から持ってきたビールと缶チューハイをテーブルに並べながら、きょとんとした目を向けてくる三奈子。
 実を言えばあまりに違和感がなく溶け込んでいたものだから、祐麒も当たり前のように受け流してしまっていたのだが、福沢家の人間でないのが一人だけ混じっていた。
 長い髪の毛を後ろで束ね、スラリとした肢体にボリュームのあるバストをノースリーブのブラウスの下にしまいこんだ、魅力的な祐麒の恋人。
「ちょっと祐麒、何を大きな声出しているのよ」
 祐巳が避難の目を向けてくる。
「いや、なんで普通に三奈子さんがいるんだって」
「えーっ、もしかしてあたし、居ちゃ駄目だった……?」
 しゅん、とする三奈子。
「うわ、酷い祐麒っ、自分の彼女に冷たいっ」
「そ、そうじゃなくてっ。だって三奈子さんが今日来るなんて聞いていなかったし、それなのにいきなりいて、しかもすげー馴染んでて驚いたってゆうか」
 確かに三奈子のことは家族に紹介したが、祐麒の家にはその日以来やってきていないから会うのは正味二回目のはず、それがこんな自然に夜の食卓に一緒にいるとは何事なのか、祐麒には全くつかめなかった。
「そりゃそうだよ。だって今日は私と三奈ちゃんでお買い物に行って、帰りに寄って行ったらって誘ったんだもん」
「そうだよねーっ、祐巳ちゃん?」
「ねーっ?」
 顔を見合わせてにこにこ笑いながら声を揃える二人。
「いいじゃないか、三奈子ちゃんがいると一気に家も華やぐしな」
「あら、私と祐巳ちゃんだけじゃあ不満だったのかしら、お父さん?」
「そっ、そういう意味じゃなくてだな、ほらタイプの違いというか、なんだ、なあ?」
 自分の父親がデレている姿を見るのは正直、あまり心地よいものではない。しかもそれが、自分の彼女に対してであるから微妙である。
「ほらほら祐麒くんも座って、ビール注いであげるから」
 と、三奈子に肩を掴まれて自分の席に座らされる。もはや何を言ったところで仕方ないだろう、この場の全員が三奈子の味方なのだから。

「――――ぶっ!?」
「あっ、ごめん! さっき缶振っちゃったかな?」
 ビールの缶をあけると、お約束のように勢いよくビールが噴き出し、祐麒の顔面を直撃した。うっかりしていたが、これがいつもの三奈子クオリティだった。
 溢れ出したビールは瞬く間にシャツとズボンを濡らしてゆく。
「ごめんね、すぐに拭くからっ」
 ばたばたとタオルを取って来た三奈子がシャツを拭く。
「大丈夫だって三奈子さん、ついでに着替えちゃうから」
「えーっ、でもほら」
 といいながら続けてズボンの方にタオルを動かすと、前屈みになった三奈子の胸元が直前に迫って来た。さらに三奈子の手が太ももから徐々に股間の方に近づいてくる。三奈子にその気はないのだが、祐麒にとってはたまったものではない。二人きりならともかく、家族の見ている前で痴態を晒すのは死ぬほど恥ずかしい。
「も、もう大丈夫、バイトで汗もかいたし、さっとシャワー浴びて来ちゃうからさ」
 反応をしてしまう前に素早く立ち上がり、洗面所へと向かう。
「申し訳ありません、おじさま、おばさま、汚してしまって。すぐに綺麗にしますから」
「あらあら、大丈夫よ三奈子ちゃん、そんなに慌てないで」
「もー、三奈ちゃんは本当にそそっかしいなぁ」
「ううっ、酷い祐巳ちゃんっ」
 すっかり家族になじんでいるやり取りを聞きながら、祐麒はリビングを後にした。

 軽くシャワーを浴びてさっぱりして出てくると、既にビールと軽いおつまみ類で食事は始まっていたが、メインの水餃子や白米はまだ出ておらず、どうやら祐麒を待っていてくれたようだった。
「さあさあ、お風呂上がりの一杯どうですか、祐麒くん」
 と、今度はちゃんと零さずにビールを注いでくれる三奈子。キッチンに立っている母親も一度戻ってきて全員で乾杯、キンキンに冷えたビールが、疲れた体と風呂上がりの喉で最高に美味く感じる。
「――あ、ちょっと三奈子ちゃん、手伝ってくれる?」
「はーいっ」
「……って、母さんなんで三奈子さんに頼んでいるんだよ、お客様だろ?」
「あら、そういえば確かに」
「そんな気にしないで、なんでもじゃんじゃん頼んじゃってください」
「三奈子さんに頼んだって、ろくなことにならないから。料理だって、簡単なものだって消し炭にしちゃったり」
「えーっ、もうそんなこと、しないし」
「いや信じられない……って、なんだよ祐巳、変な顔して」
「別に? ただ、そんな風に手料理を振る舞われているんだねって」
「いや……っ、それは」
 見れば、両親もにやにやと祐麒のことを見ていた。
 急に気恥ずかしくなり、口を閉じて黙り込むと。
「でも、おばさまはお料理上手ですよね。良かったら教えていただけませんか?」
「もちろん、喜んで。祐麒の好きな味付けとか、なんでも教えてあげちゃうわよ、やっぱり男の子は胃袋を掴んじゃうのが何よりよね」
「わあ、ありがとうございます! ね、ね、じゃあ祐巳ちゃんも一緒に教わろうよ」
「えー? 私は別に、胃袋を掴みたい人なんていないし」
「そんなこと言って、良い人はいつ現れるか分からないよ?」
「待てっ、祐巳に彼氏など私が許さないぞっ」
「またお父さんは……祐巳ちゃんだってもう大学生なんですよ」
 きゃあきゃあと賑やかな家族と恋人に、祐麒は圧倒される。まだ二回目の訪問だというのに、三奈子と福沢家とのこの親和性の高さは異常ではないだろうか。そりゃあ、親と仲良くなれないよりかは良いのだが。
 席の配置だって、いつもは祐麒と祐巳が隣なのに、今日はごく自然と三奈子が隣に座り、祐巳はお誕生席に腰を下ろしている。
「さあ、メインディッシュも出来上がりよ、いただきましょう」
「うわー、美味しそうっ!」
「あたしと祐巳ちゃんもお手伝いしたんだよ?」
 もはや三奈子は完全に福沢家に入り込んでしまっている。
 そのことを実感する祐麒だった。

 

 賑やかな食事を終え、まったりとした時間帯。
 色々と思う所はあるものの、三奈子がいてくれることに嬉しいことは変わりない。帰るまでまだ少し時間はあるだろうし、祐麒の部屋でいちゃつくくらい出来るだろう。エッチはさすがに厳しいだろうが、キスくらいなら問題あるまい。
「――そ、それじゃあそろそろ」
「三奈ちゃん、私の部屋に行こうか」
「うん」
「――って、なんで!?」
 二人して仲よく立ち上がり、祐巳の部屋へと向かおうとする姿を見て、思わずツッコミをいれてしまった。
 いや、普通だろう。確かに昼間は祐巳と買い物に行き、その流れで家に招いて食事をしたのかもしれないが、同じ場所
に彼氏がいるのだ、一緒に過ごしたいと思うのが当然ではないのか。
「ごめんね祐麒くん、今日は祐巳ちゃんと遊びに来ているから」
「ということで残念でした祐麒、せいぜい焼きもちやいてなさいねー」
 右手を顔の前に立てて「ごめん」とポーズをする三奈子、対してちょっと意地悪そうな笑みを浮かべる祐巳。
「くっそ、祐巳のやつ……」
 リビングを出て行く後ろ姿を見つめながら、言われた通りに焼きもちをやくしかなく拳を握りしめる祐麒。
「――可愛い娘が二人か、いいものだなぁ。祐麒、もう一杯飲むか?」
 酔っぱらった暢気な親父の言葉に、腹立ちながらも出されたビールを呷る祐麒。気分が盛り上がらないまま自室に戻るべく階段を上がって二階に行くと、祐巳の部屋から何やら楽しげな声が聞こえてくるが、話している内容は分からない。さすがに盗み聞きすることはできず部屋に入るが、祐巳の部屋は隣なので、どうしても聞こえてきて気になってしまう。仕方なく、取り立ててやる気もなかったがゲームをして紛らわす。
 せっかく彼女が家に来ているというのに一人でゲームとは、なんと物悲しいことか。三奈子とはこの前、とうとう初めてした……というのに。
「――ああくそっ!」
 ゲームにも集中できずコントローラを放り出し、ベッドの上に寝転がる。朝早くから活動して疲れていたし、ふてくされてもうこのまま寝てしまえと思った。どうせ、三奈子も来ないのであれば。
 目を瞑ってそうして横になっていると、実際すぐに睡魔が襲い掛かってきて祐麒の意識は閉ざされた。
 そして次に意識が戻って来たとき。

「……間抜けな寝顔だなぁ。こんなののどこがいいの、三奈ちゃん」
「えーっ、なんか愛嬌があるじゃない」
「愛嬌っていうのかなぁ、涎垂らしているし」
「寝ていたら、誰だってそんなものでしょう」
 どうやら、人が寝ている間に勝手に入ってきた挙句、人の寝顔を見て好き勝手なことを口にしているらしい。
 どうしてくれようと思ったが、中途半端に寝たせいか完全に覚醒するにはまだ少し時間がかかりそうだった。
「それにしても……ねえ、三奈ちゃん?」
「どうしたの、祐巳ちゃん?」
「本当にコレ…………こんなおっきいのが、三奈ちゃんの中に入ったの?」
「うん、そうだよー。あたしもびっくりしたけど、入るもんなんだねー」
「えええ、私、絶対無理だよー。なんか怖いし」
「大丈夫だって。あ、じゃあ今ちょっとだけ試してみる? どんな感じかだけでもさ」
「え、でもそんなこと三奈ちゃん」
「平気平気、先っぽだけだから、ね、ね? それなら危なくないし、それに……祐巳ちゃんだって興味津々だったじゃない、うりうり」
「そっ……それはだって、三奈ちゃんが色々言うから……」
 何やらいかがわしい会話をしながら、いかがわしい行為をしようとしているらしい。しかも、実の弟であり、付き合っている彼氏の体を使って。
「それじゃあ祐巳ちゃん、準備はおっけい?」
「う、うーん、でも」
「まあまあ、いってみよー」

「――――いってみよーじゃねえっ!!」
「うわぁっ!?」
 さすがに「これまずいんじゃないか?」と思って跳ね起きてみると、本当にパンツが脱がされかけていた。
「び、びっくりした、いきなり起きるんだもん」
「びっくりって、それはこっちの台詞だ。いったい、何をするつもり……」
 声に詰まる。
 目の前には、祐巳のシャツとショートパンツを借りたらしき三奈子がいて、だけど祐巳のではサイズがあわず胸がぴちぴち、太腿ぱつぱつ、加えてシャワーを浴びたのか肌はほんのり桜色でなんとも艶めかしい。
 さらにもう一人、祐巳はロンTだけで、脱げかけのパンツが右足の膝に絡んでいる。
「何をするつもりって、それは、ねえ?」
「何よう祐麒、三奈ちゃんとは出来て、私とは出来ないっていうの?」
「当たり前だろ……って、酒臭いな! お前、部屋でも飲んでいたなっ」
「女の子に向かって臭いとか、失礼ねぇ」
 のしのしと四つん這いのまま迫ってくる祐巳。ロンTの緩い首周りの下から、おっぱいの膨らみが覗いて見える。
「とにかく、私だってちょっとくらい体験してみたいんだから、弟なら協力しなさいよね」
「無茶苦茶だ! おいこら祐巳っ!」
「…………ん、ふにゃぁ」
 圧し掛かるようにしてきた祐巳だが、不意に力が抜けたかと思うと、そのまま横にごろんと転がって寝てしまった。
 今まで缶チューハイ一本くらいですませていたが、どうやら飲み過ぎると良い酔い方をしないようで、今後は気を付けようと心に留める。
「祐巳ちゃん、こんな格好で寝たら風邪引いちゃうよ?」
「誰のせいですか……」
 とりあえずパンツを履かせて祐巳を自室のベッドに寝かせて部屋に戻り、大きく息を吐き出してから三奈子に正対する。
「ご、ごめん、冗談だったんだけど……まさか本気にするとは」
「勘弁してくださいよ、俺にそういう趣味は無いですから」
「本当に? 祐麒くん、祐巳ちゃんと仲良しだし、祐巳ちゃんも酔っていたとはいえその気になるなんて……あやしい」
「俺は、三奈子さんだけですから」
「うん、知ってる」
 頷きながら、祐麒と並んでベッドに腰を下ろす三奈子。ボディソープの匂いがふわりと漂ってくる。
「今日はごめんねー、いやあ、祐巳ちゃんとは本当にウマが合って楽しくて」
「いやでも、俺をネタに猥談するのはやめてくださいマジで」
「でも祐巳ちゃんも年頃の女の子、色々と知りたいようだったから、つい……あたしもホラ、つい最近だからさ、誰かに教えたかったりもして~、なんて」
 自分で言っておきながら、照れた笑いを浮かべて頬をかく三奈子。
「それにしても仲良くなりすぎ……うちの家族とも」
「やきもち? 可愛いんだから、祐麒くんは」
「どうせ俺は心が狭いですよ……っ」
 拗ねかけたところ、いきなり唇を塞がれた。
 待ち望んでいた感触、でもすぐに離れていく。
「……えーと、そんな格好しているってことは、今日は泊まっていくんですよね?」
「そうだけど、ナニを考えているのかな? 祐巳ちゃんの部屋に泊めてもらう約束、しているんだよ」
「祐巳は酔っ払って、目覚ましませんよ」
「でも、下にはご両親もいるし、分かっているの?」
「――そう言いながら、なんで押し倒してくるんですか?」
 仰向けになった祐麒の体の上に三奈子が密着してくる。薄いシャツを通して、弾力性に富んだ胸が押し付けられ、芳しい三奈子の匂いを感じ取ると、途端に反応してしまう。
「もう、だから、早く……ね」
 部屋の明かりが消える。
 夏で暑いけれど毛布の中に二人入り込む。
 そして。

 

 

「……うううう、頭痛いぃぃ、気持ち悪いよ~」
 元々癖の強い髪の毛はピョンピョン乱れ、酷い顔つきで祐巳が降りてきた。相当、二日酔いが酷いようだ。
「強くないくせに、飲みすぎだろ。祐巳お前、昨日のこと覚えているか?」
「何が? 部屋で三奈ちゃんとお話しして、祐麒とのえっちのことを聞いて……って、何言わせんのよっ!?」
「俺は言わせてないし、そもそもそんな話するな!!」
 焦ったものの、どうやら祐麒の部屋に来てからの下ネタのくだりは覚えていないようでホッとする。何もせずにすんではいるが、もしも覚えていたら気まずいことに変わりはないのだから。
「おっはよー祐麒くん、祐巳ちゃん大丈夫?」
 洗面所で顔を洗っていた三奈子が姿を見せ、爽やかな挨拶と笑顔を向けてくる。
「三奈ちゃんはお酒に強いんだね……」
 亡者のような足取りで廊下を歩く祐巳。さすがに少し心配でもあったし、祐麒も顔を洗いたかったので後をついて洗面所に向かう。
「ところでさあ祐麒」
「んー?」
「三奈ちゃんが私の部屋に戻って来たの、明け方近くだったんだけど?」
「は……お前、酔って寝ていたんだろ、記憶違いじゃないか?」
「そうかなー、あ、あともう一つ」
「なんだよ、まだ何かあるのか」
「うん。朝にね、三奈ちゃんが寝ぼけて私に」
「うわわわっ、祐巳ちゃんほら、顔洗おう、髪の毛もあたしがセットしてあげるからっ。ほら祐麒くん、女の子の大事なところに立ち入らないの」
 慌てて駆け寄って来た三奈子が祐巳に抱き着き、そのまま口を手で抑えてずるずると洗面所に引きずっていく。
 あの三奈子がここまで狼狽するとは、祐巳は何を言おうとしていたのか、そして三奈子は何をしたのか。残念ながらその事実を祐麒が知ることはなかった。

 

「あー、楽しかった」
 結局、お昼ご飯まで一緒に食べてからようやく三奈子は福沢家を後にした。見送りを兼ねて一緒に歩きながら、夜に祐巳と何があったのか尋ねてみたが、やはり教えてはくれなかった。
「気にしなくていいから、ほら、ね」
「そう言われると気になりますけど……まあ、分かりました。しかし三奈子さん、完全に俺ん家をホームにしちゃいましたね」
 昨夜から今日にかけては、むしろ祐麒がアウェイのような感覚だった。
「そう? だったら祐麒くんもあたしの家をホームにしちゃいなよ。今度さ、泊まりに来なよ?」
「それは嬉しいお誘いですけど、さすがにどうでしょう」
「パパもママも祐麒くんのこと気に入っているし、大丈夫だよ」
 しっぽをふりふり、リズミカルに歩を進める三奈子。
 そして、ぱっと祐麒の方に振り向く。
「さ、行こっか祐麒くん」
「え、どこに?」
「どこって、今日はまだ沢山の時間が残っているんだよ? 昨日は寂しい思いをさせちゃったから、今日は昨日の分も甘えさせてあげるからね」
「あ、甘えるって、別に俺は」
「別に、何かな?」
 じっと見つめられる。
 嘘を許さない、そんなつもりは三奈子にはないのかもしれないが、こうして真正面から衒いもなく目を合わせられると、祐麒としてはそれ以上の抵抗など出来なくなる。
「まあ、ちょっとは甘えたいですけど」
「ちょっとだけ?」
「…………いえ、まあ、出来れば沢山」
 結局のところ言わされてしまい、恥ずかしくなって赤面するのだが、三奈子としてみればその方が嬉しいようで。
「おっけい、それじゃあどこに行こうか」
 伸ばされた手を素直に取り、歩き出す。
 変わったけれど、変わらない。
 三奈子とだったらこのままどこまでも一緒に手を繋いで行けそうな、そんな気持ちになる初夏の日だった。

 

 

おしまい

 

応援クリックいただけると幸いです。
にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ

アドセンス1

スポンサーリンク

アドセンス1

スポンサーリンク

fam8インフィード広告2×4+5連

-ノーマルCP, マリア様がみてる, 三奈子
-, , ,

Copyright© マリア様の愛読書 , 2024 All Rights Reserved Powered by AFFINGER4.