どうしよう。
祥子は珍しく、困り果てていた。
基本的に、あまり困ったり迷ったりするということは、少ない。自分が正しいと思ったことを、素直に実行にうつしてきたから。
水野蓉子の妹となって山百合会に入り、聖や江利子にからかわれて困ったり、祐巳を妹にして時に困惑したりすることはあったけれど、それでも今ほどどうしたらよいのか迷うことはなかったと思う。
約束の日曜日は、もう明日――いや、既に日付が変わっているから今日のことである。
思いもかけずにしてしまった会う約束。
ただ、会うだけだというのになぜこんなにも迷わなくてはならないのだろう。これがいっそのこと平日であったならば、リリアンの制服を着ていけばよいだけだから迷うことなどなかったのに。
こんなに困らせられて苛立ちも募ろうというものだが、そもそも日曜日と指定をしてしまったのは他ならぬ自分自身であり、誰にぶつけようもない。
「はぁ……」
知らず知らずのうちにため息をつく。
早いところ就寝しないと、朝に響いてしまう。寝不足で目に隈を作った状態で会うことになるなど、避けねばならなかった。
悩んでいたところで決まるとも思えず、祥子は諦めて床に入ることにした。朝になれば、嫌でも決めなくてはならないのだから、そこで決めればよい。
決断を先延ばしにして、祥子はベッドへと体を滑り込ませた。
天気予報では、明日は快晴である。
しかし、祥子の心模様は晴れ渡っているとはいえなかった。
翌朝、目が覚めて、とりあえず楽な格好に着替えて朝食をすませる。自室に戻り、昨夜の続きとばかりに洋服を見定めようとするものの、やはり一向に決めることができない。
そうこうしているうちに祥子は、なぜ今日、会う約束などしてしまったのだろうかと考え始めていた。大体、祐麒と会ってどのような顔をすればよいのか分からない。祐麒からプレゼントされた花と花言葉、だけどそれは本当の気持ちではない。ならばからかわれたのかと怒りがこみ上げてきたものの、落ち着いて考えると、祐麒がふざけて祥子のことを笑うような人間とも思えない。でもそうすると、嘘をついてきた意味が分からない。
考えれば考えるほど堂々巡りとなり、次第に気分が悪くなってくる。
頭をおさえながら部屋から出ると、ちょうど向かってきていたのか、清子とばったり出くわした。
「あら、祥子さん、まだそんな格好で。急がないと間に合わなくなりますよ」
時計を見れば、確かにもうギリギリの時間になっていたが、祥子は頭を振った。
「――やっぱり今日は、行けません」
「行けないって貴女……どういうつもりなの」
「約束は、キャンセルします」
言うと、清子は祥子のことを見つめてきた。視線に無言の非難を感じ、正面から受け止めることができずに横を向く。
祥子だって、それが卑怯なことだと分かっている。それでも、このまま祐麒との約束に出かけることなど出来そうにない。
祐巳や蓉子とデートするのとは、訳が違う。
優と一緒に出かけるのとも、また異なる。
電話で受けたときにはさほど感じなかったけれど、今さらになってとても無理だと思うようになった。
「申し訳ありませんが、祐麒さんにお断りの連絡をいれてもらえませんか」
「はぁ? なんで、私が」
「――だって、具合が悪いのに自分で連絡するというのも……」
小さな声で、言い訳がましく答える。具合が悪くもないのに悪いフリをする嘘の電話など、上手く出来る自信はなかった。
清子は何か言おうと口を開きかけたが、諦めたように小さく息を吐き出した。
「キャンセルって、今の時間だと祐麒さん、もうお家を出てしまっているのではないかしら?」
「携帯電話の番号を聞いていますから……」
メモを、清子に手渡す。
「今回だけですよ」
祥子はただ無言で、頭を下げるのであった。
清子に断りの電話をいれてもらい、後ろめたさは感じながらもどこか心の隅で安堵し、ゆったりと午前中を過ごし、昼食をすませ、リビングで紅茶を飲みながら読書をする。罪悪感はあるものの、紅茶の香りが心を落ち着かせてくれる。
「お嬢様、失礼します」
使用人の一人が静かに寄ってきて、軽く頭を下げる。
祥子は目で先をうながす。
「お客様がいらしております」
「お客様?」
本を膝の上に置いて軽く首を傾けると、肩に流れる黒髪を指で撫でながら、カップを手に取る。
祥子を訪ねてくるとなると、優か瞳子あたりだろうか。
「福沢祐麒さまです」
来訪者の名前を耳にした瞬間、祥子は紅茶の霧を口から派手に噴出させた。
「ゆっ、ゆ、ゆうきひゃんっ!?」
あまりに驚いたために、名前を噛んだうえに声が裏返る。口元を拭い、汚れた服も気にせずに立ち上がる。
紅茶飛沫を正面から受け止めた使用人は、顔面を拭くこともせず、醜態を晒した祥子の姿を見ても表情を変えることもせず、ただ頷いて肯定を示す。
「ど、どうして祐麒さんが」
一方の祥子はといえば、狼狽して忙しなく意味もなく左右を見回したりしている。そんな祥子を嗜めたのは、もちろん清子であった。
「どうしても何も、祥子さんのことを心配してお見舞いに来てくれたのでしょう」
「お見舞い?」
「だって、具合が悪くて今日のデート、キャンセルしたんですもの。祐麒さん、随分と心配していたわよ?」
清子はやんわりと微笑む。
「お母様、電話で他にも何か、言ったんじゃないですか?」
「別に何も言っていませんよ」
睨み付けるものの、清子は全く動じない。
「中にご案内してよろしいでしょうか」
いつの間にか顔も綺麗になった使用人が、改めて聞いてくる。祥子にしてみたら、会わせる顔がないと思いつつも、せっかく来てくれたのにこのまま追い返しては申し訳ないとも思うわけで。二つの異なる想いが、祥子の内でせめぎあう。
「ええと、あの、そうね」
「いつまでも玄関で待たせるなんて失礼だわ。すぐにお招きしてください」
「はい」
「え、ちょっとお母様っ。あ、和子さん、ちょっと」
清子の言葉を受けて、使用人の和子はそそくさと玄関に戻ってゆく。このままではあとしばらくもしないうちに、祐麒が中に入ってくることになる。
「こ、困りますお母様。そんな勝手に」
「では、せっかく来ていただいたのに、ずっと玄関でお待たせするというのですか?」
「そういうわけではありませんけれど、私にも心構えというものが」
「何が心構えですか。そもそも祥子さん、あなた祐麒さんには何と言ってあることになっていたんでしたっけ?」
「え……あ」
そこでようやく祥子は、仮病を使って約束をすっぽかしたことを思い出した。
「ど、どうしましょう」
「知りませんよ。優しい祐麒さんなら、祥子さんのことを心配してお見舞いに来るという可能性は十分に考えられたこと。自分で蒔いた種なんですからね」
「わ、わ、私、部屋で寝ていることにしてくださいっ」
長い髪を翻し、祥子は半ば駆け足でリビングを出てゆく。
娘の後ろ姿を見送り、清子は苦笑を浮かべるのであった。
慌てて自室に戻り、ベッドの上で布団にくるまってから二十分ほどがすぎただろうか。果たして祐麒はどうなったのだろうか。おそらく清子に誘われるまま、リビングでお茶でも飲んでいるのだろう。
どんなことを清子が話しているのか気になったが、だからといって、のこのこと姿を見せるわけにもいかない。
来るなら来るで、さっさと来ればよいのに、何油を売っているのか。いや、こんな状態のところで来られても困るが。
悶々としている中、不意に扉を叩く音が響き、身をすくませる。
「えと、あの、祥子さん……福沢祐麒です」
扉越しに話しかけてくる声は、間違いなく祐麒。祥子は扉に背を向けて毛布にくるまったまま、どう応じたらよいのか頭を悩ます。
「ほら祐麒さん、そんなところに突っ立ってないで、ドカンと入っちゃってくださいな」
「え、でもそんな、まだ返事もないですし、寝ているのかも」
「構いませんから、きっと祥子さんも待っていると思います」
勝手なことを祐麒に吹き込む清子。今すぐに部屋を出て文句を言いたかったが、今は体を丸めて寝ていることしかできない。
「あの、本当に」
「大丈夫ですよ、ほら、祥子さんが待ち侘びていますよ」
本人がいないのを良いことに、何を嘘ばかりすりこんでいるのか。さすがに堪りかねて、おもわずベッドの上で身を起こす。
「まったく、お母様……」
呟いた次の瞬間。
「さあ、遠慮なくどうぞごゆっくり」
「わ、し、失礼します」
ドアが開けられ、清子に押し出されるようにして祐麒が室内に入ってきた。起き上がりかけた身を、慌ててベッドに無理矢理に倒しこんで、掛け布団に再びくるまる。
「……祥子さん、今、起きてました?」
「……いえ、気のせいでは」
「そ、そうですか……あ、すみません、あの、無理にお部屋、入るような形になっちゃって」
「分かっています、母が申し訳ありません」
祐麒の声を背中越しにうけて、小さな声でこたえる。
所在なげに立ち尽くしている祐麒を、とりあえず適当な場所に座るようにさせると、そこで会話が途切れる。
体調不良ということになっているので、祥子の方からいたずらに話しかけるのは変であったし、何を話したらよいのかも分からない。
「でも、思ったよりも元気そうで、安心しました」
「……本日は、申し訳ありませんでした」
「そんなの気にしないでください。祥子さんの体の方が大事ですから」
心から祥子を案じる言葉に、胸がチクリと痛む。
やはり、顔を見ることなどできそうもないと、さらに深く掛け布団をかぶる。
背後では、どこか落ち着かないようで、祐麒がそわそわしている気配を感じる。
「すみません、女性の部屋に入るのなんて初めてなもので、緊張して」
「は、はあ」
言われて、祥子も自分の部屋に男性が入ってきていることを初めて意識した。何せ、家族と優以外の男性が部屋に入ることなど今まで無かったのだから。
意識し始めた途端に、色々なことが気になりだす。部屋は普段から整頓しているつもりだが、今日は起きてからまだ掃除もされていないし、綺麗な状態になっていただろうか。物が出しっぱなしで散らかっていないだろうか。そこまで気がまわらずにベッドにもぐりこんでしまったから、ひょっとしたら汚れているかもしれない。
「あの、祥子さん。まだ、怒っています……よね」
祐麒が問いかけてきたのは、この前のことであろう。有耶無耶な形になっていたが、祐麒の真意というものをまだ確認できていなかった。
「怒っているというか……よく、分かりません」
そうだ、分からないのだ。
なぜ、祐麒があんなことをしたのか、なぜ、自分がこんなにも苛々とした気分となるのか、どちらもよく分からない。分からないから更に、気分が棘ついてくる。分からないから、不安定になる。
「あの、正直に話します。花のこと」
体が、強張る。
聞きたくない気持ちもあるが、耳は祐麒の声を逃すまいとしっかり待ち受けの態勢をとっている。
「ええとですね、胡蝶蘭の花言葉、実は勘違いしていたんです」
「勘違い……?」
「はい。その、同じ胡蝶蘭でも色によって花言葉が異なるようで。それで俺、黄色の胡蝶蘭の花言葉を覚えて、祥子さんに贈っていたんです」
黄色の胡蝶蘭の花言葉、聞くとそれは『幸福が飛んでくる』ということらしく、祐麒としてみれば、祥子に幸せがありますようにと願い、贈ってくれたものだったらしい。
「それでは、本当に間違えて……?」
「はい、恥ずかしながら」
祥子は寝返りを打つようにして体の向きを変え、祐麒を見た。
照れたように頭をかく、祐麒がいた。
おかしくなって、祥子は笑いかけて、はたと気がつく。すると祥子も一人、早とちりをして祐麒の求愛だと思い込み、真剣に考え、悩み悩み、そしてそして、あんな結論を出したというのか。
一気に羞恥が身体中を駆け巡る。瞬間的に顔が熱を帯びる。
「さ、祥子さん、どうしたんですかっ!?」
祥子の急変を目にして、驚き腰を浮かせる祐麒。
「別に、何でもありません」
「何でもないって、顔、真っ赤ですよ。熱が出てきたんじゃないですか」
「だ、大丈夫ですから」
拒もうとするものの、横になっているせいで自由に体を動かせない。反対側を向いてしまおうとする前に、腕の肩に近い部分を掴まれ、動きを封じられてしまう。両手で口元を隠すようにするが、目は正面に祐麒をとらえる。
祐麒の手が伸びてきて、思わず目を閉じる。
一瞬の後。
わずかにひんやりとした感触が、額に押し付けられる。
「……やっぱり少し、熱いですね」
祐麒の手の平が、祥子の額の上に乗って熱を測っている、そのことに気がつく。
「あれ、わ、なんだかさらに熱くなってきているような」
「あの、本当にもう大丈夫ですからっ!」
耐え切れなくなった祥子は、手をついて半ば無理矢理に上半身を起こして祐麒の手を振り払う。
「ちょっと祥子さん、無理しちゃ駄目ですって、横になっていてください」
「もう、治りましたから、大丈夫ですっ」
「そんな熱っぽい顔して、何が大丈夫ですか」
今の状況に耐え切れず、どうにかして起き上がろうとする祥子と、祥子の具合が悪いと信じていて、無理させずに静かに横にさせようとする祐麒。力関係だけでいえば明らかに祐麒力の方が強いが、相手が女性で病人ということもあるのか、あまり力を入れられていない。
「私が大丈夫と言っているのだから、大丈夫なんですっ」
「でも祥子さ……」
「いいから、離してくださいっ」
「…………」
「――祐麒、さん?」
急に無言となり、心なしか祥子をおさえる力も弱くなった祐麒。どうしたのだろうかと、先ほどまでは目をあわせないように伏せていた顔をあげ、そっと祐麒を見てみれば、なぜか今度は祥子以上に顔を赤くしている祐麒の姿があった。
「あの、ゆ、祐麒さん? ど、どうかされましたか。どこか具合でも」
急に不安になり、身を乗り出す。
だけれども祐麒は酸欠状態の金魚のように、口をぱくぱくとさせるだけ。目は大きく見開かれ、顔どころか耳、そして首筋まで朱に染まっている。
何が祐麒を急変させたのか、不思議に思いながら祐麒の視線を辿り、五秒ほどしてから祥子も気がついた。
祐麒が来たと聞いて慌てて寝巻きに着替えたのだが、急だったため特に何も考えずに手にしたものに着替えた。
それは、お気に入りのネグリジェ。
ホワイトでひらひらのレースがあしらわれているけれど、近くで見ればシースルーだということは一目瞭然。当たり前だけれどブラジャーは外していて、布越しに胸の形、体のラインがはっきりと分かってしまう。おまけに、体を起こして祐麒ともみ合った際に掛け布団がずれて、下半身も見えている。大きなスリットの入ったネグリジェから、祥子の長くて滑らかな脚と、ショーツの端がちらりと顔をのぞかせている。
至近距離から、祐麒はそれら全てを目の当たりにしているわけで。
もちろん、完全に透けてしまうような淫らなものでなく、あくまで上品さを残しているものであるが。
そんな今の状況を頭の中で整理し、なぜ祐麒が顔を真っ赤にしているのか理解するまでに三十秒ほど。
「あ、あ、あ」
変な声が、漏れる。
「ゆ、ゆ、ゆ、祐麒さん、みみみ見ないで、くださいっ」
「す、すみませんっ、でも、離してくれないと」
言われて、祐麒の腕を強く掴んでいることに気がついた。だけど、強張った体が言うことをきいてくれない。
「は、離れなくても、私の方を見ないとか、目をつぶるとか、あるじゃないですかっ」
「そ、そうなんですけれど、出来なくてっ」
「な、なんでですかっ!?」
「そんなこといわれてもっ!」
お互いに極限状態に追い込まれてしまったのか、膠着状態に陥り、動き出すことが出来ない。
見られている。
このままでは、ずっと見られ続けてしまう。
頭の中で、様々な意識がぐるぐると回る。
当事者二人が混乱の極みにある中、状況を変えてくれるのは外部の人しかいない。でもそうそう都合よく誰が現れるものか、と思っていたところにタイミングよく第三者の声がかけられる。
「祥子さん? 何を騒いでいるのですか?」
清子であった。
続いて、「入りますよ」という声とともに、扉のノブがまわる。
気がついた祥子は、凄まじい勢いでベッドに倒れこんで布団にくるまり、祐麒は椅子に姿勢正しく腰掛けなおす。
室内に足を踏み入れた清子は、どこか微妙な雰囲気に気がついたのか、首を傾げる。
「どうかしたのかしら?」
「い、いえ、なんでもないです。あの、俺、あまり長居してもご迷惑ですし、そろそろお暇させていただきます」
「あらそんな、もっとゆっくりしていってくださればよいのに」
引き止めようとする清子の声を振り切り、ほとんど逃げるようにして祐麒は小笠原邸を後にした。
玄関まで祐麒を見送った清子は、再び祥子の部屋へと戻ってきた。
祥子は祐麒が出て行ったときと変わらず、背を向けるようにして布団にくるまって丸くなっている。
「……ひょっとして、お邪魔しちゃったかしら?」
「そ、そんなんじゃありません」
「そお?」
それだけ言い、あとは何も問おうとはせず、清子は部屋を出て行った。
祥子だけが部屋に残される。
まだ僅かに感じられる、祐麒がこの部屋に居たという、温もり。
布団の中、子供のように、身を守るかのように体を抱え込むようにして丸くなった祥子は、いまだ落ち着かない頭の中で考えていた。
見られた。
見られてしまった。
ネグリジェ越しではあったが、胸も、身体のラインも、ネグリジェからはみ出した素足も太腿も、そしてひょっとしたら下着も、狼狽する祥子自身の顔や表情も全て、見られてしまった。
父親でも、優でもない、男性に。
目を瞑り、強く胸をおさえる。
柔らかな膨らみを通して、鼓動が手に伝わってくる。他人と比較などしたことはないが、大きいといわれているこの胸も見られたのかと思うと、心臓の動きは更に速くなる
恥しい。激しい羞恥が身体中を走り抜けて、全身を熱く燃やしてゆく。
ああ、でも。
祥子は熱い息を吐き出した。
恥しさは決して消えない。むしろ頭の中が冷静になってゆくほどに、恥しさはどんどんと大きくなってゆく。
それだというのに――――不思議と、嫌な気持ちは全くなかった。
そうか、ああ、これはきっと罰なのだ。嘘をついて約束を反故にした自分に与えられた、罰に違いない。
祥子は思う。
この身体の熱さも、胸の苦しさも、心がふわふわとたゆたうような感じも、意識が混濁するようなどこか心地よい酩酊感も、きっと己に与えられた罰なのだと。
騙してしまった自分が悪いのならば、甘んじて罰は受けるしかあるまい。
全てを受け止めながら祥子は一人、ベッドの中、丸くなって毛布にくるまり、意識を闇に落としてゆくのであった。
おしまい