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【マリみてSS(祐麒・色々)】乙女はマリアさまに恋してる 第三話③

更新日:

~ 乙女はマリアさまに恋してる ~
<第三話 ③>

 

 

 エルダー選挙も近づいてきて、学園内も随分と浮き立つような空気が目立つようになっていた。
 エルダー選挙とは全学園生の純粋な投票で選出される。エルダーに選出されるためには総有効投票数の75%以上を獲得しなければならず、達成されなければ空席となる。そのため、一回の投票で決まることはなかなかないが、エルダー候補は自分の得票を支持する他の候補に譲り加算させるシステムがあるため、実際に空席となることは少ない。
 正式な立候補を擁立するような選挙ではないが、学園内では非常に関心の高い行事であり、また目立って優秀な生徒というのは大抵知られており、事前の選挙活動や広報活動は必要ない。
 幼稚舎から一貫している学園だから、有名な生徒は他の生徒達からも知られている存在というわけであり、それは即ち薔薇様ということになる。
 今年も当然、薔薇さまである蓉子、江利子、聖のうちのいずれかが選ばれるだろうと思われていたところ、突如ダークホースとして瑞穂の名が上がってきたというわけである。
「確かに、瑞穂さんは素敵な方だと思うわ。瑞穂さんが選ばれたとしても、おかしいことは全くないと思うわ」
 薔薇の館、エルダー選挙の準備をしている中で呟いたのは蓉子だった。
 選挙活動がないとはいえ、全く準備もなく実施できるわけではない。結局、生徒会である山百合会が仕切ることになるのだ。
「え、お姉さまこそがエルダー・シスターに相応しいと私は思っていましたのに」
 蓉子の発言を受けて、祥子が目を丸くして驚く。姉である蓉子が当然のごとくエルダーに選ばれると信じて疑っていないのだ。
「祥子がそう思ってくれるのは嬉しいけれど、こればかりは生徒の皆が選ぶことだから」
「そうですか……でも」
 と、祥子はまだ文句を言いたげだ。そこまでの信頼と信望を蓉子に寄せているのだと思うと同時に、拗ねている祥子がなんだか可愛く見える。普段、祐麒に対しては厳しくも優しい姉の姿を見せているだけに、妹として我が儘を言ったり甘えたりする姿が新鮮に映る。
「祐紀、何がおかしいのかしら?」
「え、あ、いえなんでもありません、お姉さま」
 膨れた祥子に八つ当たりのように睨まれて首をすくませる。
 本気で怒っているわけではなく、照れ隠しであることが見え見えなので怖くはないが、何も反応しないとそれはそれで機嫌を損ねてしまう。
「まあ、あたしは蓉子でも瑞穂さんでも、どっちでも構わないけどね」
「そうそう、私達には関係のないことだもの」
 当事者であるはずの、白薔薇さまの聖、黄薔薇さまの江利子が他人事のように言う。
「あたし達三人の中だったら、どう考えたって蓉子でしょう。元々、あたし達が選ばれるはずないんだから」
 あっけらかんと言い放つ聖。

 エルダー・シスターとは全生徒の手本になるべき生徒を選出するものである。薔薇さまとしてみれば、聖も江利子も蓉子と人気を分かち合っているが、手本となるべきと言われれば確かに蓉子が適任だろうとは思う。
 何せ真面目で成績優秀、眉目に優れ、面倒見がよくて世話焼き。
 蓉子に比べてみれば聖は少し性格が軽すぎる。女子生徒を周囲に侍らせて談笑したり、食事したり、見るからに行動がナンパなところが散見される。それが本質ではないと思うが、目に見える言動というのは重要だ。
 江利子は能力だけ考えたら三人の中でトップかもしれないが、何せやる気が感じられない。退廃的な雰囲気、ミステリアスな空気が魅力的と言われるが、だからこそ模範となるべきエルダーには合わないように思える。
 本人達も自覚しているようだし、更に言えば面倒なことは蓉子に押し付けてしまえ、といった考えが見え見えなのだ。
「まったく……あなた達のファンの子を裏切るつもりなの?」
「そんな気はないよ、投票してくれたら嬉しいし、そこはきちんと蓉子に譲渡するし」
「裏切るも何も、私よりも蓉子の方がエルダーに相応しいって、令だって思うでしょう?」
「えっ!? そそ、そんなことないですよ。私はやっぱりお姉さまの方が」
 いきなり話を振られて、あわあわとしながら答える令だったが、微妙に視線が泳いでいるのを江利子は見逃さない。それでもあえて突っ込まず、令の隣に大人しく座っているお下げの少女に流し目を送る。
「……由乃ちゃんは、どう思うかしら?」
 体調も良いということで、このところ欠席なく参加している由乃。江利子に見つめられて僅かに緊張したようだが、小さくつばを飲み込んでから口を開く。
「そうですね……私は、江利子さまがエルダーになられてもおかしくはないと思います」
「そ、そうだよね、由乃もそう思うよねっ」
「へえ、ありがとう、嬉しいわ由乃ちゃん」
 由乃の発言に無邪気に喜ぶ令、そして意味ありげに微笑む江利子。
 由乃の隣で発言を聞いていて、祐麒はドキドキしていた。由乃の発言内容は江利子を推しているように聞こえるが、実際は単に否定していないだけ。なぜこんなにもスリリングな関係を築いているのか、近くにいて震えそうになる。
「それじゃあ大トリ、祐紀ちゃんのご意見は?」
「へ?」
 聖に呼ばれて顔をあげると、全員が注目してきていた。
「わ、私ですかっ?」
「そうそう。誰こそがエルダーに相応しいと思う?」
 聖がにやにやと笑いながら見ている。
 江利子は妖艶な流し目を送ってきている。
 蓉子は真剣な表情で見つめてきている。
 適当なことは言えない。ごくりと、唾をのむ。
「え……と、蓉子さまは先生方にも私達生徒にも凄く信頼されて、面倒みてくださって、頼りになって尊敬しています。聖さまは先輩ですけれど凄く親しく下級生にも接してくださって、だから人気もあって、困っているとこっそり助けてくれたりして格好いいと思います。江利子さまは何でも出来る方で、難しいことでもなんでもないことのようにサラリとこなされて、とても素敵だと思います。ですから、えぇと、どなたがエルダーになられても全くおかしくないというか、むしろ皆さんにエルダーになって欲しいというか……」
 我ながら、何という八方美人的発言だと思わなくもないが、ここで誰か一人を決めるなんてこと出来るわけもなかった。
「なるほどなるほど、そうやって言われると悪い気はしないわねぇ」
「そうね、祐紀ちゃんに推薦されたら、受けても良いと思ってしまうわね」
「そうだ、もしあたしがエルダーに選ばれたら、ご褒美に祐紀ちゃんのちゅーが欲しいな」
「えっ」

 絶句する祐麒。
「何を仰っているんですか白薔薇さま、どうして祐紀がそのようなことをしなくてはいけないのですか。祐紀の唇は清らかなもの、そんな、白薔薇さまと接吻だなんて、祐麒が穢れてしまいます!」
 立ち上がり、激しく反論する祥子。
「穢れるって、ちょ、それはさすがに言いすぎじゃない祥子」
「いいえ。だって聖さまってば、いつも沢山の女の子を侍らせているじゃありませんか。その娘たちにしていただけばよろしいでしょう」
「うーん、それも良いけれど、祐紀ちゃん一人のちゅーの方が魅力的だなぁ」
「駄目です、絶対に駄目ったら駄目です!!」
 激昂した祥子は祐麒も立ち上がらせ、その手を掴んで引っ張っていく。皆が見ている前で扉を開け、そのまま外へと飛び出していく。まさか逃げ出すとまでは思わなかったのだろう、聖たちも呆れたまま祐麒と祥子が出て行くのを見送っていた。
 薔薇の館を出てしばらく歩いたところで、ようやく祥子は足を止めた。
「あの、お姉さま。聖さまも多分、ご冗談で口にしただけかと思いますので」
「いいえ、あの方は本気で祐紀の可憐な唇を狙っているのよ。大丈夫、あなたの純潔は姉である私が必ず守るから、安心していいのよ」
 先ほどまで吊り上げていた目から一転、穏やかな優しい顔つきになると、祥子はふわりと祐麒を抱きしめてきた。
「おおおお姉さま、は、恥ずかしいですよっ」
「いいじゃない、これくらい……だって、祐紀が寮に入ってからずっとこんな風に抱きしめてあげられなかったもの。祐紀も、寂しかったでしょう?」
 どう考えてもシスコン気味の祥子が『祐紀』分を欲しているようにしか思えなかったが、反論するわけにもいかず、抱かれるまま立ち尽くす。こればかりはどうしても慣れようもない。いつも祥子からは良い匂いがするし、加えて押し付けられる胸。いつも上品に優しく包み込むような感じだからまだマシだが、もしもギュっと強く抱きしめられたら本気でヤバい。
「あの、お姉さま。そ、そろそろ」
「駄目よ。まだ祐紀分が補充しきれてないもの」
「ほええぇっ?」
 どうにもこの世界の祥子は、祐麒の知っているかつての祥子と違い過ぎて戸惑う。
 仕方なく今しばらくつきあって、祥子に抱かれるまま突っ立っていると。

「――あら」
 そんな声が聞こえたので軽く首を動かして見てみると、瑞穂が見ていた。
「あわわっ、み、瑞穂お姉さまっ!?」
「え?」
 さすがに他の人に見られていると知ってまで、祥子も抱き続けてはいない。少し恥ずかしそうにしながら、それでいて惜しむように祐麒から身を離す。
「ご、ごめんなさい。お邪魔したみたいで」
「いえそんな、邪魔だなんてっ!」
 気まずそうに目をそらす瑞穂に、祐麒は慌てて否定する。
「む……何よ、祐紀は瑞穂さまに見られたら困るのかしら?」
「え? 祥子お姉さま?」
 見れば、なぜか腕を組んで不機嫌さを隠そうともしない祥子。
「だって、瑞穂さまがお見えになったとたん、慌てて離れて。おまけに、言い訳までして」
 これはもしかしてもしかしなくても、焼きもちというやつだろうか。祥子の姉バカぶりもたいしたものだ。
「ごめんなさい、えぇと、祐紀ちゃんのお姉さまの小笠原祥子さん、ですよね。私が悪いの、祐紀ちゃんを怒らないであげてくださる?」
「そんな、瑞穂さまは何も悪くないじゃないですか。それを言うなら私が……」
「でも祐紀ちゃんは……」
 瑞穂も困ったようにフォローしてきたが、それに祐麒が反応。結果、二人がお互いをかばい合うような形となり、祥子の機嫌はますます悪くなっていく。
 そうして不機嫌度がMAXとなった祥子は。
「――――」
 ぷい、と顔を背けたかと思うと、そのまま無言でその場を離れて歩き出した。要は、拗ねてしまったわけである。
「あ、ちょっと待ってくださいよ祥子お姉さま」
「祥子さん、私たちは別にっ」
 慌てて祥子の後を追いかけはじめる祐麒と瑞穂。

 早足で歩いて行く祥子を追いながら声をかけるが、完全に拗ねてしまったのか祥子はなかなか聞いてくれようとしない。
 三人の奇妙な追いかけっこは続き、とうとうグラウンドの横まで出てきてしまった。後ろから背中を見るに、祥子も怒りの収めどころを失っているように見える。おそらく、自分の小さな嫉妬が原因だと気付いているのだろうが、バツが悪くて自分から頭を下げるようなことが出来ない。
 なんとなくそんな祥子の考えが想像できて、申し訳ないが少しおかしくなる。ここはやはり、『妹』である自分がどうにかしてあげるべきなのだろう。恥ずかしいが、仕方ない。
「……さ、祥子お姉さまぁ…………」
 出来る限り、捨て猫が甘えるようなイメージで声を出す。ピクリと反応した祥子が、ちらりと目を向けてくるのを逃さず、更に捨て犬が飼い主を見つめるような瞳で祥子のことをじっと見る。
「うっ…………」
 祥子の足が止まる。
 ゆっくりと、半身を祐麒の方に向ける。
「な……何かしら、祐紀?」
 姉の威厳を出す祥子だが、それでも心が揺れているのはなんとなく分かる。
「はい。あの、ですね」
 祐麒の方から頭を下げる。それで、この小さな姉妹喧嘩も終わりになる。祥子はこうして時々拗ねて怒っては祐麒を困らせ、そして和解することを定期的に行うのだ。コミュニケーションの下手な祥子らしいといえば、祥子らしいかもしれない。
 さて、何と言ったらよいのだろうかと思ったその瞬間。

「――危ない!?」
 短い叫びに顔を上げる。
 一瞬の後に目がとらえたのは、祥子へと向かって飛んでくる黒い塊。
 考える間などなく、反射的に祥子へと駆け寄る。同時に、後ろにいたはずの瑞穂が祐麒の脇を、スカートを翻して追い抜いた。
「お姉さまっ!!」
「え、ゆ、祐紀?」
 驚いている祥子の頭を抱えるようにして抱く。
 次の瞬間、祐麒はおそるべきものを目にした。
「…………っ!?」
「ふぅ……どうやら、間に合ったみたいね」
 そこには、ソフトボールを手に持った瑞穂の姿。
「う……そ……」
 思わず呟く。
 祐麒も見ていた。グラウンドで練習しているソフトボール部員の打球が向かってくるのを。高々と舞い上がったフライではなかった。物凄いライナーというわけでもないが、それなりに勢いのある打球を素手で受け止めるなんて。
 瑞穂は打球を手で受けた瞬間、打球の勢いを殺すように腕を後ろに引いた。それだけではない。そのまま止まることなく一回転することで打球の力を逃したのだ。
 さながらそれはバレリーナのごとく。
 長い髪の毛が瑞穂に従ってしなやかに舞い、スカートがふわりと翻った。だが、荒々しさは無く、むしろ華麗ですらあった。
「うを……マジかよ……」
 思わず、素でそんな風に呟いてしまうほどだった。
「大丈夫だったかしら祥子さん、祐紀ちゃん……て」
 ボールを手にした瑞穂が、きょろきょろと周囲に目を向ける。つられて祐麒も周囲の様子を見てみると、まるで時間が止まったかのように誰もが動きを止め、黙りこくっている。そしてその視線は、祐麒達の方に向けられていた。

 しばらくして。
 ざわめくような感じがあったかと思うと、爆発したかのように歓声が轟いた。
 グラウンドにいたソフトボール部員が、周辺にいた生徒達が興奮したように駆けてくる。
「す、すごかったです瑞穂さまっ! 格好良くて!」
「すみません、わ、私が打ち損じてしまったせいで!!」
「まるで舞踏を見ているようでしたわ、瑞穂さまの動き!」
「わ、ちょ、ちょっと、皆さん?」
 一気に周囲を取り囲まれ、わたわたし出す瑞穂。
 瑞穂だけではない、祐麒たちの周りにも多くの人が集まっている。
「祐紀さんも素晴らしかったですわ。祥子さまのこと身を挺して守ろうとされるなんて!」
「妹の鑑みたいなものね。祐紀ちゃんも凄い反応だったね、さすがだわ」
「うーーーん、祥子さんが羨ましいっ!!!」
「うわぁ、ふぇ、みみみ皆さんっ!?」
 あまりの勢いと興奮ぶりに、祐麒も引いてしまう。
「わ、私は別に何も、ただ祥子お姉さまを守ろうとしただけで、実際に守ってくださったのは瑞穂お姉さまですので」
「いえ、よく考えれば祐紀ちゃんのように身を守ることを優先させるべきだったわ。私はたまたまうまくいったから良かったけれど、失敗したら意味なかったもの」
「そんな、私は何も考えずに動いちゃっただけで」
「でも、それこそ大切なお姉さまを守りたかったから、自然とできたことでしょう」
 そんな風にやり取りをしていると。
「瑞穂さまも祐紀さんも、あれだけ凄いことをされたのに慎み深いですわね……」
「本当、謙虚でいらっしゃいますわ」
 なんて声が聞こえてきて、くすぐったくなる。本当に、ただ必至なだけだったのだが。
 ざわめきも徐々に落ち着いてくると、それまで呆気にとられていた祥子がようやく事情を理解したようだった。
 背筋を伸ばし、祐麒に相対する。
「――ありがとう祐紀、私のことを守ろうとしてくれて」
「いえ、そんな」
「でも、だからって貴女が危ないことをしては駄目よ。妹を守るのが姉なのに、これじゃあ反対じゃない。もしも祐紀に何かあったら、私は」
「い、いやだなぁ祥子お姉さま。こうして皆無事だったんだから、いいじゃないですか」
「ふぅ、貴女って子は……そうね……」
 硬い表情をしていた祥子だったが、ようやく僅かに口元を緩めた。
 続いて、祐麒の肩に置いていた手を離すと、瑞穂へと向き直った。
「瑞穂さま。私達を……いえ、祐紀のことを助けていただいてありがとうございました。もし、瑞穂さまに助けていただいていなければ、祐紀は大怪我をしていたかもしれません」
 お礼の言葉を述べると、深々と頭を下げる祥子。長い黒髪が地面につくのではと思えるほどである。
 祥子が頭を下げる姿を見て、周囲の生徒達が驚く。助けてもらったしお礼を言うのは当たり前なのだが、祥子が頭を下げる姿なんて見慣れないし、しかもこんな大勢の目の前である。驚くのも無理はない。
「頭を上げてください、祥子さん。祐紀ちゃんも言っていた通り、みんな無事だったんだから、それでいいじゃないですか」
「はい……ありがとうございます」
 瑞穂に言われて頭を上げるも、再びお礼を告げて軽く頭を下げる祥子。瑞穂は居心地が悪いようにそわそわして落ち着きをみせない。
「ふぅ、良かったですね。あ、そういえば」
 ふと、気になったことを思い出す。
「ん、どうしたの、祐紀?」
「いえ……さっきの打球、ホームランですか? 凄かったですよね、こんなところにまで飛ばすなんて!」
 元・野球部の性。ついついそんなことを言ってしまうと。
 なぜか静まる周囲。
「あ……あれっ?」
 何かやってしまったかと、右、左、と首をまわすと。
「…………ぷっ、ゆ、祐紀、貴女……」
 肩を震わせ始める祥子。
「え、な、なんで笑いだしているんですか祥子お姉さまっ? あれ、み、瑞穂お姉さままでっ!?」
「ご、ごめんなさい祐紀ちゃん。でも、ふふっ、うふふふふっ」
 瑞穂まで口元を手で隠しながら上品に笑い始める。
 それだけではない。いつの間にか、周囲を取り囲んでいる他の人達までいっせいに笑い始めたのだ。
「あははっ、この状況でホームランって……おかしいの祐紀ちゃん!!」
「大体、さっき打ち損ねたって言ってたじゃない」
「天然さんなのかしら? いや~、これは大物になるわ!」
「あ……あの……えと……」
 皆から一斉に笑われて、真っ赤になる祐麒。
 そんな姿を見られて、また、「可愛い」とか弄られ出す。

 

 瑞穂、祥子、そして祐麒を中心とした騒動から少し離れた場所から様子を見ていた静は、隣に立つ同級生にちらと視線を送る。
「いいのかしら三奈子さん、絶好のスクープじゃないの?」
「たははっ、出遅れちゃったから。いくらなんでも、今からあの中心に突っ込んではいけないでしょう」
 祐麒のルームメイトでもある静と三奈子。
 二人の温かな視線は、可愛らしい下級生へと向けられている。
「でも、祐紀ちゃんが来てからというもの、退屈しなくていいんじゃないかしら?」
「そりゃもう、あんなに美味しい子はなかなかいないわね」
 ポニーテールを軽く振り、三奈子は微笑む。
「……でも、これでエルダー選挙も本格的に面白くなってきたかもね。私が部長の代にこんな風になるのも運命ってやつかしら。さすが私!」
「別に、瑞穂さんや祐紀ちゃんが来たのは、三奈子さんの手柄でもなんでもないでしょうに偉そうに……」
 はふぅ、と息を吐いて肩をすくめる静。
「いずれにせよ、エルダー選挙が楽しみね」
「そうね。それに異論はないわ」
 二人の視線の先には、この春からリリアンに新風を送り込んでくれている二人の生徒。

 エルダー選挙は、間近に迫っていた。

 

第三話 ④につづく

 

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