暖冬といわれながら、なんだかんだと凄く寒く思えた二月も終わってようやく三月になったが、寒さはむしろ酷くなっているように思えるのは気のせいか。暦の上では春になったが、いまだ冬枯れのような街を歩きながら、小林正念は寒さを振り切るかのように足早に歩いていた。
長くて辛くて苦しかった受験もようやく終わり、まさに春がやってこようとしている。小林は猛勉強の末、第一志望の大学に見事、合格したのであった。
慣れ親しんだ学校、学友達と別れることに一抹の寂しさを感じないことは無いが、新たな世界に向けた高揚感もまた同時に湧き上がってくる。
あとは、美人で優しくて頭がよくてスタイルがよくて、それで少しエッチな彼女が出来たら言うことはないと、拳を強く握る。
すると、
「はぁい、そこの彼、ちょっといいかしら?」
と、背後から若い女性の声がかかる。
すわ逆ナンか、と内心で期待に胸躍らせながら、表情はあくまで崩さずにスマートに振り返ってみせると、目の前に立っていたのは本当に美少女だった。
「三奈子さん」
「やほやほ、小林くん」
すちゃっ、と右手をあげるのは築山三奈子。花寺の中では、実は山百合会のメンバー以上に有名なのではないかといわれている。
逆ナンパではなかったかと肩を落としかけるも、笑顔で三奈子に応じる。何はともあれ、綺麗な女性と話が出来ることは嬉しいものである。
「三奈子さん、目、悪いんでしたっけ?」
見ると、三奈子は見慣れない眼鏡姿であった。ピンクのフレームが可愛らしい。
「あ、これ? 生活に困るってほどじゃないんだけどね、パソコンや編集のやりすぎかなー、高校後半から少し落ちてね。ちゃんと見えたほうがよいじゃない?」
眼鏡のフレームをつまんで軽く上下させてみせて、淡く微笑む。ポニーテールではなくニットをかぶり、緩くウェーブした髪の毛が肩から胸にかけて垂れている。コートの下はタートルに気合のミニスカート。
「今日は、ユキチとデートですか?」
「Yes!」
人差し指をたて、片目をつむる三奈子は、やはり可愛らしい。
くそう、祐麒のやつめ。ひょっとすると夜はこのまま眼鏡っ娘プレイでもするつもりなのか、羨ましい、などとは心のうちで思っても口には出さない。
「ん? 眼鏡っコぷれい、って何?」
口に出ていたようだ。
「いやいや、その、眼鏡をしたままするということで」
「ふーん。別に、眼鏡したままでも、よいけど?」
「そ、そうすか……」
相変わらずのあけっぴろげな発言に、恥しくなるのは小林の方。三奈子はここまでオープンにしてくれるのに、祐麒の方は全然話してくれないのだ、性の方面については。高校生男子ともなれば、女子とのアレやコレやというのは非常に興味津々なわけである。一体、どれほどのものなのか、実際の女体とはどういうものなのか、経験したならば親しくしてきた友に教えてくれてもよいだろうに。
駅前、寒風が吹き抜ける中、会話を続ける。
「最近、ユキチと会ってばかりでしょう? ユキチのやつ、せっかく受験終わったっていうのに付き合い悪くて」
「あはは、ごめんね」
「どうですか、何か面白いネタとかないですか」
「ネタというか聞いてよ、この前ね、祐麒くんたらひどいのよー」
「どうしたんですか?」
「私ね、バックからって苦手なんだけど、いくら言っても要求してくるのよ」
「そっ……」
「バックで入れるの嫌なのに、そんなの駄目だって」
「えと」
「やっぱりさ、前から、正面向いたほうがいいじゃない、安心するし」
「あ、ああ、お、女の人はそう思う人も多いようですね。ちゃんと顔が見えたほうがいいって」
どこかで聞きかじったような情報を、どうにか口から吐き出す。それ以外に、どう反応すればよいというのか。
小林の気持ちなど知らず、三奈子は続ける。
「そりゃ確かにさ、出すのはコントロールしやすいだろうけどー」
「お、男はそうみたいですね」
「祐麒くんはどうしても後ろから、って言うけれど、私は嫌だからさ、何度も入れ直すハメになっちゃって」
「は、はぁ」
「どうなんだろ、やっぱり回数こなして、慣れるしかないのかなぁ?」
「そ、そう聞かれましても」
「……乗るのはね、好きなんだけれど」
「そそ、そうなんですか?」
「うん、ほら、自由に動けるしさー、気持ちいいし」
小林は絶句する。同い年だというのに、祐麒のこの進みようはなんなのかと。年上の彼女はそんなにも凄いのか。
衝撃で、意識が霞む。三奈子は引き続き何かを話しているが、小林はショックを受けていて半ば上の空である。
「それでその時祐麒くん……で……だから、私が口で咥えてあげてね……祐麒くん、顔をしかめて、我慢しなさいって言ったんだけど…………そしたらどんどん溢れて出てきて、慌てて舐めてあげたんだけどね……」
なんかもう、そこまで聞いちゃっていいのか、と強く問いただしたくなるような話になっていないか?
小林は限界を感じた。
「すっ、すみません、三奈子さん。お、俺にはちょっと会話がアダルトすぎて」
「そう? あ、そうか――小林くん、まだなんだ」
ぐさりと刺さるようなことを口にする三奈子。小林は胸を抑え、喘いだ。
「大丈夫だよー、小林くんもすぐにできるって」
「そ、そうだといいんですけれど……」
がくり、と頭を垂れて膝に手をつく。
完全に落ちたその直後、久しぶりの声が耳に届く。
「小林、何やってんだ?」
「ゆ、ユキチか……お、俺のダメージは大きい」
遅れて登場の祐麒に、もたれかかるようにしてくる小林。祐麒は友の体を支えながら、何があったのか目で三奈子に問いかけるが、三奈子は肩をすくめ首を横に振るだけ。
やがて小林はようやく自力で立ち、祐麒の耳元で囁くように言う。
「お、俺も大学に行ったら、お前に負けないからな……」
「お、おう」
とりあえず頷く祐麒。
そして、小林は一人、なぜか寂しげな背中を見せて去っていくのであった。
「――で、今回は何の話をしたんですか、三奈子さん?」
「え、別にただ、先週のドライブのとき駐車に苦労したことと、その時に祐麒くんが指を切って怪我しちゃったことだけど」
「あれは、三奈子さんがいきなり車動かすから、反動で缶の口でぱっくりといっちゃったんじゃないですか。その後、いきなり指舐めてくるし、びっくりしましたよ」
「だって血出てたし、怪我したときの王道じゃない?」
「間違っている気がします」
冬空の下を並んで歩きながら、祐麒と三奈子は話す。
祐麒が受験から解放されて、これが三度目のデートである。二度目であった前回は、久しぶりに三奈子の運転で遊びに行ったのだが、三奈子が駐車に四苦八苦したり、祐麒が怪我をしたりと、小さなハプニングの連続だった。
そして、更にその前、受験が終わってから初めて三奈子と顔を合わせたデートのとき。年明けに会って以来だから、実に一ヵ月半ぶりだったのだが、久しぶりに三奈子の笑顔を見て、三奈子の姿を見て、予想していた以上に喜びを感じている自分がいることに祐麒は気がついた。
「いやー、でも本当、受験が終わって肩の荷が下りたな」
両腕を天に突き上げるようにして伸ばし、首を左右に捻る。最後の試験が終わってからそれなりに時間は経つが、未だにそのように感じる。大学受験で人生が決まるわけではないけれど、この世界で生きていく限り、将来に影響しないなんて事はないのだ。
幸い、全ての大学に受かるなんて事はないものの、第二志望の大学の合格は既に手に入れている。後は、第一志望である大学の試験の結果を待つのみ。問題は、第一志望に落ちていた場合、第二志望の学校に行くかどうか。
「もう、決めているの?」
主語を省いていても、何を訊ねてきているかは分かる。
祐麒は正直、迷っていた。
その第一志望の大学に行って、どうしても学びたい講義があるとか、師事したい先生がいるとか、その学校じゃなくては出来ない勉強があるとかいうわけではない。そもそも、自分の将来だってまだあやふやで、固まっていない。
だから、第二志望の学校にしたところで、困ることは無い――のだが。
「どうしようかなあ」
白い息を吐き出す。
三奈子は、ああしろ、こうしろとは何も言ってこない。ただ、祐麒の決断を穏やかな瞳で見つめてくれているだけだ。
「でも、浪人したら親に迷惑かけるしなあ」
「祐麒くんは、優しいんだね」
「優柔不断なだけですよ。それに多分、甘えもあるだろうし」
世の中には、頭が良くてやる気もあって、でも家庭の事情なんかで大学に行くことができない人だっているだろう。そんな人たちに比べたら、どれだけ幸せな境遇にいるかなんて分からない。でも、分からないからこそ、適当な気持ちで口にすることは出来ない。
「甘えられるうちは甘えたっていいんじゃない、んー?」
にこにこと笑いかけてくる三奈子を見ていると、思わず三奈子に甘えたくなってしまいそうになり、慌てて頭をふる。
「ん、どうしたー?」
にゅっ、と眼前に顔をつきだしてきて、息を吐き出す。白い靄がかかった向こうに、三奈子の笑顔。
「い、いえ」と、言葉を濁して目をそらす。本当に、いつもながら三奈子の仕種は反則的だと感じる。
「大学生になったらさ、何をしたい?」
歩きながら、三奈子が尋ねてくる。
祐麒は遠くに視線を向けながら、うーん、と唸るようにして考える。
具体的に何をしたいかと問われると、困ってしまう。断固とした目標があって大学入試に臨んだ人たちとは違い、そこまでの思いは今の祐麒にはなかった。
将来、どんな職業を目指しているのか、それに向けてどんな学業を修めていきたいのか、まだ殆ど白紙の状態である。
ひょっとしたら多くの人が祐麒と同じような感じなのかもしれないが、それでもいざ聞かれて答えられないのは、なんだか恥しかった。まるで、自分が薄っぺらい人間のように思えて、そんな自分に失望されるような気がして。
「そんな、真面目なことじゃなくても、ほんのちょっとしたことでいいんだけど。どんなサークルに入りたいとか、どんなバイトをしたいとか、どんなところに遊びに行きたいとか」
「そうですねー」
「どんな映画を観たいか、どんな本を読みたいか、どんなものを食べたいか」
「それ、大学に行くのと関係ないじゃないですか」
「あ、それもそうか。あっはっは」
屈託なく笑う三奈子。
電車に揺られながら、他愛のない話は続いていく。
大学の話題から離れて、せっかく受験が終わったのだから春休みのうちにどこかに遊びに行きたいとか、最近はまっているドラマの話とか、好きなミュージシャンのライブツアーが始まるから観にいきたいとか、どこにでもありふれているような話。
駅に到着して電車を降り、また歩き出す。
大きな駅ではないけれど、駅前はそれなりに栄えているし、人の数も多い。祐麒と同年代らしき人の姿も多く見かける。
「うー、寒いね、まだ」
駅を出ると、三奈子は言葉通り寒そうに両手に息を吹きかけていた。
「今日、手袋してくるの忘れちゃってさー」
たはは、と苦笑いしてみせる。
確かに、まだ寒いから手袋無しの素手では厳しいかもしれないが、コートのポケットにでも手を入れていれば、それでしのげる。事実、祐麒もそうしていた。
すると不意に、ひんやりとした空気がポケットの中に入り込んできて、祐麒の手に冷たくて柔らかなものが触れた。
思わず体を震わせる。
「えと、三奈子さん?」
「おー、あったかー」
三奈子の手が祐麒のコートのポケット内に侵入し、その冷えた手で祐麒の手を掴んで外に連れ出した。
「ちょっと、外に出すと冷たいですよ?」
「ポケットに手を突っ込んだまま歩いてはいけませんって、小さい頃に教わらなかった?」
「そりゃ言われましたけれど、今は小学生でもないし」
「いいじゃない、もう。いやしかし、祐麒くんの手はあったかいね」
「三奈子さんの手、冷たすぎ。人の体温、奪わないでくださいよ」
「ふふふ、観念して熱をよこしなさい」
冷えた小さな手が、少し強く祐麒の手を握る。
外に出しているからどうしても空気に触れる部分はあるけれど、それでも、震えることは無かった。
そうして、本日のデートの目的地に到着する。
祐麒と同年代の少年、少女がたくさんいる中、歩みを進めてゆく。
「さ、祐麒くん」
「う、うん」
促されて、人込みを分け入っていく。もちろん、三奈子もすぐ隣で、手を握ったままついてくる。
三奈子は横にいる、でもこれだけは祐麒自身でやらなくては意味がない。
大きく息を吸い込み、顔を上げる。
「…………」
周囲の音が、聞こえなくなる。
今、感じられるのは左手に繋がる三奈子の温もりだけ。いつの間にか指と指をからめあう、しっかりとした繋ぎ方になっていた。小さい手、小さい指なのに、物凄く安心できるようで、心が落ち着く。
そして。
「……あった」
呟くと。
「どれ? 何番?」
それまでただ無言で立っていた三奈子が、祐麒の手元を覗き込み、眼鏡の位置を直しながら、前方の掲示板と見比べる。
「おーっ! 本当だ、あるよ、祐麒くん! よかったね、おめでとう!!」
「は、はは……」
ぴょんぴょんと飛び跳ね、まるで自分のことのように喜んでいる三奈子。つられるようにして、祐麒の腕も上下に揺れる。
三奈子は手を離し、両手を広げて正面から満面の笑顔。
「ようこそ、我が大学へ。これで祐麒くんは、私の後輩だねっ」
そしてそのまま、祐麒に飛びついてきた。
首に腕をまわし、しがみつくような格好。祐麒は三奈子の背中に手をまわして、去年も同じ場所で同じようなことをしたなと、記憶の中の景色と重ねていた。
「……なんだよー、反応薄いなあ。そんなに嬉しくないの?」
祐麒の反応が鈍いことに苛立ったのか、三奈子が軽く頭突きをくらわしてきた。額に鈍い痛みを感じ、顔をしかめる。
「いや、嬉しいですよ。ただほら、まだ現実味が、ちょっと」
実際、言葉のとおりだった。
祐麒の第一志望は、三奈子が通っている大学だった。所在地であるとか、学校の設備であるとか、学部であるとか、様々な理由はあるけれど、そのどれも第二志望の大学とは大差が無い。偏差値だって、ほぼ同じである。
同じであるなら、それ以外の付加価値で決まってくるわけで、どうせ行くならば三奈子に近いほうが楽しい未来が描けそうに思ったわけで。
「また、ぼーっとしてる」
「う、うわっ!?」
三奈子の顔が、更に近づいていた。
額同士がくっつき、それどころか鼻の頭同士を押し付けあう格好になっていて、少しブラウンの入った深い瞳が祐麒のことを見つめていた。
あまりの近さに驚き、周囲にはたくさんの人がいることにも今さらながらに気がつき、ぎくしゃくと体を離した。
そこへ。
「おー、そこのバカップル、ようやく落ち着いた?」
「見せ付けてくれるわね」
「…………」
三奈子の友人である安奈、雅、蘭子が姿を見せ、口々に祐麒に対して祝いの言葉を向けてくれる。
「どうしたんですか、皆さんは」
「近くに遊びにきていたの。そうしたら、三奈からメールがあってね」
答えてくれたのは蘭子。
「合格祝いにさ、これからパーッと遊びに行こうよ! お姉さん達が色々とイイコトしてあげちゃうゾ☆」
くねくねと体を揺らして誘ってきたのは、安奈。
変なことを口走る安奈に、三奈子と蘭子が何やら言い返している。途端に、騒がしさが何倍にもなった。
「……ちなみに」
「うわぁっ!?」
気配も感じさせず背後から声をかけてきた雅に、本気で驚く。黒く長い髪といい、蒼白いとさえいえる肌といい、透明感といい、本当に幽霊ではないかと思える雰囲気を持っている。
そんな祐麒のことなど気にした様子もなく、雅は抑揚のない声で続ける。
「昨日、三奈子は酷い有様だったのよ。私達を前にして、もし貴方が落ちていたらどんな態度をしたらよいか、なんて声をかければいいか、いざとなったら私達に盛り上げてくれるよう頼んできて。だから私達が此処にいるのは偶然ではなく必然」
「え?」
雅の言葉に、思わず三奈子の姿を追いかける。安奈と言い合いをして、間に蘭子が入って揉めている。もちろん、本気の喧嘩なんてわけじゃなく、友達同士のじゃれあいみたいなものだが。
「本当なら私、別の用事があったのだけれど、三奈子に泣きつかれてね。女の友情に厚い、雅さんなの」
「は、はあ」
信じられなかったが、雅が嘘をついているようには見えなかった。(もっとも、無表情ではあるが)
雅の話した内容が胸に落ち、じわじわと嬉しくなってくる。
自然と、三奈子を見ながら口元が緩んでくる。
「……なんか、その表情を見ていると少し苛っとくるわね」
「へ?」
雅からオーラを感じた。
そしていきなり、背後から抱きすくめられた。突然のことに反応できず、体が硬直する。長身の雅はもともと祐麒より少し背が高く、今日はおまけにヒールのある靴を履いているので、完全に上から覆ってくるような格好となる。
「ちょ、ちょっと雅、何しているのよっ」
見咎めた三奈子が、慌てた様子で駆け寄ってくる。
一方の雅は平然としたまま、口を開く。
「いえ、ただ合格のお祝いに、女のカラダを教えてあげようかと」
「な」
「に」
「をーーーっ!?」
三奈子、蘭子、祐麒の驚きの声がこだまする。
「あー、んじゃあたしも、今夜一晩、抱かれてあげようか?」
安奈だけが一人、目を輝かせて悪ノリで入ってくる。
顔を真っ赤にして三奈子が、雅と安奈にくってかかる。蘭子はあたふたとしている。
「いいじゃない、4月から新たな後輩となるわけだし、可愛がってあげても」
「ふふ……明日は足腰立たなくなっているわね」
「ななな、何を言っているのよあんた達っ。祐麒くん、ほら、もう行こうっ」
三奈子に手をつかまれる。
後ろから雅に抱きつかれていたが、雅はあっさりと手を離し、祐麒は三奈子に引っ張られていく。気のせいかもしれないが、微かに笑ったように見えた。
蘭子はため息を吐き出し、安奈はウィンクを送ってくる。
これはまた、騒々しくて予測のつかない大学生活になりそうだった。
それでも祐麒は、不安を抱くことは無かった。
思い返せば今日だって、ずっと三奈子が一緒にいてくれた。駅を出て、強引に祐麒と手を繋いだ瞬間から、祐麒の不安は消えていた。
家を出るときに感じていた、寒さとは異なる震えを三奈子の小さな手が覆い、包んでくれていた。
だから。
「よーっし、じゃあまずボウリング行こうっ! ほらみんなも早く!」
三奈子の声に、祐麒は笑顔で応える。
春は、そこに来ていた。
おしまい