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ミステリー 書評

【ブックレビュー】幻夏(著:太田愛)

更新日:

【作品情報】
 作品名:幻夏
 著者:太田愛
 ページ数:395
 ジャンル:ミステリー
 出版社:角川書店

 おススメ度 : ★★★★★★★★☆☆
 切ない度 : ★★★★★★★★☆☆
 こういう人におススメ! : 冤罪をテーマとした作品、切ない作品好き

 

■作品について

少女失踪事件を捜査する刑事・相馬は、少女が失踪した事件現場で、23年前に友人が失踪した場所にあったものと同じ奇妙な印が残されていることに気が付く。
思い出される、23年前の少年の日。
ともに夏を過ごした、失踪した幼い友人。
あの夏の真実が、23年の時を経て明かされる。

■良かった点

物語としては冤罪をテーマにしている。
冤罪というものは、本人はもちろん、その家族や近しい人たちの人生をも狂わせていく。
そして冤罪が生まれる背景には、日本の司法制度がある。
警察、検察、裁判所。
それぞれがそれぞれの事情があり、作られてしまう。
さすがに現在でここまでのことはないと信じたいが・・・・

物語は23年前と現在を行き来して展開されていく。
その少年時代の描き方のなんと切ないことか。
兄弟、母と子、友人、父と子、さまざまな想いがそのひと夏の中に凝縮されている。
そして、その夏が以降もずっと彼らを苦しめ、狂わせていくことになる。

現代にうつせば、刑事の相馬、探偵事務所の鑓水と修司のやりとりは多少コミカルな感じに。
過去の哀愁漂う感じばかりよりかは、その方がバランスが取れているかもしれない。
圧倒的な力強い筆致というわけではないが、物語の内容もあってグイグイ読ませてくれる。
文章としても読みやすい。

しかし、警察、検事、裁判官は、本当にどういう思いで罪を裁いているのだろうか。
例え冤罪を生み出してしまったところで、彼らが受ける罰に比べて、被害者のダメージは大きすぎる。

十人の真犯人を逃がすとも一人の無辜を罰するなかれ。

これが法の考え方である。
だが実際は、

一人の冤罪者を出しても十人の犯罪者を逃すな。

になっている日本。
確かに暮らしている者としては後者の方を望むかもしれない。
だからといって冤罪が許されるわけもないし、冤罪になった人の狂わされた人生はどうなるのか。

テーマとしても重く、考えさせられる一冊。

■ここが改善できるともっとよかったかも?

小学生だった尚があそこまで出来るのか?
そういうのはあるけれど、かなり頭の良い子だったのだと思えばなくもないか。

 

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