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ノーマルCP マリア様がみてる

【マリみてSS(景×祐麒)】めしませ☆ティーチャー 第四話

更新日:

~ めしませ☆ティーチャー ~
<第四話>

 

 夜になって、一つの問題点が出てきた。それは即ち、景はどこで寝るのか、ということである。
「俺の部屋で、いいよ」
 当然のように祐麒は答え、当然のように祐麒以外の面々はぎょっとした。それぞれが、それぞれの思いを込めた表情で、祐麒のことを見ている。
 両親は、さすがにいきなりそれはどうだろうかと、やんわりと否定してくる。年頃の女の子もいるわけだし、いくら将来を誓い合ったとはいえ、高校生でもあるし、少し控えめにするべきではなかろうかと、オブラートに包んでいるんだかいないんだか分からないようなことを言ってくる。
 祐麒は頭をかき、大きくため息をつく。
「別に、一緒に、なんて言ってないだろ。俺はリビングで寝るから、俺の部屋を遣ってくれて構わないってこと」
「えっ、そ、それはさすがに悪いわよっ。私こそ、リビングでも床でも構わないし」
「そういうわけにはいかないって」
 祐麒はこう見えてもそれなりにフェミニストである。景が家を追い出されたことには、祐麒自身が原因というせいもあり、負い目も感じてはいる。いくらなんでも、景をリビングのソファに眠らせる、なんて選択肢はなかった。
 季節的にも、寒い時期は過ぎ去っているので、リビングで寝ても特に問題はない。
「そうか……うちも二世帯住宅を考えるか」
 父親が、またとんでもないことを呟いているが無視した。
「とにかく、女の子をリビングに寝かせるなんてできないから、俺の部屋使って。今日は色々あって疲れているだろうから、もう風呂入って寝ちゃいなよ」
 この話は終わりとばかりに、少し早口で告げるようにすると。
 景はびっくりしたような顔をして、そして。
「あ……うん、あ、ありがと」
 わずかに、照れたように頬を赤くして、小さく頷いた。
 そんな景を見て、祐麒はここにきて初めて、景を意識した。ずっと、状況に流される感じで、考える余裕すらなかったが、ようやく落ち着いてきて意識せざるをえない。
 美人の女子大生が、自分の部屋に泊まるのだ。しかも小林に言われた通り、実は景は、祐麒の好みをかなりの割合で満たしている。
 出会いが最悪だったので、わざと考えないようにずっとしていたのだが、こうして一緒に家で過ごすことになって、改めて認識してしまったのだ。
「祐巳、案内してやってくれ」
「うん、どうぞ、こっちです」
 祐巳に先導してもらい、景がリビングから出て行ったところで、祐麒は大きく息を吐き出した。
 これから先、一体、どうなるのだろうかと思い悩みながら。

 

 そして翌朝。
 目を覚ました祐麒は、硬直したまま動くことが出来ないでいた。
 それはなぜかと問われると。
 やたらと柔らかい何かに、包まれるようにされていたから。誰かに、抱きしめられている。寝息が首筋をくすぐる。
 考えるまでもない、景だ。
 あまり覚えていないが、夜中に目が覚め、トイレに行って、寝ぼけていた祐麒はつい自分の部屋に行ってしまったのだ。
 落ち着いて脱出しようにも、景に腕枕をしている状態で腕を抜くことができず、景もまた祐麒の体に抱きついている格好で、体を動かすこともままならない。
 このままではまずいのに、体が動いてくれない。体勢の問題もあるが、あまりに柔らかくて気持ち良い女性の体に、離れたくないという思いが心の中に生れてしまっている。腕枕をしていない、開いている方の手で景のわき腹のあたりを触る。シャツがまくれて、地肌に直接、触れてしまった。指先に伝わってくる肌の熱と、何より柔らかな感触に、一気に体が熱くなる。
 これ以上は駄目だと、理性を振り絞って手を引き離す。
「ふぉうっ!?」
 その時、突然に訪れた刺激に、祐麒は思わず声をあげてしまった。
「な、な、ななっ!」
「ふぅ……ん?」
 寝ぼけているのか、無意識にか、景の指が祐麒の大事な部分を握っていた。朝で、しかもこんな状況で、当然のように祐麒のソレは当然の状態となっているわけで、ソレを景が撫でる。
「や、ややややばいって、せ、先生っ」
 たまらず、悲鳴をあげる祐麒。
 祐麒の声を耳にして、うっすらと瞼を開く景。ぱちぱちと、何度か瞬きを繰り返し、それでもまだ理解できていない様子。
「んん……なに……?」
「だ、ダメ、先生、俺もうそんなにされたらっ、本当にまずいからっ」
「何、どういう……この硬いの?」
「くおぉっ!?」
「――えっ、ちょっと待って、え、何っ?」
 目を見開く景。
 祐麒の顔を見て、次いで視線を下に向けて自らが手にしているモノの正体を確認して。

「――――――――っ!!!!!!!」

 声にならない悲鳴をあげながら、祐麒の股間を膝で蹴りあげた。

「――――――――っ!!!!???」

 声も出せず、目を剥いて悶絶する祐麒。
「なななな何しているのよこの変態っ! エッチ! スケベ! 色欲狂!」
 枕を抱え上げ、何度も何度も、祐麒に振り下ろして打ちすえる。
 祐麒の方はといえば、体を丸めて、悶絶するしかない。天国に昇り詰める直前に、奈落の底へ突き落されたのだ。不幸中の幸いなのは、膝蹴りの衝撃でも破裂しなかったこと。
「い、いったい、いつの間に忍び込んだのよっ!? や、やっぱり、男はケダモノねっ!」
「違う、確かに、俺が、悪かった、けれど、これは、不可抗力だったんだ!」
 股間をおさえながらも、どうにか上半身を起こして景に相対する。
 こんな状況にも関わらず、髪が乱れ、涙目で赤面し、枕を抱えている景はなんか可愛らしかった。
「言い訳なんて無用よっ、まったく、あと少し気づくのが遅かったらと思うと、恐ろしさに身の毛がよだつわ」
「いやだから、そういう気はなかったってば」
「何よ、私じゃあ欲情しないというの? はいはい、どうせ男は胸の大きい女性が好きなんでしょう」
「それは違う! むしろ俺は貧乳派だから、先生くらいのがジャストミートで」
 余計な所に反応して、余計なことを口走る祐麒。
 祐麒の視線を追い、自らの胸元に目線を下ろすと、景は顔を紅潮させた。
「うっさいわね、貧しくないわよ、私はっ!」
「痛い痛いっ、だ、だから、俺的にはBカップくらいが」
「ああああんた最低、最低っ、サイテーッ!!」
 ばっこんばっこんと、遠慮なく枕で頭を叩きつけてくる景。叩かれすぎて、いい加減に頭がくらくらしたところで、ようやく枕攻撃が止む。
 見れば、景も疲れたようで、枕を手に荒い呼吸を繰り返している。
「はあっ、はあっ……ほ、ホント、やっぱり家に連れて来たのは下心があったからなのね、最低だわっ」
 枕で体を隠すようにしながら言われた景の言葉に、祐麒もカチンときた。
「なんだよ、家を追い出されたからって、せっかく厚意で連れてきたのにその言い草。普段使っている部屋だから、ついいつものクセで無意識に入ってきちゃっただけだろ」
「どうかしら。最初からそれを言い訳にするつもりだったんじゃないの? あーそっか、あの一緒にいた女の子に逃げられちゃったから」
「あ、あれはそもそも、あんたのせいだろっ!?」
「何よ、あんなお店に女の子と一緒にいて、いやらしい。あの後、私が来なかったらどうするつもりだったのかしらねー?」
「どうもこうも、ああそうだ、彼女に謝っとかないと」
「馬鹿な男、私のおかげで助かったのに、コロッと騙されちゃって」
「勝手なこと言ってるなよ、なんだよ、それ」
「あんたが悪いのよ、あんな女に引っ掛かるからでしょう」
 なんとなく話がそれてしまったようだが、売り言葉に買い言葉、今さら言いなおすこともできずに、ベッドの上で睨みあう。
 このまま部屋にいても気分が悪くなるだけ、さっさと出てしまおう。そう思い、ベッドから下りたところで、いきなり部屋の扉が開いて勢いよく祐巳が飛び込んできた。
「祐麒の、ばかーーーーっ!!!」
「はぶっ!?」
 そして、勢いのままに強烈なビンタを頬にくらった。目の前を星が飛び、よろけた祐麒はベッドに倒れ込む。
「ななっ、なんだよ祐巳、いきなりっ!?」
「なんだよ、じゃないっ。これはもう、明らかに祐麒が悪い!」
 腰に手をあて、もう片方の手で祐麒を指さしてくる祐巳。
「他の女の子に目移りするなんて、ダメじゃない。景さんが怒るのも無理ないわ」
「いや……ちょっと落ち着け、祐巳」
「誤魔化そうとしても駄目、ほらちゃんと謝って、仲直りするのよ」
 どっしりと、祐麒のことを見張るようにして、祐巳は立っている。いつもは感じない威圧感というか、姉としての威厳のようなものが体から滲み出している。全くの勘違いだというのに。
 目の前の景も、困った顔をしている。
 こうなったときの祐巳は、頑固で強情だ。
 それを知っている祐麒は、この場を収めるためにとりあえず頭を下げる。
「よし、謝ったら次は、ちゃんと祐麒の気持ちを景さんに伝えて」
「はぁっ!?」
「謝るだけじゃだめ。女の子はね、自分が愛されているときちんと口にして言われて、安心するものだし、言われるのは、いつだって嬉しいものなんだから。ねぇ、景さん?」
 最後の問いかけは景に向けてのものだったが、景はただ呆気に取られているだけ。しかし祐巳、自分自身生まれてこの方彼氏などいないくせに、随分と偉そうに女の子の気持ちを語るものである。
「そんなこと、言えるわけないだろう」
「何よー、結局は部屋で一緒に寝ていたくせにー。お父さん達や、小林君達に言っちゃうぞー」
「な、な、卑怯なっ」
 祐巳のテンションがおかしい。祐麒が初めて彼女を連れてきた(と思っている)ので、いつもと精神状態が違うのか。
 ともあれ、変なことを両親や知り合いに吹き込まれるのは嫌だ。祐巳のブラフだと思いたいが、そうでなかったときが怖い。
「――ええい、ちくしょうっ」
「ひっ?」
 ほぼやけくそ気味に、祐麒は景の方に体を向け、両肩をがっしりと掴んだ。
 景の目が、惑うように揺れる。
 顔が熱くなる。背後から、祐巳の好奇の視線が突き刺さる。
「お、俺が好きなのは景さん、景さんだけだからっ!!」
 景の目が見開かれる。
「うわーっ、ほ、ホントに言っちゃった! 聞いちゃった! ご、ご、ごちそうさまっ」
 自分からけしかけておきながら、いざ耳にすると祐巳は恥しくなったのか、きまり悪そうに部屋から出て行った。
 扉が閉まる音を耳にしてから、祐麒はがっくりとベッドに突っ伏した。
「な……なんの仕打ちだコレ」
「そっ、それはこっちの台詞よ。馬鹿じゃないの馬鹿じゃないの馬鹿じゃないのっ!?」
 うずくまる祐麒の頭を、ぽかぽかと殴ってくる景。
「し、仕方ないだろ、あの状況を切り抜けるには、あれしか……」
 景の手を振り払い、顔を上げた祐麒が見たのは。
 顔を桜色に染めた景。
「ううぅ、ひどい、なんでこんな場所で、こんなろくでもない告白を……あー、抹消したい記憶だわ」
「むしろ抹消して」
「無理よ、初告白だったのに」
「え、そうなの? 意外。景さんなら、モテそうなのに」
「うっ……るさいわね、私は自分から告白するタイプなの」
「あー、あれか。なんかクールで近寄りがたくて告白されないタイプでしょう?」
「ぐっ」
 図星だったのか、言葉に詰まる景。
「ううううるさいっ、そもそも全部、あなたのせいでしょうがっ!」
 枕で頭を叩き、そのまま体重をかけて祐麒の顔をベッドに押し付けるという景の攻撃を受けるが、祐麒は悪い気はしない。
 むしろ、クールで知的な女性だと最初は思っていたのに随分と可愛らしいところもあるんだなと、シーツで窒息しそうになりながらなぜか笑いそうになるのだった。

 

第五話に続く

 

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