当サイトはアフィリエイト広告を利用しています

ノーマルCP マリア様がみてる 蓉子

【マリみてSS(蓉子×祐麒)】怪我の功名?

更新日:

 

~ 怪我の功名? ~

 

 

 大学二年生が始まった。
 一年生の時に選んだ講義は全てきっちり単位を取得して余裕はあるけれど、色々と学びたいことがあるから、二年生でも可能な範囲で様々な講義を選択している。
「うわ、ちょっと水野さん、これって一週間で休みがないじゃない」
 隣から覗き込んできた友人の氷野せりかが驚きに目を丸くしている。
「ちゃんとあるわよ、日曜日」
「いやいや、ちゃんと一年の時に単位取っているんだし、一日くらい休みを作れるでしょう。あるいは午前中か午後のみとか。これびっしりじゃない」
「びっしりってほどでもないわよ。水曜は午後イチの講義までだし、土曜は午前中まで」
「でもそれ以外、四限、五限までびっしり……」
「時間を余らせても勿体ないし、高い授業料払っているんだもの、受けないと損でしょう?」
「いやー、世の大学生の多くはそんな風には考えていないと思うけどね。せっかく大学生になったんだから遊ばないとって」
「それって、おかしいわよね。お金を払って講義を受けているのに、自ら手放してしまうなんて。親御さんがどれだけお金をかけているか、知っているのかしら」
「正論だけに耳が痛いね、あはは……」
 乾いた笑いを浮かべるせりかはミルクブラウンで派手な髪形をして、体のラインがよくわかるような服装をしている。そんな格好をしながら蓉子のことを変わり者のように見ているが、実はせりかも土曜日以外は変わらないような講義を選択している。見た目は派手で遊んでいるようにしか見えない女子大生だが、講義は真面目に受けているし、蓉子ともウマが合う。
「でもこれじゃあ、祐麒くんとデートする時間、取れないんじゃないの?」
「それくらい大丈夫です」
 ぷんと膨れる蓉子。
 そもそも祐麒は今年高校三年生ということで受験生、そうそう遊びに現を抜かしていられる立場ではない。それはもちろん、蓉子だってたくさんデートをして一緒の時間を過ごしたい思いは持っているものの、だからといって我が儘を言うつもりは無い。大切なのはお互いに相手を思いやることではないだろうか。
 そういうこともあって、一週間を講義で埋めたというのも心の奥底にはあったのかもしれない。
「受験生だったらなおさら、春のうちくらいは遊んでおいてもいいんじゃない?」
「駄目、それに慣れてしまうと後で大変でしょう」
「相変わらず真面目ねー」
 大学の構内、中庭のベンチに一人分の距離を置いて座っている蓉子とせりか。その距離感が適度で居心地が良い。
「でもさー」
 髪の毛をかきあげながら、せりかは口を開く。
「セックスしたくならない?」
「っ!?」
 せりかのあけすけな発言に、思わず体がびくりと反応する。
「そういえばさ、お互い自宅だとやっぱりラブホですることが多いの? あー、だからバイト頑張るのか」
「あ、いえ、その」
「ちなみにさー、祐麒くんってどの体位を好むの? 前から気になっていたんだよねー、やっぱり正常位かな性格的に。でも意外とバックや騎乗位なんかも好きそう」
「あ、あの、ちょっと……」
「いいじゃない、他に誰も聞いていないしさ。あそうか、先にあたしが言わないとずるいよね。あたしはそうねー、貝合わせはあれ疲れる割にイマイチ気持ちよくなれないから、それよりも正面から抱き合ってこう、おっぱいの柔らかさを感じられる……あ、あたし今女の子と付き合っていて、バイだって前に教えたよね?」
 ガンガンと凄い勢いで喋ってくるせりかに、たじたじになる蓉子。勢いもそうだが、そもそも話の内容的に押し返せるものではなかった。
「ま、待って、そうじゃなくて氷野さん、私――」
 真っ赤になりながら、振り絞るようにしてようやく口にする。

「――――えええっ!? まだエッチしてないのっ!?」
「こ、声が大きいわ」
 慌ててせりかの口を塞ぐと、驚愕に見開かれた瞳が蓉子を捉えていた。
「……いや、だって付き合ってからもう半年以上たって、ありえないでしょうそれ。今時の中学生だって、一か月もすればとっくにやることやってるわよ」
「そ、そんな……わ、私達は真面目に交際しているの」
「それは何、セックスするのは不真面目とでもいうの?」
「そういうわけじゃないけれど、人には人のペースがあるし……」
「もしかして、したくないの? それなら、あたしが先に祐麒くんの童貞もらってあげちゃおうか?」
「だだだだめですっ! 祐麒くんには私がしてあげるんだから、私だってしたいんだからっ!!」
「――――へぇ」
「あ…………」
 自分の発言に真っ赤になって俯いてしまう蓉子。
 そう、蓉子だって別に何もしたくないわけではないのだ。
 メールして、電話して、そしたら実際に本人に会って一緒に居たい。
 手を繋いで触れ合いたい。
 キスをしたい。
 抱きしめて欲しい。
 そこまできたならば、その先を望むことだって当たり前のこと。真面目だ、お堅い、なんて言われていても蓉子だって普通の女の子なのだ、好きな人と結ばれたいと思うし性欲だってある。
 ただ、口や態度に出して求めることは性格的に出来ないけれど。
「いやいや~、そういうのはちゃんと伝えないと。あたしなんて、問答無用で服脱がせにかかっちゃうけれど」
「それじゃあ、ただの痴女じゃない。とにかく、私達は私達の進み方があるの」
 怒ったのか、はたまた照れ隠しか、蓉子はベンチから立ち上がるとスタスタと去って行ってしまった。
 不器用な友人の背中が遠ざかっていくのを見届けながら、せりかは思案する。
 つきあってみれば分かるが、蓉子は確かに真面目だけれど決して冗談を理解しないわけではないし、茶目っ気だってある。私服のセンスが意外とダサいとか、考え方が変に古い部分があって逆に面白いとか、色々と魅力的な側面がある。
 しかし、他の仲間たちからの蓉子評は大抵が『生真面目でお堅い』、『融通が利かない』、『遊んでいると馬鹿にされそう』、なんてものばかり。それらはあくまで表面的なものでしかなく、大学における蓉子が見せる姿がそうなのだから仕方ないが、もっと蓉子という人間の魅力を知って欲しいとも思う。
 あんな生真面目な委員長キャラのくせに、年下の高校生の彼氏がいて、その彼氏の前では大学で見せないような可愛い表情、仕種を見せ、間抜けなドジっ子成分すらほのめかしているというのに。
 蓉子を見ていると勿体ないと思う。
 あのキャラクター的に、年下からは頼りにされるだろうし、本人も面倒見が良いから慕われるだろう。
 しっかりして几帳面なところは年長者からも信頼を得られるだろうし、大人受けも良いことだろう。
 ただ、同年代はどうか。
 完璧に見えるキャラクターだけに、頼られはするが、距離を置いた友人づきあいに留まってしまっているのだ、今のところは。だけどやっぱり大事なのは同期の付き合い、何かあった時気さくに連絡を取り、頼ることが出来るのも同期の仲間だろう。
 そういう友人づきあいがもっとできれば良いのにと思うが、意外とその辺、蓉子は不器用である。
 どうにかしたいという気持ちはあるけれど、そこまでするのは余計なお世話というか、踏み込み過ぎだろうという思いもあるから手は出さない。ただ、なんとなく勿体ないなぁとは思うせりかなのであった。

 

 友人が胸の内でそのような心配をしているなどと露知らず、蓉子は大学生生活を過ごしてゆく。せりかの思いとは裏腹に、蓉子は蓉子として満足のいくキャンパスライフを送っており、特別な不満も抱いてはいなかった。
「水野さん、この問いが分からないんだけど、教えてくれないかしら」
「どれ? ああ、これは――」
 ノートを貸すということには抵抗あるが、教えてほしいと訊いてくる場合には嫌がらず教えてあげる。そうすることで、自分自身の勉強にもなるからだ。
 せりか以外にだってもちろん友人は出来ているし、アルバイトもして、素敵な恋人もいて、これでどこに不満を持てばよいというのか。
「――っ」
 そんなある日、体育の授業で蓉子は足を捻ってしまった。軽い捻挫という感じで大事はないが、歩くときに少し痛みがはしって顔をしかめてしまう時がある。
「大丈夫、水野さん?」
「講義中は座っているし、問題ないわ」
「でも帰りとか辛くない?」
「そりゃあ、ちょっとは痛いけれど歩けないわけじゃないし、大丈夫」
 とはいうものの、時間が経過するほどに少しずつ痛みは増してくる。我慢できないほどではない、歩けないほどではないというのは間違いではないのだが、辛くないというわけでもない。それでも気丈で我慢強い蓉子が表情に出すことはない。集中が切れそうになるのを堪えながら午後の授業を受け、一日を終える。講義を終えた学生たちはそれぞれサークルやアルバイト、友人との遊びなど、思い思いの方に出かけてゆくが、幸い蓉子は特にサークル活動もなく、バイトのシフトも入っていなかったのでまっすぐ帰ることが出来る。怪我をしている今は、その方が有難い。
「本当に平気? タクシーでも呼ぼうか」
「大げさね、なんとか帰るくらいは出来るわよ」
 意外と心配性なせりかが尋ねてくるが、蓉子は首を振る。タクシーなんて勿体ない、定期があるのだから電車で帰ればよいこと、歩くといって何十キロもあるわけではないのだから。
 ゆっくりと、なるべく足に負荷をかけないように歩いて校舎を出て、大学の正門へ向かっているその時。

「――――蓉子ちゃんっ!」
 よく聞き慣れた声が耳に届いた。
 まさか、こんな時間にこの場所で耳にするはずがないと戸惑いつつ、声のした方に顔を向ける。
「ゆ、祐麒くん?」
 間違いない、祐麒が駆けてくるのが目に入った。
 驚いたのは蓉子だけではない、近くにいた他の学生達も少しびっくりしているようだ。いきなり大声を出し、勢いよく駆けてくる祐麒は、花寺学院の学生服姿だったからだ。
 息せき切って駆け寄って来た祐麒は、蓉子の前で止まると心配そうな表情で蓉子の顔を、続いて足を見た。
「ど、どうしたの急に?」
「どうしたもこうしたも、蓉子ちゃんが足を怪我したって聞いたからびっくりして」
「え、私そんなこと……あ、もしかして」
 隣に立つせりかを見る。
「ああ、うん、あたしが知らせたんだ」
 あっさりと頷くせりか。
「水野さんのことだから、どうせ家に帰りつくまでは知らせないでしょう? 変に心配させちゃうからとか変な気を遣って」
「それは……で、でも、だったら来るってメールしてくれても」
「何度もメールしたし、電話もしたけれど繋がらないから、滅茶苦茶心配になって来たんですよっ」
「えっ……あ、講義中はサイレントにしていたんだ」
 慌てて携帯を取り出して確認すると、確かに祐麒からのメール、および着信が沢山入っていた。足の怪我に気を取られて、携帯のモードを戻すのを忘れていたのだ。
「ごめんなさい、たいしたことないのに、足を運んでもらっちゃって」
「たいしたことありますよ、足、引きずっているじゃないですかっ」
「そ、そんな、祐麒くん」
 しゃがみこんで蓉子の足首のあたりに触れる祐麒。
「あ、ほら、腫れてきていますよ」
「だ、大丈夫だから……」
 撫でられて恥ずかしくなる。
 さらに、ここにきて。
「あれっ、水野さんどうかしたの?」
「何々、何かあったの?」
 と、見知った同じ学科の生徒達にも見つかってしまった。どうしようかと考える間もなく、彼女たちは祐麒に興味を持つ。
「この子、水野さんの弟さんか何か?」
「高校生よね、かわいーっ」
「えっ、ちょっ……」
 学生服姿の祐麒を見て、そんな声をあげる女子学生。
「今日はお姉さんを迎えに来たの?」
「お姉さん思いなんだ、偉いわねー」
「いえ、あの」
 と、女子大学生に迫られて困惑する祐麒を見て、胸がもやっとする蓉子。明らかに困っているはずなのに、女の子に囲まれて喜んでいるように思えてしまうのだ。
「いや~、祐麒くん、可愛いから女子大生のお姉さんにモテモテねぇ」
 隣で煽るような口調でせりかが言うが、そんな単純なことにさえ乗ってしまう。女子学生達から祐麒を離そうと足を踏み出す。
「すみません、違うんです俺は」
 女子学生達の質問の矢や好奇の視線の隙間をどうにかついて、祐麒は口を開いた。
「弟じゃなくて、俺は蓉子ちゃんの彼氏ですからっ」
 胸を張り、堂々と宣言する。
 頬が少しばかり赤くなっているのは、彼氏だと自分で言うのがはずかしいわけではなく、女子大生に囲まれている緊張感からくるものである。
 そして、祐麒の言葉を耳にした女子大生達は。

「えーっ、水野さんてカレシいたんだ!?」
「てゆうか、年下? 高校生の? 超以外なんですけどっ」
「いや待って、今、『蓉子ちゃん』て言っていたけど、何、『蓉子ちゃん』て呼ばれているの??」
 途端に激しい反応を見せるが。
「でも本当に? 弟くんが冗談言っているだけじゃないの」
 中の一人はまだ疑うような目をむけてくるので、蓉子はむっとなって彼女に向かう。
「冗談じゃありません、祐麒くんは、私の彼氏なんだもん!」
 ぎゅっと祐麒の学生服の袖をつまみながら言うと。
「…………なんだもん?」
「え、あ、いえ、とにかく、本当に彼氏なんです」
 途端に頬が熱くなってくる。
「うわ、真っ赤になって、ちょ、水野さんってこんな可愛いキャラだったの?」
「普段はクールだけど、年下彼氏の前では超デレてるってこと?」
「意外な面があるのね……ね、いつから付き合っているの?」
「え? きょ、去年の……」
「あー、だから告白全部断っていたんだ。ただの真面目な委員長キャラだと思っていたけれど、まさか彼氏がいるなんて、ヤルことはヤッているんだ」
 なぜだか盛り上がる女子大生達。
「そうよ、あたしなんてしょっちゅう、惚気話を聞かされるんだから。それも、超甘ったるくて胃もたれしそうな」
 ここぞとばかりに話に乗ってくるせりか。
「氷野さん、そんなことないでしょう」
「えー、そうかな?」
「そ、そうよ……しょっちゅうなんて、たまに、くらいでしょ?」
「ぷっ…………!!」
「な、何が可笑しいのよ。本当のことでしょっ」
「あはっ……あははっ、水野さん、これ以上あたしを笑わせないでよっ」
 腹を抱えて体をくの字に折り、笑いを堪え切れなくなって噴き出すせりか。なぜせりかが笑っているのかわからずに首を傾げる蓉子。
「あの蓉子ちゃん、それよりそろそろ行きましょう。足もちゃんと病院で診てもらわないと駄目ですよ」
「祐麒くん、お姫様抱っこで連れて行ってあげなよ」
「そんなの、恥ずかしいから、やめて」
「でも確かに歩くの辛いですよね。おんぶにしましょうか?」
「それも恥ずかしいからっ。大丈夫、歩けるから」
 結局、恥ずかしがってどうしてもお姫様抱っこもおんぶも許容してくれなかったので、祐麒とせりかの二人でサポートしながら近くの病院まで行くことになった。
 足は軽い捻挫で、しっかりと湿布とテーピングをすることで痛みも和らいだが、祐麒は蓉子の自宅まで送っていくことにした。
「……今日はごめんね、色々迷惑かけちゃって」
「迷惑なんかじゃないですって。それより、教えてくれない方が心配しますよ」
「う……ごめんなさい」
 怪我した足をかばうようにゆっくりと家までの歩を進める。せりかはバイトがあるので病院に着いたところで別れており、今は二人だけ。もしかしたら気を利かせてくれた部分もあるのかもしれない。
 不思議なもので、ゆっくり歩いていた筈なのに、家の前まで到着するのはあっという間だったような気がする。
「送ってくれてありがとう……それじゃあ、また」
 名残惜しいのはあるけれど、こういうところでうだうだするのは好きではない。すっと離れて行こうとしたところで、祐麒に腕を掴まれる。
「蓉子ちゃん」
 祐麒が周囲に目を配り、そして素早く蓉子に顔を寄せてきた。
「ん……」
 そっと目を閉じ、受け入れる蓉子。
「――そ、それじゃあまた、メールしますね。足、無茶しないでくださいよ」
「うん、またね」
 手を小さく振って別れる。
 まだ足に痛みはあるけれど、思いがけず祐麒と会って話すことも出来たし、祐麒の優しさに、祐麒が蓉子を思う気持ちに触れることが出来、文字通り怪我の功名かなんて考える蓉子だったが、実はそれだけにとどまらなかった。

 

 翌日、大学構内にて。
「ねえねえ水野さん、年下の彼氏を捕まえる方法、教えてくれない?」
「そっ、そんなこと言われても困るわ」
「えー、いいじゃない、けちけちしないでさ、少しくらい」
「だって、捕まったのは私の方だし……」
「ぷっ……」
「水野さん水野さん、これから水野さんのこと『蓉子ちゃん』って呼んでもいい?」
「な、なんで、そんな」
「だって、彼氏にはそう呼ばれているんでしょう?」
「そうだけど、そ、それは、祐麒くんだからそう呼ばれたいのであって、だから」
「わー、彼氏だけに許す特別な呼び方ってこと? まー確かに、水野さんは『水野さん』か、『蓉子さん』って感じよねー」
「蓉子さん、蓉子さん、今度学科の女の子達で女子会やるんだけど、参加しない? 蓉子さんの恋バナ、聞きたいなー、氷野っちの言うところの『アンジェリーナのモンブランよりも劇甘な惚気話』を是非聞かせて欲しいわ!」
「そ、そんな甘い話なんてした記憶ありませんっ」
「本当に? あ、それじゃあカレシ……祐麒くんだっけ、も連れてきてもらって、白状させちゃおかな」
「そんなの、だ、駄目駄目っ!」
「なんでー、私達が『お・も・て・な・し』、してあげるのに」
「ゆっ、祐麒くんは私の彼氏なんだから、そんなの駄目なのっ!」
「ぷっ…………く、くくっ……あ、あははっ」
「――――???」
 と、なぜか知らないがやたらと同じ学科の女の子たちが話しかけにやってきた。今まで全く接点がなかったわけではないが、それにしても随分と態度も言葉遣いも違っていて戸惑わざるを得ない。
「みんな、どうしたのかしら、一体」
 ようやく解放されて講義に入る少し前、小首をかしげていると。
「みんなもようやく、貴女の面白さというか、弄り方が分かったってことでしょ」
 隣で頬杖をついたせりかが、楽しそうに目をすがめて言う。
「良くわからないわ」
「貴女はそれでいいのよ」
 くつくつと、押し殺すように笑うせりかだったが、不意に真面目な表情に戻って一人呟く。
「……でも、それはそれで、なんか気分良くないのよねー。あたしって意外と独占欲強いからさ」
「??」
 頬杖をついたままの体勢で、顔を蓉子の方に向けるせりか。
 にっかりと笑い、片目を瞑ってみせる。
「だからー、これからもよろしくってことよ――――蓉子」
 その、一言に。
「あぁ…………こっちこそよろしくね、せりか」
 ちょっと気恥ずかしくなりながらも、応えた蓉子であった。

 

「―――さ、ようやく名前で呼び合うようにもなったわけだし、今こそ明け透けなトークを! 昨日は祐麒くんに送ってもらった後どうだったの? 当然、そのまま別れて終わりなんてことないわよね? ヤッたの? ヤッたんでしょ? てか、あの流れでヤらないとかありえないでしょ、どうなのねえ蓉子ってば?」
「ちょっ…………せりか!!」
 蓉子の大きな声が、教授が入ってきて静かになった教室内に響き渡った。

 

応援クリックいただけると幸いです。
にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ

アドセンス1

スポンサーリンク

アドセンス1

スポンサーリンク

fam8インフィード広告2×4+5連

-ノーマルCP, マリア様がみてる, 蓉子
-, , ,

Copyright© マリア様の愛読書 , 2024 All Rights Reserved Powered by AFFINGER4.