書評と主にマリア様がみてるの二次創作(旧:よしのXブレード)

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【マリみてSS(江利子×祐麒)】イエロー・マジック・オーナメント <第四話>

更新日:

 

~ イエロー・マジック・オーナメント ~
<第四話>

 

 

 祐麒が通っている大学の夏休み開始時期は比較的早い。その代わり、後期の開始時期も少し早い。
 大学初の試験もどうにか無事に終了し、そんな長い大学の夏休みに入ってすぐ、江利子との約束通り旅行に出ていた。
 夏らしく厳しい日差しを注いでくる灼熱の太陽が肌を焦がし、香る潮風が頬を撫でる。青と白のコントラストに彩られた空の下には、見渡す限りの大海原が広がる。
 砂浜には海水浴客の姿が見えるが、芋を洗ったようなという比喩はあてはまらない。適度に人で賑わっているビーチは、絶好のリゾートスポットに見える。プライベートビーチみたいなのも良いかもしれないが、やはり賑やかで楽しい雰囲気があったほうが自分たちも楽しめるだろうから。
 前途洋洋、楽しい旅行を期待できるはずなのだが、江利子の表情はあまり晴れ晴れしくなかった。
 というのも。
「うおーーーっ、これぞ夏、って感じだよな。テンション上がる!!」
 隣の笹山も、声を上げてジャンプなぞしている。
「うわーっ、きれーーー!」
「本当、水が綺麗だよねー」
 女子達も歓声をあげている。
 海水浴場へとやってきたのは、大学のミステリー研究会の面々。合宿という名の旅行である。
 皆と一緒のときは江利子も穏やかな表情を見せていたのだが、ふと祐麒と二人他のメンバーと少し距離ができたとき、あからさまに機嫌悪そうに膨れてみせた。
「え、え~と、江利ちゃん、まだ怒ってる?」
 恐る恐る尋ねる祐麒。
「もー、信じられない。彼女が一緒に旅行に行こうって誘って、なんで皆と一緒になるのかしら。普通、二人きりの旅行じゃない?」
「ごめん。でも、合宿旅行だって言うからさ、ほら、会誌は一年生合同で作る予定だったし、だから」
 言い訳がましくしどろもどろに言うが、江利子はなかなか機嫌を直してくれない。
 今回の旅行には祐麒達一年生五人、二年生二人、三年生三人、四年生二人の合計十二人が参加している。
 なんでこんなことになったかというと、一年生たちが夏休みの予定について話している時、うっかり祐麒が旅行のことを口走り、合宿旅行なんていいね楽しそうと皆が乗り気になり、その話しが上級生にも伝わり、それならばサークルとしての合宿を行おうということになったのだ。
 おまけに合宿先は当初江利子が予定していた通り、鳥居家の知り合いの別荘だ。本来なら祐麒と二人で訪れようとしていたわけで、江利子が怒るのも無理はない。
「えっ……と」
 言葉に詰まる祐麒。
「はぁ。もう、いいわ」
「え?」
「せっかくの旅行だもの、いつまでも一人でむくれていても仕方ないしね。祐麒くんとはまた別に行けばいいだけだし、今回は今回で楽しみましょう」
「あ……うん、きっと埋め合わせはするから」
「本当? じゃあ、楽しみにしているからね」
 と、ようやく笑顔を見せてくれる江利子にほっとする祐麒。
「おーい鳥居、中に入っていいのか?」
 前方から呼ぶ声がする。
 二人は並んで、皆のもとへと向かった。

 

 合宿とはいえ、綺麗な海を目の前にしていきなりサークル活動なんてやる気が起きるわけもない。メンバー達の意見は一致し、まずは海で遊ぼうということになった。
 適度に人で賑わっている砂浜に真っ先に男性陣が飛び出し、パラソルやらクーラーボックスやらで場所の確保と設営を行う。張り切るのはもちろん、遊びを楽しむということもあったが、江利子をはじめとする華やかな女性陣がいることが大きい。
 前にも言われていたが、江利子が入るまでは華やかさとは無縁だったサークル、それが江利子、美玲と入り、今年は蔦子に大友に宝来と粒ぞろいの下級生女子が入ったのだ、張り切らないわけがない。
 江利子はすでに祐麒のモノという認識だから手を出せないが、蔦子、大友、宝来の三人であれば仲良くなり、いずれはカレシカノジョに、なんていう思いを抱くのは男として何ら不思議な事ではない。
「紺野先輩もいるじゃないですか」
「紺野? あんな暗くて地味で胸もないんじゃなあ、女としての魅力ないだろ」
 容赦ない言葉に首を捻る祐麒。
 確かに美玲は地味で暗いかもしれないが、眼鏡が似合っていて地味ながらも整った顔をしていると思う。肉感的ではなくむしろ痩せぎすだが、スレンダーと思えば言うほど酷くないんじゃないだろうか。見た目の雰囲気が暗いから損をしているだけで。
 江利子が耳にしたら怒るようなことを考えていると、男性陣が騒ぎ出した。どうやら女性陣が登場したらしい。
 目を向けると、確かに騒ぎたくなるのも分かった。
 蔦子、大友、宝来の一年生女子はそれぞれにキュートな水着を身に付けている。
 蔦子は鮮やかな花柄のホルタ―ネックビキニで、私服の時にはあまり感じないがボリュームのあるバストが目を見張るし、お尻も非常に肉付きが良い。全体的にむっちりとしたエロさが感じられる。
 大友はタンキニ、宝来はアンダーワイヤービキニでそれぞれ『らしさ』を出しているように見える。
 そして、そんな三人の後からゆっくりと現れたのが江利子である。
 残念ながらパーカを着てショートパンツを穿いているために水着姿はまだ見えないが、それでも登場しただけで周囲の目を惹きつけるような輝きが感じられるのは、さすがといったところか。ショートパンツからすらりと伸びた脚だけでも、魅力的なのだから。

「はぁ……江利ちゃんと並ぶと、分かっていたけれど情けなくなるわね。まあ、もはや妬むのも無駄なくらいだから良いけれど」
 江利子の少し後ろからやってきた美玲がため息をつく。確かに、江利子と並ぶと地味な美玲は従者のように見えてしまうかもしれない。
 それでも、ホワイトのフリルとリボンのついたビキニを着てきた美玲だって、悪くはないと思う。まあ、こうして見ると胸がぺたんこだというのは本当だし、ちょっと痩せすぎで骨が浮いているように見えるのはマイナスポイントかもしれないが。
「……その後、江利ちゃんとは、どう?」
 隣に腰を下ろしてきた美玲が、祐麒に目を向けることもなくボソリと尋ねてきた。
「大丈夫ですよ、いつも通りです。やっぱり、紺野先輩の気のせいだったんじゃないですか?」
「……そうだといいけど」
 大友たちに囲まれて話をしている江利子を見て、小声で言う。
「まだ、何か気になることでも?」
「…………」
 美玲は答えない。
 どうしたものかと考えていると。
「ごめんなさい、遅くなっちゃって」
 江利子が二人のいるパラソルの下にやってきて、軽く頭を下げる。
「江利ちゃんは暑くないの、そんなパーカ着て」
「――――馬鹿」
 隣の美玲がぼそっと呟く。
「え?」
「え~、だって」
 素早く祐麒の隣に身を寄せてきて、こっそりと囁く江利子。
「……最初はやっぱり、祐麒くんに見てもらいたいじゃない?」
「あ……」
 ぱっと江利子の方に顔を向けると、わずかに恥じらうような感じではにかんで祐麒のことを見ていた。
「私の水着姿、見たい?」
「う、うん」
 やはり、可愛い。
 改めて照れてしまった祐麒をよそに江利子は立ち上がる。
「それじゃあ、ちょっと待ってね」
 そう言って、まずはショートパンツに指をかけた。
 ジッパーをおろし、そのまま上半身を前に倒しお尻を突き出すような格好になってショートパンツを下ろしていく。パーカの下から、ちらちらと水着に包まれたお尻が見えて、やたらとエロティックだ。他の誰か見ていないだろうかと、慌てて周囲に目を向ける。
 するりと脚を抜いてショートパンツを脱ぐと、今度はパーカのジップを下げていって肩からさらりと落として袖を抜く。
 チューブトップ風のホルタービキニは胸もとに大きなリボン、サイドの紐で脇肉を押さえてボディラインをスマートに見せている。江利子の大きなバストだが、胸元のシャーリングで問題なく着用できている。ボトムはビキニスカートで、巻きスカート風で右サイドにウエストリボンが付いていて可愛らしい。
 チューブトップ風でセクシーさを見せつつも、リボンやスカートで可愛らしさを同時にあわせもち、江利子にとても良く似合っていた。

「どう? 美玲ちゃんと一緒に選んだのよ?」
「う、うん、凄く似合っていて可愛い」
 素直に言うと。
「ホント? 嬉しい、良かった!!」
 胸の前で両手をあわせて無邪気に喜ぶ江利子。
 弾みで、押さえているはずなのに胸が揺れて弾んだ。
 赤くなり、咄嗟に祐麒はその場に座り込んだ。
「どうしたの、祐麒くん?」
「お、俺さ、ここで荷物見ているから、二人は海で遊んできていいですよ」
「え、なんで? 一緒に行こうよ」
 覗き込んでくる江利子だが、そうすると必然的に前かがみになって、胸元がより伯録を伴って迫ってくる。
 江利子はよく意識的にお色気攻撃をしてくることがあるが、たまにこうして無邪気に無意識に迫ってくることもある。そして、そういう無意識の時の方がたちが悪いのだ、祐麒にとっては。
「……はぁ。ほら、福沢くんもこう言ってくれているんだし、いきましょ江利ちゃん」
 ため息をついて立ち上がった美玲が、江利子の腕を取る。
「え、でも」
「荷物持ちやパラソル立てるので疲れたんでしょう。そのうち来るわよ……ね?」
 眼鏡を外した美玲の目が、全てを見透かしているかのように見下ろしてくる。その視線は、祐麒が隠そうとしている股間に注がれていた。江利子の色香に反応してしまったことは、美玲にはバレバレのようだった。
「うーん、それじゃあ先に行っているわね。早く来てね」
「う、うん」
 そして、熱い砂を素足で踏んで、熱い熱いときゃあきゃあ騒ぎながら波打ち際へと走っていく二人を見送る。
 まだまだ修行が足りないなと項垂れ、頭を冷やす。
 目を閉じ、瞑想して煩悩を追い払う。こんな海にやってきたら、周囲には魅力的な女性が水着で解放的に遊んでいるわけで、いちいち反応していたら身が持たない。
 ざわめきを遠くに聞き、精神を統一させていると意識が研ぎ澄まされ、昂っていたものが鎮まっていく。

「……祐麒くん、どうしたの? 泳がないの?」
 呼ぶ声に目を開けると。
「蔦子さ……ぶっ!?」
「??」
 そこにいたのは蔦子だったが、座っている祐麒の顔を覗き込むように前かがみになっていて、先ほどの江利子と同じようなわけなのだが。ホルタ―ネックのビキニは胸をそれほど締め付けておらず、重力に引かれたバストがそれこそ『たゆん』といった感じで揺れている。
 加えて、既に海に入って遊んでいたのか全身が水で濡れている。谷間に水が溜まり、胸に水滴が流れ、髪の毛もキラキラ光って見える。股間からも水が流れて脚を流れてゆく。
 慌てて脚を閉じて体育座りの格好をする。せっかく鎮まったものが、再び反応しはじめてしまったから。
「どうしたの、具合でも悪いの?」
 裸眼では視力の悪い蔦子が、目を細めて見つめてくる。
「いや、もう少ししたら行くからさ」
「そんなこといって、せっかく来たのにずっと座っているじゃない。ほら立って」
 祐麒の手を掴んで引っ張ってくる蔦子。既に違う場所なら立っているんですという、情けない悲鳴を内心で上げる。
「さあさあ、皆待っているよ」
「ううぅ……くっ」
 抵抗しきれないと悟った祐麒は。
「うおおおおおおおおっ!」
「きゃっ!? な、何よいきなりっ」
 立ち上がって一気に駆け出した。要は、見られる前に海に飛び込んでしまえばいいのだ。前傾姿勢なのは情けないが、走っている勢いだと思わせれば良い。熱い砂を踏みしめ、皆が水遊びをしている場所まで駆け、波打ち際にきたところで砂と水に足を取られてバランスを崩す。
「うわっ、と」
 正面にいた誰かに抱きつくようにしてぶつかった。
 おそるおそる、顔をあげてみると。
「…………何のつもりだ?」
 笹山だった。
「いやスマン、その……」
 と、笹山の視線が下方に向けられた。
「なるほどな……わかるぜ、その気持ち」
「はは、友よ……」
 理解してくれた友人に礼を言う。
 一方で。
「え、何々、何してんの二人とも、なんかチョーキモいんですけど!?」
「…………ぽ」
 顔をしかめている大友、なぜか頬を赤らめて二人のことを見つめている宝来。
「もー、祐麒くんったらいきなり走り出すんだもん。何ソレ、そんなに海に入りたいなら最初から」
「いやいや、と、うわっ」
 遅れて駆け寄ってきた蔦子から身を離そうとして、今度こそ本当に転んでお尻をついてしまった。そこに波が丁度押し寄せてきて、揉まれて転がされる。
「ぶわっ!? あぷ、ちょ、げほっ!」
「あははっ、何してんのよ~~」
 ケラケラと笑う蔦子達。
 波に弄ばれながら、それでも自分もおかしくなってきて笑う祐麒。
 そして。そんな祐麒のことを、少し離れた場所から江利子は見つめていた。

 

 別荘は非常に立派だった。
 豪華すぎず質素過ぎず、快適に過ごすことが出来そうだと皆が満足している。もし江利子と二人で訪れていたら広すぎるだろうが、十二人という人数では丁度良いくらいだ。別荘は貸し切りで、食事も自分たちで作る必要がある。
 部屋は一年生男女別で二部屋、二年生は男子二人の一部屋、三年生は江利子と美玲が同室で、会長の鵜久森は四年生二人と一緒という部屋割りになった。
 一日目の食事は女性陣が作ってくれたカレーで、食後はしばらく自由時間として、夜になったらなぜか怪談大会となった。
「いや、これだってミステリーみたいなもんだろう?」
 会長の鵜久森は楽しそうに言う。
「え、私、怖いの苦手」
「大丈夫、楽しそうじゃん。恐かったら、あたしに抱きついていいから」
 怖がる宝来を、大友が励ましている。
 この二人はいつも一緒でイチャイチャべたべたしているように祐麒には見え、百合なんじゃないかと思わせられる。単に仲の良い女の子同士というだけなのだろうが。
「よし、それじゃあトップバッター、笹山からいけ」
「え、俺っすか?」
「ああ、お前、お笑いタイプで怪談とか向いてなさそうだし、一番スベりそうだからな」
「うあ、ひっでえ!」
 文句を言う笹山だったが、鵜久森の読み通りで皆失笑していた。

 その後も会談は続き、大友の話が意外に怖く引き込まれ、宝来は震えながら大友にしがみついていた。
 しかし、適度に恐く適度にまったりと、全般的にはあたりさわりのない怪談話が続いていた。
「――よし、最後は俺だな。実は夕方、この辺を歩いていた時に地元の人に聞いたんだけどさ、ここの海の岩場に洞窟があるらしいんだよ」
「ああ、そういえばあるわね」
 鵜久森の言葉に、江利子が思い出したように頷く。
「そこでさ、怪しい話があるらしいのよ」
 声のトーンを落とし、下からねめ上げるようにメンバーの顔を見回す度会の迫力に、思わず祐麒も唾を飲みこむ。
 かつてその洞窟に遊びに行ったカップルがいた。洞窟探検だと楽しんでいた二人だったが、奥に行くと暗さと不気味悪さで怖くなってくる。男は見栄を張りたくて、帰りたいという女を連れてさらに奥へと足を進めた。
 やがて悲劇は訪れる。濡れた足場に滑った女が、岩の隙間に転落した。女を探そうとした男だったが、明かりが消えそうになっているのに気が付く。こんな場所で真っ暗になられたら自分も戻れなくなるかもしれない、それならば早い所戻って人を連れてきた方が良い。隙間から女のうめき声がか細く聞こえてきたが、男はその声を振り払うように急いで洞窟から脱出をはかった。
 しかし、それでも途中で明かりが消え、男は出るまでに時間を要してしまった。ようやく外に出て人を呼び中に戻ったが、今度は行き方が分からなくなっていた。中は暗く、同じような場所が多いから男も思い出せない。女の声も聞こえない。結局、何日間捜索しても女の姿は見つからなかった。どこかで海に続いていて流されてしまったのだろうと。
 捜索も打ち切られたその後も、しばらくすると行方不明となった女のことなど忘れられ、再び中に入る人も増えてきた。そんなある日、またカップルが入った。奥に進んだカップルは、中で腹の底から響くような女のうめき声を耳にした。
『……私を見捨てて、そんな新しい女と一緒にいるの…………口惜しい……』
 怯え、逃げ出そうとする男と女。先導して走り出した男だったが、女が付いてこない。どうしたのかと、振り返ってみると、女は蹲ってもがいている。何をしているんだと訝ってみれば、足に何か絡みついている。それは、岩場の隙間から伸びてきている。よく見るとそれは、長い、女の黒髪だった。
 たまげた男だったが、一人で逃げ出したりはせず懸命に女の足に絡みつく髪の毛を解き、引きちぎり、どうにかして自由にして腰の抜けた女を抱きかかえ、出口の方に向けて振り返る。
 ばさっ!!
 振り返った男の顔に絡みつく、濡れて喜色の悪い感触。それもやはり、女の髪の毛。
 絶叫しながら洞窟内を駆け、何度も転び躓きながら、必死に洞窟から抜け出る。ほっと一息ついて、明るい太陽の下で抱きかかえた恋人の頭を撫でると。
『ひいぃっ……!?』
 女の髪の毛はごっそりと抜け落ちてしまった。指に絡みつく恋人の髪の毛を見て絶叫する男。
 不明となった女は、誰よりも美しい髪の毛が自慢だったという。

「――――こええよお前っ!!!」
 鵜久森の話が終わると、元副会長の渡会が鵜久森の肩をどついた。
「確かに、話し方が上手いよな」
 頷く元会長の乙坂。
 大友は「怖い怖い、うわー怖いっ!」と叫びながらもなぜか嬉しそうで、放っとかれている宝来は蔦子に抱きついて涙目だ。
 話としてはどこかでありそうな内容だが、鵜久森の語り方や強弱の付け方が良くて、なかなか真に迫るものがあった。程度の差はあれど、メンバーそれぞれ恐怖を味わった様子を見て鵜久森は満足そうに微笑んだ。
「よし、時間もちょうどいい感じだし、今日はこの辺でお開きにするか。明日は合宿らしいことするからなー」
 鵜久森の号令に、ばらばらと解散するメンバー達。
 江利子はと探したが、美玲とともにさっさと部屋を出て行ってしまったようだ。仕方なく祐麒もあてがわれた部屋へと戻る。
 就寝の準備をしてベッドに横になっていると、笹山が立ち上がった。
「よし、俺はこれから宝来さんを誘って夜のデートにしけこんでくる。邪魔するなよ」
「するかよ。っていうか、宝来さんが応じるとは思えないが?」
「うっせ、挑戦することに意味がある。俺が戻って来なかったら、上手くいったと思ってくれ」
「ああ、健闘を祈る。俺は寝てるぞ」
 笹山は電気を消して部屋を出て行った。
 無茶な事をするものだと思う。大友と一緒に居る限り、宝来が誘いになんて乗るわけもないのに。
 別荘の中は静かで、外からも騒音は聞こえてこない、昼間の疲れもあり、横になっているとやがてウトウトしてくる。
 そのまま、意識がふわふわとしている途中。
 ベッドが揺れ、誰かが入り込んでくる気配を感じた。
「…………ん……おい、こっちは俺だぞ……」
 宝来に軽くあしらわれた笹山が戻ってきて、ベッドを間違ったのだろうと追いやろうと手を伸ばすと、やたら柔らかかった。
 おかしいぞと思い、目を開けてみる。窓から星の明かりが見えるから、室内は薄暗いけれど意外と視界は良い。
 そして祐麒の目の前には、瞳を輝かせた蔦子の整った顔があった。
「え……蔦子、さん?」
 思考が追い付かず、ぱちくりと目を何度か瞬かせる。
 祐麒の手が触れていたのは、蔦子のお腹のあたりだった。
 蔦子は祐麒の手に自らの手を重ね、そっと口を開いた。

「…………来ちゃった」

 

 

第五話に続く

 

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