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ノーマルCP マリア様がみてる 清子

【マリみてSS(清子×祐麒×アンリ)】動悸

更新日:

 

~ 動悸 ~

 

 

 昨夜の記憶がおぼろげだった。
 何やら清子にとんでもないことを口走ったような気もするが、明確には覚えていない。遅い朝食の場に清子はおらず、アンリに聞いても知らないと言われ、二日酔いの頭を抱えて悶々とするばかりだった。
 結局、せっかくの機会だったけれど何を成すことも出来なかった。予想していた結果とはいえ、やはり少しばかり落ち込む。
 そんな祐麒の肩を、ぽんぽんと慰めるように叩くのはアンリ。
「まあ、済んだことは仕方ない、今日また挽回すりゃいいんだ」
「ええ、まあ…………って、え、今日?」
 一泊の予定しかしていなかった祐麒は、アンリの発言に目を丸くする。
「当たり前だろ、このまま何もしないで帰るなんて、あたしがゆるさねーよ。それに、他の使用人達が帰ってくるのは早くて明日以降なんだから、問題ない」
「いや、でも……」
「でももヘチマもないんだよ、男なら、やるときはやってみせろよな。もう、無理矢理にでもいいんだよ」
「無理矢理って、んなことできるわけないだろ」
「馬鹿、いいんだって。奥様はな、自分が結婚して旦那も子供もいるっていう罪悪感があるから踏み切れないだけなんだ。おまえが強引にでも手を出せば、無理矢理だったっていう言い訳もたつだろう?」
「んな、無茶苦茶な……」
「無茶でもなんでもいいんだよ、相手は人妻なんだから、普通に付き合って愛を育んでいってやがて結ばれて……なんていくわけないんだからな」
 アンリの口にしたことは、もしかしたら正しいのかもしれない。だとしたら、祐麒が清子との関係を進めるには、強引でもいいから突き進んでいくべきなのかもしれない。
 だが、それで本当に良いのだろうか。
「ばーか、考えたって結論なんて出ないんだ。だったら、後悔しないようにしろよ」
 祐麒自身のことだけなら、それでよいかもしれない。だが、清子のことを考えれば、家族が崩壊する危険性を多分にはらんでいること、おいそれとできるわけもない。
「そもそも、旦那様が何人も愛人を囲っているんだ、奥様がしたって文句なんていえねえよ」
 言い切って、アンリは去って行った。
「えええっ……?」
 頭を抱える祐麒。
 清子に対して抱いてはいけない気持ちを持ってしまったことは確かだが、それを行動に移してしまおうとまで思いきることはさすがにできない。だけど、アンリはもっと踏み込んでいけと背中を押してくる。清子とアンリの他に誰もいない今がチャンスであることは確かだけれど、それとこれとは話は別。とはいいつつ、昨日のアルコールが抜けきっていないからと理由を付けて帰らずにいることも確かだった。
 ぼんやりと午前中を過ごし、アンリの作ってくれたサンドウィッチで昼食を済ませ、ぶらぶらと広い屋敷内をあてどもなく散歩する。外に出ると厳しい日差しだが、庭には木々が植えられ、池などの水場もあるので耐えられないほどではなかった。

 そんな庭を歩いていると、ロッキングチェアにゆったりと座っている清子の姿が目に入った。ゆっくりと、祐麒は近づいていく。
「清子さん……」
 声をかけるが、反応がない。
 どうやら、昼寝をしているようだった。
 木陰が作られ、近くの水場を抜けてくる風も心地よく、転寝するには最適の場所と思えた。見れば膝元に本が置かれており、読書をしているうちに眠気に襲われて寝てしまった、そんな風に見えた。
 邪魔をしたら悪いと思い、そのまま静かに立ち去ろうとした祐麒だったが。
 清子の寝顔を目にして、足が止まる。
「清子、さん……?」
 少し近くに寄ってもう一度呼びかけてみるが、やはり何も反応を示さない。綺麗な寝顔、ワンピースに包まれた肢体、思わずごくりと唾を呑み込む。
 何をしようとしているのか、相手が寝ている無防備な中で卑怯なことはやめろと心の中で警鐘が鳴るが、手が伸びていく。
 指先が、わずかに頬に触れる。
「…………」
 ぴくり、と清子が動いた気がして、咄嗟に手を引っ込めるが、目を覚ます気配はない。
 改めて手を伸ばし、今度は首筋を指先でなぞり、そのまま上がって耳に触れる。柔らかな感触が伝わってきて鼓動が速くなる。
 もっと触れたい、もっと感じたい、そんな思いが強くなり、今度は指が下がっていって鎖骨に触れる。
「んっ…………」
 わずかに身じろぎをした清子の目が開いた。
 目と目が至近距離であう。
「え……あ、祐麒さん…………?」
 さーっ、と頬が赤くなってゆく清子。
 その視線が、触れられている鎖骨に向けられる。
「あ、ち、違うんです、これは、蚊がっ」
「きゃ、え、あっ」
 祐麒も慌てたが、清子も慌てふためいた。ロッキングチェアから立ち上がろうとしてバランスを崩し、地面に転がってしまう。
「清子さんっ!? 大丈夫ですかっ」
「あ、大丈夫です、ちょっと転んだだけで……痛っ」
 どこか打ち付けたのか、痛みに顔をしかめる清子。
 しかし祐麒は、自分自身の行為に動揺していたことも重なってか激しく狼狽し、清子の言葉など耳に入らず、ただ自分が清子を怪我させてしまったということしか頭になかった。そのせいか、あとで考えれば恥ずかしくなる行為に出た。
「――――ゆ、祐麒さんっ!?」
 足を怪我したから動けないだろうと、いきなり清子を抱え上げたのだ。
「すぐに、部屋まで連れて行きますので、少し辛抱してください」
「あの、私、こんなことまでされなくても自力で」
「大丈夫ですから、静かにしていてください」
「は、はい」
 大人しくなった清子を抱え、なるべく揺らさないようにしながらも急ぎ足で邸内に入り、清子の部屋に運び込んでベッドの上にそっと下ろす。
「怪我したのはどこですか、ちょっと見せてください。俺、野球部の時に応急処置とか少しは学んだんですよ」
「え、あ、あの」
「どこか痛みますか? 少し痣になってますかね」
「そ、そうではなくて、祐麒さん、その……」
「どうしました、やっぱり痛みが…………あ」
 そこでようやく気が付いた。
 ベッドの上に乗せられた清子の右足を掴んで持ち上げていることに。すべやかなふくらはぎがワンピースの裾からはみ出しており、清子は恥ずかしそうにワンピースの裾がそれ以上めくれないよう手で抑えている。
「わ、わ、すみませんっ!! あの、これはっ」
「わ、分かってます、私のことを心配してくださったのは。でも、ちょっと擦っただけですし、洗えば大丈夫ですから……私、洗面所に行ってきます」
 祐麒が足から手を離したのをこれ幸いとばかり、清子はベッドからそそくさと降りて部屋を出て行ってしまった。
「うわ………………やっちゃった……」
 テンパっていたとはいえ、あれはないだろうと頭を抱える。
 一方で、艶めかしい清子の脚も鮮明に脳裏に焼き付けている。ワンピースから覗いて見えた太腿は、水着の時とは異なるエロティックさを感じさせた。
「……って、だから駄目だろ!」
 頭を振って追い出そうとするが、意識するほど逆に強く思い描いてしまう。
「ああ……」
 嘆きながら祐麒は、清子の部屋を重い足取りで後にした。

 

 一方で清子は。
 洗面所に駆け込み、濡らしたタオルで軽く足と腕を拭いて綺麗にしたあと、そのまま部屋に戻る気にはなれず、祐麒を避けるようにトイレに入った。
 実際、チェアから転げ落ちたとはいえ激しいものではなく、手も足も軽く擦りむいた程度だった。転んだ瞬間は、足を地面に打ち付けたから痛かったものの、時間が経った今はごく軽い痛みともいえないようなものが残っているだけだった。
 軽く胸に手を当て、はやる胸の鼓動をどうにか抑えようとする。祐麒に足を触られる以前から、清子の心臓は激しく脈打っていた。
 転寝から目を開いたら祐麒の顔が目の前にあったこと、その祐麒の手が鎖骨あたりに触れていたこと、転んだのを抱きあげられて、いわゆる"お姫様抱っこ"をされたこと、そして足を持たれて恥ずかしい格好をさせられたこと。祐麒に悪気がないのは分かっているから怒るつもりなどないが、はしたない格好を見られたことに変わりは無く、頬が熱くなる。
 そしてそれ以上に、抱き上げられたときに触れた祐麒の胸板、華奢でありながら確実に男を感じさせる硬さ、ほんのりと香る汗の匂い、密着した肌、そういった諸々のことに清子の動悸は激しくならざるをえなかった。

 

 

おしまい

 

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