「あーもうっ、光ったら、なんつー勘違いを……」
乃梨子は自室で頭を抱えていた。
祐麒と付き合っているという誤解だけならまだしも、毎日のようにティッシュを大量に消費とか、ナスやキュウリだとか、余計なオプションが幾つも付加されてしまった。
「……って、付き合っているだけならまだしも、って、どういうことよ!」
自分の思考の自ら突っ込みを入れ、枕に正拳突きをお見舞いする。
このままでは、中学時代の友人で今も付き合いのある唯と春日にも伝わることは確実である。
いや、光のことだから既に伝わっている可能性の方が高い。
おそらく、今度会った時に根ほり葉ほり、訊かれるに違いない。
「訊かれたって答えられないっつーの」
大体、本当にそんなに大量に消費するのかとか、マニアックなことを好むのとか知らないし。
そもそも、その手の知識だってネットや本で少し知っている程度だし。
「……って、だからそういうことじゃなくて!!」
部屋の壁に頭突きをかまし、痛みで少し冷静になろうとする。
完全に思考がおかしくなっている。
このまま部屋にいても良いことはない。
落ち着きを取り戻すためにも、何か冷たい飲み物でも口にしようと部屋を出てリビングに向かう。
リビングでは、董子が一人で本を読んでいた。
「どうしたんだい乃梨子、そんな顔をして」
董子が本から目だけを乃梨子の方に向けて口を開いた。
「ん、分かる?」
「そりゃ分かるよ、分かりやすい顔しているからね」
「そっかー」
ため息を吐き出す。
「で、何がそんなに嬉しいことがあったんだい?」
「それは……って、ん? 嬉しいこと?」
「そうだろう、嬉しそうな顔しているんだから」
「は……」
董子に言われ、両の手の平を顔に触れる。
熱が上昇していくのを手に感じる。
「そっ、そんなわけないんだからーーーーっ!!!」
乃梨子の、なんともいえない悲鳴がリビングに響き渡ったのであった。