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【マリみてSS(祐麒・色々)】乙女はマリアさまに恋してる 第四話④

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~ 乙女はマリアさまに恋してる ~
<第四話 ④>

11

 

 いよいよ一学期の期末考査当日の朝がやってきた。祐麒にとってみたら遥か昔に習ったこととはいえきっちり復習したし、昨夜は早めに床について睡眠もたっぷりとって体調もバッチリ。あとはいざ試験を受けるのみ、のはずだったのだが。
「――――うきゃああああああっ!?」
「ど、どうしたのいきなり叫んだりして、江利子さんっ!?」
 起き上がろうとして、やたら上半身が重いと思ったら、ボリュームたっぷりのバストが存在していたせいだった。
 そして目を横に転じれば、心配そうにこちらを見つめてきているのは桂ではなく克美だった。
 このところ発生しなかったから、実はもう終わったんじゃないかとか勝手に都合の良いことを考えていたが、やはりそうではなかったらしい。久しぶりに江利子と体が入れ替わっていた。
「よ、よりによってこんな日に……」
 頭を抱える。
「大丈夫、江利子さん? 頭でも痛いの?」
「あ、あはは、大丈夫です、はい……」
 力なく笑い、のろのろと起き上がって支度する。久方ぶりの江利子の体は、胸のせいで重心がとりづらく苦労したが、どうにか制服に着替え、髪の毛も直し、朝食に向かう。
 入れ替わった江利子と話をしたかったが、席はお互いに遠かったし、桂たちと話をしていて声をかける隙が見つからない。結局そのまま学校へと向かうことになった。
「――今回こそ、江利子さんには負けないわよ。今回は、充実した勉強ができた実感があるの」
「え、ええ、そう……」
 曖昧に頷き返す祐麒であったが。
「…………って!」
「え?」
「あ、なんでもないの、うん」
「そう……?」
 やばいことに気が付いた。
 江利子は学年でも常に首席を争うほどの成績だということを。過去、既に受験を終えた祐麒は三年生で現在習っている授業内容も当然知っていることではあるが、一年生として過ごしてきている間にかなりのことを忘れている。おまけに、今回の三年生用の試験に向けた勉強など、当たり前だが全くしていない。
「どうしよう……」
「もう、江利子さんならそんな不安になることないでしょう?」
 克美はそう言うが、不安しかない。
 教室に到着して急いで教科書を開いて目を通したが、ああ、今はこの辺なんだと思ったくらいでロクな詰め込みも出来ず試験は開始された。
 問題用紙を睨み、必死こいて回答欄を埋め、どうにか一日の試験を終えた頃にはくたくたになっていた。
 だが、それで終わりではない。二日目になっても元の体に戻ることが出来ず、結局、試験期間中はずっと江利子として試験を受けることになった。
 試験による肉体的、精神的、双方の疲労によってか、試験が終わった日の夜から祐麒は熱を出して寝込んでしまい、試験休みの間も寝て過ごすことになった。
 ようやく熱が引いて起き上がれる頃には試験休みもとうに終わり、試験結果が発表されるタイミング。
「江利子さん、大丈夫? ゆっくり行きましょう、結果は逃げないわ」
 なぜか少し嬉しそうな克美に手を繋いで先導され、結果が張り出されている掲示板までやってきた。この学園では、各学年のトップ50が掲示されるようになっている。ちなみに今日のこの時まで、祐麒はずっと江利子の体に入ったままだった。

「……なんか騒がしいわね」
 掲示板の前の人だかりに近づくと、克美が首を傾げて言う。祐麒は初めてのことなのでよく分からないが、克美が言った通り全体的にざわついているような気はする。それも、祐麒が近づくとざわめきは大きくなり、多くの視線も祐麒に向けられるようになった。
「なんなのかしら…………って、えええっ!?」
「え、ちょ、克美さんまでどうしたの?」
「え、江利子さんの名前が5位までに……ない……」
「え? あぁ……」
 呆然と掲示を見上げている克美だが、祐麒としてはそういうことかと納得する。仕方ないことだが、やはり今の祐麒の実力でトップ5などに入れるわけがなかったのだ。見てみると、トップは瑞穂、2位が蓉子、3位は克美だった。
「おめでとう克美さん、2位なんて凄いね」
「そ、そんなことどうでもいいのよっ!? どうしたの江利子さん、やっぱり体調が悪かったのよね、そうよね、そうじゃなければ、江利子さんが30位台なんてありえないんだから!」
「お、おぉ……」
 言われて見れば、確かに30番台に江利子の名前があるのを見つけた。祐麒としては、50位以下にならなくて良かったと、むしろ30番台なら頑張ったじゃないかと自分を褒めてやりたいくらいだが、常にトップを争っていた江利子の成績を鑑みれば、克美を始めとする周囲が騒がしくなるのも仕方ないところか。
 しかし、江利子にはただひたすら謝るしかない。今までトップ5から落ちなかったのに、いきなり30番台に急降下させてしまったのだから。
「ちょっと江利子、あなた一体どうしたのよ」
「腹でも下してたんじゃないの、どうせ」
 寄ってきた蓉子と聖にも、そんなことを言われてしまった。
「皆さん。完璧で素晴らしい江利子さまでも、調子の悪いことはありますよ」
 と、そんな中でフォローの言葉を発したのは。
「あら、祐紀ちゃん」
「ぶっ!?」
 祐麒の体に入っている江利子だった。
「ちょっと祐紀ちゃん、大丈夫、熱でもあるんじゃない? 誰が完璧で素晴らしいって?」
 聖が江利子の額に手を当てる。
「本当のことですから。私は江利子さまのことを素晴らしい女性として心の底から尊敬し、崇拝して……もが」
「ちょ、ちょっと、ゆ、祐紀さん?」
 祐麒の容姿をして、自分自身のことを激しくリスペクトしようとする江利子の口を慌てて塞ぐ。
「どさくさに紛れて何言ってるんですかっ」
「あら、これくらいいいじゃない。成績、あんなに下がったんだし~」
「ぐっ……」
 そこを突かれると、言い返せない。
「まあ、別にいいけどね。そっか、私の成績が下がるとこういう反応になるんだ、っていうのが分かって面白いし」
「はあ……」
 ため息をつく。
 どうやら言葉だけではなく本当に面白がっているようで、改めてよく分からない人だなと思う。まあ、これも自分の実力を知っているという自信からくるものなのだろうが。
「……それより、私には感謝してよね」
「え、何がですか?」
 得意げな江利子を、きょとんとして見ていると。
「いやー、それにしても祐紀ちゃんはさすがとしかいいようがないね」
「本当、入学試験で満点はフロックじゃなかったってことね」
「…………ん?」
 蓉子、聖が口々に祐麒のことを褒める。
 もしや、と思って一年生の方の成績を見てみると。
「っ!!」
 叫びそうになるところ、どうにか手で口をおさえて堪える。
「やっぱり祐紀ちゃんは凄いよね! もう、当たり前って感じ」
「えへへ~、桂ちゃん、約束通りご褒美にちゅーしてー」
「えーっ、皆の前じゃ、恥ずかしいよう」
 桂に抱きつこうとする江利子をどうにか押しとどめる。
 そして改めて見上げる。

"1位  福沢 祐紀 ・・・ 1000点"

「ま、満点……」
「いや~、さすがに一年生の問題だから忘れかけて危ないのもあったけれど、今回は運が良かったわ。どうにか、貴女の面目は保ったわよ」
「あ、はは、あはは……」
 面目を保ったどころかどころか、なんと余計なことをしてくれたのか。
 今回の試験では適度な点を取って学年首席など手放し、実はそれほどたいしたことないんじゃないかと思わせ、あまり目立たないようにしたかったのに台無しだ。
「まさか10教科すべてで満点を取るなんて……さすがですわ」
「このリリアンの歴史でも、10教科で1000点満点を取った生徒は史上初だとか」
「あぁ、祐紀ちゃん……抱いて欲しい……」
 とんでもなく注目を浴びてしまっている。
「1位というのは想定通りとしても、またしても満点取るなんて、本当に凄いのね祐紀ちゃんは」
「さすが、アドラブルシスターに選ばれることだけのことはあるわ」
 蓉子と聖も呆れ半分に感心している。
 目立たないどころか、またしても注目度をあげてしまっている。
 あたりまえだ、二年生のトップも、三年のトップである瑞穂も、さすがに満点なんて取っていないのだから。
「お、おそろしい子……」
 恐怖の意をこめて江利子を見る。いくら一年生の問題で、いくら頭が良いからといって、満点なんてそうそう取れるものではない。しかも、試験範囲の勉強なんてしていなかったはずなのに。改めて江利子の頭脳に慄く祐麒。
「さーて、部屋に戻ったら桂ちゃんのご褒美のちゅーだ!」
「やめて!」
 性格さえ普通ならと思うが、天才というものはどこかネジが外れているのかもしれないと思った。

 翌日、無事に自分の体に戻ることができて安堵した。江利子が勝手にしたであろう約束、桂とのちゅーも有耶無耶になった(祐麒も桂も微妙に残念だったが)
 あとは夏休みに入るまで半日授業が少し続くだけである。
「そういえば、夏休みになったら寮の子達はどうするのかな?」
「ほとんどの人はやっぱり、実家に帰るみたい。もちろん、寮に残っていても全然構わないんだけれど、食事は自分で用意しないと駄目なんだ」
「なるほど。桂ちゃんはどうするの?」
「私も帰るよ。まあ、部活もあるし、最初と最後の方は寮にいるつもりだけど。祐紀ちゃんは?」
「わたしも、帰るよ。期間は決めていないけれど。あ、でもわたしも山百合会の活動でときどき学校に来ることになるみたい」
 夏休みも学園に来るなんてと思わなくもないが、別に何かすることがあるわけでもないので、暇つぶしには良いかもしれない。好きに遊びにいけるような身分でも、体でもないし、あとは大人しく小笠原家で過ごすことになるだろう。
「ね、ね、夏休みにも会って遊んでくれる?」
「わたしなんかで良ければ……」
「祐紀ちゃんが良いのーーっ」
「あははっ、うん、じゃあ遊ぼう」
 桂は泊まりがけで遊びたい、桂のうちにお泊まりで遊びに来ないかと誘われたが、泊まりがけは危険すぎるので申し訳ないがお断りした。それでも、こうして夏休みに遊ぶ予定ができたのは嬉しかった。
 そうこうしているうちに夏休み突入し、祐麒も小笠原家に帰ることにしていた当日の朝となった。
「…………うそやん」
 朝、目が覚めると再び江利子と入れ替わっていた。
「えええええ、マジで!?」
 と、驚きわめいていても仕方がない。
 身支度を整えて、祐麒本体が眠っている部屋へと向かう。幸い、三奈子と静は既に帰省しており、桂はテニス部の練習に出ているはずで、一人で寝ているはずだった。それでも注意を払い、部屋の中に入ると。
「あら。おはよう」
 既に起きて、着替えまで済ませている江利子と顔をあわせる。
「え、え、江利子さま、どうしましょうっ」
「何を今さら慌てているのよ。もう何回目だと思っているの?」
「そうじゃなくてっ、実は今日、小笠原家に戻ることになっているんです」
「あら、ちょうど私も実家に帰る予定だったのよ、奇遇ね」
 にっこりと微笑む江利子。
 一方でさらに慌てる祐麒。
「ちょっ……さすがにそれは無茶じゃないですか? 戻るまで、帰るの延期にしましょうよ、ね、それがいいですよ」
「戻るまでって、この前みたいに何日間も戻らなかったらどうするの? それに、予定が詰まっているから無理」
「そ、そんな」
 さすがに実の家族を相手にしたら、不自然な点を色々と感づかれてしまう恐れが多分にある。姿かたちは間違いないから、まさか中身が変わっているなんて思わないだろうけれど、不審には思われるだろう。
「ま、そういうわけでよろしくね、うん!」
 なぜか嬉しそうに肩をバシバシ叩いてくる江利子。
 嫌な予感しかしないが、尋ねてみないわけにはいかない。

「あの……何をよろしくするんですか?」
「うちの父親と、兄貴達とのデート。あー、小笠原家かー、ちょっと楽しみなんですけどー??」
「え…………で、でぇと? え、どういうことですか?」
「言ってなかったっけ? うちは息子三人のあとにようやく娘の私が生まれたから、父は私を猫っ可愛がりしているの。三人の兄貴達もそろいもそろって超シスコン。で、私が寮に入っちゃったから、なかなか会えないじゃない? だから、夏休みなんかの長期休暇で帰省するときに合わせて休みを取って、私とデートするのを楽しみにしているのよ。四人とも忙しくて、休みをどうにかデートのために捻出しているから、予定を変えるなんて無理だから。ま、甘えればなんでも好きなもの買ってもらえるから、報酬だと思ってちょうだい」
「えええっ、そんな殺生な」
 男相手にデートだなんて、嬉しくもなんともない。
「家族のプロフィールや家の間取り、家での習慣なんかは前に教えた通りだから、それでよろしく。あ、兄貴達の盗撮や覗きには気を付けて、貞操もちゃんと守ってよ?」
「ほ、本当に、このまま帰るんですかっ!?」
「大丈夫よ、ほら、明日には戻っているかもしれないでしょう?」
 そう気さくに言い放つ江利子と別れ、江利子の実家へと足を向ける。
 家族の情報も仕入れているとはいえ、実際に会って生活するとなると話は別だし、そもそも家族相手となると本当に誤魔化せるのか不安になる。いくらなんでも中身が別人と入れ替わっている、なんてことを考えることはないだろうが、普段の江利子と違うことは気付かれてしまうのではないか。
 そう心配になるものの、江利子は、「寮暮らしが長いからたま長期休暇のタイミングで帰省するだけだし、意外と分からないわよ、多分」などと実に気楽だ。むしろ、小笠原家がどのような家なのか、どんな生活をしているのか、そちらばかりを気にして浮かれていた。
「うぅ……なんで、こんなことに……」
 小笠原家にいる間は、少なくとも男ということを隠す気苦労の多くからは解放されると思っていたのに。

 とぼとぼと重い足取りでようやくのこと辿り着いた鳥居家は、さすがに小笠原家のような豪邸ではないが、充分に大きくて立派な門構えであった。
 ため息をつき、しばし門を前にして逡巡していたものの、いつまでも立ちつくしているわけにもいかない。こうなったら、元の体に戻るまで具合が悪いとか言って部屋にこもっているしかない、ネガティブな逃避に思考をゆだねつつ門を開いて庭を歩き、玄関を前にして再び足を止める。
 そして扉を開けようとゆっくり手をのばすと。
「――――わっ?」
 祐麒が触れる前に扉が勝手に開いた。
 そして中から姿を見せたのは、体格の良い見るからに体育会系っぽい男性。
「お帰り、江利ちゃん!! 待っていたよ!」
 大きな体で両手を広げているから余計に大きく感じる。そして体だけでなく声も大きい。
「え、えと……」
 名前を思い出そうとしていると。
「声が大きいよ、兄さん」
 生真面目な表情をした男性が体育会系の後ろから顔を見せる。眼鏡をかけて神経質そうに見えるが、江利子に目をうつした途端に破顔する。
「お帰り江利子、疲れただろう、ほら中に入って」
「は……はい……」
 圧倒されていると、今度は不意に肩に手を置かれた。
 びっくりして首を後ろに向けると、爽やかなイケメンが笑いかけてきていた。
「お帰り、僕のお姫様。うーん、会うたびに綺麗になるね」
 などと歯の浮くような台詞をかましつつ、ごくさりげなく、そしてごく自然に腰に手をまわしてエスコートしてくる。
「おい、いつの間に帰ってきた?」
「いやだなあ、たった今だよ。兄さんたちも久しぶり」
「それはいいから、江利子の腰から手を離せ」
「ちぇっ、分かったよ」
 お互いを微妙に牽制するようにしつつ、江利子の前では笑顔を絶やさない三人の男性。いつの間にか荷物は持たれていて、三人に囲まれてリビングへとエスコートされる。
「元気だったかい、江利ちゃん? 体を悪くなんかしたりしていないだろうね」
 体育会系に問われて、これはチャンスだと思う。
「……あ、ええと、なんだか具合悪いから部屋に……」
 と、口にした途端に三人の雰囲気が変わる。
「な、なんだって!?」
「それは大変だ、すぐに医者を呼ばないと、いやその前におんぶしてやろう、江利子」
「それなら兄さん、俺がお姫様抱っこするから。この前のドラマでそういうシーンが」
「大丈夫だぞ江利子、俺が寝ずに側でずっと看病してやるからな」
「わわわわわわっ、ちょ、だ、大丈夫っ、移動でちょっと疲れただけだから、すぐ元気になるから!」
 いきなり抱きかかえようとしてきた兄から逃げ、慌てて言い繕う。
「――本当か? 無理していないか」
「うん、大丈夫、大丈夫、ごめんなさい、心配かけちゃって!」
「いや、元気ならいいんだ。良かった、これで明日のデートも問題なしだな。楽しみにしていてくれよ、江利ちゃんのために凄いプランを練ったから」
「僕の方がよほど江利子を楽しませてあげるデートプランを要しているから」
「ちょっと兄さんたち、俺が一番に決まっているでしょ、兄さんたちの選ぶデートスポットは古いんだって」
 実の妹とのデートプランを熱く語り合う三人の兄達。
 これはどうも、江利子が言っていたことも大げさでもなんでもなかった模様。
「あはは…………早く、戻りたい……」
 明日から始まるという江利子の兄達のデートを考え、本気で気が重くなる祐麒。

 夏休み、何事も無く終わるということはなさそうだった。

 

 

第四話 おしまい

 

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