書評と主にマリア様がみてるの二次創作(旧:よしのXブレード)

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【マリみてSS(景×聖)】二人のカケヒキ <前編>

更新日:

~ 二人のカケヒキ ~
<前編>

 

 

 大学構内、校舎に向かう道の途中。
 不意に、私の背中を悪寒がはしった。
 そう思った次の瞬間、後ろからいきなり抱き着いてきた手が、私の胸に触れた。
「やっほー、カトーさん」
 同時に耳に入ってくる声。聞くまでもなく、犯人の正体は分かっていた。こんなことをやってくる無礼者は、知り合いにただ一人しか存在しない。
「いきなり、何するのよサトーさんっ!!」
 胸を握る手を引き剥がし、痴漢、いや痴女に対して平手を振り下ろす。
 乾いたいい音が響き渡る。
「いいいいいったーーー!い、いきなり平手打ちしなくてもっ」
「いきなり変態行為をはたらく方が悪い。いつも言っているでしょう、いきなり人の胸を触るなと」
 怒り半分、呆れ半分に説教をすると、案の定、あまり堪えていない佐藤さんは平手打ちで赤くなった頬をおさえながら、にへらと笑った。
「だってー、カトーさんの胸ってサイズといい柔らかさといい、こう気持ちいいのよ」
「知るか、そんなの」
 私は落としてしまっていた鞄を拾うと、埃を払い落として歩き始めた。事を大きくすれば目立つだけだ……といっても、すでにかなりの人間に見られてしまっているが。加えて、「またやってる」的な視線が含まれているのも気に食わない。
 私は、慌てて追いかけてきて肩や腕を掴んでくる佐藤さんを振りほどく、ということを何回か繰り返しながら、早足で大学校舎内に入った。

 

「あのさ、加東さんて、佐藤さんと付き合っているの?」
 聞かれたのは、学食で昼食をとっているときだった。
 私はペペロンチーノの麺をすすりながら、質問を発してきた相手を見た。正面の席に二人並んで座る、同じ学科の子達だった。
 昼食時間だったが、ピーク時間は過ぎた遅い時間帯だったので、席は結構空いている。ということは、彼女は純粋に私に質問をしてきたのだろう。
 ちなみに、もう一人の当事者は午前の講義が終わるなり、ふらりとどこかへ消えてしまった。私の知る由ではない。
「……あのね」
 私は口に入っていたパスタを飲み込むと、ため息をついた。
「前にも言ったと思うけれど、私は佐藤さんと付き合ってなんかいません」
「本当に?」
「本当よ。そんな関係じゃないもの」
 言い切ったが、それくらいで納得するようでは女子大生ではない。
「あんなに仲が良いのに。今朝も痴話喧嘩してたよねー」
「痴話喧嘩って……あの人がセクハラしてきただけよ。大体、別に好きだとか付き合って欲しいとか告白されたわけでもないし」
 お茶を飲む。
 ぬるくて不味かった。
「へー……変わったね、加東さん」
「―――え、どういうこと?」
 違うとは、何が違うというのだろう。気になった私は、パスタをからませていたフォークを一度置いた。
 斜め前に座っているほうの子が、お箸をこちらに突きつけるようにして言った。
「だって前に同じ質問したときはさ、『そんなことあるわけないじゃない。私と佐藤さんは女同士なのよ、やめてよ』って即答したのにさ。気持ち悪いこと言うなって感じの、凄い嫌そうな顔して。でも今はさ、そういうのじゃなかったよね」
「ああ、うん。女同士だから、とかじゃなくて、ただ単にまだ付き合っていないだけっていうことよね」
「な」
 思わず、言葉に詰まる。
 しかし私は、すぐに体勢を整えて反論する。
「そんな、毎回同じこと言うわけじゃないでしょう。大体、前に言ったことなんてそんな覚えていないし」
「ま、さ、その通りなんだけど。でもさ、さっきの内容だと、告白されたら付き合っちゃうかもってことじゃないの?」
「そ、そんなわけ、ないでしょう」
「本当に?なんかさっきの加東さん、嬉しそうな顔していたように見えたけど」
「な、何を言っているのよ。そんなことあるわけないでしょう、気のせいよ」
 言い切って、私は立ち上がった。
 背中に刺さる視線が、少し痛かった。

 

 一日の講義を終えて、帰宅する。本当は、ちょっと寄り道をしてこようと考えていたのだけれど、どうもその気になれなくて結局、まっすぐに帰ってきた。
 部屋に戻っても、学食で同級生に言われたことが気になって考えてしまう。
 本当に、自分の態度は変わったのだろうか。
「…………」
 しかし冷静に考えてみれば、当初は佐藤さんとそこまで仲が良かったというわけではないから、拒絶反応が強かったのもある意味当然だろう。今では随分と仲も良くなっているので、反応もマイルドなものになったのだろう。
 一人で納得すると、夕食の準備にとりかかる。
 帰りに買い物に寄らなかったから、今日は残り物を使って料理することになる。冷蔵庫の中を覗いてみると、卵、葱、ベーコン、椎茸、豆腐、納豆、といった食材が目に入る。
「……炒飯くらいしかできないわね」
 豆腐と納豆はまた明日以降に使うことにしよう。
 ということで、さっさと調理に取り掛かる。葱、ベーコン、椎茸を適当な大きさに切る。お米はタイマーセットで炊けてあるので、あとはもうフライパンの上で炒めるだけ。卵を溶いて先に軽く炒めて取り出す。他の食材を炒めて、ご飯を混ぜて塩、胡椒、醤油で味付け。適度に混ざったところで卵を入れて……
 と、料理をしていることと、炒め物の音で私はすっかり無防備になっていた。そんな私の背後から、不意に誰かが抱きついてきた。
「カトーさんっ」
 腰にまわされる手、お尻を撫でる手。
「さ、佐藤さんっ?!」
 フライパンを手にしていた私は、大きく体を動かすことも出来ず、困ったように身をよじる。
「ちょっと、料理中よ」
「いや~、料理しているカトーさんの後ろ姿が色っぽくて、つい」
「つい、じゃないわよ」
 振り払いたいけれど、火を扱っている手前、あまり暴れることはできず、抱きしめられたままの格好でいる。すると背中に、佐藤さんの胸があたる感触が伝わってくる。
「やだ、さ、佐藤さんっ……」
 自分でも思いがけないほど、色っぽい声が出てしまった。
「え、な、なんかカトーさん、いつもと違う?」
 私を抱きしめる佐藤さんの手に、力が込められる。さらに密着する身体。佐藤さんの手はさらに、腰から上へとあがってくる。
 まずい、と思った私は。
「いっっ!!!!」
 思いっきり、佐藤さんの足を踏みつけた。
 足を抱えて、声もなく片足で飛び跳ねる佐藤さんを見て。
 ほっとすると同時に、どこか今までと違う気持ちが湧き上がってきているような気がした。

 

「ごちそうさまー。あー、美味しかった。さすが、カトーさんの愛情がたっぷり詰まった料理」
「そんなもの入ってないわよ」
 しかしなんで、当然のように部屋に来て夕食をとっているのだろう。それ以上になぜ、私は二人分の料理を普通に作っていたのだろう。まさか、彼女が来ることを予想していたのか、それとも期待していたのか。
「ね、デザートにしよ。ホラ、買ってきたんだよー」
 嬉しそうに、冷蔵庫からジェラートを取り出してくる佐藤さん。あまり甘党ではないはずだが、それでも人並にはその手のものは好きなようだ。
 それはいいのだが……
「佐藤さん、あなたはジェラートを食べながら日本酒を飲むの?」
「え、いいじゃない。飲み会とかではよくある光景でしょう?」
「知らないわよ、そんなの」
 言いながらも、ジェラートにも日本酒にも、結局口をつけてしまう私はどこまでアホなのだろうか。
「いい飲みっぷりね~。ほら、もう一杯」
「はいはい、ああ、もうヤケよ」
 私は、次々とお猪口に満たされる日本酒を飲み干していった。
 お酒に強いというのも、なんだかなあと思うのであった。

 

 どれだけ飲んだだろうか。
 気が付いたときには、すでに日付は変わっていた。佐藤さんの姿が見えない、と思ったら浴室から音がする。シャワーを浴びているようだ。
 自分もそういえば、さっき入った記憶がある。自分の姿を見てみると、既に着替えてシャツ姿になっていた。男物のシャツで、佐藤さんから「私に隠れて、どこの男を連れ込んでいたのよ!」と凄い剣幕で詰め寄られたが、父のお古だと言うと素直に引き下がった。それどころか、「いや、やっぱりカトーさんは素肌に男物のYシャツ、それも白、それだよねぇ」と、呟きながら息遣いも荒く私のことを見ていた。
「うーっ」
 乱れた髪の毛をかきあげる。
 どうしてこう、いつも佐藤さんのペースに巻き込まれてしまうのだろうか。今までの静かな生活が、まるで嘘のようだった。
「あまり、甘やかさないほうがいいわね、うん」
 と、一人うなずいていると。
「なにぶつぶつ言っているの、カトーさん?」
「何ってねあなた、佐藤さんに……ぶっ?!」
 振り返って、思わず吹き出した。
「さ、さ、サトーさん、あなたその格好……っ!!」
「え?」
 佐藤さんの格好は、ショーツの上からTシャツを着ているだけというものだった。シャツはそれほど大きいものではないから、ショーツの一部とそこから伸びた足が丸見え状態。しかもそのショーツは。
「あ、ごめん。着替え持ってきてないから、シャツとパンツ、勝手に借りちゃった」
「か、か、借りたって、私の……っ」
 私の穿いていた下着を、今身につけているというのか。いや、それはもちろん、洗濯をしていて綺麗だけど。
 呆れる私の目の前に、どっかと座る佐藤さん。
 お風呂上りのせいか、ほのかにピンク色に染まった肌や、しっとりとした髪の毛が色っぽい。漂ってくるのはシャンプーの香りか。
「ちょ、ちょっと、まさか泊まっていく気?」
「え、あ、うん。もう遅いし、いいでしょう。今までだって、何回もお世話になっているじゃない。お礼は今度、するからさー」
「そ、そういうことじゃ」
「うわー、飲みすぎたーっ。おやすみなさーい」
「ちょちょ、ちょっと、佐藤さんっ?!」
 文句を言う間もなく、もそもそと布団の中にもぐりこんでしまった。
 逆に私は立ち上がり、キッチンへと足を運ぶ。冷蔵庫から冷たいウーロン茶を取り出してコップに注ぐと、一気に飲み干した。
「…………」
 考える。頭をがしがしと手でかきながら、考える。
 しかし。
「くかーっ」
 聞こえてくるいびきが、神経を逆なでする。
「ええい、なんで私が気後れしなくちゃならないのよっ」
 さっきも言われたとおり、今までにも何回も泊めているし、こうして一緒に寝ているではないか。今さら、何を変に意識するというのか。
 私も毛布にもぐりこんだ。
 目の前に、佐藤さんの整った顔があった。
「…………っ!!」
 うわっ、私は馬鹿か。なんで、わざわざ彼女の方を向いてしまったのか。それ以前に、部屋の電気を消していないではないか。眼鏡をはずしていても、この至近距離でははっきりと、彼女の顔が見えてしまう。
 改めて見つめてみて、綺麗な顔をしているなと思う。一般的な綺麗、とは少しベクトルは異なるかもしれないけれど、彫りの深い日本人離れした顔立ちは、十分に美しかった。
「んー」
 身じろぎする。
 本来なら一人が寝るスペースに二人で入っているのだから、当然、ほとんど体は密着するような形となる。
 手が、柔らかなモノに触れた。
「――――!!」
 佐藤さんの、胸。柔らかかった。
 私は無意識のうちに手を動かし、手の平全体で佐藤さんの胸を包むようにしていた。暖かくてもにゅもにゅと柔らかい感触が手の平に伝わってくる。その感触が、暖かさが、今まで感じたこと無い気持ちよさを私に与えてくれる。
「さ、さとうさん?」
「んんっ……」
 目を覚ます気配は無い。
 気持ちいい。胸だけでなく、体のさまざまな部分に触れたくなる。柔らかそうなおなか、お尻、太もも。
(ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ……)
 私は心の中で念仏を唱え、理性を動員して、どうにかして彼女から体を離して反対側を向いた。
 一体、どうしたっていうの私?!相手は、女よ。女同士で何をしようと考えていたのか。そんな、道を踏み外すようなことを私が。高校時代は、一応、つきあった男だっていたいたというのに。なんでこんな、同性相手に妄想してしまうのか。ていうか、なんかヤバイ。体が熱くなってきて、色んな意味でヤバイ。

 結局この夜は一晩中、私は寝付くことができなかったのであった。

 

 翌日、腫れぼったい目をこすりながら私は大学に登校した。佐藤さんは昨日のお酒のせいか、なかなか目を覚ましそうになかったので置いてきた。私はといえば、すぐ近くから聞こえてくる佐藤さんの寝息や、時折触れてくる佐藤さんの手や、足や、胸が気になって悶々として眠れなかったというのに。
 眠気をこらえて午前中の講義を終え、食欲も無いのでどこかで仮眠でもとろうかと、ふらふらと歩いていると。
「カトーさん、みーっけた!」
 背後からいきなり、胸を掴まれた。
「きゃっ!!や……さ、佐藤さん、やめてよ、こんな人前で……っ!」
 身をひねるようにして、その手からぬけると、あたりまえだけれどもそこには佐藤さんがいて。
「あ、あれ……なんかカトーさん、いつもと反応違う?」
「そ、そんなことないでしょう」
 うわ、まずい。なんか分からないけれど、頭に血が昇ってくる。触れられた胸が、急にどきどきしはじめる。
 目の前にいる佐藤さんも私の雰囲気が感染したのか、あるいは様子の異なる私自身のせいか、なぜか軽く赤面して、もじもじとこちらを見ている。その空気に耐えられなくて、景は口を開いた。
「だ、大体、佐藤さんはもうちょっと考えてくれないと。昨夜だって、佐藤さんのせいでほとんど眠れなかったんだから」
 景の言葉を聞いて、近くにいた友人が色めき立つ。
「え、なに、昨夜ひょっとして、佐藤さんが寝かせてくれなかったの?やだ、やっぱり二人ってそういう関係だったの?」
「え、何、ちょっと私何もしていないよ。カトーさん、変なこと言わないでよ……」
 聖が困ったような笑いを浮かべて景の方を見ると。
 顔を真っ赤にして、硬直したように直立している景。
 皆が見守る中、景は、不意に背を向けて駆け出した。
「カトーさんっ?!」
 背中にかかる声を無視して、行く当てもなく走る景は、心の中で頭を抱えていた。

(うあああああっ、な、何、なんなの私っ?!いったい、どうしちゃったっていうのよ、相手は佐藤さんなのに、なんでこんなになっちゃうの?!)

 

 いくら考えたところで答えが出てくるわけでもない。

 

 混乱する気持ちを抱えながら、景はただ走るのであった。

 

 

後編につづく後編につづく

 

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