書評と主にマリア様がみてるの二次創作(旧:よしのXブレード)

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【マリみてSS(江利子×祐麒)】イエロー・マジック・オーナメント <第九話>

更新日:

 

~ イエロー・マジック・オーナメント ~
<第九話>

 

 

 いきなり江利子が泣き出したときは、祐麒も驚いた。何かまずいことをしでかしたのか、泣かせるようなことをしてしまったのかと、自らの行動を省みたが、どうやらそういうことではなかったらしいと分かり、胸を撫で下ろす。むしろ、嬉しくて涙が出てきたのだというようなことを、江利子は口にした。
 料理は聖に教えてもらい、実際に手作りではあるが物凄く手間のかかるというものでもないし、ワインは聖に教えてもらったもの。正直、そんなに感動してもらえるほどのものと祐麒自身は思えないので、逆に申し訳ない気になる。
 江利子の肩を抱きしめたのは、そうしなくてはいけないような気がしたから。
 その瞬間から、いいようのないほど、今までとは全く別の次元で江利子が可愛く見えて仕方なかった。
 料理について江利子は物凄く喜んでくれたし、本当に美味しそうに食べて、さほど大食ではないはずなのにおかわりまでしてくれた。そしてワインを口にすると、ほんのりと白い肌に朱が差し、色気を増加させる。

 いつも、江利子からは年上の女性を感じていた。甘える仕種を見せていても、それでもどこかで必ず年上だということを認識する部分がある。
 ところが今日は、まるで年下の女の子のように見える。
 爽やかなマリンデザインのセーラーカラーブラウスはノースリーブで二の腕がほのかな色気を放つ。ボトムスはベージュとオフホワイトの組み合わせの水玉模様キュロットで、珍しくカチューシャをしている全体とあわせてみても非常にキュートだ。
 食事を終え、冷蔵庫からケーキを取り出すと、江利子はまた大きく喜んだ。江利子の大好きなフルーツのタルトで、ケーキを前にすると江利子は体の前で手を合わせ、小さく拍手をしながら「わーい」と小さな歓声をあげる。そんな姿がまた可愛らしくて、たまらなくて、でもそんなことを考えているなんて知られたくなくて、つい誤魔化すようにワインに口をつけるから、随分とペースが早くなる。
 ケーキを食べ終えた後は、プレゼント。実を言えば、プレゼントが一番、自信がなかった。何しろ、自分で選んだものだから。
 最初は聖に相談したのだが、プレゼントは自分で考えないと駄目だと言われ、一緒に選んでくれなかったのだ。
 散々悩んだ末に選んだのは、結局のところ無難なものになってしまったのだが。

「わあ、プレゼント? あけてもいいかしら」
 無邪気に喜ぶ江利子は、嬉々としてプレゼントの包みを開けて中身を取り出す。中から出てきたのは、やさしい輝きを放つ3色クローバーのヘアゴム。クローバーの葉の部分はもちろん、茎の部分までストーン使いでキラキラ反射するのが綺麗だった。
 ヘアバンドは昔のようにしなくなったけれど、それでも江利子はヘアアクセサリをよく身につけていたから、似合うと思ったのだ。値段はたいしたことないが、それでも一生懸命に考えて購入したものである。
「こんなんで、今までの分が埋まるとは思っていないですけれど」
 三年前、出会った日にはすでに江利子の誕生日を過ぎていた。
 二年前と一年前は、何があったか覚えてはいないけれど、江利子の誕生日を祝ったという記憶は無い。
 祐麒自身の誕生日には、必ず何かプレゼントを貰っていたというのに、薄情な話であった。
 確かに、江利子は勝手に祐麒との関係を恋人という設定にして、祐麒のことを色々と振り回してきたけれど、それらの日々が楽しかったのも事実であった。誕生日だけでなく、バレンタインにはチョコレートをくれたし、クリスマスだってプレゼントを貰った。色々と世話にもなった。江利子自身は、自分が勝手にやっているだけだから気にするなと言い、その言葉にずっと甘えてきた。
 だけど、いつまでも貰うばかりではいけない、沢山のものを貰い受けた分だけ、返したかった。
「うれ……しい」
 呟くように言い、江利子は3色クローバーで髪の毛をまとめて留めた。カチューシャをしたままだったけど、微妙にバランスが取れている。
「どう……かな、へへ」
 恥らうようにして笑う江利子が、反則的に愛くるしい。ヘアゴムをしたことにより、余計に幼くなったように見えるのもいけない。
「とても、似合ってる。うん」
 言いながら、さらに祐麒は隠しておいたモノを取り出した。
「あと……これも」
「え? でも、そんな」
「いや、これは誕生日プレゼントとは別に、今までの感謝というか、俺の気持ちというか」
 戸惑う江利子に向け、なかば押し付けるようにして小箱を渡す。
 江利子は祐麒の様子をうかがうようにしながらリボンをほどき、小箱の蓋をあけて中に目を落とす。
「え…………これって」
 零れる吐息。
 おそるおそる指でつまんで取り出したのは、シルバーリング。
「サイズは、あっていると思うけれど」
「じゃあ、ゆ、祐麒くんがつけてくれる?」
「え、あ、うん」
 リングを受け取ると、ほっそりとした江利子の手を握り、指にそっとはめこんでゆく。緩くも無く、きつすぎも無く、丁度良いように見えた。
「…………」
 江利子は無言でリングを装着した手を撫で、俯く。
 なんとも気恥ずかしくなった祐麒は、グラスを手に取ると残っていたワインを飲み干した。体がぐっと熱くなる。
「ちょっと祐麒くん、飲みすぎじゃない? 大丈夫?」
「こ、コレくらい大丈夫ですよ。それに今日は、目出度い日ですから」
 ワインは三本セットで購入してきたのだが、既に一本は空になり、二本目のロゼも半分ほどあけようとしていた。アルコールに弱いということはないが、強すぎるということもない。それでも、もう少しはいけるだろうと判断した。
「もう、仕方ないわねぇ」

 食事の後片付けは結局、江利子がやってくれた。
 綺麗になったテーブルの上に置かれたチーズや野菜スティックをつまみ、ワインを口にしながらテレビなど見ているうちに、時刻は23時をまわっていた。
 時計を見て、江利子が腰を浮かせる。
「いけない、もうこんな時間。そろそろお暇しないと」
 立ち上がる江利子の姿を、祐麒は不思議そうに見上げた。夏休み中で学校は当然休みだし、そこまで慌てる必要はないはずで、いつもであれば当然のように江利子はこの部屋に泊まっていった。そのための道具も、この部屋の中には常備されているし、江利子の家族にも祐麒のことは知られているから、連絡さえきちんとしておけば問題はないはずである。
 やはり、酔っていたのかもしれない。そうでなければ、そんな大胆なことはできなかった。
「それじゃあ祐麒くん、今日は本当にありが――」
 部屋からキッチンに出ようとしたところで、江利子の腕を掴んだ。そしてそのまま、後ろから抱きしめる。
「え――?」
「江利ちゃん、帰したくない」
 江利子の手からバッグが滑り落ちる。
「ゆ、祐麒くん?」
 戸惑いの声が聞こえるが、祐麒には関係ない。身動きが出来ないように、腕ごと強めに抱きしめる。
 江利子の全身から溢れ出る女の匂いが、祐麒を更に酔わせていく。
「あの、で、でも」
 戸惑いを見せる江利子。
 そこで祐麒は、ようやく重要なことに気が付いた。
 抱きしめていた腕を離し、そっと江利子を自分の方に向かせる。僅かに戸惑った江利子を正面から見つめる。
「そういえば江利ちゃん……さっきの返事、聞かせてもらっていない」
「え……あ……」
 赤くなる江利子。
「もし足りないならもう一度……いや、何度でも言います。江利ちゃん、今ならはっきり言えるから……江利ちゃんのことが、好きです。だから、正式に俺の恋人になってください、お願いします」
「っ……」
「ずっと待たせて、ごめん。でも、本当に自分の気持ちに気が付いたから」
 恥ずかしそうにしながらも、祐麒は目をそらさずに伝える。今までの曖昧な関係ではなく、きちんとした関係になるためには、正面から江利子と向き合わないといけないから。
「……本当に、私でいいの? 私、いつも好きなように祐麒くんのこと振り回して、それでいてこんなに情けないのに」
「振り回されるのも江利ちゃんなら楽しいし、俺がはっきりしないから江利ちゃんを悩ませちゃっただけだし」
「それに、色々とみっともない姿も見せているし」
「みっともない姿なんて……あぁ、洞窟の」
「――――っ!!?」
 祐麒が口にすると、首筋まで一気に肌を赤くして、近くにあったクッションを掴んで振り回し、祐麒のことを叩く江利子。
「ば、ば、ばかっ、祐麒くんの馬鹿っ! も、もう忘れて!」
「うわっ、ちょっと、江利ちゃん落ち着いて」
「うぅ……なんで私、祐麒くんに何度も…………を見られるなんて……」
「だ、大丈夫だから江利ちゃん、俺は全然気にしていないし、ほら前にも言ったけれど、むしろ江利ちゃんみたいな子がお漏らしする姿とか見て興奮しちゃったくらいだからっ」
「だーかーらー、そんなカミングアウトいらないってのにーー!」
 クッションを抱きしめて真っ赤になった顔を隠し、大きな声をあげる。祐麒も、咄嗟にとはいえ、さすがに変態的なことを口にしてしまったかと口を閉じ、取り繕うように頭をかく。
「と、とにかく。そんな江利ちゃんの全てひっくるめて好きだから」
 ごくりと、唾をのみこみ。
「……えっと、ど、どうかな」
 江利子の答えを求めるものの、自分でも情けないとしか思えない声しか出てこなかった。
 クッションで顔を隠したまま、しばらく江利子はそのままでいて。
「……もう、馬鹿、祐麒くん」
 小さく呟いた後、首を傾けてクッションの横から目だけを出して。
「どうもこうも……こんな告白、遅すぎるよ、馬鹿」
 そう、答えてくれた。
 心の中が一気に晴れ渡るようだった。
「江利ちゃん」
 手を伸ばしてサラサラの髪の毛を撫でると、そっとクッションを下ろす江利子。そして察したのか、目を閉じて可愛らしい唇を少しすぼめた。
 細い肩に静かに手を置いて顔を近づけ、唇を重ねる。軽く押し付けるくらいのソフトなものだけれど、江利子の震える唇の感触は間違いなく最高のものだった。
「あ……こんな風にお祝いしてもらって、告白されて、初めてのキスもして、最高の誕生日かも」
 照れながら乙女チックなことを言う江利子。
「でも、見た目はどう見たって、女の子同士のちゅーよね」
「うっ……た、確かに」
 せっかくの記念すべき初キスが女装してとは、自分としてもどうなのかと思う。
「でも、私達らしくていいんじゃない。それに、私のためにその格好してくれたんでしょう? 凄く嬉しいし、ホントに可愛いもの」
「あはは、ありがと……」
 喜んでくれたのは嬉しいし狙い通りなのだが、本当にこれでいいのだろうかという疑問がないわけでもない。
「このスカートとか可愛いわよね、どこで手に入れたの……っ!」
「あっ、ご、ごめっ、江利ちゃんっ」
 江利子が硬直したのは、おそらく祐麒の下半身の変化に気が付いたからだろう。先ほどから江利子に抱きつき、夏場の薄い衣服を通じて肌を感じ、特に胸が押し付けられる格好となって反応してしまっていたのだ。
 どうにか腰を引いてばれないようにしようとしていたが、今、それは江利子の下腹部あたりに当たってしまっている。
「ね、ねぇ祐麒くん」
「ごめん、少ししたら、収まると思うから……」
「そ、そうじゃなくて……え、えっちなこと、する?」
「え……江利ちゃん?」
「祐麒くん、ちゃんと好きって言ってくれたし、ね。誕生日に、初めて……ね、ずっと一緒にギュってしていられたらなって……」
 顔だけでなく耳から首筋まで真っ赤になりながら、言う江利子。
 祐麒はそれ以上江利子に何も言わせず、何も言わず、ただ江利子の唇を塞いだ。そのままゆっくりと移動し、そっと江利子の体をベッドの上に横たえる。
 自分が女装しているのが気になるが、今から着替えるというのも間抜けだし、脱いでしまえば変わらない。
 震える手で、江利子の大きな胸に手を伸ばし、服の上から軽く揉む。
「……あ…………」
「い、嫌だったりしたらすぐに言ってね?」
「ううん、そうじゃないの。女の子の格好のね、今の可愛い祐麒くんだったら、怖くないなって思って」
「そ、そう? じゃあこの格好も、良かったのかな」
「そうかも。あ、でも……電気は消してね。は、恥ずかしいから」
「わ、分かった」
 今まで色々と大胆な格好、コスプレをして祐麒を誘惑してきたくせに、いざ本番になるとこんなにも恥じらいを見せるというのが謎だが、やはり本気と冗談では気持ちも異なるということだろう。
 江利子のリクエストを聞いて部屋の電気を消すと、窓から差し込んでくる外の明かりだけが頼りになる。真っ暗ではなく、ほんのりとお互いの姿も見て取れる。
「あ、あと、お願いがあるんだけど……」
「何?」
「や……優しく、してね……」
 恥ずかしそうに顔を横に向け、腕で胸を抱くポーズでそんなことを言う江利子。漫画なんかで見て、本当にそんなこと言う女の子がいるのかとも思ったが、いざ自分が目の前にして受けるとその破壊力は抜群だった。
「うん。好きだよ、江利ちゃん」
 胸から手を離し、まずは江利子の緊張を解くように優しく頭を撫で、キスをする。撫でてあげると、江利子は甘えたように鼻をならす。
「はっ……あ……ん」
 口を離し、次に首筋に口づけをする。江利子の体はまだ震えているし、強張っている。
 祐麒も初めてで緊張していたが、江利子のことを思い、江利子のことを気遣い、優しくそしてゆっくりと江利子の体にのめりこんでいった――

 

 一言でいうならば、夢心地であった。
 初めての経験であり誰と比較しようなどもないが、江利子の肉体は素晴らしく、祐麒は夢中になって江利子を求めた。
 衣服を一枚ずつ脱がせていく毎に、闇に浮かび上がっていく江利子の肌。既に目は闇に慣れ、星明りもあって、電気を消した室内でも江利子の体は目に眩しかった。むしろ人工的な明かりがないからこそ、際立っていたのかもしれない。
 エアコンもつけていない真夏の夜、浮かび上がる汗が星の光を受けて煌めき、江利子の体を美しく浮かび上がらせる。
 一方で祐麒はブラウスの前をはだけ、スカートは捲れあがってと、女装の半裸という状態で、傍から見たら笑える格好だったかもしれない。
「……っ、…………んっ…………、はぁ……」
 熱い吐息、まとわりつくような空気が室内に充満している。
 聞こえるのは、お互いの少し荒い息遣いと、押し殺したような声、そして時折祐麒が何かを舐めるような音。時折、外から車の走る音が重なるが、祐麒達の耳にはお互いの出す音しか聞こえていなかった。
「………………っっ!!」
「江利ちゃ……」
 下で、江利子の体が激しく反り返る。
 次の瞬間には逆に祐麒にしがみついてきて、強く、強く抱きしめられる。腕をまわされた背中に爪が強く食い込む。
 はーっ、はーっ、と唸るような激しい呼吸、瞳からは涙が零れ落ちているのを見たが、江利子はそれを隠すかのように祐麒の首をかき抱き、激しくキスをしてきた。それは愛情を、唇を求めるというよりは、声を押し殺すための行為に思えた。
 江利子の無言の気持ちを受け止め、祐麒はゆっくりと動いた。そのたびに江利子は強く爪を立ててきたし、激しく汗を噴き上がらせ、新たな涙をぼろぼろと流したけれど、悲鳴を上げることはなかった。江利子の中はキツく、熱く、絡みついてきて、ただゆっくりと動かすだけでとてつもない快感を与えてきた。
 それに、豊満な胸はもちろんのこと、体のどこもかしこも柔らかくて、触れ合っている箇所が物凄く気持ち良くて幸せな気持ちになれる。女の子の体は魔法だ。
「はぁっ……くっ……」
 汗で、首にまとわりついてくるウィッグの髪の毛がうっとうしい。
「江利ちゃん、江利ちゃん……」
 名前を呼び、耳にキスをする。
 不器用で、情緒もなく、滑稽だったかもしれない。
 それでも祐麒は至上の喜びを感じていたし、心の底から江利子のことを愛おしいと思った。祐麒の下で必死に、健気に耐えている彼女のことが。
 願わくは、江利子もまた同じように幸福でいてくれたらと思うが、苦しそうな表情で涙を流し息も絶え絶えな様子を見ると、自分ばかり気持ち良いのが申し訳なくなる。
 そう思ったとき、ふと頬に触れる優しい感触。
 目を開ければ。
「……馬鹿、祐麒くん…………っ、私、幸せなんだ…………よ?」
 涙をあふれさせながら、江利子が微笑んで祐麒を見上げて頬を撫でてくれていた。
 その江利子があまりに綺麗で、可愛くて、扇情的で。
 より一層、江利子を愛おしく思うのであった。

 

 心地よい微睡から目覚める。
 昨夜のことが夢ではないことは、隣で可愛らしい寝息をたてている江利子を見てすぐに分かった。
 自分が裸であることにも気づき、現実だということを理解する。髪の毛がまとわりつくと思ったら、服は脱いでいたがウィッグだけはつけているという間抜けな格好だった。ウィッグを取って床に投げる。
 もう一度、隣で寝ている江利子を見る。
 昨夜のことを思い出し、一人で赤面する。
 正直な話、滅茶苦茶気持ち良かった。行為そのものも勿論あるが、素肌同士が触れ合っているだけで、密着するだけで凄く気持ち良いのだ。
 寝ている江利子は当然、裸である。惚れ惚れするような裸体と昨夜は一体化したのだ、どうしても頬がにやけそうになる。
 江利子が寝ていることを確認し、そっと胸に触れてみると、ふよふよ、ぽにょんぽにょんとしていて、もちもちと吸い付くようで、いつまででも触れていたくなる。
「……んっ……あ……」
「うぉっと」
 色っぽい反応を示す江利子に驚き、慌てて手を離すと。
「…………うん……あ」
 ぼんやりと薄目を開ける江利子。
 しばらく見つめていると、ようやく意識が覚醒してきたのか、瞳に精気が出てき始める。乱れた髪の毛を撫でながら、祐麒は口を開く。
「おはよう、江利ちゃん」
「ん…………おはよ……っ、て」
 そこで江利子は状況を理解したのか。
 いきなり真っ赤になったかと思うと、凄い勢いでタオルケットにくるまってしまった。
「江利ちゃん?」
「ばばば馬鹿っ、見ないでっ。お化粧ぼろぼろになってるし、みっともないし」
 あれほど汗をかいて、そして泣いたのだから、確かに化粧は大変なことになっているかもしれないが、もともとさほど濃い化粧をしているわけではないし、寝顔を見ている限り祐麒的には問題ないと思った。まあ、祐麒がどう思おうと、本人にとっては見られたくないのだろうが。
「だ、大丈夫だって、江利ちゃんは何でも可愛いし! それにほら、俺も化粧が酷いことになっているし!」
 女装してメイクをしていたので、確かめていないが祐麒だって大変な状態になっているかもしれない。
 するとタオルケットから、ちょこん、と目を出して祐麒を見てみる江利子。
「…………ぷっ」
「ぷ?」
「ほ、ホント…………ひ、酷い顔……ぷくくっ」
「え、マジで? そんな笑うほど!?」
 タオルケットにくるまりながら打ち震える江利子に、さすがにちょっと狼狽える。
 すると。
「――――う、そ」
「え……」
 と、瑞々しい肢体にタオルケットをかけただけの江利子が体を寄せ、ちょん、と軽く触れるキスをしてきた。
 あまりのキュートな行動、そしてタオルケットの下からちらちら覗いて見える胸の膨らみとか谷間とか太ももとかに思わず欲情し、そのままむしゃぶりつきたくなった。昨夜、見事に結ばれたことだし、今日も休みだし、このままの勢いで今日も、なんて抱きつこうとして。
「はううううぅっっっ!!!?」
 突然、悲鳴をあげて江利子が崩れ落ちた。
 ぴくぴくと、タオルケットの下で痙攣している。
「え……ちょっ、え、江利ちゃんどうしたの!? 何がっ」
「あ……ま、待って……ちょ……触らないで……」
 介抱しようとしたが江利子に止められ、仕方なく様子を見るも心配で仕方がない。しばらく江利子はシーツに額を押し付けて震えていたが、やがてそのままの体勢、すなわち女豹のようなポーズのままタオルの下から口を開く。
「ご、ごめん祐麒くん。ちょっと今日、一日ここで寝ていてもいいかしら……?」
「え? そ、それはまあ、構わないけれど……だ、大丈夫なの?」
「大丈夫じゃないから……」
「え、と……」
「い、い、痛くて……歩いたり座ったり、ちょっと出来なさそうなの……」
「痛いってどこ……あ」
 思い当たり、赤面する。
「う、うぅ~~っ、こ、こんな痛いなんて、人それぞれだとは聞いていたけれど、あ、うぅ……」
 なんとかしてあげたいが、祐麒にはその痛みは分からないし、どうすれば痛みが和らぐのかも分からない。
 困りつつ江利子を見て、それでもどうにかしたいと声をかける。
「な、何か俺に出来ること、あるかな?」
 すると江利子は。
「……ある」
 タオルケットの下から、小さな声で。
「……ギュっ、てしてくれたら、痛くなくなるかも」
 なんて、途轍もなく愛らしいことを言うものだから。
 祐麒はそっと、優しく江利子の頭を撫でて。
「――もちろん。ずっと、ずっと江利ちゃんの側にいるから」
 改めて宣言して。

 愛しい額に唇を触れるのであった。

 

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