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【マリみてSS(可南子・菜々・祐麒)】とらんす! 3.泣き笑う!?

更新日:

~ とらんす! ~

『3.泣き笑う!?』

 

 落ち着かずに、室内を見回す。
 なんとも不思議な部屋である。全体的に明るく、きちんと整理されていて嫌な感じは全くしないのだが、統一感というものが多少欠けている気がする。
 女の子らしいぬいぐるみは何個かあるし、シーツやカーテンなどは暖色系でどちらかというと可愛らしい柄。
 しかしそんな室内には殆ど全てのテレビゲーム機が揃えられ、棚には硬派なSLGからスポーツゲーム、はてには恋愛SLGまでゲームソフトが満遍なく並んでいる。
 本棚も、推理小説からSF、エッセイ、ライトノベルとなんでもござれ。
 まあそこまではいいとして、更に組み立てられたプラモデルが色々と設置されている。飛行機や戦車から、アニメのロボットまで様々だ。
 思わず一つを手に取ってみる。
「…………」
「あの、あまりじろじろ見ないでくれます?」
「ああ、ごごごめん、つい」
 いつの間にか菜々ちゃんが部屋に戻ってきていた。
 わずかに頬が赤くなっている。
「不器用なの、分かってますから」
 お盆にのせたお茶とお茶菓子を、そのまま床に置く。
 菜々ちゃんの作ったプラモデルは、組み立て自体は多少荒いけれど大きな問題はないのだが、色塗りがいまひとつだった。
 口には出さないが、彩色センスが斬新というか。
「全く同じ色に塗ってもつまらないじゃないですか。こう、オリジナリティを出そうと」
「それにしても、ここなんか、こんなに赤が大きいと派手だねぇ」
「……そこは、単にはみ出しただけです」
 苦笑いしつつ、プラモデルを元の場所に戻す。

 

 今、俺がいる場所は菜々ちゃんの家の、菜々ちゃんの部屋。
 女体化して呆然としていた俺を、菜々ちゃんが引っ張ってきたのだ。もちろん最初は断ったのだが、菜々ちゃんの一言で反論できなくなってしまった。
 曰く。
「そんなノーブラTシャツ一枚で街中をうろつくつもりですか。はっきりいって、透けて見えてます。男性を誘うというつもりなら、無理にとはいいませんが」
 実際、初めて女の体となった時に男達に襲われかけたことを思い出し、俺は菜々ちゃんに大人しく従うことにしたのだ。

 

 お茶を飲み、お茶菓子をつまんだところで、菜々ちゃんが口を開く。
「……で、どういうことなのでしょう。説明してくださるんですよね?」
「うん、説明したいのはやまやまなんだけれど、自分でもわからないんだ」
「と、いいますと?」
 そこで俺は、今までの経緯を話した。とはいっても、話せることなんてほとんど無いので、自分が花寺の学生であり本当は男であること、なぜかわからんが女になって可南子ちゃん、菜々ちゃんと出会ったこと、元に戻ったと思ったら今日また女になったという事実だけを述べた。
「ふぅん……面白いですね」
「面白くないよっ。困ってるんだから、本当に~~っ」
 周囲からみたら面白くても、当事者はたまったものではない。俺は頭を抱えた。
「でも、女性の体になっていいこともあったのでしょう? 確か可南子さんの家に泊まったときには、可南子さんと抱き合うように寝たとか、ぱふぱふしたとか、下着姿を見たとか」
 菜々ちゃんの台詞に、むせそうになる。
 そうだ、確か先週のカラオケボックス内で、ついつい余計なことまで喋ってしまったのだ。あの時は女の体だったし、女同士ならよいかと思わず口が滑ってしまった。
「ちょちょ、ちょっと待って、か、可南子ちゃんには言わないで。頼む、この通り、内緒にして!」
「ほう……」
 必死に頼み込む俺の姿を見て、気のせいか菜々ちゃんの目が光ったように見えた。
「可南子さんにバレるのは、まずいですかそうですか」
「え、いや、ほらだって、そりゃまずいでしょう」
「抱きついてきた私にバレるのは良いけれど、可南子さんはまずいですか」
「だ、だって菜々ちゃんはもうバレちゃったから、ほら」
「可南子さんは特別ですか。なるほど、なるほど」
 自分でも、顔が赤くなっているのが分かる。
 菜々ちゃんは、いじめっ子だった。
「まあ、いじめるのはこの辺にして。ユウキさんはこの後、どうするのですか?」
「どうするもこうするも……どうしよう? この前のときは、一日くらいで男に戻ったけれど」
 今回も同じようにいくとは限らない。
 また仮に同じようになったとして、今日をどうするかという問題は解決しない。
 俺は頭を抱えた。
「よかったら、うちに泊まりますか? 一泊くらいなら大丈夫だと思いますが」
「え……で、でも、いいの?」
 驚きつつ、聞いてみると。
「ええ。あ、もちろん部屋は私と別室ですが……ああ、ひょっとして可南子さんの家の方がよかったですか? 頼めば、可南子さんならまた泊めてくれるのではないですかね?」
「うわーん、勘弁してくださーーーい!!」
 年下の中学生の女の子に、土下座して侘びをいれる俺なのであった。

 

 色々ありながら、結局、有馬家に一拍させてもらった後の翌日曜日。菜々ちゃんに連れられて外出していた。
 ちなみに服は、菜々ちゃんのお姉さんのお下がりだという白のシャツに、サマーニットのベストをあわせている。これなら胸も大丈夫だし、あまり女性ものと感じることもない。ズボンはベルトでウエストを締め付け、裾は足の長さにあわせて折り返して留めている。
 菜々ちゃんはスカート(しかもミニ!)を用意していたが、それでは本当に女子高校生スタイルになってしまうので、頑としてお断りした。ブラジャーについては言うまでもない。
「ユウキさん、結構大きいですし、ちゃんとした方がいいんですよ?」
 と、菜々ちゃんは言うけれど、冗談ではなかった。

 

「それで、どこに行くのかな、菜々ちゃん?」
「とりあえず座りましょう」
 駅前の広場まで来たところで、オープンスペースの空いている席に腰をおろす。特に説明も無く連れてこられたのだが、菜々ちゃんには何かしら目的があるように見えた。まさかとは思うが、女体化したことに関する手がかりでもあるというのか。菜々ちゃんの表情からは、何も読み取ることが出来ない。
 自動販売機で買ったコーヒーを飲みながら、世間話をすること十分ほど。
「ねえ菜々ちゃん、いつまでこうしているの?」
 さすがにやきもきしてきて、耐え切れずに訊いてみると。
「あ、ちょうど今です」
 などと言う。
 意味が分からずに眉をひそめていると。
「菜々ちゃん、お待たせ」
 背後から声がかかった。聞き覚えのある声に、まさかと思いつつ振り返ると。
「あーっ、ユウキちゃん!?」
「可南子ちゃん?」
 案の定というか、声が示すとおりというか、可南子ちゃんが長身と長い髪の毛を翻して立っていた。
 休日である今日は当然、私服で、ボーダーのカットソーの上からカーディガンを羽織り、スキニージーンズをあわせている。シンプルな服装だが、長身で脚が長くてスタイルが良いので、それだけでとても格好良かった。
 その可南子ちゃんはというと、俺の姿を確認した瞬間、マッハで目の前までやってきた。脚が長いから、それこそ本当にあっという間だった。
「えー、ちょっと何、ひどいよユウキちゃん」
 そしていきなり責められる。
 可南子ちゃんがこの場に現れた理由も、責め立てられる理由もわからずに、俺は声もなく可南子ちゃんを見上げる。
「菜々ちゃんとは連絡取って会っているのに、私にはメール一つくれないなんて、薄情なんだ」
 なんだなんだと思っていると、向かいの席で菜々ちゃんが僅かに笑うのが目に入った。どうやら菜々ちゃんが、俺にも可南子ちゃんにも内緒で、この場に呼び出したようだった。俺は少し強い目つきで睨んで見せたが、菜々ちゃんは涼しい顔である。
「うそうそ、怒ってなんかいないから。それより心配していたのよ、あの後、どうしたかなって」
 空いている祐麒の隣に座る可南子ちゃん。
「ご、ごめん、大丈夫ちゃんと家に帰ったから。連絡もいれなくてごめん」
「いいのよ、それは。でも、昨日も菜々ちゃんの家に泊まったんでしょう? あまり突っ込んで聞くのも悪いかもしれないけれど、やっぱり何か困っているの?」
 心配するのも当然だろう、何せほとんど面識のない女の子の家に二週続けて泊まっているのだ。普通なら、何かに困って泊まる場所を探すなら、仲の良い友人の家に行くのがセオリーだろうに。
「いやー、な、何も困ってなんか、ないよ?」
 可能な限り穏やかな笑みを浮かべ、答えた。不自然だろうがなんだろうが、今の俺にはそう答えるしか道はなかった。
「あれ、ユウキさん、問題はまだ解決してないんじゃなかったでしたっけ」
 しかし、新たな道を作り出す者がここに一名。
「なな菜々ちゃん、何のことかなー?」
「何のことでしたっけ?」
すました顔で聞き返してくる。
 ここにきて、菜々ちゃんが状況を楽しんでいるのだと理解する。
 祐麒は目で訴えかける。

(ちょっと菜々ちゃん、余計なことは言わないように)
(どうしてですか、可南子さんにも相談すれば何か良いアイディアが出るかも)
(こんな無茶苦茶な話、いきなり信じるわけないじゃないか!)
(ですが、このままでユウキさんはいいのですか? 嘘をついたままで)
(良くないけれど、今は言えないってば!)

 声に出さず、言いあいをする。まあ、菜々ちゃんの言葉については憶測だが、おそらくあまり間違ってはいないだろうと思われる。
 そうして菜々ちゃんと睨みあっていると、何をどう誤解したのか、可南子ちゃんが拗ねた。
「……なーんか、二人だけ仲良し? 会ったのは同時なのに、私だけ仲間はずれかしら」
「そんなことないですよ、濃密な時間を過ごしたのはむしろ可南子さんの方かと。何しろ一つのベッドで共に寝たとか」
 菜々ちゃんの言葉に、漫画のごとく口をつけていたコーヒーを噴き出した。
「ユウキさんも、可南子さんのおっぱいがとても大きくて柔らかくて忘れられないと、口にしていました」
「なっ、なっ、ちゃーーーーーーーん!!!」
 口を拭いつつ腰を浮かし、テーブルに身を乗り出して菜々ちゃんを間近で睨む。
「あ、やだなあ、じつはわたし、抱き癖があって……寝起きもあまりよくないし、恥しいなぁ」
 後ろでは可南子ちゃんが僅かに赤くなりながら、そんなことを言っているが、恥しかったのは俺の方が同じというか、ある意味上回っていると思う。
「菜々ちゃんキミ、人で楽しんでいる?」
「いえー、なんのことでしょー」
 棒読みだ。
 このまま菜々ちゃんに話の主導権を渡すのは危険だ、どうにかしないといけないと考えていると、可南子ちゃんが助け舟を出してくれた。
「せっかく再会できたんだから、ちょっとお互いのこと話さない?」
 それをきっかけに、簡単に自己紹介のようなものになっていく。可南子ちゃんがリリアン女学園高等部の一年生、菜々ちゃんがリリアン女学園中等部の三年生で剣道をやっているのを聞いている間は良かったが、いざ自分の番になってようやく展開のまずさに気がついた。
 俺、自己紹介なんかできないじゃん、と。
「ユウキちゃんは二年生って言っていたよね。リリアンでは見かけたこと無いけど、どこの学校?」
 可南子ちゃんの素朴な質問にすら、答えることが出来ない。かといって、たかが学校名を聞かれただけで困るというのも変な話で、二年生と言ってしまったからには、実は既に社会に出て働いている、というわけにもいかず。
「え、ええと」
「ユウキさん、うちのお姉ちゃんたちと一緒の学校だったんですよ、太仲女子。ね?」
「え、あ、うん」
 思わぬアシストに、ただ頷く。
「ふぅん、部活動とかしているの?」
「特に、帰宅部」
 あまり、詮索されるわけにはいかない。適当なことを答えて、あとで全然違うということが判明したらよろしくない。
 なんとか違う方向に話題をそらしたいが、女の子の場合どのような話にすればよいのか、男子校育ちの俺に分かるはずも無く、苦し紛れについて出たのは。
「ふ、二人は彼氏とかいるの?」
 なんてこと。
 口に出してから、余計なことを聞いてしまったと思ったがもう遅い。うまい話題が見つからず、ついつい気になっていることが口をついて出てしまった。
「いません」
 まず菜々ちゃんが即答する。
「私も」
 続いて同意を示した可南子ちゃんに内心で安心するが、すぐに次の言葉で奈落に突き落とされる。
「それに私、男の人嫌いだから。あんな汚らわしい人たちと仲良くなりたいなんて、思わない。本当、女子校に入ってよかった」
「……え?」
 可南子ちゃんの口調は、今までの柔らかなものから一転してきついものになっていた。表情も、眉をひそめ、不機嫌そうになっている。男嫌いだというのは前に聞いたが、そこまでのものなのか。
 驚いて声も出せない俺を見て、可南子ちゃんは誤解したようだった。
「あ、ごめん。あくまで私個人の話だから。ユウキちゃん、お付き合いしている男の人とかいたらごめん」
「いや、そ、そんな人はいないけど。ってゆうか、男となんか付き合えるわけないし」
 当たり前だ、俺は女の子の方が好きなのだから。
 そんな俺の答えを聞いて、可南子ちゃんが目を輝かせながら、俺の手を両手でぎゅっと握ってきた。
 細くて長い指に、思わずどきっとするが。
「ひょっとして、ユウキちゃんも私と同じ? だとしたら、嬉しい」
 少し興奮気味の可南子ちゃん。握ってくる手にも力が入り、少し痛くなるけれど、そんなこと口には出さない。
「良かった、これからも女の子同士、仲良くしていきましょう」
「あ」
 そうだった。
 可南子ちゃんは今、俺のことを女だと思っているのだ。同性同士であるという気さくさ、そして俺も男嫌いらしいという共通点を見つけ、喜んでいる。
 本当ならさっさと男に戻って、本来の姿で可南子ちゃんと会いたかったけれど、男に戻るということは即ち、男嫌いの可南子ちゃんとまともに話すことができる可能性が限りなく低くなることを意味しているわけで。
「私も仲間にいれてください。"女の子同士" なんですから」
 向かいの席から、"女の子同士" というフレーズを強調して菜々ちゃんが言ってくる。
「もちろん。偶然だけれどせっかく出会えたんだし、気もあいそうだし。これからも女の子三人、仲良くしていきましょう」
 にこやかに微笑む可南子ちゃん。
 にんまりと微笑む菜々ちゃん。

 そんな二人を見て、俺は引き攣った微笑を浮かべるのであった。

 

つづくね?

 

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