書評と主にマリア様がみてるの二次創作(旧:よしのXブレード)

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【マリみてSS(由乃×乃梨子)】夢じゃないコト

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~ 夢じゃないコト ~

 

「なあなぁニジョー、リリアンってさ、やっぱり『そっち系』の人が多いの?」
 中学時代の友人達と久しぶりに会った休日の午後、ファストフード内でいきなりそんなことを訊かれた。
「ちょっと春ちゃん、そういう言い方は」
「えー、でも唯だって気になっていたじゃん」
「そ、そうだけどさー」
 最初に発言したのがボーイッシュな春日、その発言を諌めようとしたのがほんわか系の唯。
「んー、そんな感じがする。なんていうか、雰囲気というかが、もう」
 私はオレンジジュースを飲みながら、答える。
 実際のところ、本当に『そっち系』の人は多いんではなかろうか。何せ"姉妹制度"だから、妖しい雰囲気であることこの上ない。
「ニジョーもさ、実は染まりつつあるとか」
「やめてよー、私は違うっての」
 苦笑いしつつ、春日の言葉を即座に否定する。
「でも乃梨子ちゃんてクールだし、女の子にも人気出そうだけどね」
「それを言うなら、春日の方でしょ」
「春ちゃんは勿論だけど、乃梨子ちゃんもそうだってことだよー」
「気になる先輩とか、いたりしないのか?」
 言われて、先輩たちの姿を思い浮かべるが、考えるまでもなく無い。志摩子さんは素敵だけれど、あくまで先輩として、友人として素敵なだけだ。
 他の先輩といえば、子狸チックな先輩に、青信号な先輩に、ヒステリックお嬢様に、イケメン。イケメンといっても、やっぱり女の子なわけで」
「ない、ない。ありえないって」
 何をどうしたって、あるわけがない。
 勿論私は、心の底から本気でそう思っている。

 

 

 黄薔薇の蕾、即ち島津由乃さまに対する私の評価は、『先輩』という以上のものでも以下のものでもなかった。
 別に、由乃さまのことをどうこう思っているわけではない。ただ、高校からリリアンに通い始めた私にとって、黄薔薇の蕾という称号はさしたる意味を持たず、他のリリアンの生徒のように憧れたり、尊敬したり、そういった感情とは無縁だった。
 もちろん、山百合会で一緒に活動していく中で、先輩として敬い接するということはするけれど、それは後輩としてごく当たり前のこと。別に由乃さまだけではなく、それが例え相手が祐巳さま、令さま、祥子さまであっても同様だ。ただ一人だけ違うのは、自分の姉である志摩子さんだけ。
 そんな風に考えていたし、それが当たり前のことだった。

「――え、乃梨子ちゃん、それ本当?」
 薔薇の館で一仕事を終え、お茶を飲んでお喋りしてとくつろぎの時間の中、私と志摩子さんが話しているところに、いきなり由乃さまが入りこんできた。皆でのお喋りだから、別に構わないといえば構わないのだけれど、志摩子さんとの話を中断されたということでちょっとばかりムッとしてしまう。
 由乃さまのことは嫌いではないけれど、ちょっとばかり苦手な所もある。こういう、おしの強い所とか。これで、ほんのちょっと前までは病弱で薄幸の美少女で、"妹にしたい子No.1"だったなんて、全く信じられない。
「えと、何がですか?」
 いきなり入りこんできたので、何を聞きたいのかよくわからず、問い返すと。
「だーかーらー、お城よ、お・し・ろ! お城の話をしていたでしょう?」
「え? ええ、まあ」
 以前に巡ってみてきた仏像の話をしていたのだけれど、その中でお城の話もしていた。まあ、私だって仏像だけ見てくるわけじゃないし、仏像とか見に行けばお城とか近くにある場所も多いし、なんだかんだで歴史と紐づけていくとお城も大切だし、知ってくると色々と楽しくなってくるのは事実。
「なんだもう、言ってくれればいいのに、てっきり仏像オンリーガールだと思っていたわよー」
「はあ……」
 やけにテンションが高い由乃さま。
 私はそれについていけずに、ちょいと引き気味。
「ねえねえ、ちなみにどこのお城が一番好き?」
「は? ええと、そうですね」
 と、私が答えようとする前に、なぜか由乃さまの方が勝手に言う。
「私はね、佐和山城!」
「っ!!」
 びっくりした。
 だって。
「あ、わ、私も佐和山城が一番好きですっ!」
「ホント! 良い趣味しているじゃない。そうよね、石田三成の居城だしね」
「はい、三成は良いですよね、あと上田城も好きです」
「お、きたわね上田城、ここは抑えておかないとね」
「はい、ちょっとミーハーかもしれませんが、やっぱり真田家は――」
 思いがけずに盛り上がる。
 他の人たちはぽかんとして私と由乃さまのことを見ていたけれど、一度盛り上がり始めると、そう簡単には止まれないのが青信号。私も由乃さまの勢いにつられてか、日頃と異なるテンションで話してしまった。
 帰る頃には、他の人にちょっと笑われたりして恥しかったりもしたけれど、思い切り好きなモノトークができて、楽しかった。志摩子さんと仏像の話をするのも楽しいけれど、志摩子さんは基本的にそこまで仏像にのめり込んでいるわけじゃないから、私の話を聞くのがメインになる。
 こうして、お互いの意見を言って、同意したり反論したり、そういったトークができたのは初めてだったかもしれない。話してみると、由乃さまは私と反対に、お城から入って仏像の知識を得ているようで、その辺も話すことが出来た。
「乃梨子、今日は随分と楽しそうだったわね」
「あはは……お恥ずかしい」
 帰り道、志摩子さんに言われて頭をかく。
 普段の自分とは異なっていたと自覚しているだけに、面と向かって言われると恥しい。だけど、志摩子さんはなぜか楽しそうに微笑んでいる。
「うふふ、恥しいことなんてないわよ。私、嬉しかったんだから」
「え、どうして?」
「さあ、どうしてでしょう」
「えー、ちょっと、志摩子さーん??」
 色々と聞いてみたけれど。
 結局、志摩子さんは教えてはくれなかった。

 

 その日以来、私と由乃さまはちょくちょく、お城や仏像のことについて話すようになった。由乃さまも、今まで同級生に同じようなことを話してくれる人がいなくて、色々とたまっていたようだ。その鬱憤を晴らすかのように、嬉々として私を話の相手にして口を動かす。
 私も、好きなジャンルのことだけに嫌なこともなく、お昼休みの薔薇の館でのランチタイムや、午後の仕事の合間などで、話を重ねた。
 そうしてしばらく日にちが過ぎ。
「ねえねえ乃梨子ちゃん、今度さ、一緒にお城観に行かない?」
 このような提案が出るのは、ごく自然な流れだった。
 私も断る理由など特になく、二つ返事で頷く。
 私達が選んだのは、江戸城。何しろ都内だから手近だ。日曜日、待ち合わせをしてお城を見に行く女子高校生二人組というのも、どうなのだろうか。
「今時、そういう子って多いみたいよ?」
 楽しみで仕方が無い、という感じで横を歩く由乃さまを、ちらっと見る。
 ふんわりとしたチュニックにクロップドパンツ、ジャケットの上からリュックを背負い、髪の毛はサイドで一つにまとめている。色々と歩くことを考え、活動的な格好にしているのだろうけれど、こうして見ると、リリアンで見慣れているワンピースの制服姿と異なっていて、なんというか、その、可愛い。
「え、やだ、ちょっと恥しいじゃない乃梨子ちゃん」
「わ、私、口に出していました?」
「思いっきりね。ま、まあ、ありがとう」
 恥しくなって、顔が熱くなるのをどうにか抑えようとする。
 ああもう、なんで口にしてしまったのか。
「ほら、行こうよ乃梨子ちゃん」
「はい」
 この日初めて。
 私は由乃さまのことを『可愛い』と思った。

 

 江戸城に行った翌々週、今度は八王子城に行ってみようということになった。前週には予習をしようということでやっぱり会って、ファミレスで長い間お喋りをした。
 歴史を調べ、城の背景を知り、その上で訪れるとやっぱり楽しさは増加する。とはいえ、八王子城は山城だけに、山頂まではそれなりに歩かなくてはならない。元気になったといっても、元々の体力が少ない由乃さまだけに、途中で何度か休憩を挟んでの進軍となる。
 今日の由乃さまは、山に登ることを意識してか、少しソレっぽい格好をしてきている。とはいっても本格的な登山スタイルには程遠く、お洒落な部分も取り入れている。私自身、お洒落にはあまり力を入れていないだけに、その辺はさすがだなと思う。性格は青信号で武士の精神みたいなところもあるけれど、とても女の子らしいのだ。
 髪の毛はポニーテールに纏めていて、それがまたなんというか、グッときた。
 ……って、私は同じ女の子相手に、何を考えているのだろうか。
 リリアンに来て不思議に思ったのは、女の子同士でなんでそんなにべたべた、イチャイチャしているのかということ。
 普通に仲が良いくらいならいいのだけど、明らかにそれ以上な子も多く、本当に女の子が好きな子が多いのかと思った。
 私はそういうのはなかったから、余計に変に感じたのだけれど。
「うわっ、と」
 足場の悪い岩盤でバランスを崩す由乃さま。
 私は慌てて、由乃さまの体を抱きとめる。
「あっ……ありがとう、乃梨子ちゃん」
 抱きついた格好の由乃さまが私を見上げ、顔を赤くしながらお礼を述べると。
「い、いえっ、大丈夫ですか?」
 なぜだか私も、頬が熱くなる。
 抱きしめる格好となった由乃さまの体は、びっくりするくらいの細くて軽い。力をいれたら、それこそ折れてしまうのではないかと思えるくらい。
 あと、なんだかいい匂いがする。
 志摩子さんのとはまた異なる、柑橘系の、グレープフルーツのような感じだ。
「あ、あの、乃梨子ちゃん? わ、私もう、大丈夫だから」
「えっ、わあっ! ご、ごめんなさいっ」
 慌てて離れようとするが、そもそも足場が悪いので必然的にゆっくりと動くことしかできない。結果、なんだかわからないけれど、僅かに離れて見つめ合うような格好になってしまった。
「……な、何よ」
 すると、口を尖らせる由乃さま。
 え、なぜ、と思っていると。
「どうせ、運動神経ゼロの鈍ちん、とか思っているんでしょう?」
「そ、そんなこと思ってませんよっ」
「ふ……ふん、どうだか」
 照れ隠しでもするかのように、ぷいと顔を背けて歩き出す由乃さま。
 私はその後を追いかけて。
 やっぱりこの人、なんか可愛いぞと自然に思ってしまった。

 

 無事に山も登り、見物して、満足して帰途につく。
「あー、面白かったね」
「そうですね、でも由乃さま、はしゃぎすぎです」
「え、そうかな」
 とにかく、色々な物を目ざとく見つけては喜び、大きな声で乃梨子を呼んではしゃぎ出すのだ。人が少ないから良かったものの、これで観光客でにぎわってでもいたら、結構恥しかったはずだ。
「そうですよ……まあ、いいですけれど」
 駅で電車を待ちながら、一日の感想を話しあう。
「でも由乃さま、これで二回連続お城ですから、次は仏像ですよ?」
「あ、うん、分かってるって。面白そうなの、見つけておいてね」
「任せてください」
 胸を張る。
 由乃さまが仏像そのものに興味あるというよりも、歴史的な背景があるものであれば興味がわく、といったものだろうと思っているので、その観点から考える。あまり芸術的な方面から攻めない方が良いだろう。
 さて、何がいいだろうか。考えるのも、また楽しい。
 ホームに滑り込んできた電車に乗り込み、適度に空いているシートに並んで腰をおろし、他の乗客の迷惑にならない程度の声で、話を続ける。
 電車は走る。
 窓からは、優しい夕陽が差し込み、車内を淡いオレンジ色に染める。
 ふと、話が途切れていることに気がつく。まあ、いくら女子高校生だといって、間断なく喋り続けるのが常というわけではない。
 さて、次の話題は何にしようかと考えていると、肩にほんのりと重みがかかった。
「由乃さ……ま?」
 目を向けるまでもなく、由乃さまがもたれかかってきていた。山登りなんかして疲れて、電車の揺れが心地よくてうとうとしてしまったのだろう、その気持ちはよくわかる。
 しかし。
 無防備に見せるその寝顔。
 閉じられた瞳の上に長い睫毛、白皙の肌は夕陽によって朱が差し、ブラウンの髪の毛はキラキラと光ってみえる。
「ちょっ、よ、由乃、さま……?」
 お城を見ているときは猪の如く猛進し、自分の好きなことを話す時は止めどころがないくらい青信号で、そんなイメージばっかりだったのに、無意識に見せる姿は何て愛くるしのだろうか。
「……って、だから、女の子同士で、私は何を考えているのよっ」
 首を振る。
 これはそう、同性だって可愛い女の子は素直に可愛いと思う、ただそれだけのこと。私は別に同性愛者というわけではない。初恋だって男の子だったし、ねえ。
 それなのに。
「う…………」
 ちらと、由乃さまの顔を再び見る。
 あどけない、幼ささえ感じさせる顔。
 可愛い、という思いが心の中に渦巻く。

 結局私は、駅に到着するまで身動きすることも出来ず、ただ肩から伝わってくる由乃さまの温かさを感じているのであった。

 

 

 由乃さまと仲良くなり始めてから、ひと月ほどが経過した。私は別段、特に変わったこともなく過ごしている。今までと変わりなく志摩子さんとは仲良い姉妹だし、休日に仏像を観に行ったりもした。由乃さまとのお喋りも、変わらずにしている。
 ただ、少しずつ私の心の中が変化してきていることに、私自身、気が付いていなかった。

 そんなある日の放課後、由乃さまが新しい本を購入されたとのことで、帰りに家に寄って見ていかないかと、私に声をかけてきた。基本的にリリアンでは寄り道は禁止されているが、もともと普通の中学校で育った私にとってみれば、さしたることではない。特に迷うわけでもなく、喜んでお招きにあずかることにした。私にとっても、非常に興味深いタイトルの本だったから。
 由乃さまの自宅は学校から徒歩圏内のごく近くで、非常に羨ましく思ってしまった。案内されて中に足を踏み入れると、由乃さまのお母様が笑顔で出迎えてくれた。
「あら、いらっしゃい。あなたが乃梨子ちゃんね、由乃がいつもお世話になっています」
「いえ、私の方こそ、由乃さまにはいつもお世話になっています」
 ぺこりと頭を下げる。
「でも、由乃がこんな風にお友達を連れてくるなんて初めてだから、嬉しいわ。ゆっくりしていってね」
「もう、お母さん、それじゃあまるで私が友達いないみたいじゃないっ」
 ぶーっ、と膨れて怒る由乃さま。
 私はくすくすと笑いながら、由乃さまの後をついて二階へと上がる。
「あっ、と、悪いんだけれど、ちょっとだけ待っててくれる? 私、着替えちゃってもいいかな?」
 部屋の前まで来たところでそう言われて、私は頷く。由乃さまは先に部屋に入り、扉が閉じられる。
 今、この扉の先で由乃さまは着替えをしている。
 細い身体だけど、きっと綺麗なんだろうなと、由乃さまの下着姿を思い浮かべそうになって慌てて打ち消す。
 人さまの家にやってきて、何を考えているんだろう。
「お待たせ、どうぞ乃梨子ちゃん」
「あ、はい、失礼します」
 ぼうっとしているうちに、着替えが終わったようで、扉が開いて由乃さまが顔をひょいと出してきた。
 由乃さまの部屋に通される。
 室内は、すっきりとまとまっていた。
「なに、どうせ女の子らしくない部屋だと思っているんでしょう?」
 部屋の中を見ていると、由乃さまがそんなことを言ってきた。確かに、カラフルだとか、ぬいぐるみ沢山とか、フリフリだとか、そういったものはないけれど、とてもセンス良くまとめられているし細々としたところに女性らしさが見て取れる。まあ、本棚に並ぶ時代劇の小説とか、お城の本とか、そういったものはちょっとイメージと違うかもしれないが。
「まあいいや、早速見ようか、これこれ♪」
 浮かれた様子で、由乃は一冊の雑誌を手にして床に広げる。出されたクッションに腰を下ろし、私も身を乗り出すようにして見つめた。
 それはまあ、とても女子高校生が喜んで見るような雑誌ではなかったけれど、私と由乃さまは楽しんで見ることが出来た。
 一通り目を通した後は、色々と感想などを言い合ったり、小母さまが持って来てくれた紅茶とお菓子を食べたり、普通に友達と過ごすのと変わらない。それから、由乃さまが持っていた最新のファッション雑誌を、ああだこうだ言いながら一緒に眺める。
 私と由乃さまの趣味は似ているようで結構違う部分もあって、あれが可愛い、これが似合いそうだとか、そんな風に楽しんでいて。
「あ、このワンピース可愛い。由乃さまによく似合いそうですよ」
 雑誌の一点を指さす。モデルの女の子も可愛いが、ベルト付きのワンピースも可愛らしかった。
 そう思って顔を上げると、由乃さまの顔が目の前にあって、私のことを見つめていた。ほんのりと上気した頬、きらきらと光る大きな瞳、私は思わず息をのむ。
 由乃さまの手が、すっ、と伸びてきて私の頬に触れる。もう片方の手も伸びてきて私の頬を両手で挟むと、顔を近づけて唇を重ねてきた。
「んっ…………」
 ぷっくりとした、柔らかな肉の感触を、私は目を閉じて感じ取る。
「ちゅっ……ん……ぁ」
 そっと離れていく。
 目を開くと、由乃さまが赤い顔をして私のことを見つめている。
「あ、あの……嫌だった?」
 どこか怯えた様な表情をして、訊いてくる。
 嫌だったか? 私は考える。
「別に……嫌なんかじゃ、ないです……」
「そ、そう……よ、良かった」
 安心したような由乃さまは。
 一度離した手を再び私の頬に添えると、またもゆっくりと顔を近づけてくる。由乃さまの吐息を感じながら、私は目を瞑る。
「んっ……ちゅっ……」
「ふぁっ……ん」
 二度目のキスは、先ほどよりも積極的だった。重ねるだけの最初のキスとは違い、唇を求めるようにして、ついばみ、挟み、吸いこんでくる。
「くちゅっ、ん、ちゅっ、んはっ」
「ちゅぶっ……んぁ、ちゅっ……」
 音を立てて、お互いの唇を味わう。
 脳髄がとろけそうなくらい、気持ちが良い。
「はっ……あ……乃梨子ちゃん」
 由乃さまは、先ほどよりも顔をさらに赤くして、恥しそうにして私のことを見る。
「わ、私、ね。乃梨子ちゃんのこと……す、好き、なの。好きになっちゃったみたい、なの……。令ちゃんに対する好きとは、違う好きなの。嫌、かな……こんな、女の子同士でなんて、変、かな……」
 怯えたような、恐れているような、そんな由乃さま。
 私はゆっくりと、首を横に振る。
「嫌じゃ、ないですよ。だって……」
 証拠を見せるように、今度は私の方が身を乗り出し、由乃さまの顔を手でおさえて唇を重ねた。
 一回目、二回目のキスよりも強く求める。私は舌を由乃さまの口の中に差し入れ、由乃さまの舌を舐めた。びくっ、と震えた由乃さまは、すぐに舌で応じてきて二つの舌が生き物のように絡み合う。
 唾液を吸う。甘くて、美味しい。由乃さまもまた、私の口内から唾液を飲む。
 くちゅくちゅと、互いの唇を求めあう音が静かな室内に響く。
 どれくらいキスをしていただろうか、唇を離したときには、私も由乃さまも呼吸が荒くなっていた。
「だって……私も由乃さまのこと、好き、ですから……」
 私が告げると、由乃さまは大きな瞳をさらに広げて、驚きを見せる。
「え、ほ、本当に?」
「こ、こんなことで嘘を言いません。第一、キスだってしないです」
「じゃあ、私達、相思相愛、ってこと?」
「そ、そうなりますかね……」
 言っていて、恥しくなって、向かい合ったまま二人で俯いてしまう。
「な、なんか、恥しいね」
「そうですね」
「でも、夢じゃあないんだよね」
「はい、夢じゃあ、ないですね」
「夢じゃないこと、もう一回、確かめたいかも」
「あ、はい、私も……」
 顔を上げ、見つめ合う。
 ごく自然と、顔が近づく。
「んっ…………」
「……ちゅっ……ん」
 今度のキスは。
 二人同時に、顔を寄せ合っていた。

 

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