書評と主にマリア様がみてるの二次創作(旧:よしのXブレード)

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【マリみてSS(色々・ネタ)】小ネタ集12 ノーマルCPショート3

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【1】

「武嶋さん、武嶋さん」
よびとめられて、立ち止まる。後ろから声をかけてきたのは、同期の一人である中沢さん。
ちなみにここは某出版社。大学を卒業した私は、就職先として出版社を選び、出版社のかけ出しカメラマンとして働いている。
いくら私でも、卒業していきなりフリーでやっていくとか、高名な写真家のもとにいくなんて簡単にできるわけないと理解している。
地道に働いて、それでもいつかは独立してやるという気概を持っている。
「今度の合コン、お願いだから参加してよ。人数足りないし、武嶋さんがきてくれると相手のレベルもあがるのよー」
「私は撒き餌かい」苦笑いして応じる。中沢さんは正直ものだから、まあ、言われて悪い気はしない。
「この前、参加したじゃない」合コンは苦手だし、好きでもないからお断りしたい。しかし社会では人付き合いも大切。
特に、独立を目指す私にとって、あまり評判を落とすようなことはしたくない思いもある。難しいところだ。
同期は大切だし、中沢さんは嫌いじゃないから助けてあげたいとは思うが。しかし。
「武嶋さん、今フリーだよね? いいじゃーん、ねえねえ、今回の相手は何しろ」
「あー、ごめん。実は先週から、つきあい始めた」
「え、えーーーーーーっ!? 聞いてない、聞いてないよそんなのーっ!!?」驚く中沢さんだが、言ってないのだから当たり前だ。
「だだだ、誰? ウチの会社の人?」問われて、ちょっと困るが、まあ正直に告げると。
「え、ええっ。それじゃなに、ヨリを戻したの? へええ、うわぁ」本当に正直で遠慮のない人だ。まあ、裏表もないからいいのだけれど。
「でも、ヨリを戻したって、別れていたわけじゃないし」
「いや、あたし的には別れたのと同じよ、それは」
なんというか、とらえ方の違いか。高校生の時に初めて告白されて、その時は断った。写真があるからと。
大学生になって、再会した。色々とあって、付き合うことになった。
だけど就職して、仕事が忙しくなって擦れ違いがあって、お互いまずは仕事に注力しようということでいったん、距離を置くことに。
それから三か月ほどたったわけだけれど。
「どういう心境の変化でしょうか、え、武嶋さんや?」脇腹をつつかれるが、回答に口が澱む。恥ずかしいが、まあいいか。
「……一緒に暮らすことにした」言いながら、顔が熱くなる。すれ違ったのは、お互いに時間がとれなかったから。
ならば、一緒の時間を作ればいいと、あの人は自分の住まいを飛び出してきたのだ。それ以外、何も考えずに。馬鹿だ。
「……そのお馬鹿さんと、一緒に暮らすんでしょう? でーも、ちょっとうらやましいかも。それだけ想われていて」
「ま、高校の頃から、私にべた惚れだったから。惚れた方が負け、ってね。そういうわけで、合コンはパース」
手をあげ、職場に戻る。一緒に暮らしたって、私が早く仕事終わらせないと意味ないでしょうが。本当に馬鹿なんだから。
私は苦笑しつつ、仕事にかかるのであった。

【2】

大学に入っても、バスケは続けている。身長はさすがにもう伸びないけれど、それでもバスケには適している。
しかしリリアン女子大のバスケ部は強豪というわけではないので、戦績は伸び悩み中、である。
練習を終え、シャワーを浴びて汗を流す。この瞬間というのは非常に心地よい。
面倒なのは、長い髪の毛。バスケをやるんなら短くしろという感じだが、この髪の毛は短くする気はない。
着替え終えて、帰り支度。部活の仲間たちと、一緒に帰る。
「ところでさ、今週末、K大のバスケ部と合コン予定してるんだけど、みんなどう?」
「もちろん、参加しますっ」 「予定があったけど、変更しまーす」 「K大はいいねー」
幹事役の子の一声に、みんなが盛り上がる。この辺は、リリアンといえど外部生も多いからだろう。高等部と雰囲気は随分異なる。
「可南子ちゃんも、たまにはどう?」一人の先輩が、笑いながら誘ってくる。
「そうですよー、細川先輩、いきましょうよー」なぜか私を慕ってくれている後輩も、誘ってくる。
「申し訳ありませんが、私、そういうのは……」軽く頭を下げる。
「だから先輩、可南子ちゃんは男嫌いなんですよー」と、同級生の子がフォローをいれてくれる。
そう、男嫌いがそう簡単に治るわけもない。精神的な問題なのだから。合コンなんてとても行く気には……
「ふーん、そっか。でもさー不思議だよね。男嫌いだけれど、ちゃーんと彼氏はいるんだもんねぇ」
その、先輩の一言に、部員一同の動きが止まった。
「え……あの、先輩、今、なんと?」と、最初に口を開いたのは、私の同級生。私が言いたい言葉とも一致する。
「え、だから、男嫌いでも彼氏がいるんだから、世の中面白いっていうか……あれ?」皆の反応に、むしろ驚く先輩。
「だってこの前、可南子ちゃんと男の人が手をつないで歩いているの見たし。可南子ちゃん厳しい表情に見えたけど、口元笑ってたし」
先輩の言葉に、体が震える。まさか、あんな場所、知っている人なんていないだろうと油断をしていた。
「ちょっ、可南子ちゃん、どういうことっ!? まさか冗談なん……って、なんで顔、赤いのっ! これは本当か!」
「細川先輩、相手はどんな方なんですかっ、教えてくださいっ!」
一気に、騒々しくなる集団。あああ、最悪だ、最悪だ。今までずっと、バレないようにしてきたっていうのに!
いや、まって、どうにか誤魔化す方法を、良い言い訳を考えれば……
「カナゴンの裏切り者ー! 男なんてとか言っておきながら、自分一人だけとっとと大人の階段のぼっちまうなんてー!」
「そうだー、羨ましくなんてあるからな、このー!」
「うっ、羨ましくなんて、あんなの痛いだけで全然気持ち良く……」
同学年の友人達に物凄い勢いで迫ってこられて、思わず言わなくて良い余計なことを口走ってしまった。口を押さえたときには既に遅く。
「カナー! あああんた、うわーーーん!」
「ち、違います、今のはそうじゃなくて、ああもうっ!」

 

 

【3】

私は落ち込んでいた。あまり落ち込むことのない私だけれど、それでもここのところのスランプに、さすがに凹んでいた。
いい声が出ない、歌えない。
誰だって壁にぶつかる時期、スランプの時というのはあるだろうけれど、私の今がまさにそのときなのだろうか?
色々と気分転換や、リフレッシュを試みたけれど、それでもなかなかうまくいかない。
焦る必要はないと周囲の人は優しく言ってくれるが、留学中の身としては結果を出せないと情けない。
もとからイタリアに住んでいる人なら、家族や、友人や、恋人なんかがそばにいてくれるんだろうけれど、私にはいない。
ホームシックにかかるなんて微塵も思っていなかったが、これはまた別種のものである。
気分転換を兼ねた散歩から帰ってきても、気分はまったく晴れない。それでも小母に心配かけまいと表情を取り繕う。
「お帰りなさい、静さん。タイミングが悪かったわね、先ほど電話があったのよ」
「あら、誰からですか?」
「うふふ、貴方の可愛らしい騎士さんからですよ」いたずらめかした微笑みで、叔母が言う。
「ああ……祐麒さん」タイミングの悪さに、ちょっとがっかりする。祐麒さんとはいつの間にか手紙をやりとりする仲になった。
だけど、さすがに電話となると滅多にするものではない。時差もあるし、お金もかかる。
たまたま帰国した際に一度しか会ったことのない、祐巳さんの弟さんの祐麒さん。祐巳さんと同じように、体の力を抜いて相手できる。
「残念だったわね、静さんの方から連絡してみたらどうかしら」からかうような小母。
「やめておきます。今考えれば、スランプ中に電話なんかしなくてよかったかも。愚痴ばかりになってしまいそう」
「恋人には、なんでもさらけ出していいのではないかしら?」
「だから、私と祐麒さんはそういうのではありませんよ?」何度言っても、小母はやめない。まあ、わかっていてだろうけれど。
私もいつものことと、肩をすくめて受け流して部屋に戻った。

夕方となり、夜の食事の準備の時間帯。私も気分転換ということでキッチンの手伝いをしている。その時。
「あら、来客かしら。静さん、悪いけれど出てくれる?」手が離せない小母に変わり、私が玄関に出る。
「はい、どちら様……」あまり警戒もせずに玄関を開ける。この時間に訪れる人なんて、お隣さんといつも相場が決まっている。
しかし。
「……え。な、なんで」私は絶句する。
なんと目の前には祐麒さんが立っていて、「どうも、こんばんは」なんて言いながら少し照れたような笑みを浮かべているから。
「えと、昼に電話したら静さん、不在で。そうしたら小母様が是非、家まで直接遊びに来てくれって」
電話の話のあと、小母の態度が微妙に変だと感じたのは、このせいだったのか。しかし、しかししかし。
「や、やだっ!!」私は真っ赤になって、自分の腕で自分を隠す。何せ、部屋着のだらしない格好でいたものだから。
「夏休みを利用して、遊びに来ちゃいました。イタリアって初めてなんですけれど、素敵ですね」私の気など知らずに続ける祐麒さん。
「あらやだ祐麒さん、そう言うときは、でも静さんの方が素敵ですよ、っていうものでしょう?」後ろから小母がやってくる。
「ちょっと小母さま、ふざけないでください。大体、なんで教えてくださらなかったんですか」
「プレゼントは、いきなりのほうが驚きも、喜びも大きいと思って」
と、小母と小さな言い合いをしはじめようかとしていると、祐麒さんといえば。
「あ……そ、そうですね。はい、あの、し、静さんの方がずっと、ずっと素敵です、はい」なんて赤くなって真顔で言うものだから。
小母はうれしそうに「まあ」なんて言って、私はまたしても不意打ちに頬を今以上に熱くする。
「さあ、とにかく上がってくださいな、丁度夕食の支度中です。あ、今夜は泊っていってくださいね、静さんと同じ部屋でいいわよね」
「おおお小母さまっ!」
あまりのサプライズ、そして騒々しい夜に、私のスランプはいつしか吹っ飛んでいたのであった。

 

 

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