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ギャグ・その他 マリア様がみてる

【マリみてSS(色々・ネタ)】小ネタ集23 ノーマルCP<未来1>

更新日:

 

~ The story of one future 1 ~

「たっだいまー!」
玄関を開ける音と、元気な声が同時に響いてきた。そして、駆けてくる足音。
「お帰……どわっ!?」
振り向き、言葉を言い終えないうちに、柔らかく、温かな重みが祐麒にのしかかる。
「あー、疲れたよー。編集長、人使いあらーい!」
「三奈、こら、ちょっと待って……!」
「待たないもーん。元気チュー入ぅっ!!」
「……っ!!」
どんな元気の注入をしたかは置いておくとして。
記者として働く三奈子は多忙な毎日。それでも、充実した日々を過ごしている。
「……ぷはっ!! っ、こ、こらっ、見ているからっ!」
赤くなりながら抱きついている三奈子を引き離し、目を下に向けると。
可愛くて仕方ない愛娘の大きな瞳が、二人を見上げていた。
「ぱぱとまま、いつもらぶらぶぅ! よーちえんのせんせぇもね、うやらましいっていってたよ」
「そうそう、今さら何を言っているのよっ」
三奈子の細い腰を抱きしめ、苦笑する。確かに、さすがにキスはしないが公の場でも三奈子は変わらないから。
時に、娘よりも幼いんじゃないかと思えるような言動もとったりするし。
「よーし、今日はママが久しぶりにご飯を作ってあげるからね!」
疲れたなんて言っていたのはどこへやら、腕まくりをする格好を見せてポーズをとるが。
「えーっ、ぱぱのがいいー」
「な、なにをーー??」
明るい笑いが響き渡る。
いつになっても変わらないかけがえのない笑顔は、いつの間にか二つになっていた。

 

~ The story of one future 2 ~

インターホンの音を耳にしてどうしようかと思ったが、生来の生真面目さにより無視できなかった。
最低限の身だしなみだけ整え、寝ぼけ眼をこすって玄関に向かう。
「こんにちは、って、おはようございます、って感じですね」
「あ、おはよう……」
玄関を開けるとそこに立っていたのは凸凹コンビ、瞳子と可南子。
「えっと……どうかしたの?」
祐麒が訊ねると、なぜか瞳子は顔を赤くして横を向く。可南子は笑いを押し殺したような顔。
首を傾げる祐麒だったが。
「えーとですね、今日は大事な商談がありまして、店長に来ていただかないと困るのです」
「いつまで経っても連絡もなく、部屋にもおらず、おそらくこちらだろうと思いまして」
瞳子は怒ったような照れたような表情、可南子は澄ました表情ながらどこか愉快そう。
「……!? ちょ、ちょっと待って! すぐに……い、いや10分? くらいっ」
扉を閉め、慌てて中に戻っていく祐麒。その姿を見て、瞳子と可南子は顔を見合わせる。
中からは、声が聞こえてくる。
『お、おい乃梨子っ! 起きろ、今日大事な商談があるんだろ!? 瞳子ちゃんと可南子ちゃん来てるぞ!」
『……ん……え……って、ちょ、待っ、ああああっ! もうこんな時間っ!?』
『待たせてあるから早く準備しろって、ほれ、パンツっ』
『馬鹿、これ昨日のじゃない! ってかシャワーくらい浴びて綺麗にしたいし』
『そんな時間かけてたら、二人に何て思われるかわかんないだろ!?』
部屋の前で待つ二人は、悟りを開いたような顔をしている。
「……バレてないと思っているんですかねぇ」
「もう、社員全員に知れ渡っているんですけれどねぇ……」

 

~ The story of one future 3 ~

それにしても、よくここまで続いたものだと思う。
何度も喧嘩をして、仲直りして、距離が離れた時期もあったし、恥しいほどラブラブな時期もあった。
そういった日々を過ごしてきて、今があるわけで。
「……って祐麒、まじめに聞いているのっ!?」
「イデデデっ! き、聞いているって!」
頬をつねってやると、涙目になる祐麒。そんな私達の姿を見て、プランナーの女性が笑っている。
つい、身体の方が先に動いてしまう。なんか、凄く恥しくなった。
「本当に仲がよろしいのですね、お二人は」
そんなことを言われると、余計に恥しくなるので、私は話を元に戻した。
「やっぱりね、サプライズがあった方がいいと思うのよ。お客さんを退屈させないよう」
「や、結婚式にサプライズが必要か? 普通でいいんじゃないか」
「駄目よ。こう、例えば天井から忍者が降りてきて祐麒を人質に。それを颯爽と救い出す私とか」
「教会で忍者!? ってかなんで俺が!? そういう場合は普通、俺が由乃を助けるんだろ!?」
「だから普通じゃつまらないでしょ」
まあ確かに、無理はあるかもしれないし、神父さんが許してくれないかもしれないけれど。
プランナーさんも隣で苦笑している。やっぱり駄目か。
「大体、そんな激しく動いたりしたら、あのドレスじゃ由乃のつるぺたな胸を滑り落ちかねな……」
「……ほほう。ドレス姿、綺麗だって誉めてくれていたけれど、実はそんな風に思っていたわけね」
「い、いやいや! なんてゆうか、その」
「だ、大丈夫ですよ。ちゃんと透明のストラップがついていますから、落ちるなんてこと……」
プランナーさん、フォローのつもりだろうけれど、私の傷をさらに抉るようなことを口にする。
よく見れば彼女は胸が大きい。ブラウスの上からでもよくわかる盛り上がり。祐麒の視線もふとそちらに……
「って、ここにきてその態度か祐麒っ! 結局はおっぱい星人かーっ!」
「ち、違うって、俺は……っ」
騒ぎながら、二人で決めていく二人の新たな出発点。
こんなのも私達らしいんじゃないかな、なんて思ったりもするのだった。

 

~ The story of one future 4 ~

「いやー、それにしてもほんっっっとうに長かったわねー。傍から見ていて、もう苛々しっぱなしだったわよ」
最初の一杯を飲み終えるなり、大学時代からの友人である氷野せりかが口を開いた。
蓉子を囲む川藤、日村、徳永の面々も、それぞれの表情で頷いている。
「そう? そんなこと、ないと思うのだけれど……」
「どこがよ。もう、付き合い始めてからセックスするまで、どんだけかかっているのよあんたら! って」
「ちょ、せりか、大きな声でそんな」
あまり深くつっこんで欲しい話ではなかったので、諌めることで話を逸らそうとした蓉子であったが。
「そうそう。今だから言うけれど、どうすれば上手くできるか、相談されたのよ私」
いきなり暴露する徳永。きっと、酒の肴にされるだろうとは思っていたが、初っ端からとばしすぎではないか。
話にくいついてくる、他の四人。勘弁して欲しい。
「それで、どんなアドバイスしたの? 人妻のテクニックや如何に??」
「……うわ、初めてでいきなりソレ? 蓉子は実践したの?」
盛り上がる場。昔のことを掘り返されるのは恥しいが仕方が無い。止めて、止まるような人たちではないのだ。
交際を始めてから十年目の今年、蓉子と祐麒はゴールインした。
きちんと仕事をして、生活の自信が持ててからじゃないとプロポーズできなかったのは祐麒らしいと思えた。
「しかし祐麒くんも慎重よねー、あたし、てっきり学生結婚すると思ってた」
「蓉子は蓉子で受け身だし、何度、祐麒くんを奪ってやろうと思ったことか」
「そりゃ無理でしょー、なんたって祐麒くんの『蓉子ちゃんラブ』っぷりは半端じゃなかったし」
「それをゆうなら蓉子もでしょー! 『祐麒きゅんラブ』は見ていたこっちが恥しかった!!」
散々な言われようである。まあ、一ヶ月前の結婚式ではあまり話せなかったし、仕方ないだろう。
新婚旅行から帰ってきて、お土産を渡すために集まった大学時代の友人達。色々なことがあった。
「……それでさ、ついこの前も聞かれたのよ。『初夜のときはどういうのがいいのかしら?』なんて」
「って、そ、そんなことまで言わないでよっ!!」
さすがについ最近のことまでばらされて、慌てて立ち上がるが、お酒のせいもあり止るような人たちでもなく。
「それで私は言ったのよ。これから新たなスタートなわけだから、出会った頃の格好でしてみたらって」
「で、蓉子はどんな格好したの?」
「え」
ふられて固まる。
「あっ、赤くなった! わかった、バイトのときの制服でしょ! あの」
蓉子は真っ赤になったまま無言。いえるわけが無かった。リリアンの制服を着たなんてこと。

 

~ The story of one future 5 ~

大学内のメインストリートの桜並木。桜はまだ満開ではないけれど、全面桜色の鮮やかな光景。
まさか、こんな日がくるとは、大学に入るときには思いもしなかった。
周囲は、一目見ようとの思いか、大量の学生が溢れんばかりに集まってきている。
「うふふ、凄い人ね。ちょっとびっくり」
言いながら、とても生き生きとした表情を見せている、江利子。
「そりゃそうですよ、まさかこんなところで……」
祐麒は肩をすくめた。今でもまだ、ブーイングを受けることもあるが、もう慣れた。
仕方ないことなのだ。何しろ、隣にいるのは二年前のミス・キャンパスなのだから。
祐麒はもう一度、江利子に目を向ける。
シルバーの糸を織り込んだケミカルレースを使用した、純白のウェディングドレス。
ウエストから広がるサテンのアシンメトリードレープがドレスをボリュームアップ。
目に眩しい、うなじから肩のライン。鮮やかな笑顔は、一点の曇りも無く。
文句なしに美しい、祐麒の恋人。いや、これからは妻となるのだ。
色々と振り回されたけれど、結局のところ敵うはずはなかったのだと今になって改めて分かった。
祐麒の心は、完全に江利子に奪われてしまったのだ。その、変幻自在な彼女の魅力によって。
「でも、大丈夫? そのドレス」
「大丈夫、そんなにきつくしていないし、苦しくもないし」
細いウエストラインからはまだ想像できないが、実は江利子のお腹には既に新たな生命が宿っているのだ。
「……でも、責任とってとかじゃないですからね。俺は、江利ちゃんのこと本当に」
言いかけたところで、ほっそりとした指で口を塞がれた。
「馬鹿ね、分かっているわよ。そうじゃなかったら、こっちからお断りだわ」
江利子の卒業の年に、卒業する大学で行った結婚式。江利子の親兄弟を含め、数え切れない男が泣いている。
江利子が祐麒に寄り添い、首に手を回す。祐麒は無言で頷き、江利子を抱き上げた。歓声が上がる。
「一年のときを思い出すなぁ。まさか、こんな風に再現するとは思ってもいなかった」
「だから言ったでしょう、私たちは伝説になるって。さ、行きましょう、ア・ナ・タ♪」
とっておきのウィンクを投げつけて、江利子は唇を重ねてきた。更に歓声とも悲鳴ともつかない声があがる。
歩き出した祐麒と江利子の二人を、桜のフラワーシャワーが包み込んだ。

 

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