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【マリみてSS(可南子・菜々・祐麒)】とらんす! 7.嬉し恥し!?

更新日:

~ とらんす! ~

『7.嬉し恥し!?』

 

 海水浴客で賑わう浜辺は、真夏の日差しと人いきれで熱気に溢れているというか、むしろ焼け焦げてしまいそうなほどの強烈さをもって出迎えてくれた。
 しかし、これこそ夏の醍醐味。目の前に広がる海は、日本の海とはいえかなり綺麗な部類に入るだろうと思える、鮮やかなコバルトブルー。砂浜も、マナーが良いのかあるいはボランティアの人の活躍か、思ったほどゴミなども捨てられていない。
 家族連れ、カップル、高校生らしき集団、マッスルな軍団、様々な人が所狭しと入り乱れるようにして雑多な空間が創られているが、閑散としているよりもよほど健康的でよいだろう。というか、閑古鳥がなくような海では、わざわざ旅館の手伝いに呼ばれることもなかろう。
 そう、可南子ちゃんのお母さんの知り合いの旅館のお手伝いということで、今日、現地に到着したわけである。
 初日くらいは思いっきり遊んで構わないとのお達しを受け、旅館に行く前にこうして海に足を向けたというわけであるが、こうして賑わいを目の当たりにすると自分の胸も期待と楽しみで一気に満たされていく。
 ただ、一つの問題は。
「ほらユウキちゃん、そんないつまでパーカーなんて着ているのっ?」
「うひゃあっ!?」
 背後から伸びてきた手がいきなり、パーカーのジッパーを下げようとしてきて、慌てて前を手でおさえる。
「か、可南子ちゃんっ」
 いつの間に着替え終えたのか、海の家の更衣室から可南子ちゃん、菜々ちゃんが出てきていた。
「もう、服の下に水着を着てくるくらい楽しみにしていたくせに」
 それは、楽しみにしていたというよりも、最初に海に行くことが分かっていたから、先に着てきたのだ。とてもじゃないが、人前で着替えるなんて恥ずかしくて出来ないというか、むしろ他の女性が着替えている中にいるわけにもいかないというか。まあ、個室更衣室ありのところだったので、結果的には一緒に着替えに行っても大丈夫だったのだが、安全策をとったほうがいいわけで。
 しかし馬鹿正直にそう言うわけにもいかず、曖昧に笑ってごまかそうとして、思わず息をのむ。
 ピーチ、コーンイエロー、ライムグリーンという鮮やかなパステルカラーの三色ボーダービキニに身を包んでいる可南子ちゃん。長身で、胸は大きくて、腰はくびれていて、お尻は小さめだけど、すらりと足は長くて太腿が綺麗で、本当にモデルかと思ってしまうくらいだ。長い髪の毛は後ろでまとめ、ポニーテールにしているけれど、いつもと違う髪形がまた良い感じを出している。
 菜々ちゃんは、というと、これまた可愛らしいスカパンビキニ。ピンクカラーだけど、黒ドットが入ることで少し大人らしさも加えている。腰はフィットして切り替え下がフリフリ揺れるミニで、ウエストのリボンがアクセント。
 眼福、なのだろうが。
「ほら、脱がしちゃうぞー」
「ひーっ」
 自分が脱がされそうになって、可南子ちゃんの肢体を拝むどころではなかった。抵抗しようとするものの、女の体となると力も弱くなるのか、はたまた可南子ちゃん相手に力が出ないのか、するりとパーカを剥ぎ取られてしまった。
「ほら、可愛いじゃない」
「あは、あはは」
 手で体を隠そうとするものの、そんなんで隠し切れるはずもない。
 ホルターネックのビキニは綺麗なコバルトブルーで、オフホワイトのラインがデザインにメリハリをつけている。
 ボトムはサイドリボンがポイントになっており、股上が結構あさい。自身の趣味ではもちろんなく、一緒に買いに行った時に可南子ちゃん、菜々ちゃんが強烈プッシュしてきて断りきれなかったのだ。こんな格好をしていていいのだろうかと、かなり自分自身のアイデンティティに危機感を持ったが、どうしようもなかったのだ。
 恥ずかしくて腕で体を隠そうとする女の子の気持ちが、少しだけ分かったかもしれない。全く嬉しくないが。
 本当にこれでいいのか? と、心のうちにいる男の自分が問いかけてくるが。
「ほら、早く行こ」
 と、腕を取ってくる可南子ちゃんの柔らかな肌を、胸を、直接に感じて。
「う、うん」
 ただ、ふらふらとついて行くことしかできない、悲しいほどに、心の中はきっちり『男』である俺なのであった。

 

「うう……迂闊でした」
 どんよりとした菜々ちゃんのくぐもった声が、耳に入ってきた。見れば、砂漠で方向を失った駱駝のような目をしている。
 昼間、ぞんぶんに遊び、夕方から旅館の手伝いをしてクタクタに疲れたあと、ようやく自分たちの部屋に案内されての菜々ちゃんの一声であった。
「旅館で、しかも泊まり込みで働くなんてことなら、同じ部屋だというのは容易に想像がついたことなのに」
「だ、大丈夫だよ菜々ちゃん。へ、変なことなんてしないから」
 どうやら俺と同じ部屋であることに危険を感じているようで、どうにか安心させようとするのだが、菜々ちゃんの表情は暗いままだ。
「そんなこと言われても、信じられるかと」
 三人にあてがわれた部屋は、和室の一部屋。客室ではないのでさほど広くもないが、贅沢のいえる立場ではなかった。
 しかし、女の子三人で止まるならいざしらず、俺は実際には男なわけで、そのことを知っている菜々ちゃんにしてみれば、狭い部屋で一緒に寝るなんて考えられないことなのだろう。
 だからといって俺にどうこうできるわけもなく、二人でこそこそ言い合っていると、後ろから可南子ちゃんに肩を抱かれる。
「何してるの二人で。ほら、早くお風呂行こう、早く汗流したい」
「え……お風呂……?」
 固まる。
「さすがに温泉とかじゃないけれど、結構広いみたいよ」
「あのー、お、お風呂は遠慮しておきます」
「ええっ、なんで? ユウキちゃんだってあれだけ働いたんだから汗、かいたでしょう。ほら行きましょう、菜々ちゃんも」
「ああああ、えと、実はちょっと今、お腹の調子が悪くて。だから、二人で行ってきて」
 菜々ちゃんに物凄い目で睨まれて、慌ててどうにか言い訳をひねりだす。さすがにお風呂に行ったら、どんなに気をつけても二人の裸を見てしまう可能性が高い。見たい気持ちがないわけではないが、やはりアンフェアだし、申し訳がない。
 心配そうな可南子ちゃんに対し、単に食べすぎだからと言って、二人の背中を押すようにしてお風呂に送り出し、一息つく。
 ホテルなんかであれば、部屋にユニットバスなんかがついている可能性もあるが、普通の旅館ということでそういうものもない。
 可南子ちゃんの言うとおり、汗をかいているので、風呂にも入らず寝てしまうというのはどうにか避けたく、結局、可南子ちゃん達が出てきてからお風呂に向かい、人がいないことを確認して速攻で入った。
 そして、そこで驚愕の現実を目の当たりにする。

「――みっ、水着のラインで日焼けしているぅぅっ!!!」

 男に戻った時、このブラの形に日焼けした胸はどうなっているのか、あるいはどうしたら良いのか。
 落ち着いて鏡に映る姿を見て、俺はそのことにようやく気がついたのであった。

 

 風呂からあがればもう一つの問題、寝る場所である。
 何せ広くもない部屋で三人での雑魚寝、美少女二人に囲まれた状態でまともに眠れるのだろうか。しかも季節は夏、Tシャツ短パンの可南子ちゃんの姿が眩しすぎる。
 三つ横に並べられた三組の布団、果たしてどこに寝ることになるのかドキドキしていると、てくてくと無言で菜々ちゃんが真ん中に陣取った。
「菜々ちゃん、真ん中でいいの?」
「はい、こうして寝ると川の字みたいじゃないですか」
「あはは、そうだね」
 などと笑っているが、俺のことを見る目は笑ってなどいない。可南子ちゃんとの間に入ることにより、俺を可南子ちゃんから離す。そして菜々ちゃん自身も、俺に対して見えないバリアを張っているように感じられた。
 それはそうだ、いくら女の体になっているからといって、菜々ちゃんは俺が男だということを知っているし、男の時の姿も見ているのだから。
 警戒心もあらわな菜々ちゃんを横目に布団に横になるが、菜々ちゃんの心配は杞憂にしかならないだろうと思った。なんたって、遊んで働いて体は疲れ切っていて、すぐにも眠ってしまいそうなくらいだから。
 菜々ちゃん、可南子ちゃんも同じようで、部屋の電気を消して横になっても、誰も口を開こうとしなかった。
 俺の意識も、すぐに闇の中へと落ちてゆく。

 

 目覚ましの音で飛び起きると、まだ随分と早い時間だった。なんで、夏休みなのにこんな早く起きなければならないんだと、半ば寝ぼけた頭で考えていると。
「ユウキちゃん、起きた? おはよう。そろそろ行かないと遅れちゃうから」
 目をあげれば、可南子ちゃん、菜々ちゃんはしばらく前に起きていたようで、既に一日の活動を開始していた。
 ようやく俺も、旅館に泊まりこみでやってきていて、今日は朝から働くことになっていたのを思い出した。慌てて起き出し、着替え始める。
「あ、ユウキちゃん、服はこっちだよ」
「え」
 差し出された服を見て、俺はまた固まるのであった。

 

 旅館の手伝いということで、用意されていた服は当然のように仲居さんが着る着物であった。着付けなんて当たり前だけど出来ないから、旅館の人にやってもらい、髪の毛も上でお団子の形にして、出来上がり。可南子ちゃん、菜々ちゃんも同様である。
 アルバイトとはいえ、きちんと旅館の従業員という意識を持つ必要があるためというが、まさか着物まで身につける羽目になるとは思わなかった。
 しかし、旅館の朝は時間との勝負、のんびりと感慨にふけっている余裕などなかった。掃除と食事の準備をして、お客さんが食事に来たのを見計らって、その部屋の布団を片付けに行く。とにかく、慌ただしい。それに、これくらい余裕だと思っても、女の体になっているから体力も落ちているし、力も落ちている。出来ると思った作業を、予想した時間でできなくて、可南子ちゃんに手伝ってもらうところも多々あった。
 ある部屋では、布団をまとめて上げようとして、持ちあげたところで予想以上の重さ、というか自分の腕力のなさに、逆に布団につぶされてしまった。
「わきゅっ」
「ゆ、ユウキちゃん、大丈夫?」
 布団に埋もれた俺のもとに、可南子ちゃんが駆けつけてきて、布団から引きずり出してくれる。
「あ、ありがとう可南子ちゃん」
「こんないっぺんに持とうとするから。もう、ユウキちゃん、無理しちゃって」
 言いながら、可南子ちゃんは俺が持ち切れなかった布団を、「よっこいしょ」という掛け声とともに持ち上げてしまった。
「重いのは私に任せて。ユウキちゃんはそっちの枕をお願い」
「は、はい……はは……」
 本来なら俺がやるべき力仕事を可南子ちゃんに奪われ、笑うしかないという感じ。同じ女の子というなら、背も大きくてスポーツもやっている可南子ちゃんの方が、より力があるというのは納得できることかもしれないけれど、それでもやっぱり情けないと思ってしまう。
 だから、次こそはと思って頑張ろうと思えば頑張ろうとするほど、なぜか空回り。自分のイメージ通りに力が出せない、予想通りの結果にならないということが影響しているのだろう。
 きちんと働くことができず、座り込んで荒い息を吐き出す。正直、悔しいやら情けないやらで、少し泣きそうだ。
 しかも、そんな俺を見て可南子ちゃんが。
「ゆ、ユウキちゃん、健気……か、かわゆい……」
 なんて、頬を赤くして見つめてきたりする。
「大丈夫よ、ユウキちゃん。私も手伝うから、一緒にやりましょう。ね」
 優しい可南子ちゃんだけれど。
 年下で、しかも女の子の可南子ちゃんにそんなことを言われて、俺は本当に泣きそうになるのであった。

 

 お手伝いの初日は、とにかく働きっぱなしで過ぎ去って行った。本当は、お昼から夕方くらいまでは遊んで来ていいと言われているのだが、午前中の働きっぷりがあまりに駄目で酷くて、足を引っ張りっぱなしだった自分が許せなかったのだ。だから、自ら志願してお手伝いをかってでた。
 たいした仕事ができるわけではないけれど、それでも掃除くらいはできるし、雑用だって色々とある。
「でも、可南子ちゃんと菜々ちゃんまで付き合わなくてもよかったのに。二人は遊んできたら?」
 一緒に大浴場を掃除している二人に、何度目かわからない言葉をかける。俺のわがままに、二人までつきあわせてしまっては申し訳ないと思うのだが、二人とも笑って首を振る。
「私も、午前中はあまりお役に立てませんでしたから、これくらい」
 ちっちゃい菜々ちゃんだけに、力仕事という点では確かに向いていない部分はあったが、それでも自分の力をわきまえていたから、無理することなく確実に仕事をこなしていた。
「それに、ユウキちゃんがいないところで遊んでも楽しくないし。お手伝いをするのも、結構、楽しいし」
「そうです、旅館の仕事のお手伝いなんて、なかなかできないですから」
 楽しそうに働く二人の姿を見れば、決して嘘をついているわけではないと分かるけれど、それでも俺のことを気にしての行動だということくらいは分かる。これ以上、何かを言うのも二人に失礼だと思い、俺はただ感謝の言葉を伝えるだけにした。「ありがとう」と。
 だけど二人は、俺がそう言った後も、何で感謝されるのか分からない、なんてとぼけた感じで笑うだけ。
 改めて、素敵な女の子だなと、二人のことを思うのであった。

 

 夕食の支度、そして片付けなどを終え、一日の仕事が終わったのは夜の九時過ぎだった。途中で休憩は入れたけれど、朝から晩まで働いていたから、体は疲れ切っていた。それは可南子ちゃんと菜々ちゃんも同じだったようで、部屋に戻ると、あとはもう寝るだけといった雰囲気。それでもやっぱり女の子、汗かいたままでいるのは嫌で、二人でお風呂に入りに行った。俺は一緒に行くわけにはいかないので、疲れていることを理由に断る。実際、疲れ切っていて体が思うように動かなかったのだ。
 二人は戻ってくるとさっぱりした顔をしていたが、やはり入浴だけで疲れが抜けるわけもなく、布団に横になるとすぐに眠ってしまった。
 二人が寝たのを確認してから俺は入浴をすませ、部屋に戻って倒れこむようにして眠りの世界に突入した。
 これは、夢も見ずに朝までぐっすりだなと、どうでもいいことを一瞬だけ考えながら。

 

 寝苦しさを感じて、私は夢と現実のはざまに意識を起こした。剣道で体は鍛えているけれど、剣道と旅館の手伝いでは体の使い方が全く異なるし、そもそも一日中働いていたのだ、疲れ具合が違う。
 宿泊している部屋にエアコンはあるけれど、三人ともエアコンをつけたまま寝ると体調を崩すと意見が一致して、扇風機だけを回している。だから暑くて寝苦しいのだろう。お風呂に入って汗は流したけれど、またじっとりと肌が汗ばんできている。朝になったら、やはりシャワーを浴びたいけれど、そんな余裕のある時間に起床できるか少しだけ自信がなかった。
 疲れ切った体が、鉛のように重い。剣道の練習をしすぎたとき、腕が上がらなくなることがあるけれど、これは全身にきている。暑くて、苦しくて、寝がえりを打とうとするのだけれど体が動いてくれない。
 本当に、暑い。
 お腹の奥底から熱が沸き出てくるような、熱い溶岩が押し付けられているような、そしてどこかとろけてしまいそうなほどに熱く。
「あ……ンっ」
 びくん、と体が跳ねる。
 なんだろう、これは。今まで感じたことがない熱さが、私の胸から、そして脚から広がっていく。
 と、そこでようやく気がついた。寝ぼけていた意識が目を覚ましたというか。私は今、誰かに抱きつかれているのだ。だから、体が重く、自由がきかない。
 しかも、抱きついて来ている人の手が、私のささやかな乳房を包み込むようにして撫でていたのだ。Tシャツ一枚、下着をつけていない肌は少し汗ばんでシャツとくっつくようで。押し付けられた手の平が動くたびに、私の敏感な個所を刺激する。
「や……あ……あ?」
 目を開けると、ぼんやりとした人の影。ユウキさん、ではあるけれど、雰囲気が違う。髪の毛が短くて、体つきも全体的に硬くなっている気がするし、それに。
「う~ん……もう動かないぞ……」
 声が違う!
 どうやら、寝ている間に男の姿に戻ってしまったらしい。男の体に戻ったユウキさんが寝ぼけて私に抱きついていて、その手は私の胸を撫でていて、そして、ということは、この膝の先に感じる、熱くて硬い感触は。
 我ながら、声を上げなかったのは上出来だったと思う。
 しかし体の方は反射的に動き、思いっきり膝を打ち込んでいた。
「ーーーーーーーーーーーーーーっっっ!!!!!!!!!」
 ユウキさんの体が跳ね上がる。
 目を、口を大きく開き、やがて顔から布団に突っ込んで倒れこむ。両手で股間をおさえ、体を丸めて、びくびくと痙攣している。やりすぎたかと思ったが、こちらは危うく貞操を奪われるところだったのだ、これくらいしても罰あたりということはないだろう。
 声もなく突っ伏しているユウキさんだが、とりあえず体は小刻みに震えるようにしていて、時折は大きく跳ねるので、生きていることは間違いなさそうだ。全く、油断も隙もない、なんて思っていると。
「ん~~……なに? どうかしたの……」
 反対側から、可南子さんの声が聞こえてきて、途端に焦る。私のせいではないし、自業自得だとは思うけれど、今のユウキさんの姿を見られるのはさすがにまずい。
「ゆ、ユウキさん、か、可南子さんがっ」
 小声で耳元に囁いてみるけれど、聞いているのかいないのか、反応が薄い。そうこうしているうちに、背後では可南子さんが動く気配がさらに大きくなり、本格的に目を覚ましそうな感じだった。
「ユウキさん、男の体になっちゃってますよ、このままでは可南子さんにバレちゃいますよっ、いいんですかっ!?」
 もう一度、今度は少し強めに耳元で言うと。
「ま……枕もとの、く、薬……」
「え……?」
 言われてユウキさんの枕の周辺を手で探ってみると、硬質で冷たい感触のものが指先に触れた。取り出してみると、それは何も書かれていないラベルの貼られた小瓶。よくはわからなかったけれど、可南子さんが体を起こしそうだったので、とにかく瓶の蓋を開けると、ユウキさんの体を転がして上を向かせ、鼻をつまんで瓶の中の液体を口の中に突っ込んだ。
「ん……くっ」
 次の瞬間、目の前で恐ろしいことが起きた。ユウキさんの体が、瞬間的に女性になったのだ。体は丸みを帯びてやわらかく一回り小さく、髪の毛がのびてふわりと揺れ、胸はたおやかに膨らみ、顔つきもどこか丸くなって。女性の体になったためか、男性特有の(?)痛みも去ったようで、健やかに寝息を立てていた。
 不可思議な現象をもっと見ていたかったけれど、可南子さんが身を起こすのがわかったので、私も慌てて寝たふりをする。
「あれ、なんか騒いでいたような……え、ええっ!?」
 可南子さんがびっくりする声を聞いて、体を硬くする。まさか、ユウキさんが男であることがばれてしまったのだろうか、しかし、今やきちんとした女性の体になっている。それとも、まさかごく一部だけ戻っていたりしなかったのだろうか、なんて目を閉じたまま考えていると。
「な、菜々ちゃんてば、あんな、ユウキちゃんに抱きついてっ。ま、まさか二人、いつのまにかそういう仲に!?」
 内心でずっこけそうになった。どうやら、単に私に嫉妬しているだけらしい。しかし言われて改めて意識する、ユウキさんの体。上から覆いかぶさるようにしていた体勢から、そのまま寝たふりをしたため、必然的に下で寝ていたユウキさんの体の上に乗っかってしまったのだ。
 完全に女性の体となったユウキさんの体は柔らかくて、私の胸がユウキさんの胸を押しつぶしていて、薄いシャツ越しに熱い肌を感じて心臓の動きが速くなる。
「もう……とりあえず、菜々ちゃんの体を離しましょう。万が一、間違いが起こったら大変だものね」
 起きないですよ、と、内心で突っ込みをいれる私の方にゆっくりと近づいてくる可南子さんの気配。その手が、私に触れようかとする寸前で、止まる。
「はあ……ユウキちゃん、寝顔も、可愛いわね」
 その可愛いユウキちゃんは、実は男なんですよと、心の中で指摘を入れるが、となると私は男の人に抱きついているのかと考えてしまい、体が熱くなる。男だけれど、抱きついている感触は確かに女性のもので、頭が混乱してくる。しかし程良い胸の大きさは手のひらにジャストフィットで、とても気持ちが良い。あれ、いつの間に私、ユウキさんの胸を触っていたのか。
「ふぁっ……あ……」
 頭上から、色っぽい声が漏れ聞こえてくる。手のひらに、少し硬くなった胸の先端の感触がある。ひょっとして、感じているのか。
「やだ……菜々ちゃんったら、なんていやらしい手つき……」
 可南子さんの声が、なんか熱を帯びている。
「それにユウキちゃん、可愛らしい声……」
 熱どころか、湿っぽささえ感じるような声。
「わ……私も……寝ぼけたことにすれば、大丈夫よね?」
 何が大丈夫なのか分からないが、可南子さんもユウキさんに抱きつくようにして横に寝てきた。そしてその手を半ば強引に、私とユウキさんの胸の間に差し込んでくる。可南子さんの手が動くたびに、私の胸にも微妙な刺激が送られてきて、思わず声を出しそうになるのをどうにか押しとどめる。
「ユウキちゃんのおっぱい……柔らかい……」

 こうして寝苦しい夜は、さらなる熱をはらんで過ぎてゆくのであった。

 

つづく?

 

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